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土呂城 ゆい

最終更新日時 :
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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常ヴィラン・コスチューム

Illustrator:赤城あさひと


名前土呂城 ゆい(とろしろ ゆい)
年齢15歳
職業JK/コスプレイヤー(自称)
  • 2021年11月4日追加
  • NEW ep.I - Side.Bマップ3(進行度1/NEW時点で55マス/累計75マス*1)課題曲「Crack」クリアで入手。
  • トランスフォーム*2することにより「土呂城 ゆい/ヴィラン・コスチューム」へと名前とグラフィックが変化する。

SNSへ自撮りをアップすることを生きがいとする少女。

とどまらない自己承認欲求がとある趣味へと目覚めさせるのだった。

もしかして:ユイ

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1勇気のしるし×5
5×1
10×5
15×1

include:共通スキル(NEW)


スキルinclude:勇気のしるし(NEW)


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ランクテーブル

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スキルスキル
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スキル
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スキル
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スキル

include:上位ランクテーブル仮置き

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STORY

EPISODE1 2.5次元の住人「ふひっ、ふひひ! またイーヨがついた! チヤホヤされるのって、最高~(はぁと)」

 ――アイドル。

 それは色んな人たちに夢を見せてくれる存在。

 キラキラとした衣装に、まぶしい笑顔、それなりに整った顔立ちに、ちょっとした天然さをアクセントに添えてあげれば、あっという間にほっこり空間に様変わり。

 口を開けばポジティブシンキングに満ちた言葉がこれでもかってくらいにあふれだす。

 例えば……今映ってるヤツとか。


 『――夢は追いかけ続ければいつか叶うって言うじゃないですか。私それを信じてるんですっ! だからみんなも素直になって! 憧れだけじゃない、夢を追いかけて欲しいと思いますっ! 夢は叶えるもの! ですよねっ! それでは聞いてください――』


 ふ……、

 ふひっ……、


 ――んな訳あるかぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!


 アイドルになれるのなんて、ほんの一握りよ!

 可愛くなくちゃチヤホヤされない。

 てへペロなんて、美少女以外はキモイだけ。

 イモくて凹凸のない体なんか見せたら、失笑されるに決まってる!

 そうよ、どーせわたしにはなんにもない!

 スタートラインなんて、みんな一緒じゃないし、生まれた時からビリなものはビリって決まってる!


 『動きだした心~♪ 止まらない~♪ 駆けて、駆けて、駆けろ~♪』


 ――ぁぁぁぁぁぁ! もぉぉぉぉぉ!


 「ドルソン聞いて、ほんの一瞬だけテンション上げて気持ちよくなったってさ、どーせ明日になったら全部忘れてるんだから。そんなので気持ちよくなったって、なんの意味もないんだっての!」


 ――プツン。


 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 わたしは殴りつけるようにテレビの電源を切った。

 危なかったぁ……もう少しでまたやらかしちゃうとこだったよ。


 「ほんと、アイドル続けるためによくそんな努力ができるよね。めちゃくちゃ努力してさ……そんなの、疲れるだけじゃん」


 ――でもさ。


 「……ふひっ」


 そんなわたしでも戦える場所があるのを、最近知ったんだよねぇ。


 「ふひっ、ひひっ! 今日もたくさんイーヨがついてるっ!」


 スマホで起ち上げたアプリに映ってるのは、俯瞰で接写した写真。

 顔は手で隠れてて、ぶかぶかなワイシャツを限界ギリギリまで下げて谷間を映してる。


 「ほらほら、早く反応して~~っ!」


 リアルは、チヤホヤされるヤツらだけが生き残れる戦場だ。どーせわたしみたいなのに居場所はない。


 「あっ、またイーヨがついた! これよ、これ!」


 そう!

 わたしは、きわどい写真をネットにアップするトイッター女子――『ゆーたん』として活動してる!


 「お、コメントきた! なになに……『ゆーたんの自撮り、ちょーヤバい! もっと見せて!』だって!」


 あぁ~、気持ちぃ~~♪

 こんな簡単にチヤホヤされるなんて、もう最高っ!


 今の時代に何が必要なのか分かってる?

