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【白猫】Wings of hearts 2 Story

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最終更新者:にゃん

開催日:2018/08/31





前回のイベント
Wings of hearts



目次


Story1 守護天使、潜む

Story2 支配と服従

Story3 依頼

Story4 エルゴラムの企み

Story5 あたたかい渇望



登場人物






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story1




(ササッ。)

(サササッ。)

(サササササッ。)


 ***


あとは、夕食の準備ね。

献立は何かいいかしら?

ちょっと、あんた!洗濯物を取り込まないと!

ああ、いけない!危ないところだった!

(……やっと、見つけた!)


 ***


「急に呼び立ててしまってごめんなさいね、ルカ。」

「何をおっしゃいます!女神さまの招集とあらば、いつだって駆けつけますよ!

して、話とは!?」

「エルゴラムの件です。」

「……何か、動きがあったのですか?」

「……あなたは当事者でしたから、彼のことはよく知っていると思いますが……

記憶を整理する意味でも、まずは最初から振り返ってみましょう。」

「わかりました。」

「悪魔の国――<サタニアス地方>。悪魔の中でも過激派と言われる者達が住む島です。

火種をまき、人間同士を争わせ、悪魔の存在を誇示しようとする者たち……」

「……とても、危険な悪魔たちです。」

「ええ。そして、彼らを指揮しているのが――」

「……エルゴラム。」

「彼は自身を『中間管理職』と称していますが、サタニアスの実質的な支配者であることは間違いありません。

エルゴラムにはある計画がありました。サタニアス最強の悪魔――

<悪魔殺し>レインを使い、争いの火種をまこうというものです。

標的となった少年を、守らねばなりません。その任に、あなたは志願してくれましたね。」

「守護天使である私が適任だと思っていましたから。」

「そして……

見事、あなたは口ニー君を守ってくれました。」

「レインも、ですよ。」

「その後しばらくは、エルゴラムの動きに変化は見られなかったようなのですが……」

「また、悪だくみをしていると?」

「彼は、サタニアスに人間を集めているようなのです。」

「人間を?どういうことですか?」

「わかっているのは、貧しい者を受け入れ、集団生活をさせているということだけ……」

「集団生活……ですか。」

「そこであなたにお願いがあります。その詳細を、あなたに調べてほしいのです。」

「と、いうことは――」

「あなたにはサタニアスに潜入してもらう事になります。

……とても危険な任務となります。もし、自信がないなら――」

「…………

いいえ、やりますよ。エルゴラムは、因縁の相手。

アイツがよからめ事を考えているのなら。それを止めるのは、わたしの仕事です!」

「……ありがとう、ルカ。」

よおぉぉぉし!燃えてきたあぁーー!

このルカ・フォルティス、必ずや賜った使命をまっとうしてみせます!

……あ!いざという時はどうしましょう?」

「あなたの拳は、守護魔法より強力でしょう?」

そうですね!愛と勇気の鉄拳制裁!やったりますよー!


 ***


(エルゴラム……いったい、なにを……)


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story2 支配と服従


旦那さん、また痩せたみたいだけど、ちゃんと食べてるのかい?

え、ええ……少なくとも、家ではちゃんと……

(この広さ、家の数……村としては、かなり大きい)

火山での仕事なんて大変だからねえ。いくら食べても、細くなっちゃうのかねえ。

(男の人は……あそこで働いているのか)

<ルカは遠くにそびえる火山を見つめた。>

(サタニアスの中心部、火山帯<ヴォルカナ>……)

……やっぱり、食料の配給、少なすぎると思いませんか?

贅沢いっちゃいけないよ。あたしたちのような住む家もない貧しい者を、エルゴラム様は救ってくださったんだ。

(……何ですって?)

寝床と食料があるだけ、感謝しなきゃいけないよ。

で、でも……やっぱり、おかしいですよ。

そこまでだ。誰が聞いてるかわからないからね。

…………


…………

……



<ルカは辺りが暗くなるのを待ち――

<ヴォルカナ>に潜り込んだ。>

(エルゴラムが、人間を助けている?……そんなこと、あるはずがない)

(確かに、ここで働いているようですね)

<男たちは、何やらもくもくと作業している――>

(……何をしているのでしょう?)

みなさ~ん。ビシバシ働いてますか~。

労働は人間の喜びです。たくさん働いて、たくさん喜びましょう。

(エルゴラム……!)

挨拶!

「「「お疲れさまです、エルゴラム様!」」」

はい、お疲れさま。……君、ちょっといい?

は、はい。

さっき、サボってたよね?

