新田 ちえ
通常 | どこか遠くへ |
---|
Illustrator:ダンミル
名前 | 新田ちえ |
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年齢 | 17歳(冬)→18歳(夏) |
職業 | 女子高校生 |
特技 | CD鑑賞(冬)→特になし(夏) |
CV | 岡嶋妙※デュエルで入手可能なシステムボイス |
- 2019年1月24日追加
- AMAZON ep.IIマップ1完走で入手。<終了済>
- 入手方法:2021/1/21~3/3開催の「「穏やかな日々……愛しのあなたへ」ガチャ」<終了済>
- 入手方法:2021/11/4~12/8開催の「「お風呂上がりの一発でわからせる!」ガチャ」<終了済>
- 専用スキル「秘めたる熱情」を装備することで「新田 ちえ/どこか遠くへ」へと名前とグラフィックが変化する。
- 対応楽曲は「涙色メモリア」。
人見知りで引っ込み思案な少女。
同性の親友に叶わぬ恋心を抱いてしまい・・・
新田 ちえ【 通常 / 七夕の願い 】
EPISODEの表題に「詩織」という謎の人物がいたが、AMAZON PLUSで「優美」に修正されている。
昔の某ゲームに似た名前のヒロインがいたような
※ストーリー・デュエル・システムボイスは曲と裏腹にかなりの鬱要素が存在します。取り扱いは注意と覚悟が必要です。
- デュエル進行中(状況:高校3年生(夏))
登場 | なにもかもが始まって、なにもかも終わってしまった一年間が終わる。 |
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攻撃 | くだらない |
もう、どうでもいい | |
さよなら | |
撃破 | ……私のことを受け入れてくれる人を探して、誰も知らない場所へ行こう |
- リザルト
SSS | おめでとう… |
---|---|
SS | 心が、渇く……。もう、二度と、潤わない…… |
S | きっと、私はあの時に一度死んだんだ。それなら、今の私は幽霊みたいなものか |
A-AAA | ああ、もう全部、終わっちゃった…… |
B-BBB | いい気味よ…… |
C | 吐き気がする……。……胡散臭い |
D | 色が……消えてく。なにもかも、灰色になっていく…… |
- その他(NEW~)
マップ選択 | マップを選択すれば? |
---|---|
チケット選択 | チケットを選択すれば? |
コース選択 | コースを選択すれば? |
クラスエンブレム更新 | クラスエンブレムを更新したよ… |
ソート変更 | ○○順でソートしたよ… |
クエストクリア | クエストクリア… |
限界突破 | ……違うの。本当に、嬉しくて……言葉が、出なくて……ありがとう |
コンティニュー? | コンティニューするの? |
コンティニュー | そう… |
終了 | シーユーネクストプレイ… |
スキル
RANK | スキル |
---|---|
1 | ゲージブースト・エアー |
5 | |
10 | 秘めたる熱情 |
15 |
include:共通スキル
- ゲージブースト・エアー [NORMAL]
- 純粋にゲージ上昇率が増えるスキル。一定回数のAIRを成功させると更に増える。GRADE UPで必要回数が減る。
ゲージ5本狙いのスキルとして使え、譜面次第では6本も可能。 - 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
- 筐体内では入手できない。
- AIR ep.IIマップ5のマップボーナス(+1、ソラマチ・メメであれば合わせて+3)に名指しで指定されていた。
プレイ環境 | 最大 | |
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開始時期 | ガチャ | |
PARADISE× (2021/8/5~) | 無し | × |
あり | +3 | |
PARADISE (~2021/8/4) | 無し | × |