 ふひっ、頭(ここ)よ、頭(ここ)!


 アイドルみたいに努力し続ける必要もない。

 歌もダンスも、カロリーを気にする必要もない!

 こんなお手軽に気持ちよくなれるんだよ、もう電子ドラッグみたいなものだよねぇ~?


 「はいきた~! またひとり釣れた! ふひひ、男ってほんとちょろ~い」


 この味を知っちゃったら、もう元には戻れない。

 ここでなら、わたしは戦える。

 たくさんチヤホヤされるんだ!

EPISODE2 コンプレックス・ガール「うるさいうるさいうるさい! ここだけがわたしの聖域なの! 顔が良いヤツが絡んでこないでよ!」

 「キタキター! アップしてそんな経ってないのに、もう30イーヨもついてる!」


 今日もわたしのトイッター女子活動――“トイカツ”アカウントには、たくさんのイーヨがついていた。

 このイーヨの数が増えてく瞬間が最高すぎて、何回もチェックしちゃうんだよねぇ。ふひ、また見ちゃった。


 『今日のゆーたんもカワイイよ!』

 『女神キターーッ!』

 「ふひっ! リアルのわたしがどんなのかも知らないくせに、本当~にちょろ~い」


 この瞬間だけ、わたしは女神になれる。


 「えーっと……『いっぱい褒めてくれたらぁ、わたしもっと頑張れちゃうかもぉ』はぁとはぁとはぁとっと」


 返信すると、すぐに反応が返ってくる。

 あぁ~、もう困っちゃうなぁ~♪

 ふひ、もっとよ。わたしを喜ばせる感想を頂戴!


 「ふひひっ、早く早く~……あっ、キタキタ! え~っと…………」


 ――はあぁぁぁぁ!?


 送られてきたコメントは、わたしが望むものとは正反対の罵詈雑言だった。


 『ハイハイ、加工乙』

 『君、現役JKなんだよね? こんな事して、親御さんが知ったらどう思うか分からないのかい? パパが相談に乗ってあげるよ?』

 『てかなんで顔ださないの? なりすましじゃないよな?』

 「な、なによ……これぇぇ!」


 うるさいうるさいうるさい! お前もお前もお前も! 即ブロックよ!

 わたしはね、そういうのは求めてないの。

 わたしが欲しいのは、わたしを褒め称える言葉だけなんだから!


 はぁ……もうホント最悪、沈んじゃった。


 「粘着されたらメンドイし、アカウントまた作り直そっかなぁ」


 閉じたアプリをもう一度起動して、アカウントの削除申請をしようとした矢先、「ピコン」とまた新しいコメントがついた。


 「ふん……どーせまたキモいコメントでしょ? 知ってる知ってる……でも、最後にもう一回だけ見てもいい、かな……いいよね……?」

 『ゆーたんさん、肌がきれいで素敵ですっ! スキンケアには何を使ってるんですか? 私は最近、地黒でも色白に見せてくれるクリームを愛用してて~、ゆーたんさんもどうですか? 私、ゆーたんさんならもっと素敵になれると思うんですっ!』


 コメントには手を合わせて祈るようなスタンプがびっしり並んでいる。

 更に読んでいくと、わたしの自撮りのダメ出しとか着てる服にまで長文お気持ちコメントがついていた。

 挙句の果てには、その女が自撮りしたっぽいコスプレ画像まで添付してくる始末。


 なんなのよ、これ――


 「――さい、うるさいうるさいうるさい! わたしの聖域を穢しに来るな! あんたなんか、どーせ顔が良いだけでチヤホヤされてイイ気になって、わたしみたいな奴にマウント取りにきてるだけなんだ! そうに決まってる!」


 お前も即ブロックよ! ふひっ!

 わたしから楽しみを奪わないでよね!