えっ?

一瞬だけどさ、手が止まってたよね?

そ、そんなことないです……

あるよあるある。だってぼく、見てたもん。仕事しないで、居眠りしてたもん。

…………

してたよねえぇぇぇぇ?

……ほ、ほんの一瞬だけ……

そうだよね~。……じゃ、目が覚めるよう、お仕置きしてあげようかな。

……へっ?

(……お仕置き?)

ちょ、ちょっと待ってください!

頼むよ。

承知いたしました。

ご、ごめんなさい!許してください!

手と足、どっちかいい?

ヒッ……!許してくださいぃ――!

(な……なにを!)

手だな。おいお前ら、押さえとけ。

やめてください!やめて!やめてくれ!

さん……にい……

(……まさか!)

いいかい?次サボったら、ブチ殺しちゃうよ?

いち――

うわあぁぁぁぁぁぁ!いやだぁぁぁぁぁぁぁー!

やめんかあぁぁぁぁぁーーーーっ!

……あ。

おっ、クソ天使ちゃんだ。

ずいぶんと、遅かったじゃないの。



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story3 依頼


…………

まさか、クソ天使の上司に呼び出しを食らうとはな。

応じていただいた事、感謝します。

前置きはいい。俺に何の用だ。

ルカの事です。

あ?


 ***


あいつ、んな面白れーことしてたのか。

で?エルゴラムの目的はわかったのか?

……ルカが、まだ戻らないのです。

偵察に手間取ってんじゃねーのか。

もしくはヘマして捕まっちまったとかだな。つーか多分ソレだ。

……そこで、あなたにお願いがあります。

あの子を助け出してくれませんか?

……そうくると思ったぜ。

あなたにしか、頼めないのです。

俺がサタニアス生まれだからか?いっとくが、俺は追放されてんだ。

周りが全員敵なのは変わらねえ。有利ってわけじゃねえぞ。

でも、地理には詳しいでしょう?引き受けて、くれますね?

ずいぶんと強引だな?

あなたの心は、すでに決まっているはずです。

……チッ。いけすかねえクソ神が。

お願いします。あの子は、私にとって娘も同然……

それに、あなたにとっても、ルカは大事なパートナーでしょう?

……フン。

おいクソ神。勘違いするなよ。

俺はエルゴラムに捕まったクソ天使を笑いに行くんだからな。

……ありがとうございます。

出発は明朝だ。

今すぐ行かないのですか?

エルゴラムは前よりも力をつけている。俺にはわかる。

ヤツと戦う事になれば、それなりの準備がいる。

ぶっちゃけ、それが一番楽しみなんだよ……!




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story4 エルゴラムの企み


おらあぁぁぁぁーーーーー!

いい加減、諦めたらどうだ。

壊れらあぁぁぁーーーー!

いやあ、精が出るね。

エルゴラム様!

ちみの声、外まで聞こえてくるんだけど。うるさいんだけど。

いや、ホント諦めなよ。サタニアスで一番頑丈な監房なんだから。

ていやあぁぁぁぁぁーーーー!

ぼくらが人間の命を握ってるってこと、忘れてない?

……!

あの時、大人しく捕まってくれたのも、それがあったからでしょ。

この、卑怯者!

……あれえ?ごはん、食べてないの?ちみの大好きな握り飯だよ?

卑怯者がにぎった飯なんて、誰が食べるもんですか!

まあいいや。今日はね、君とその話をしようと思ってきたんだ。

……その話?握り飯?

ここにいる人間のことだよ。それを知りたくて来たんだろ?

…………

彼らは住む家すらないような、とっても貧しい人たちだったんだ。

いつ野垂れ死んでもおかしくなかった。だからぼくが声をかけて、ここへ連れてきた。

無理やりじゃないよ。すべて彼らが決断したことさ。

……今も、住民は増え続けているみたいだけど。

世界にはそんな人がたくさんいるからね。出来るだけ手を差し伸べてあげたいじゃない。

白々しいことを!

せやねー。

この……!

……ぼくはね、人間の感情を研究しているんだよ。

……研究?

君もさ、美味しい握り飯を作りたくて、色々と試行錯誤するでしょ?

お米の炊き方とか、握り方とか。それと同じだよ。

美味しい感情というのは、ぼくらにとって最高のエネルギーになるはずなんだ。

今はそうだね……熟成段階、といったところかな。

わけのわからないことを!

ちみも見ただろ?彼らの生活。

生かさず殺さず支配する――

あの子も立派な<悪魔殺し>になるだろうねえ~。あ~、楽しみだな~。

悪魔殺し……!?ちょっと、それどういうこと!?

