メーネ・テルセーラ
Illustrator:コダマ
名前 | メーネ・テルセーラ |
---|---|
年齢 | 15歳 |
職業 | メタヴァースから地上調査にやって来た帰還者 |
- 2021年3月18日追加
- イベントマップ・「KING of Performai 2020」(PARADISE時点で55マス)課題曲「ANU」クリアで入手。
- 上記方法で入手可能なのは2021/11/3(水)まで。*1<終了済>
メタヴァースから地上への帰還種となる使命を持った少女。
先に地上へと旅立った姉との再会を夢見ている。
スキル
RANK | スキル |
---|---|
1 | エクストラストーム |
5 | ハーモニゼーション |
10 | |
15 |
include:共通スキル
- エクストラストーム [TECHNICAL]
- CHUNITHM初のゲージ稼ぎが主目的ではないスキル。
- SKILL RESULTがbeatmaniaIIDXにおけるEX SCORE*2の再現になるという性質を利用し、対戦や大会でSKILL RESULTを競い合うのに使用する(公式も明言している)。
- 計算式はIIDX(光るGREAT×2+GREAT)と同様の「ノーツを最高評価で処理した場合=2点、2番目に高い評価で処理した場合=1点、それ以外=0点」である。
- なお、maimai(でらっくす以降)では「でらっくスコア」、オンゲキ(R.E.D.以降)*3では「プラチナスコア」という名称で、同様のシステムで集計されるスコアが存在するが、計算式は若干異なる。
でらっくスコア: CRITICAL PERFECT×3+PERFECT×2+GREAT
プラチナスコア: PLATINUM BREAK*4×2+PLATINUM BREAK以外のCRITICAL BREAK-(被弾回数+取り逃したベル)×2 - ゲージ稼ぎとしては5本にすら届かないため*5、はっきり言って使えないと言っていい。
- PARADISEで所有者が増えたが、GRADE UPしても何も変わらない。コンセプトから考えてボーナス値は変えられないのでしょうがない。
- KING of Performai 2020マップ5~6のマップボーナス(+5)に名指しで指定されている。
- 破格の補正だが、該当マップはノルマ4本なのでクリアにはそれなりの精度が必要。
- FULL COMBO以上ならノルマ到達していなくてもボーナスが貰えるので、FCできる譜面で使うのも手だが、そんな譜面なら4本到達しないことの方が稀だろう。
- 3本は他のスキルでの7本クリア、FULL COMBO以上であれば他のスキルでの8~9本クリアに相当する。
- 該当マップはANU(楽曲)がマップボーナスに指定(+3)されている。このスキルでANU(難易度不問)を4本+AJでクリアするのが最大効率になる。
- 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
- KING of Performai 2020マップ1(PARADISE時点で55マス)クリア
プレイ環境 | 最大 |
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開始時期 | |
PARADISE× (2021/8/5~) | 初期値 |
PARADISE (~2021/8/4) | |
CRYSTAL | |
AMAZON | |
STAR+ | |
STAR以前 | +1 |
GRADE | 効果 |
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初期値 | J-CRITICAL数 x2 JUSTICE数 x1 ゲーム終了時にボーナス |
▼以降は現在入手不可能なキャラが必要 | |
+1 | 〃(表記上は変化なし) |
参考理論値:68416(4本+8416/20k) [条件:赤壁、大炎上!![MASTER]] | |
参考理論値Ω:75218(4本+15218/20k) [条件:WARNING×WARNING×WARNING [WORLD'S END「!」]] |
- ハーモニゼーション [HARD]
- パニッシュメント系列の亜種、あるいはFREQ-Vertex Luminousのローリスクローリターン版。
ATTACKのみであれば40回が強制終了条件だが、MISSは2倍で計上される。 - 性能自体はジャッジメント+7の下位互換ではあるが、PARADISE時点で非常に少ないマス数での入手が可能なので、スキルが揃っていない場合は育成する価値はある。
GRADE | 効果 |
---|---|
共通 | MISSでカウント [-2] ATTACKでカウント [-1] カウント[0]で強制終了 (※初期カウント40) |
初期値 | ゲージ上昇UP (210%) |
+1 | 〃 (220%) |
+2 | 〃 (230%) |
理論値:138000(7本+12000/26k) |
ゲージ上昇率が増加し、JUSTICE以下の許容量がカウント管理により複数段階に分かれているスキル。
スキル名 | 上昇率 カウント(初期/J/A/M) 理論値 |
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[HARD] | |
ハーモニゼーション+2 | 230% 40/0/-1/-2 138000(7本+12k) ※汎用スキル |
憑依「喜怒哀楽ポゼッション」+3 | 225% 999/-1/-25/-50 135000(7本+9k) |
[ABSOLUTE] | |
アストラル・リベレイション+9 | 255% 145/-1/-10/-10 153000(8本+1k) |
FREQ-Vertex Blaze+1 | 255% 110/-1/-5/-5 153000(8本+1k) |
セラフィックブレイド+3 | 240% 150/-1/-5/-5 144000(7本+18k) |
FREQ-Vertex Luminous+1 | 255% 30/0/-1/-5 153000(8本+1k) |
ジーニアスパーティー+1 | 255% 80/-1/-1/-10 153000(8本+1k) |
cherry blessing ~巡る恵みの物語~ | 260% 10/0/-1/-3 156000(8本+4k) |
[CATASTROPHY] | |
天地創造+3 | 355% 10/-1/-9/-9 213000(10本+3k) ※汎用スキル |
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | Ep.1 | Ep.2 | Ep.3 | スキル | |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