あり | +5 | |
CRYSTAL | 無し | +1 |
あり | +8 | |
AMAZON | 無し | +1 |
あり | +8 | |
STAR+以前 |
GRADE | 効果 | |
---|---|---|
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 | ||
共通 | ゲージ上昇UP(160%) | |
初期値 | AIR50回以上成功すると 更にゲージ上昇UP(190%) | |
+1 | AIR45回以上〃 | |
+2 | AIR40回以上〃 | |
+3 | AIR35回以上〃 | |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 (2021/8/5以降では未登場) | ||
+4 | AIR30回以上〃 | |
+5 | AIR25回以上〃 | |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 (PARADISE以降では未登場) | ||
+6 | AIR20回以上〃 | |
+7 | AIR18回以上〃 | |
+8 | AIR16回以上〃 | |
理論値:不定(譜面依存) |
所有キャラ【 ソラマチ・メメ / 黒亀 北斗(1,5,10) / 新田 ちえ(1,5) 】
- 「ゲージブースト+7の理論値(99,000)を超える」「6本(102,000)に到達する」場合に、ゲージ全体の何%を消化するまでに回数を使い切ればよいか、それに初期の増加量(160%)を加味するとどれだけのゲージ量になるかの一覧。
- こう書くと分かりにくいが、要するに「回数を使い切った時にほとんどMISSしておらず、その時のゲージ量が一番右の欄の値より少なければ目標達成できる可能性が高い」ということである。
目標 | ゲージ割合 | 増加量加味 |
---|---|---|
ゲジブ+7超え | 83.33% | 79996(4本+99.98%) |
6本到達 | 66.66% | 63993(4本+19.97%) |
特定のノーツや評価で一定以上成功すると、効果が強化されるスキル。
スキルの分類は基本的に、対象が評価であれば[TECHNICAL]、TAP、または元の上昇率が高いのであれば[NORMAL]、それ以外、あるいは他のノーツの比重が高ければ[TARGET]。一部例外あり。
スキル名 | 上昇率(初期/強化後) ノルマ(対象:回数) 上昇率以外の効果 |
---|---|
[NORMAL] | |
ゲージブースト・エアー+8 | 160%/190% AIR:16回 ※汎用スキル |
無双風神+3 | 100%/150%~300% AIR:50回x4(4段階強化) 軽減率:0%/50%~80% |
盛るぜぇ~超盛るぜぇ~+3 | 140%/180% TAP+ダメージ:90回 |
ゲージブースト・ スタープラス+5 | 160%/180% ExTAP:10回 ※汎用スキル |
スターストリーム+3 | 140%/210% AIR:40回 |
新世紀中学生+11 | 100%/214% JCx3+J=999 |
疲労回復のために、 ジョギングして 行きましょう+3 | 160%/190% TAP+ダメージ:60回 |
[TARGET] | |
【踊ってみた】サウンド プレイヤー【渋沢 ノノ】+1 | 100%/200% TAP+ExTAPx3+ FLICKx5=365 SS=終了ボーナス+2525 |
きんいろの日々+4 | 130%/180% ExTAP:5回 |
虎と竜+3 | 140%/180% ExTAP+HOLD:90回 |
あみたん+3 | 140%/180% SLIDE+FLICK:90回 |
バーピーで全身を まんべんなく トレーニング!+3 | 160%/190% ExTAP+HOLD:60回 |
階段上りは、 いいトレーニングに なるんだぜ!+3 | 160%/190% SLIDE+FLICK:60回 |