EPISODE3 イモい地味子とゲス野郎「わたしだって知ってる。男子がどんな目で見てるかなんて。でもさぁ、今更どーにもなんないでしょ?」

 週明けの月曜日。

 今週も、虚無の時間がやってくる。

 そう、学校に行く時間だ。


 「はぁ……やだな……」


 学校という閉鎖空間は、カースト最下位のわたしみたいなイモ女には逃げ場のないしんどい場所だ。

 下にいる奴はなんとかしてカーストの上に行こうとジタバタもがくか、上位の奴とつるんで自分の位置を確保しようとする。

 それに失敗した奴は、二度と這い上がれないドン底に落ちて、進級のクラス替え(ビッグドリーム)に望みを託すしかない。

 勿論わたしも、そんなビッグドリームを待っている側の人間だった。


 「――起立、礼」

 『ありがとうございました』

 「――でさぁ! 今回もマジやばくて!」


 1時間目の授業が終わった直後に、本日の虚無オブ虚無が顕現する。

 わたしの目の前の席は、カースト上位の男子たちが集まってぎゃんぎゃん喚き散らす場所。今日はいつにも増してやかましい。

 こいつら本当に脳みそ入ってる?

 ていうか、なんでいつもいつもわたしの前で騒ぐの!

 あーもうダメ、最初からこの手を使ったら絶対に茶化す奴が出てくるけど仕方ない。

 ここは、寝たフリでやり過ご――


 「なあ、今週の『ヒナ』のコス見てみ? めっちゃ可愛いぜ!」

 「それなー。あー俺もヒナみたいにカワイイコスプレ女子の彼女欲しーなー!」


 不意にわたしは、男子たちが話す「コスプレ」って単語が気になり、こっそり聞き耳を立てる。

 ゆっくり視線を向けると、男子たちは水着の女が表紙になっている雑誌を、舐め回すように見ていた。


 あの表紙の女が、コスプレイヤーの「ヒナ」?

 ま、まぁ確かに出るとこ出てるし、顔も嫉妬すら起きる気もないくらい整ってる。でも……。


 「ふん、ヒナって女も、どうせ顔とスタイルが良いだけでチヤホヤされて調子乗ってんでしょ……?」

 「は? おい、イモ! お前ヒナちゃんのことけなしてたよなぁ!?」

 「ふひっ!?」


 ビックリして起き上がると、ヒナのコスプレで盛り上がってた男子が全員、わたしを睨んでいた。


 「わ、わたしは、別に何も……」

 「俺も聞いたからなー? 黙ってりゃ済むとか思ってんのか? なんか言えよ、イモ!」


 机を叩いて脅かしといて、何か言い返せる雰囲気になるわけないで――


 ――バンッ!


 「ふひぃっ!」

 「ぶはは! なんだその笑い方。うけるー!」


 ゲラゲラゲラ。

 男子たちの猿みたいに高い声が反響する。


 「お前みたいなイモがなぁ、語ってんじゃねぇよ!」


 うるさい。


 「何か言いたそうじゃん。だったらお前もコスプレしてみるか? ヒナみたいにさぁ! あ、お前じゃできねーか!」


 うるさいうるさい。


 「悔しかったらヒナみたいなコスプレしてみろよ。ぜってー似合わねーけどな! ぶはは!」


 そんなの……分かってる。

 お前たちなんかに言われなくても、わたしは15年間ずっとわきまえて生きてきたんだよ!!


 「なんだよ、その眼。文句があんなら――」

 「オラー、余計なもん片付けろ。授業始めるぞー」

 「「「ういーす」」」


 何もなかったように席に戻っていく男子を睨んだまま、わたしは席を立った。


 「……ん、どうした土呂城?」

 「先生、わたし、帰ります」

 「お、おい?」

 「失礼します!!」


 わたしは先生の制止も聞かずに、教室を飛び出した。

 教室からは男子たちの笑い声が聞こえてくる。


 「…………ぅ……」


 きっと他の奴らも、今頃わたしのことを笑ってる。そうに違いない。

 わたしのカーストは、今日の出来事で最下位を独走したに決まってる。


 『悔しかったらヒナみたいなコスプレしてみろよ』


 なんで、なんで今あいつらの言葉を思い出すの。

 わたしの脳みそだったら、今思い出さなくちゃいけないのは、わたしをチヤホヤしてくれるトイカツのコメントだって分かるでしょ!?!?

 さっさと再生しなさいよぉぉぉぉ!!