Ep.4 | Ep.5 | Ep.6 | Ep.7 | スキル | |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
Ep.8 | Ep.9 | Ep.10 | Ep.11 | スキル | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
――『神の庭』<ガーデン>。
ここは、メタヴァース内に存在する、帰還種を育成するための特別な空間である。
新たな人類となる彼ら彼女らは、基幹システムの庇護下で何不自由なく暮らしていた。そして、いつの日か訪れる地上への帰還を夢見て、今日も眠りにつくのである。
神の庭で生まれた少女――メーネ・テルセーラもまた、帰還種の一人であった。
彼女は地上帰還の第一陣として出発する予定のレナ・イシュメイルたちに続いて、地上へと向かう手筈になっている。
「レナ姉……、明日にはみんなと一緒に地上へ旅立っちゃうんだよね?」
メーネがレナの袖をぎゅっと掴む。
「うん。あはは、そんな顔しないで。メーネだって直ぐに地上へ行くことになるんだから」
「ほんと……?」
「そうだよ、わたしが先に行って世界を冒険してくるから、メーネが地上に来た時にはわたしが案内してあげるね」
優しく撫でてくれるレナの手に自身の手を重ね、メーネは屈託なく笑う。
「私、絶対、レナ姉に会いに行くから! 約束!」
「うん、約束」
二人は指を絡め、再会を誓い合うのだった。
翌日。
レナたちが地上へと旅立つ日がやってきた。
光の渦――リザレクションゲートの前に立った面々は緊張した面持ちを浮かべて並んでいる。
レナが旅立つ姿を一目でも見ようと、メーネはレナたちの後をついて来ていた。
そんなメーネを見つけたレナが、誰にも気付かれないように、優しく微笑み返す。声は聞こえないが、唇の形は「行ってくるね」と囁いているようだった。
そして、最後の一人となったレナが、光の渦の中にゆっくりと手をかざす。
光に触れた指先から、レナの身体は光の一部へと同化していく。
そして、勢いよく飛び込んでいったレナを見届けて、メーネは祈った。
「レナ姉の旅が、幸せなものでありますように」
再会を夢見て、メーネは再生の日を心待ちにするのだった。
「私が地上に、ですか?」
基幹システムからその知らせを受けたのは、レナ姉たちが旅立ってからしばらく経ってのことだった。
『はい。私たちの想定外の事態が、地上で起こっているようなのです』
「想定外の事態? 地上は、理想の世界になったんじゃないのですか?」
『一部の者たちの反乱によって、生存反応を追えなくなってしまったのだ』
「嘘……レナ姉は……レナ姉はどうなったの!?」
『彼女はまだ、生存しています。正確には、彼女“だけ”判明している状態ですが』
システムは地上で何が起きているのか教えてくれた。
地上に再生されたレナ姉たちは、レナ姉を残して行方が分からなくなり、再生された都市も崩壊してしまったという。
システムの話では、レナ姉を中心にして争いが繰り広げられているらしい。
その言い方はまるで、レナ姉こそが戦争を煽動する存在だと、断じているかのようだった。
嘘……嘘だ嘘だ嘘だ! そんなのありえない!
誰よりも優しくて、誰よりも純粋で、少しだけおっちょこちょい。でも、隣にいてくれるだけで心が晴れやかになる。
そんなレナ姉が、煽動者!?
認めない、私は絶対に認めない!
「レナ姉がそんなことするはずありません! 何かの間違いです!」
『我々は、戦乱を起こすすべての勢力の浄化を検討している』
「浄化!?」
このシステムは、何を言っているの?
私たちを生み出し育てておいて、こんな簡単に切り捨てる判断を下せるなんて……。
『これは憂慮すべき事態なのです。ですが、地上で帰還種を迎え入れた機械種たちは、私たちの判断に異議を唱えているのもまた事実』
『機械種もろとも彼女を処分することもできるが、それでは地上は混乱の一途をたどり、本来の目的である地上への回帰が遠のいてしまう』
システムの言おうとしていることが理解できた。どうして私の地上再生を早めたのかを。
だったら。
こんな所で、いつまでもシステムの話を聞いている場合じゃない。
『そこで私たちは――』
「行きます。今すぐ地上に行かせてください。私が直接この目で世界の状況を把握し、その上でレナ姉が本当に戦乱を生み出す存在なのかどうかを確かめます」
『君ならそう言ってくれると思っていたよ』
これでいい。
私は、レナ姉の無事を確かめられればそれで――
それに、もし本当にレナ姉が煽動者だとしたら、その時は……。
『では、私たちの代理人として貴女を地上へと送ります』
『形は変わってしまったが、門出を祝福して、君が望むものを贈ろう』
「一番強力な武器をお願いします。それと……もうひとつ、お願いがあります」
『ふむ、何かね?』
「私に――地上でのあらゆる権限をください。そう、全部!」
――それから私は直ぐに地上へ向かった。
待ってて、レナ姉。レナ姉が煽動者じゃないってことを、私が証明してみせるから。
だからそれまで、無事でいて!
――メーネが向かったあと、システムは閉じられたリザレクションゲートを眺めていた。
『彼女……いいえ、“彼女たち”には、またしても辛い役目を負わせることになってしまうのですね』
『一度目は世界のために戦い命を落とし、二度目は互いに殺し合い……』
『彼女の旅路に、幸あらんことを』
ほんの少しだけ垣間見えた基幹システムの“願い”。
メーネの想いが浄化を阻止することになるのか。
それはシステムにさえ、推し量ることはできない。
――イオニアコロニーの地下に存在する再生炉。
それこそが、帰還種を地上へと再生させる重要な機構であった。
室内に蒸気が立ちこめる中、影が浮かび上がる。
一矢纏わぬその影が、徐々に露わになっていく。
「……ふぅ。無事に地上に来れたみたい。まぁ、ここがホントに現実の世界か、暗過ぎていまいち実感が湧かないけど」
現実世界へと再生されたメーネは、ひと通り体に異常がないかを確かめた後、再生と同時に生成された服に袖を通し、銃を手に取って地上へと向かった――。
「――へえ、ここが現実の世界か。うーん……、なんていうか、思ってたのと全然違うな」
再生炉が置かれた構造体を出た私の目に最初に飛び込んできたのは、一面に広がる焼け野原と倒壊したたくさんの家屋、それに……。
「なんなの、これ……」
どこまでも続く、地面をごっそりと抉り取るように刻まれた爪痕。
都市を一直線に走るそれを見て、私はここがすべての発端となった都市だと理解した。
この都市は、もう殆ど死んでいる。
そう思わせるだけの光景が、広がっていた。
地上は、私たちがずっと聞かされてきた理想郷なんかじゃない。
「こんな状況じゃ、いつまでものんびりしてる場合じゃない。レナ姉に繋がる手掛かりを探さ――」
――タンッ!
その時、風に乗って何かが弾けるような音がした。
これは――銃声? まだ誰かが戦っているんだ。
もしかしたら、レナ姉かも!?