木登りは、とっても優秀な トレーニングなんです!+3 | 160%/190% AIR:20回 |
[TECHNICAL] | |
あの日見た花の名前を 僕達はまだ知らない。+5 | 100%/220% JCx3+J=999 |
劇団ひととせ+11 | 100%/225% JCx3+J=999 |
- 秘めたる熱情 [NORMAL] ※専用スキル
- 条件付きのゲージ上昇率増加スキル。ゲージブースト・プラスの亜種で、MISS10回以上のダメージ軽減がなくなった代わりに上昇量が増加している。
- ゲージブースト・プラスが既に微妙な立ち位置なので、このスキルも同じく苦しい性能と言わざるを得ないか。
- 新田 ちえ/七夕の願いは装備できない。
GRADE | 効果 |
---|---|
初期値 | MISS10回未満の時、 ゲージ上昇UP (190%) |
+1 | 〃 (200%) |
理論値:120000(6本+18000/24k) |
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | Ep.1 | Ep.2 | Ep.3 | スキル | |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
Ep.4 | Ep.5 | Ep.6 | Ep.7 | スキル | |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
Ep.8 | Ep.9 | Ep.10 | Ep.11 | スキル | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
高校3年生の新田ちえは町に流れる小さな川の近くを訪れていた。
ちえは、寂しげにゆっくりと、それでも確実に流れていく川の水と、自分が過ごした一年間の出来事を重ねていた。
「くだらない」
ぼそりと、ちえは呟く。
大切だったはずのヘッドフォン。
大切だったはずの想い出。
大切だったはずの人への想い。
ちえは全てを投げ捨てるつもりで、この川へとやってきた。
もうすぐ3年生が終わる。
なにもかもが始まって、なにもかも終わってしまった一年間が終わる。
「もう、どうでもいい」
ちえはただひたすらに、速やかに、この町を出たかった。
誰も新田ちえを知らない場所へ、行きたかった。
なぜなら、もうこの町に、新田ちえの居場所はなくなってしまったのだから。
新田ちえには想い人がいた。
だが、誰よりも大切なその人にちえは受け入れてもらえなかったのだ。
確固たる拒絶を受け、七色に輝いていたちえの世界は一気に色あせていった。
「色が……消えてく。なにもかも、灰色になっていく……」
想い人からの拒絶は、ちえにとって世界から拒絶だった。
何十億といった人々が生きるこの色鮮やかな星で、ちえはたった一人になってしまったのだ。
「心が、渇く……。もう、二度と、潤わない……」
ちえは虚空に言葉を紡ぐ。
事実なにが起ころうと、ちえは孤独のままだった。
予備校で同じクラスの男子から告白されても、珍しくクラスの子から親切にされても、成績を先生に褒められようとも、ちえの心の渇きが潤うことはなかった。
「きっと、私はあの時に一度死んだんだ。それなら、今の私は幽霊みたいなものか」
自嘲を込めて、ちえは呟く。
そして、全てから耳を塞ぐように、ちえはヘッドフォンをつけるのだった。
ちえには、たった一人だけ、親友がいた。
それは、クラスの人気者である藤田優美だ。
ちえは優美を心から信頼し、尊敬していた。優美も同じように、ちえに友愛を感じていた。
だが、高校に入ってからすぐに二人は親友の関係であったわけではない。
3年生のある日を境に、二人の仲は急激に縮まったのだ。
それまでは二人は対極といっていい存在であった。
優美はクラスだけでなく、学校中の者から信頼されており、男子からはマドンナとして扱われ、女子からは裏表のない性格だと評され、常にグループの中心にいた。
それとは真逆に、ちえは男子と女子から共に、物静かで関わり辛い子であると評され、常にグループの外で、孤独に過ごしていた。