 「うぐ……っ、あぁぁぁ! ああああああああ!!」


 学校なんて、大嫌いだ!

 リアルなんかクソくらえ!!

EPISODE4 そのモブ女子は恋をする「あれが……コスプレイヤーのヒナ……。そっか、きわどい衣装で攻めればわたしにも……」

 学校を早退したまでは良かったけど、こんな状態でお母さんと顔を合わせたくなかった。そもそもなんて説明すればいいかも分からない。

 結局わたしは、家にも帰らず街をブラブラと彷徨うハメになった。

 そうしてる内に、あれだけわたしの中で暴れ回っていた衝動も、今じゃすっかりしぼんでしまっている。


 「わたし……何してるんだろ……」


 気分が落ち込んだ時、いつもだったらトイカツの反応を追いまくるけど、今は何を読んでも虚しく感じてしまう。

 こんな気分で自撮りなんかしても、哀れな自分を想像しちゃって欲求を満たせない。


 「適当にゲーセン行こう……」


 この際だし、ずっと気になってた音ゲーに手を出してみようかな。

 そうしたら今の気分もどこかに行って、いつものわたしに戻れるかもしれないし。

 わたしはその足で、駅と正反対の繁華街に向かう。

 すると、ゲーセン近くの大きな公園から、何やら大きな歓声が飛び込んできた。


 「ん? なんだろ……今の声」


 せっかくだし、寄ってみようかな。

 そんな軽いノリで行ってみると。


 『――お集まりのみなさん、お待たせいたしました! いよいよ本日のゲスト“ドロッチの娘”こと、大人気コスプレイヤーのヒナさんをお呼びします!』


 その声に反応して、会場にまた大きな歓声が巻き起こっていく。

 空気を伝ってわたしの肌がピリピリ刺激されると、何故かわたしは小さい頃に見たアイドルの無銭ライブを思い出していた。

 そういえば、あの時はお母さんにせがんで連れて行ってもらったんだよね……。

 結局、会場は混んでてアイドルなんてほとんど見えなかったんだけどさ。

 あの頃のわたしは、努力していれば、いつかはきっと夢が叶うんだって本気で信じてたんだよね……あ~あ、バッカみたい。


 『――それではヒナさん、どうぞ!!』


 軽くトリップしていたわたしの意識は、会場に現れた人物へ向けられる歓声に引き戻された。

 ステージ上の電光掲示板には『ドロッチの娘役、コスプレイヤーヒナ』と書かれた文字が勢いよく踊っている。

 そして、ボルテージが最高潮に達したその瞬間に、彼女は現れた。


 「あ、あれが、コスプレイヤーのヒナ……」


 ボディラインがはっきりとした露出過多なラバースーツに目元を覆った黒い仮面。

 極めつけは手に持った長い鞭だった。

 それを使って観客を挑発する姿は、まるで正義のヒーローと敵対する悪の女幹部のよう。


 『“アタシ”の鞭の餌食になりたいのかい?』


 鞭を叩く音と共に、ヒナが決めポーズを取る。

 それだけでシャッター音が一斉に鳴り響く。

 音と光の洪水の中を泳ぐように舞うヒナの優雅さは、わたしの心を掴んで離さなかった。


 「ふ、ふひっ、そう、これだよ、これ……!」


 わたしに必要なのは、これだったんだ。

 悪の女幹部のコスプレ。

 あのきわどい衣装を纏えば、顔も良い感じに隠せるし攻めたポーズでたくさんイーヨがつくはず!

 もっと、もっともっともっと!

 わたしはトイッターのみんなから、もっとチヤホヤしてもらえるんだ! ふひひ!

EPISODE5 へんしーん!「こんなに満たされたのは初めて! え、待って、更に過激にすれば、もっとチヤホヤされるじゃん!」

 「ふひ、すごい、すごいよ! イーヨの数が今までと全っ然違う!」


 チヤホヤされるのを想像しながら完成させた、ドロッチ様のコスチューム。

 ボンテージっぽい服は中学の頃のスクール水着で代用した。サイズは合わなかったけど、真ん中を縦に切って露出を増やせたし、結果オーライよね。


 見様見真似で作った初めてのコスチュームは、至るところが切り貼りされてて、このままイベントに着ていったらきっと失笑されてしまう。


 でも、わたしの戦場はトイッター。

 だったら、戦う方法はいくらでもある!