そんな微かな期待を込めて、私は、急いで音のする方角へと向かって行った。
しばらく進むと、倒壊した家屋の合間を縫うようにして、複数の人影が行き交っているのが見える。
武装した男たちに追われているのは……私よりも年下に見える褐色の肌をした男の子だった。
誰が敵で、誰が敵じゃないか。
そんなの考えるまでもない!
「多勢に無勢は、見過ごせないね!」
私はその場で、銃を起動する。
システムが私のために用意してくれたのは、
『第九音素臨界加速装置』と呼ばれる特別な銃だった。
使い方は、もう私の頭の中に――刻まれている!
「さぁ、“ナイン”! あなたの力を見せなさい! コード・イグニッション!」
『駆動要請承認。起動――』
「いっけぇぇぇぇ!!」
威嚇射撃として空に向かって飛んで行った青い光。
雲を突き破ったそれを見て、武装した男たちは何かを喚き散らしながら、あっさりと逃げていった。
戦う気すらないなんて、ちょっと拍子抜けだ。
早速、私は襲われていた男の子の方に向かう。
「キミ、大丈夫だった?」
「はい、ありがとうござ……え……!? 生きて、いたんですか!?」
何がなんだか分からないまま、藍色の瞳を潤ませた男の子は、開口一番にそう言った。
「どういうこと? 私にも分かるように説明して」
「ご、ごめんなさい。僕の名前はナホムって言います。このイオニアコロニーで帰還種様を護っていた衛士の……生き残りです」
私がイオニアコロニーで出会った男の子――ナホムは、再生されたレナ姉たちを受け入れていた。
でも、その直後に強硬派<イノベイター>と呼ばれる勢力に襲撃を受けたらしい。さっき私が遭遇した男たちも、その勢力のあぶれ者って訳だ。
「ふうん……大体の事情は分かったよ。それで、キミはどうしてこんな所に留まってたの?」
「僕はこの街の生まれです。護る人がいないぼくにできるのは、街の復興ぐらいのものですから」
「こんな……廃墟みたいな所を……?」
「はい」
なるほど、これが大地の再生を続けてきた真人なんだ。自分に与えられた役割をこなすために、黙々とこの都市を……。
「でも……事情は変わりました。貴女様は、以前この街に現れた帰還種様と同じなんですよね? どうか、お願いです! ぼくに、貴女様を護らせてくれませんか!?」
「え?」
「ぼくは衛士の家系です。死んでしまった兄たちが果たせなかった役割を、ぼくが引き継ぎたいんです!」
「そう言われても……」
私より頭2つ分くらい小さい男の子に、「私を護りたい」って言われても。実は見た目からは想像できないくらい銃の扱いに長けてるとか?
「キミ、私より弱いよね」
「あぅ……言葉もありません……」
図星だった。
「じゃ、他に何かできるの?」
「はい! 戦闘はできませんけど、船の操縦には自信があります!」
瞳をキラキラと輝かせるナホム。
相当腕に自信があるようだ。
船。確かに、この広大な世界の中で、レナ姉を一人で探すなんて無茶な話かもしれない。
だったら。
「いいよ、一緒に行こう。私は船を動かせないから、操縦士がいるのは助かる」
「本当ですか!? やったぁ! よろしくお願いします! 帰還種様!」
「メーネ。私の名前はメーネ・テルセーラ。帰還種様って言われるのは……なんかムズムズする。メーネって呼び捨てにしてくれる?」
「えっ? でも……」
「いいから。ほら、呼んでみて?」
そう言うと、ナホムは少しだけ戸惑った後、恥ずかしそうに私の名前を呼んだ。
「メ、メーネ。これで、良いでしょうか?」
その光景を見て、私はレナ姉と出会った時のことを思い出してしまって。いつかレナ姉がしてくれたように、ついナホムの艶やかな白髪を撫でていた。
「ふふ、よくできたわね」
「ぼ、ぼくは衛士ですから! そういうのはやめてください!」
「はいはい」
「どうしてまだ撫でてるんですかぁ~!」
「それじゃ、これから宜しく。衛士ナホム」
初めて名前を呼ばれたことが嬉しかったのか、ナホムは体をピンと真っ直ぐに伸ばす。そして、元気一杯に誇らしそうに自分の胸を叩いた。
「はいっ! よろしくお願いします!」
それから私たちは、街の外れに乗り捨てられていた、球体のようなコクピットに羽や機銃が取り付けられた変わった形の船を手に入れた。
どうやら、強硬派の奴らが大分前に乗り捨てていった物らしい。
「それで、メーネもやっぱりペルセスコロニーへ向かうことになってるんですか?」
「ペルセスコロニー? そこに行けばレナ姉に会えるのかな」
「もしかして、その人がこの街に現れた帰還種様の……」
「うん。私は、帰還種で唯一生き残ったレナ姉を探しに来たんだ」
目的地は決まった。
東の荒れ果てた大陸を抜けた先にあるコロニー。
そこに、レナ姉がいるんだ。
ペルセスコロニーは、広大な砂漠地帯を抜け、人が殆ど住まわぬ山岳地帯を越えていかないとたどり着けない位置に存在する。
私たちが手に入れた船では、補給もなしに向かうことは困難だった。
「どうにかペルセスコロニーに行けないの?」
「ええと……この船に残されたデータによると、砂漠地帯から南に行った沿岸地域にコロニーがあるようです。そこを経由していけば、ペルセスコロニーまで行けるかと」
「よし、今すぐそこに行こう! ほら、早く!」
私はナホムの肩を掴んで急かすように何度も揺らした。
「わ、分かりましたからっ。揺らしてたら操縦できないですってば!」
――燦々と照りつける太陽と、砂漠がどこまでも広がる広大な大地。
そこに、細長い塔のような構造体を中心に据えたアントゥルーヤコロニーがひっそりと佇んでいた。
船を近くの建物の上に着陸させ、私たちは半ば砂に埋もれている都市に降り立った。
建物の最上階から見えた光景は、所々で戦闘が行われたと思わしき箇所が見て取れる。
どういう訳か、都市の配管のような物があちこちに剥き出しになっていた。
「どうやらここでイノベイターが何者かと交戦されたようです。既にイノベイターは撤退されているので、散策には支障はないかと」
一体、誰と交戦していたんだろう。
まさかレナ姉と?