人見知りで引っ込み思案だったというのもあるが、そもそもあまり人と話すことが得意ではなかったため、ちえにとって、別段その境遇は苦ではなかった。
だけど、そんなちえを気遣ってか、事あるごとに優美は優しく接してくれていた。
最初は優美の接触に対し、困惑するちえだったが、次第に心を開き始める。
「優美ともっとちゃんと話したいな……」
いつしか、ちえはそんなことを思うようになっていた。
ある日の放課後。
ちえはいつものように、CDショップを訪れていた。
今日はちえが気に入ってるバンドのCDが発売される日であり、朝からちえはCDを買うことを楽しみにしていたのだ。
ちえは心を躍らせてお目当ての棚へと向かった。
すると、そこには優美の姿があった。
「え、あれ……藤田、さん?」
困惑が言葉となってちえの口から零れ落ちる。
耳に届いてしまったのか、優美がふと、振り返る。
「あれ、ちえ?」
「藤田……さん……」
「やだな、よそよそしい。クラスメイトなんだし、呼び捨てでいいよ」
「えと、はい……」
「……あれ? もしかしてちえも、このバンドのCD買いに来た?」
「えと、そう、だけど……あなたも?」
おずおずとちえが尋ねると、優美は笑顔で頷いた。
「このバンド、マイナーだけど、すごく心地いい音で心に響くんだよね」
「っ! そう、そうなの……! 落ち着くメロディで、雨の日とか雪の日とかに聞くと、すごく落ち着くの……」
「驚いた。ちえも、私と同じ聞き方してるんだね」
「藤田……あっ、えと、優美……さん、も?」
「もう、まだよそよそしい。優美でいいよ!ゆ・み!」
「あ、えと……優美……ちゃん」
「……ま、それでもいっか。ちえ、もっとこのバンドの話しようよ!クラスに語れるヤツいなくて、退屈してたんだ♪」
「う、うん! 私でよければ……!」
この日の出来事をきっかけに、ちえと優美はどんどんと親しくなっていくのだった。
一人は気楽でいい。孤独でいい。そう思い続けていたちえの生活は、優美と親しくなってから劇的に変わり始めていた。
モノクロで下書きされた心に、色とりどりの絵の具が塗られていき、気が付けば、ちえの心は鮮やかに輝かしいものとなっていた。
いつしか、ちえは常に優美と一緒に過ごし、LIVEを一緒に見に行ったり、買い物に行ったり、お泊り会をするほどの関係になっていた。
そしてある日、いつものようにLIVEを楽しんだ2人は帰り道にカフェへと立ち寄って、感想会を開いていた。
「はー、やっぱナマで聞くと全然違うね」
「うん……! 最高だった……!何度聞いても飽きないし、またすぐに行きたいぐらいだよ」
「ふふふ、ご満悦だね~。それじゃ私がもっと喜ばせてあげちゃおっかな?」
「え?」
優美の言葉に首を傾げるちえ。
優美はコミカルに笑いながら、もったいぶった動きで鞄から可愛らしく包装された箱を取り出す。
「じゃーん♪ 誕生日、おめでとう! ちえ♪」
「えっ!? お、憶えててくれたの……?」
「親友だもん。当然でしょ?」
「しん、ゆう……えへ、えへへ……」
「ほら、可愛く笑ってないで開けてごらんよ」
「うん……あっ! これ、優美と同じヘッドフォン!」
「ふふふ、お揃いにしちゃった。……親友の証にね♪」
「……」
「あ、あれ!? 気に入らなかった!?」
戸惑う優美に対し、ちえは首を横に振った。
「……違うの。本当に、嬉しくて……言葉が、出なくて……ありがとう、優美……」
「ふふふ、どういたしまして♪」
生まれて初めて溢す、温かく優しい涙を拭い、ちえは微笑むのだった。
唯一無二の親友のおかげで、人生に幸せを見出したちえ。
ところが、ちえの幸せは長くは続かなかった。
突然、優美に異変が起きたのだ。
具体的には、LIVEを一緒に見に行ってくれなくなったり、買い物やお泊り会も頻繁に断られるようになってしまっていた。
戸惑うちえは勇気を振り絞って、優美に理由を尋ねた。
「わ、私のこと……嫌いに、なっちゃった……?」
「ち、違うよっ! 違うのちえ! ごめんね、最近全然一緒に居てあげられなくて……。ただ、ね。その、言いづらいんだけど、私、恋……しちゃったみたいで」
「こ、恋!?」