あ、喋り過ぎちゃった。いまのオフレコでシクヨロ~。

それから、今度その檻から逃げようとしたら――

村の人間、毎日一人ずつ殺してくから。

!!

だから大人しくしててね、クソ天使ちゃん。

…………

『わかりました』だろ?ちゃっちゃと返事しろや!

……はい。わかりました。

クソ天使を屈服させるのは楽しいねえ。おじさん、興奮してきちゃったよおぉぉ。

(くっそぉ……!)

じゃ、引き続き監視頼むよ。

承知しました。

待って。……一つだけ、聞いてもいい?

どうして君が来ることがわかっていたか、でしょ?そりゃわかるよ。

ロニー君の時だって、君はすっ飛んできたんだ。これだけの大きな動き、気づかれないはずがないもの。

ぼく、そんなにバカじゃないよ?

……ちっくしょおぉぉぉ!


…………

……ん?

ここで何をしている、シルヴィア。さっさと持ち場に戻れ。

あの……

あなたは……?

……ごめん、なさい。


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story5 あたたかい渇望



<私はずっと、一人だった。>


「おい、聞いたか?シルヴィアのこと。」

「ああ。また島から出て行くらしいな。」


<ここサタニアスで、ずっと一人で、暮らしてきた。>



「お、うわさをすれば。」

「…………」

「……んだよ、その目は。」

「なにが、いけないんでしょうか……」

「あ?」

「わ、私のなにが、悪いんですか……!」

<ドンッ!>

「きゃあ!?」

「悪ィに決まってんだろうがよ!えぇ!?」


私は、周りの悪魔と、考え方が違っていた。


「人間を利用するのが悪魔だろうが。それをお前は何だ?

役に立ちたい?仲良くしたい?

反吐が出る!」

「や、やめてください……!」

「まあ仕方ねえやな。まだガキなんだ。

んなクソみたいな考えになっても仕方ねえよ。」

「……私たちが生きられるのは、人間が信じてくれるからです。私は、彼らにお礼をしたいだけ。それの、なにがいけないんで――」

「うるせぇ!」

<ガンッ!>


「さっさと島を出てけ。テメーはサタニアスにいる資格なんかねえ。」

「ま、出てったところで、弱っちいお前が人を助けるなんて、土台無理な話だがな。」

「う、うぅ……」


<家の窓いっぱいに広がる水平線。私はその向こう側の世界を、いつも渇望していた。>


「…………

あの悪魔たちのいうことも、一理ある……よね。

また、あの時みたいなことになったら……」

「今度は、大丈夫かもしれないよ?」

「!」

「初めまして、シルヴィアちゃん。」

「あ、あなたは……エルゴラム様!?」

「いきなり訪ねちゃってゴメンね。間にあってよかったよ。

君がサタニアスを出て行くと聞いて、飛んできたんだ。」

「ど、どうして、私のことを……」

「失礼だよね。さっきのヤツら。」

「え……」

「君の価値を、何もわかっちゃいないんだもの。」


<首が二つ、シルヴィアの部屋に転がった。>


「きゃあぁぁぁっ!」

「クズどもはこの通りクビにしたから、安心して。」

「あ……うぅ……」

「怖がらなくていいよ~。ぼくは、君の味方なんだから。

――人間の役に立ちたいんだろ?」

「…………!」

「君にぴったりの仕事がある。おじさんの話、聞いてくれるかい?」


<そしていま、私は――>


……みなさん。本日分の配給です。一列に並んでください。

……あれ?あ、あのう。昨日より、少なくなってる気が……

オメーのダンナ、仕事をサボりやがってな。これはその罰だ。

……ごめんなさい。

こ、これっぽっちで、どうやって――

(ちょっと!)

……あ!いえ、なんでもないです……

(ごめんなさい――!)

よし、行き渡ったな?仕事に戻れ。

「「「…………」」」

(どうして……こんなことに……)


 ***


ねーねー悪魔さん。なんか、島が見えてきたよ?

あれがサタニアスだ。

おー、でっかいぞー!まんなかに火山がある!こりゃー暑そうだぜい!

あたしが住む村、ここから見えるかなー!

…………

きゃっ!い、いた~い!なんでなぐるの!?

お前、なんかムカつくな。

ひどーい!


 ***


懐かしいな。

待ってろよ、エルゴラム。今度こそ、テメーをブチのめしてやるからよ。

…………

その前に、やることやんねーとな。



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