「とりあえず、下に降りて調査してみよう。何か手がかりが見つかるかもしれないし」
「ええ、そうですね。行ってみましょう」
私たちはアントゥルーヤコロニーの探索を開始した。
ナホムの話にあった通り、イノベイターの部隊は完全に撤退していて、手掛かりになりそうな物はひとつも見つからない。
ただ、この都市を見ていて思うことがひとつだけあった。
「未だに争いが絶えないのが、この世界の現実なのかな」
「理想郷と呼ぶには、まだ時間が必要かもしれません……」
至る所で目にする戦いの傷痕を見ていると、私にはシステムが地上勢力の浄化を画策してしまうのも、少しだけ理解できるような気がした。
そうこうする内に、探索はいよいよ中心部に。あの細長い構造体の根元が、そろそろ見えてくるはずだ。あの惨状の中でもイオニアコロニーの再生炉が稼働していたことを考えると、ここの構造体も活動している可能性が高い。
根元付近の開けた場所には、中央の構造体を囲むように柱が立ち並び、それを結ぶようにして細長いケーブルが通されていた。
その上には足場が設置されていたけど、所々で崩れてしまっている。
地面には、石でできた椅子のような物も等間隔に置かれているようだ。
「ここは、この街に住まう人々の憩いの場のような場所だったのかもしれませんね」
「憩いの場、か…………」
「どうしたんですか? メーネ」
「分からない、分からないけど、ここを眺めていたら、寂しさが込み上げて……あれ……?」
力が入らなくて、私はその場に尻餅をついてしまった。
「メーネ? 大丈夫ですか?」
「……う、うん。ありがと、ナホム」
一瞬だったけど、私はこの都市に刻まれた記憶のようなものを感じ取ってしまったのかもしれない。
「立てますか? 良かったらぼくの手を――」
「だ、大丈夫だから! ほら、行くよ!」
「えっ? 待ってください、メーネ!」
中央の構造体の前まで来た私は、早速それに触れる。権限を与えられていたせいか、私の手を微量の電流が走るような感覚があった。
やっぱり、この都市はまだ生きている。
しばらく手を当てていると、どこからともなく無機質な声が響き渡った。
『メインフレームからのアクセスを確認――認証』
すると、構造体の周囲に振動が走ったかと思うと、床が迫り上がって小さな足場を形成していた。
なるほど、これで上に登れってことか。
「え? え? メーネ、一体何が?」
「行くわよ、ナホム」
ナホムの手を引いて、足場に乗る。その瞬間、足場は上部を目指して緩やかに上昇を開始した。
登っていく間に見えた構造体の内壁には、無数に走るパイプがどこまでも続いている。まるで、人の身体の中を移動しているような錯覚に陥ってしまう。
程なくして足場が停止した。ここが終点のようだ。
仄かに照らされた室内は、すべてのパイプがより集められた、聖堂のような形を成した場所だった。
「な、なんなんですかここは……?」
「ここは、いいえ、ここだけじゃない。各都市に点在する構造体は、それ自体が巨大な演算機なの」
「い、一体、なんのために……」
地鳴りのような機械の駆動音と、時折ため息のように噴き上がる冷却用のガスが奏でる終焉後の世界の調べ。
その光景に怯えるナホムをよそに、私は淡々と話を続ける。
「内部では、数えきれない程のシミュレーションが行われて、無数の生命情報を記録しているの。私もその情報のひとつだったんだよ」
「つまり、メーネはあの中からやって来たと……」
「そういうこと」
ナホムにメタヴァースの思い出を語りつつ、私は構造体の都市防衛機構から監視システムを呼び出す。
良かった、端末はどれも生きている。
戦闘記録で検索をかけると直ぐにヒット。
その映像記録をたどっていくと、誰かに手を引かれながら都市を脱出していくレナ姉の姿が映っていた。
過去の映像記録でしかないけど、ここには確かにレナ姉がいたんだ。
「レナ姉……よかった……」
無意識に出た吐息。
私は心の底から安堵していた。
この映像から分かったことは、もうひとつある。
レナ姉は、追ってくるイノベイターから逃げているだけで、自分から戦おうとはしていなかった。
レナ姉の辛そうな顔を見れば分かる。
私には、分かるんだ。
逸る気持ちが私を焦らせる。
早く、レナ姉の所に向かわないと……。
レナ姉が船に乗って東の地に向かったのを確認した私たちは、補給を済ませた後でその船の航路をたどるようにアントゥルーヤコロニーを出発した。
山岳地帯がすぐ目の前まで来てはいたけど、既に陽は暮れ始めている。
結局、麓で野営の準備をすることになった。
準備を終えた頃には、あたりはすっかり暗くなり。
焚き火を囲んでいる内に、私たちはお互いのことを話すようになっていた。
ナホムの口から語られる真人たちの想い――真人が課せられてきた苦役を思うと、私にはどちらの思惑が正しいかなんて、簡単に判断を下せなかった。
「真人たちの気持ちも分からなくはない。でも、このまま争いが世界中に広がっていったら、この世界はまた人の住めない星になってしまう。いえ、“させられてしまう”」
「それって、どういうことですか?」
「ナホムが見た演算機、あれを管理するシステムが、戦乱を招くすべての生命を滅ぼそうとしているの」
「えっ!?」
目をまん丸に見開いたナホムを横目に、私は話を続けた。
「システムは、ナホムの街で再生された帰還種――レナ姉が争いを煽動していると考えている。私は、レナ姉が本当にこの世界に争いをもたらす存在なのかを見極めにきたんだ」
「だから、あの帰還種様の無事を
確認したかったんですね」
「うん。今の所、レナ姉が脅威になっているとは思えないし、私は思いたくない」
「あの……もし、もしもの話ですけど。帰還種様が本当に争いを生み出しているとしたら、“貴女”はどうしたいんですか?」
ナホムの真剣な眼差し。
それは、私の心の迷いを見透かしているようだった。
「システムが判断を下す前に……私が、この手で、レナ姉を……殺す」
――そう。
それが、私に課せられた使命だから。
「そんな……」
「レナ姉に限って、そんなことをする訳がないって分かってるけどね。ただ、システムがどう判断するかなんて、私には分からない……」
もしかしたら、この瞬間にもシステムが私を殺してしまうかもしれない。この任務をシステムに託された時から覚悟を決めてはいた。でも、もし本当にそうなってしまうとしたら、私は――
「メーネ」
私の手にナホムの手が重ねられた。