「バイト先で知り合った大学生の人なんだけど、すっごくかっこよくて、タイプなんだぁ!それでね、彼とよく一緒に出掛けることが多くなっちゃって……」
「そ、そう、なんだ……」
「ね、もしよかったら恋愛相談、乗ってくれない?私、こういうの慣れてなくて……。親友のちえしか頼れないんだよ~」
一瞬、ちえは断りたいと思った。
けれど、優美の『親友』という言葉を聞いては、首を横には触れなかった。
そして何よりも、拒否したら優美がもっと遠くへ行ってしまう気がした。それが恐ろしくて、ちえは自分の感情に嘘をついた。
「私で良ければ相談に乗るよ。親友だもん」
「わぁ! ありがとうちえ! 大好きっ!」
ざくりと聞こえるはずのない肉を抉る音が聞こえた。それは幻聴だったのだろう。だけど、確かにちえは自分の胸からその音を聞いた。
(……私も、大好き、だよ……優美……)
しかし、ちえはやんわりと理解し始めていた。同じ大好きでもお互いに抱く想いが違うということに。
その日以降、優美はちえに恋愛相談をするようになった。
その度に胸が抉られていき、ちえはよく一人の時泣くようになった。
ざわざわと心がささくれ立ち、どうしようもない気持ちが涙となって溢れ出してしまうのだ。
「どうして?私、優美には誰よりも幸せになって欲しいのに……」
しばらくして、ちえは確信を抱いた。
「私も、優美が大好き……そう、大好き。誰かに、取られたくないほど、大好き……」
ちえは優美に、友情より強い想いを抱いていた。ちえは優美に恋心を抱いていたのだ。
「でもこんな想い、優美には伝えられない。……どうしよう」
心のモヤモヤは消えず、悪戯に時だけが過ぎていくのだった……。
その後も、ちえは優美の望むままに恋愛相談に乗っていた。
大好きな親友のためにちえは心にモヤモヤを抱えながらも熱心に相談に乗っていく。
そうしていくうちに、ついに運命の日がやってきてしまう。
その日、優美はいつも以上に上機嫌であった。
頬を染め、浮かれた様子を見せる優美に、ちえは心がより一層ざわつくのを感じた。
「ちえっ! ちえっ!」
やめて――。
「聞いてっ! 聞いてっ!」
聞きたくない――。
「あのね、告白したら、なんとOK! 貰えちゃったの!」
ああ、ああ――。
聞こえるはずのない、胸の肉を抉る音は鳴り止んだ。その代わり、ちえは何かが砕け散っていく音を耳にした。
「……ち、ちえ? 大丈夫?」
「……だ、大丈夫。その嬉しくて……優美の、恋が叶って……心から、嬉しくて……」
ポロリ、ポロリと、冷たく、寂しい雫が瞳から零れ出した。
「もう、ちえが泣くことないのに!本当に、ありがとうね、ちえ……!」
砕け散った心を親友に悟られぬよう、ちえは空虚な笑みを浮かべた。
「ううん、お礼なんて言わなくていいよ。おめでとう、優美」
微塵も思っていない祝福が、ポロポロと口から出ていく。
(……優美が幸せなら、それでいいの)
ちえは必死に自分に言い聞かせていた。その想いに嘘はなかった。
確かに、ちえは深く傷ついていた。
だが、ちえは全てを諦めることで、悲しいが美しい初恋の思い出として受け入れようとしていたのだ。
……この時は、まだ。
しばらくして、優美はちえに彼氏を紹介してきたのだ。
軽薄そうな男を見て、ちえは目を疑った。
川越泊と名乗った男は確かに、優美の話の通り、一見カッコよく見える。しかし、一目見て、ちえは川越の本質に気が付いてしまった。
(……胡散臭い)
それは、単に嫉妬の炎によって歪められた感情だけではない。
優美と出会うまで、幼い頃から人の目を伺い、孤独に生きてきたちえは、人を見る目が鋭くなっていたのだ。
(あの男……、絶対優美を騙してる!!優美を守らなきゃ!)
一度は封じようとしたはずの想いが開かれ、ちえは暴走を始めてしまう。
優美の彼氏の川越に胡散臭さを感じ取ったちえは、優美に無断で、川越の素性を調べ始めていた。
日に日にその行為はエスカレートしていき、ついに川越をストーキングするようになっていたのだ。
すると、すぐに川越はボロを出した。なんと、不特定多数の女性と川越は付き合っていたのだ。
(信じられない! 優美がいるのに!優美の気持ちを弄んだの!?許せない……! 許せない……!!)
ちえは怒りに震えるが、このまま優美に事実を伝えても彼女は絶対に信じてくれないだろうと考えた。
(それなら……)
ある考えに至ったちえは、優美がいない場所で川越を呼び出した。
「川越、さん……」
「あれ、優美の親友の……ちえちゃん?」
「名前、憶えててくれたんですね。嬉しいな」
背中に虫唾が走るのを感じながら、ちえは必死に仮面をかぶり続けた。
「当たり前だよ。女の子の名前と顔は、一度会ったら絶対忘れないから」
(吐き気がする……。けど、優美を、優美を守るためだから!)
笑顔を引きつらせながら、ちえは必死に言葉を紡いだ。
「優美には本当に、悪いんだけど……その、一目見た時から川越さんのこと、忘れられなくて」
必死に紡ぎ出した言葉を聞き、川越は一瞬、目を見開いた。しかし、彼はしばらくして優しく微笑み、ちえの頭に手を優しく置いた。
「いいよ。それなら付き合おっか。ちえちゃんのこと、俺も好きだし」
躊躇する気配もなく、吐き出された軽薄な言葉にちえは怒り狂いそうになる。許されるなら、今すぐにでも殴り掛かりたかった。
だが、これもすべて優美を守るため。
ちえは自分にそう言い聞かせ、必死に喜んだふりをした。
こうして、ちえと川越はデートをすることになった。
川越とのデートは苦痛でしかなかったが、
それでもちえは優美のために耐え続けた。
拷問と差異のない時間を過ごしながら、ついに別れの時がやってきた。
別れを惜しむ演技をするちえに対し、川越は優しく囁いた。
「まだちえちゃんと居たいな……ねぇ、どうかな。夜、一緒に過ごさない?」
「……優美のことはいいの?付き合ってるんでしょう?」
川越は強引にちえの腰に手を回してきた。
「気にしなくていいよ。アイツとは、遊びだからさ。今日一緒に過ごして分かったよ。僕が大切にすべき人間はキミだって……」
軽薄な言葉を吐き続ける川越だが、途中であるものを見て、静止する。
そしてその顔から見る見る内に血の気が失せていく。
「ちえ……川越くん……?ね、ねぇ……これ、どういうこと……?」
川越の視線の先には、優美がいたのだ。
もちろん、これは全てちえの計画であった。ちえがこの時間に優美を呼び出していたのだ。
口で言ってもきっと川越の悪事をちえは信じない。それならば、現場を見せるしかない。確実に言い逃れができない決定的な現場を作るために、ちえは身体を張ったのだ。
そして、その計画は見事、成功したのだった。
「こ、これは! 違くて! なにかの間違いなんだ!は、話を――」
「最低っ!!」
見苦しく言い訳する川越の言葉に一切耳を貸さず、優美は彼の頬にビンタをした。
(いい気味よ……)
内心、ほくそ笑みながらその様子を眺めるちえは作戦が上手くいったことを心から喜んでいた。
ところが、次の瞬間、酷く後悔することになる。優美が涙ぐんだ瞳で、川越ではなく、ちえを思いきり睨みつけていたからだ。
「ゆ、優美……?」
「信じてたのに。親友だと思ってたのに……!!」
そう口にすると、優美は泣きながら駆け出した。
「違う、違うの、優美!!」
ちえは必死に優美の後を追う。
「待って! お願い、待ってよ、優美!」
ちえの呼びかけに、ようやく優美は足を止めた。
慌てて優美に弁明をしようとするちえだが、優美は一切言葉を聞き入れなかった。
怒りに燃える瞳で、優美はちえを睨みつけた。
「何考えてるの! 人の彼氏を奪うような真似して!それでも親友なの!?」
「ち、違うよ。私は優美を守ろうと――」
「ふざけないで!」
優美はあくまでもちえが川越を寝取ったと思い込んでいた。
よく考えれば当たり前だ。事情を一切知らずに、彼氏と親友の浮気の現場を目撃すれば、そう思うのが自然なのだから。
ちえは激しく後悔した。優美を守る。ただそれだけで動いてたため、簡単なことにも頭が回らなかったのだ。
しどろもどろになりながらも必死に弁明を続けるちえ。優美はそんなちえの頬を思いっきり叩いた。
「っ……!!」
「嫌いっ!! 大嫌いっ!!アンタなんか親友じゃない!!もう二度と、私に近づくなっ!!」
優美はお揃いのヘッドフォンを、親友の証を力任せに首からとると、思いっきり投げ捨てた。
(ああ、もう全部、終わっちゃった……)
去って行く親友だった、大好きだった少女の姿をただ、ちえはじっと眺めていた。
物理的な距離だけでなく、どんどんとちえの心から優美は離れていく。
そして優美の姿が完全に見えなくなった頃、優美は自分にとって、誰よりも遠い存在になってしまったのだと、ちえは実感する。
ちえの視界が涙で歪む。