「……ぼくにはメーネの事情をすべて理解することはできません。ですが、もしこの世界がシステムから粛清されるようなことになったとしても、ぼくは、この命にかけて貴女を護ります」
私を見つめる深い藍色の瞳。
その眼差しに引き込まれそうになって、
「そういうことは、わ、私より強くなってから言いなさい」
つい私は、見当違いのことを言って誤魔化してしまった。
「あはは……そうですよね。ごめんなさい……」
あ――。
ナホムの小さな手が離れていく。
たったそれだけのことが心細くて。
気づけば私は、ナホムの手を握り返していた。
「どうしたんですか、メーネ?」
少しだけ寂しそうな顔をしているナホム。
私が、ナホムの顔を曇らせてしまったんだ。
「さっきのは違うの、ナホム。私は、ナホムのことを頼りにしてるから」
「でも、ぼくに戦う力はないですから……」
「私はナホムのその気持ち、嫌いじゃないから! だから、しっかり護ってよ、“私の”衛士クン! 話はそれだけ! もう寝るから!」
「……! はいっ! 頑張りますっ!」
ぱぁぁっと目に見えて明るい笑顔を浮かべるナホムにホッとして、私は眠りにつく。
夜空を見上げれば、どこまでも広がる満天の星空が煌めている。
――この世界はまだ、理想郷には程遠い。
でも、ここまで再生された世界を、私たちの都合で踏みにじることは、しちゃいけないんだ。
夜が明けて、私たちは山岳地帯に向かった。
岩肌が剥き出しになった山々が延々と続く世界。ここは、人が立ち入れる場所ではないのだと本能的に理解できた。
山岳地帯を進み始めてから程なくして、レーダーに突然示された反応。
高くそびえる構造体に遮られて何があるのか分かりにくいけど、そこには確かに都市が築かれていた。
でも、都市というより、あれは……。
「ねえ、ナホム……あれも都市なの?」
「要塞に見えますけど……でも、なんでこんな所に……。 ――ッ!? メーネ! あの要塞から何かが射出されました! 真っ直ぐこちらに向かってきます!」
「敵!?」
レーダーを見れば、3つの機影が表示されていた。
「この空域から離脱します! 掴まっててください!」
その瞬間、機体に振動が走り、船尾が球体部分を軸に縦に180度回転した。
即座に反転してみせた船は、来た道を戻るようにして勢いよく飛行していく。
「ダメだ……あちらの方が速い!」
戦闘は避けられない。すると、ナホムは気合を入れるように大きく息を吸って、
「ここはぼくに任せてください!」
ナホムを纏う雰囲気が変わった。
全身から緊張感が伝わってくる。
「ナホム! 来るよ!」
「大丈夫です!」
砲火が降り注ぐ。
でも、その攻撃はただ岩肌を削っただけだった。攻撃をあっさりと回避したナホムは、船の機銃を反対側に向けて、後ろにつけていた敵機にカウンターの掃射を喰らわせていた。
「よし! まず一機!」
「すごい、ナホムすごいよ!」
「まだまだいきますよ!」
敵機を引き離すように一気に加速した船。
残る2機がそれに追随するように加速する。
進んだ先は、針のように鋭い岩肌が続く開けた場所だった。
そこを縫うようにジグザグに飛行していくと、敵機はたまらず上昇していく。
それをナホムは見逃さなかった。
機体を縦に180度回転させながら上昇していく。
すると、失速した敵機の真正面に突然出現する形になり――
すれ違い様に放った機銃が、あっという間に残りの2機を撃破してしまった。
「やりましたよメーネ! これで少しはお役に……って、メーネ!?」
「すごいよナホム! カッコ良かった!」
「ちょ、メーネ! 前! 前が見えないです! 離れ――」
刹那、機体を掠るようにして振動が走った。
「ぁっ……!?」
「増援です! もう追ってくるなんて!」
レーダーに映る機影は、さっきの倍以上。まだ距離があるとはいっても、到底凌ぎ切れる量じゃない!
「一か八かだけど、私の“ナイン”で」
「いえ、流石に戦闘艇の攻撃を四方から撃たれてしまったら、いくらメーネでも殺されてしまいます」
「じゃあ、どうしたら」
「ぼくが囮になります。メーネを降ろしたら、ぼくが時間を稼ぎますので、その間に逃げてください」
「は? 何を言って――」
ナホムの判断は早かった。
岩陰に船を近付けると、コクピットの窓を開いて私を船から追い出そうと迫る。
「さあ、早く!」
「そんなこと言われて、はいそうですかなんて言える訳ないでしょ!? 私は最後まで――」
「貴方には、すべきことがあるんです。こんな所で、終わってはいけないんですよ!」
敵機の音が間近まで迫っていた。
なのに。こんな状況だっていうのに。
ナホムは――笑っていた。
「ぼくにできることは、これくらいしかありません。ぼくを衛士と呼んでくれたのは貴女だ。だから、せめて最期まで、衛士らしくさせてください」
「ナホム、私……っ!」
「行け! メーネ・テルセーラ!!」
ナホムの剣幕に、これ以上返す言葉がない。
最初は、なんて頼りない存在だと思った。
ちっぽけで、空虚で。私より弱い。
でも、それは違ったんだ。
今、私の目の前にいるのは――
立派に役目を果たそうとしている、一人前の衛士だ。
覚悟を決めたナホムの気持ちを、これ以上踏みにじれない。
私は、船を降りた。
「今までありがとう……ナホム」
「貴女が無事に帰還種様に会えるのを、祈ってます」
そう言い残して、ナホムは飛び立っていった。
岩陰に隠れながら、どれだけ待っただろう。
爆発音は聞こえないし、ナホムは逃げおおせているのかもしれない。
このままナホムが無事であることを祈ろうとしたその時、戦闘艇が引き返してくるのが視界に入った。
ほんのわずかな時間に過ぎなかったけど、その隊列の最後尾にいたのは――
「あれは――ナホム!」
私の視界に飛び込んで来たのは、ナホムの船とナホム自身だった。撃墜されずに、そのまま敵の手に落ちていたようだ。
――山岳地帯に、夜が迫る。
幸いなことに、敵は私の存在に気付いてはいなかったらしい。敵が戻ってくる気配すらなかった。つまり、私は警戒されずにどこにでも行くことができる。
――でも。
私にそんな選択肢は最初からなかった。
こんな気持ちは初めてだ。
レナ姉以外の誰かを“想う”ことなんて。
私は、ナホムを助けたい。
ナホムは命を賭けて私を護ってくれたんだから。
今度は、私が助ける番だ。
握り締めた“ナイン”を見る。
今すべきことは、ひとつしかない。
「私が行くまで待っててね、ナホム」
遠くにそびえる構造体。
何が待ち受けていようが、構うもんか。
私が必ず、救い出してみせる!
かなり時間はかかったけど、要塞が目に見える位置まで、無事にたどり着くことができた。
あとはナホムが捕らえられている場所が分かればいいんだけど……。
仄かに照らされた要塞の周囲に目を凝らす。
「え? あれって……まさか」
最初は、強風に晒されて削られた岩だと思っていた細長い岩。でも、それらには小さな灯がいくつも灯っていた。
「これ全部……巨大な岩にカモフラージュさせたメインフレームの都市なの……?」
イノベイターが、都市全体を掌握している? 一体、どうやって……?
いや、今はナホムを助けることが最優先事項だ。ここら一帯が全部メインフレームの施設だとするなら、私にとっては好都合。
これを逆手に取って、私の上位アクセス権限でナホムの位置を特定する!
早速、私は近くの構造体に触ると情報を引き出しにかかる。
情報を引き出す上で、この都市の名前が判明した。
この要塞化された都市は、『ゼーレキアコロニー』。
やっぱり、メインフレームが有する都市のひとつだ。
それにしても、なんでこんな不便な所に造ったんだろう――
その時、細かな振動が私の手に伝わってきた。
「――見つけた。思ってたよりも近い」
ナホムがいる場所は、あの要塞から北西の場所に位置する廃屋だ。
待ってて、今すぐ行くから!
――夜陰に乗じて移動したこともあって、私は敵に遭遇することもなく、廃屋までたどり着くことができた。
こういう時、服装が黒いと助かるね。
そのまま監視の目を潜り抜けて、私は廃屋に忍び込んだ。
廃屋の通路を進んでいくと、奥から微かに声が聞こえる。
間違いない、この声は――!
「“ナイン”! コード・アクセル!」
連射性を向上させた銃で、部屋の前に立っていたイノベイターを速攻で撃破。その音に気付いた敵兵が慌てて出てきたけど、もう遅い。
懐に飛び込んだ瞬間、ナインの銃口を相手の顎に叩きつける。
そこへ、バランスを崩した敵の顔面に向かって、私は躊躇なくフルスイングのハイキックをお見舞いしてやった。
「ふぅ。ざっとこんなもんか――」
「――ネ! メーネなの!?」
「ナホム!」
室内に入ると、椅子に括り付けられたナホムがいた。その顔は、何度も何度も殴られたのか、ひどく腫れている。
「ナホム! 大丈夫!?」
「は、はい。これくらいでしたら……それよりも、どう、して……? どうして、ぼくを、助けに……」
瞳に涙を浮かべて、ナホムは私に問いかけた。
どうしてって……そんなの、決まってる。
「ぺ」
「ぺ?」
「ぺ、ペルセスコロニーまでの運転は、誰がするの。いなくなられたら、その、困るでしょ……」
「あはは……メーネって、素直じゃないですよね」
「ん? 今なんか言った?」
「ふふ、いえ、なんでもありません。ただ……」
「ただ?」
そう言うと、ナホムは私を真っ直ぐに見つめてきた。そして、精一杯の笑顔を作り――
「また、ぼくは貴女を護ることができる。それが何より嬉しいんです」
「しっかり護ってね、私の衛士クン」
「はいっ!」
さて、ナホムも無事だったことだし、さっさとここから脱出しなくちゃ。
「ナホム、戦闘ポッドは――」
その時、都市全体を震わせるような振動と警報が鳴り響いた。廃屋の窓から外を確認してみると、イノベイターの兵たちはここではなく別の方向へと走っていくのが見える。
「どういうこと? この警報は、私たちに対して向けられたものじゃない?」
「み、見てくださいメーネ! あ、あの山を!」
ナホムが指し示した巨大な山。ただの山だと思っていたはずのソレは、突然、“身をよじるように震えた”。
「な、何なんですか、あれは!? 人型の……兵器? まさかイノベイターの……!」
「――違う。あれは……私は、あれを知っている」
刻まれた“記憶”が、次々と私の中に流れ込んでくる。
あれは、メインフレームが作り出した――
刹那、私の思考を遮るようにして、ソレが吼える。
いや、正確には、ソレから放たれた熱線が要塞のある方角へと照射される音だった。
突然、私たちの前で動きだした巨大な物体。
私の記憶が、あれが何なのかを教えてくれた。
「あれは、古き人類を滅ぼした――殲滅兵器」
「兵器!? いくらなんでも大き過ぎますよ!?」
あれは今、自分の目的も忘れて無差別にただ攻撃を加えているに過ぎない。
完全に制御不能な状態に陥っている。
「メーネ! イノベイターがあの巨大な人型兵器と交戦してる内に逃げましょう!」
「うん、行こう!」
外に出ると、殲滅兵器を取り囲むように展開したイノベイターたちが、あれに向かって攻撃を加えていた。でも、あんな攻撃じゃ焼け石に水だ。
あれを倒すとしたら、戦艦の主砲クラスの攻撃か私の――
「メーネ! 危ない!」
ナホムに手を引かれた直後、私のすぐ後ろを殲滅兵器の巨大な手が掠めていった。廃屋はあっさりとぺちゃんこになって、辺りに粉塵を撒き散らしている。
「今の……私を狙った?」
今までの無差別な攻撃とは違って、あの兵器からはわずかな“意志”を感じた。
まさか、あれが起動したそもそもの原因は私にあるんじゃ……!?