それは焼けつくような頬の痛みのせいだけではなかった。
あれから半年が経過した頃、ちえは、再び孤独になっていた。
それどころか、学校中の全ての人間から嫌厭される存在となっていた。
それは『親友の彼氏を寝取った』とか『女性が好きだ』とか様々な噂が流れたせいである。
けれど、かけがえのないものを失い、全てに関心を無くしたちえにとって、どんなに悪評が流れようと関係はなかった。
ただ、単純にここではないどこか遠くへ行きたいだけであった。
「くだらない」
ぼそりと、ちえは呟く。
そして意味を無くしたヘッドフォンを首から外すと、ちえは川へとそれを投げ捨てた。
「さよなら」
ちえは川の流れのように、ゆっくりと、ただ確実と流れていった一年に別れを告げる。
(……私のことを受け入れてくれる人を探して、誰も知らない場所へ行こう)
そう決めたちえは、孤独に家路に帰るのだった。
チュウニズム大戦
レーベル | 難易度 | スコア | |
---|---|---|---|
スキル名/効果/備考 | |||
●リレイ | ADVANCED | 0 / 230 / 460 | |
テクニカルジャッジ(EXP、MASミス) | |||
次のプレイヤーのEXP、MASの COMBO/CHAINは、MISSとなる。 |
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チュウニズムな名無し
932022年02月02日 19:16 ID:p2ns43kr限界突破のボイスを聞いた時、少しうれしい気持ちになりました…。
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チュウニズムな名無し
922021年12月23日 10:50 ID:im3pgtu3クエストクリア時
「クエストクリア…」
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
902021年12月19日 13:50 ID:om6sidmg一通りまとめました
マップ選択
「マップを選択すれば?」
チケット選択
「チケットを選択すれば?」
コース選択
「コースを選択すれば?」
クラスエンブレム更新
「クラスエンブレムを更新したよ…」
ソート変更
「○○順でソートしたよ…」
コンティニュー?
「コンティニューするの?」
コンティニュー
「そう…」
終了
「シーユーネクストプレイ…」
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
882021年12月17日 16:47 ID:om6sidmgSSS「おめでとう…」
SS「心が、渇く……。もう、二度と、潤わない……」
S「きっと、私はあの時に一度死んだんだ。それなら、今の私は幽霊みたいなものか」
A~AAA「ああ、もう全部、終わっちゃった……」
B~BBB「いい気味よ……」
C「吐き気がする……。……胡散臭い」
D「色が……消えてく。なにもかも、灰色になっていく……」
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チュウニズムな名無し
872021年12月17日 16:46 ID:om6sidmg新田ちえのリザルトのセリフをまとめましたが…一応ワンクッションでツリーに書きます
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チュウニズムな名無し
862021年12月16日 23:42 ID:tihujpgkこの今にも死にそうなデュエルの声から本当に涙色メモリアできるんですか?無理じゃない?
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チュウニズムな名無し
852021年12月16日 10:42 ID:gi2fllk1デュエルのボイス、はっきり聞き取れたわけではないんですが
登場: なにもかもが始まって、なにもかも終わってしまった一年間が終わる。
撃破: ……私のことを受け入れてくれる人を探して、誰も知らない場所へ行こう
かな?
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チュウニズムな名無し
842021年12月10日 17:09 ID:m3maehlk軽い気持ちでマップアイコンにしたら自分で自分をズタズタに攻撃し始めて激しく後悔した