「メーネ、どうしたんですか!? 早く逃げないと、イノベイターにも見つかってしまいます!」
「ナホム、このままじゃ私たちは逃げられない。こいつの目的は私なんだ。逃げたらこいつに狙い撃ちにされちゃう」
「そんな……じゃあ、どうすれば……」
「――あいつは、私が倒す」
この場であれを倒せるのは私だけ。
だから、私がやるしかないんだ。
こいつを動けなくするだけでいい。
私には、それができる“力”があるんだから!
「“ナイン”! コード・ヴァーテックス!」
最初から――全力でいくッ!!!!
「ナホム! 私から離れてて!」
「はいっ!」
殲滅兵器の手が、再び私に向けられた。
狙いは――外さない!
「いけぇぇぇぇッ!!!」
夜空に、青黒い稲光が迸る。
殲滅兵器に向かって一直線に飛んで行ったソレは、左腕を丸呑みにして、そのまま肩を喰い破っていった。
「――――――――!!」
殲滅兵器から発せられた機械的なエラー音は、まるで苦痛に呻く叫び声のよう。
殲滅兵器は、姿勢を制御できなくなると、周囲を巻き込みながら倒れていった。
「くっ……さすがに倒しきれないか! ナホム! 私があれを倒すまでに、船を取り戻してきて!」
「分かりました! って、ええっ!?」
「格納庫はここから東に行った所にある。私の衛士だったら、それくらいできるでしょ?」
「ですが……船を回収してからどうやってメーネを探せばいいんですか!?」
ナホムの質問に、私は高くそびえる構造体を指差した。
「あの最上階から、ナインの最大出力を殲滅兵器にぶつけて破壊する。それが合図だよ」
「分かりました! 必ず迎えに行きます!」
夜の闇に紛れるように、私たちは行動を開始した。
イノベイターと殲滅兵器の戦闘の混乱に乗じて、私は中央にそびえ立つ構造体の内部に容易く侵入することができた。
アントゥルーヤコロニーの時と同じ手順で足場を呼び出し、乗り込む。
細長い塔の内側は、仄かに灯された照明が頂上部まで続いていた。ここにも無数のケーブルがうねるようにどこまでも延びている。
頂上には難なく到着した。
到着した途端、室内が明かりを取り戻していく。
すると、暗がりから何かが浮かび上がってきた。
パイプがより集まって形作られた聖堂のような制御機構。そして、その近くには主のいない玉座がポツンと佇んでいた。
メインフレームが造り上げた都市にある構造体――巨大演算装置は、その演算に必要な電力を都市間ケーブルと地下の大型発電槽で賄っている。
私は、私に与えられた権限を行使して、制御機構から引っ張り出した接続装置と“ナイン”とを直結した。
まるで最初からそうすることを想定して造られていたかのようだ。
「すごい……“ナイン”を通して、力が満ちていくのが分かる。これだったら、殲滅兵器を完全に破壊できる!」
壁を撃ち破り、その隙間から外を確認する。
殲滅兵器は右手だけを使って、器用に私がいる構造体を真っ直ぐ目指していた。辺りが燃えようが爆発しようがお構いなしに、ただひたすら私だけを追いかけてくる。
その時、私を視認したのか、赤く灯る瞳がキュッと引き絞られた。
「――――――ッッ!!!!」
雄叫びを上げた殲滅兵器。
上体を起こしたその胸には、ひときわ赤く輝くコアユニットが見えた。
狙うなら、今だ――!
「“ナイン”! コード・レディアント!!」
『超過駆動要請承認。禁圧――解除』
音声と共に、握っていたナインが一瞬だけ“ブレ”る。
そして、その形は瞬く間に組み換わり――
都市のすべての電力を蓄えた白亜に輝く銃へと変化した。
ずしりと感じた手応えが、殲滅兵器を撃ち抜けるという確信を与えてくれる。
ケーブルから吸い上げた電力全部! あいつに叩き込む!
「これで――終わりだぁぁぁ!!」
圧縮された波動が爆音と共に放たれ――正確に胸のコアユニットを撃ち抜いた。
一瞬の静寂の後、崩壊する射線上の空間、コアユニットから爆炎を噴き上げながら停止した殲滅兵器がゆっくりと崩れ落ちていく。
赤い瞳がぶつりと途絶えたその瞬間、私の中に何かが流れ込んできた。
「これは――――あの兵器の、“記憶”?」
そこでようやく私は理解できた。
何故、私に向かって来ていたのかを。
そうだったんだね。
キミは、私を護ろうとしていただけだったんだ。
「ごめん。どうか、安らかに――」
「――素晴らしいわ、その力。あんなに巨大な物を、いとも容易く葬れるなんて。ああ、なんて美しいのでしょう」
突然、背後から発せられた声。
まるで、背筋を直接刃物でなぞられたかのような――
あまりに無機質で、無感情な声だった。
「だ、誰っ!?」
振り返った先には、女がいた。
さっきまで無人だったはずの玉座に、その女は悠然と腰掛けている。
全く気が付かなかった。
いつからそこにいた? いや、違う、そうじゃない。
あれが……本当に、人なの!?
そう思えるくらい、あの真っ白な女からは何も感じられなかった。
あの女……決定的なまでに、“何か”が欠けている……。
(ぁ……れ……?)
身体が、動かない。
あの紅色の瞳を見てから、いつの間にか私の身体は言うことを聞かなくなっていた。
女はゆるりと前に進むと、手に持っていた白い剣を鞘から抜いていく。
隙だらけのはずの動作なのに、私は、それを怖いと思ってしまった。
このままじゃ、殺される――
「メーネェェェェェェェェッ!!」
「――ッ!」
私の金縛りを打ち消したのは、ナホムの声だった。その声は、破壊した壁の外から聞こえてくる。
振り下ろされた剣をギリギリのとこで回避した私は、脇目も降らずに駆け出した。そして、ナホムが操縦する戦闘ポッドを捉え――跳んだ。
まるで秒送りになった映像のように、ゆっくりと時間が過ぎていく。
飛び移る瞬間に、戦闘ポッドを45度に傾けたナホムは、開け放たれたコクピットの中へと、私を器用に収容した。
身体に走る痛みも顧みず、私は即座に構造体へ視線を向ける。
外壁の隙間からわずかに見えた白い女は、私を見ているのかも分からない虚ろな目をしたまま、ただ不気味に微笑んでいた。
銃の形にした左手を、自分の頭に押し付けるようにして――
「大丈夫ですか、メーネ?」
「う、うん……ありがとう……」
ゼーレキアコロニーを脱出したのに、私の心はまだあの女の影がチラついていた。
「本当に、大丈夫ですか? その体……」
「え?」
言われるまで気付かなかった。
私は、全身をびっしょりと汗に濡らしていて。
少し目を合わせただけなのに、身体は小刻みに震えていた。
私は、あの女に恐怖を感じて――
その瞬間、私は理解した。
あれは、この世界にいてはいけない存在だということを。
そして、あの女をレナ姉に会わせたらいけないって。
「少し、休憩しましょう。メーネをそのままにはしておけないですから」
「だ、大丈夫だから、私なら全然――」
あ、れ?
急に、視界がぼやけていく。
身体に力が……入らない。
もしかして、“ナイン”を使い過ぎた……?
「やっぱり休憩した方が良さそうですね。ちょうどこの先に着陸できそうな丘がありますので」
しばらくして、船は見晴らしのいい丘の上に着陸した。
「着きましたよ。少し休んだら、ペルセスコロニーに向かいましょう」
「あ、ありがと……ナホム……」
私はコクピットに横になると、微睡んでいく意識を手放した。
――私が意識を取り戻した頃には、辺りはすっかり明るくなっていた。
ナホムに「外の空気を吸いましょう」と提案されて、コクピットを出る。
「それにしても、まだ追っ手が来てないなんてね」
あの殲滅兵器で被った損害が想像以上で、私たちに手を回している場合じゃないのかな……?
「安心してください、メーネ。追手はやってきませんから」
「え、どうして?」
「この船を拝借した時、泊めてあった戦闘艇に手当たり次第細工をしておきましたから。ぼく、戦えませんけど、こういうのは得意なんです♪」
「へ、へぇ……、そうだったんだ……」
ニコニコ顔のナホムを見て、私は彼を怒らせるのはやめておこう、と自分の中で結論付けた。
「そういえば、メーネが眠っている間に周囲を調べていたら、戦闘の形跡があったのを発見しました」
そう言われて、ナホムの指さす方向に目を向けると、そこには一隻の半壊状態になった戦闘艇が、ポツンと取り残されているのが見えた。
更に視線を奥に向けると、朝焼けの光に照らされた何かが視界に入る。
「あれは、なんだろう……?」
ナホムに手を借りながら、ゆっくりとそれに向かって歩いていく。それは、鉄の板などで形作られた、小さな小さな『墓標』だった。
その墓標の上には、丘の近くから取って来たと思われる、花が添えられていた。
すっかり風化しきっていた花に、手を伸ばす。
その途端、私の指先に触れた花は、さらさらと砂のように塵へと還っていった。
「もしかすると、あの戦闘艇に乗っていた方のお墓なのかもしれ――メーネ?」
「ぁ……私、また……」
花から微かに感じた想い。
大切な人を想う哀しみが、私の胸を強く締めつけてくる。
「結局、どこまで行っても戦いから逃れることはできないんだ」
イノベイターにメインフレームの遺物、そして――あの女。
世界は、争いを引き起こすモノで溢れている。
こうしている間にも、事態はどんどん悪化していく。
私は、一刻も早くレナ姉に会わないといけない。
システムによる審判の日が、訪れる前に。
脚注
- *1 メーネはメタヴァースのキャラであるため、過去のイベントマップ産メタヴァースキャラのようカードメイカーでの入手に変更されると思われる。
- *2 『28 BISTROVER』よりそれまでSCOREと呼んでいた20万点満点のスコアが廃止され、EX SCOREをSCOREと呼ぶようになった。
- *3 brightまでは不定期開催イベント「テクニカルチャレンジ」、およびKING of Performaiオンライン予選限定の要素(順位を決める際に、「テクニカルスコア」が同点だった場合の優劣を決める時だけ使用されていた)だったが、bright MEMORYよりMASTER/LUNATIC全曲において常時集計に移行。
- *4 CRITICAL BREAKのうち特に精度のいいものを指し、テクニカルスコア算出ではCRITICAL BREAK扱い。CHUNITHMでいうなら『NEW』以降のリザルト画面での内訳グラフ表示においてJUSTICE CRITICALのうち中央の物だけが該当する。
- *5 10000ノーツで5本に届く計算だが、チュウニペンギン/ラブリーハートのSTORY(EPISODE17)で10000ノーツ警察(10000ノーツ以上にならないようにチェックする)の存在が語られているため、登場する見込みは薄い。
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
172021年04月11日 03:35 ID:jfyzykr3ジャケ絵だけ見て
覚醒セーレちゃんみたいに誰彼構わず襲いかかる戦闘狂タイプだと勝手に思ってたけどストーリー読んだらめっちゃええ子やん... ギャップに萌えるわ
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チュウニズムな名無し
162021年03月25日 17:43 ID:t0f57ja2可愛すぎる。スキルレベル上がって画面に表示される度、じっと見てしまうわ。おへそから鼠径部にかけてのラインが芸術的だし、ブカブカでクソデカな革靴もカッコ良すぎて見てしまう。
割とマジで全体絵を求む。
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チュウニズムな名無し
152021年03月20日 19:31 ID:ffbpb7w3(イラストが)でかい、でかすぎる
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チュウニズムな名無し
142021年03月20日 05:37 ID:sfbceyso脇が エロい
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
122021年03月19日 19:51 ID:ksw5lrzy最初見た時メスガキかと思ったらめっちゃいい子だった...
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チュウニズムな名無し
112021年03月19日 18:20 ID:fk3p4505イゼヴェルのストーリーとメーネのストーリーから考察すると
レナ姉=イゼヴェルが追っかけてる帰還種の女で
聖女バテシバ=メーネを斬ろうとした赤い瞳の女なんだろうか
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チュウニズムな名無し
102021年03月19日 00:17 ID:ooz2xmd3抜いた
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チュウニズムな名無し
92021年03月18日 23:35 ID:npro9yhj1番強力な武器を……このシステムってもしかしなくてもジェフティ……