 アイテープにコルセットに画像加工! それに加えてシリコンバストで胸を盛る!

 顔が見えない女幹部コスなら、いくらでも大胆になれるし、盛れるし、改造できる!


 「ふひひ! これが進化したわたしの自撮り! はあぁ~、イーヨの嵐が気持ちいぃ~!」


 こんなに心が満たされたのは初めてだった。

 身体中に湧き上がる高揚感と、モブ男から送られる賞賛のコメント。

 こんなわたしでも、大量に男を釣れるんだ。

 なら、もっと過激に、もっと大胆に! 

 ギリギリのラインを攻めていけば、フォロワーの数だってバンバン増えるに違いない!


 露出をあげて肌面積で殴る! 

 これよ! これだわぁ~!

EPISODE6 モブカメコのピラミッド「わたしに触れていいのは、イケメンだけだから! モブがわたしに話しかけるんじゃない!」

 日に日に増してく賞賛のコメントに、すっかり気分が上がったわたしは、お小遣いを崩して衣装を改良した。

 改良する度に増えてくフォロワー数と、モブ男たちが送ってくる下心丸見えの子供じみた感想文。

 そこをちょこっと突っついてあげるだけで、モブ男は尻尾を振って喜ぶから、トイッターの世界は本当にちょろい。


 『おはよう、世界(はぁと)』


 ふひっ。ちょっとドロッチ様の台詞を真似ただけで、100イーヨもついちゃった。


 「今度はどんな煽り方で、モブ男たちを手玉にとってあげようかなぁ?」


 そんな毎日を送り、すっかり有頂天になっていたわたしは、ふと思い立つ。


 今のわたしなら、コスイベに行っても注目を浴び続けられるんじゃないかって。

 そう思った途端に、わたしはイベント参加の申請をしていた。


 ――イベント当日。

 わたしはコスプレ専用更衣室でささっとドロッチ様の衣装を纏って、会場に向かった。

 イベントの規模は思ってたより小さかったけど、撮影会に力を入れてるイベントみたいで、いろんなところで撮影してる人たちがいる。


 「ふひっ、絶対成功させてやるんだから」


 今のわたしは、土呂城ゆいであって土呂城ゆいではない。そう、わたしは今、ドロッチ様なんだ!


 「ふひっ、ねぇ、そこのお兄さん! わたしの写真を撮ってみない?」

 「えっ、ぼ、ボク?」

 「ええ、そうよ。ボクくんに言ってるのぉ~」


 ウインクした後に、自撮りで鍛えた必殺のアングルを添える。

 それだけで、モブカメコは犬みたいについて来た。

 更に続けて何人も誘惑して、いよいよ撮影会。

 大胆なポーズをバンバン決めるだけで、モブカメコが次から次へと寄ってくる。

 そしてわたしは、あっという間にたくさんのモブカメコに囲まれていた。


 「――あはっ」


 あぁ~! これ、これよぉ~~!

 トイッターだけじゃ得られないリアルな興奮!

 シャッター音がするたびに、わたしの心が満たされていくのを感じる!

 さぁモブカメコたち! もっとわたしを撮りなさい!


 「――あ、あの、ちょっといいかな」

 「はぁ、撮影会してるんで後にしてくれますかぁ?」


 突然わたしの前に乱入してきたのは、カメコじゃないそこらへんにいそうなオタクAだった。


 「あ、あの、ド、ドロッチ様は! そんなはしたないポーズは取らないんだな!」

 「はい? セクシーな女幹部なんだから、過激なポーズ取るのが普通じゃないんですかぁ? それにぃ、好き勝手やるのがコスでしょ? わたし、何か間違ったこと言ってますぅ?」

 「そ、そんな喋り方もしないんだな! ドロッチ様の一人称も守れないようなニワカが、ドロッチ様のコスをするんじゃない! 同じレイヤーでも、ヒナちゃんはそういうとこにも気を配ってコスやってるんだな!!」


 言いたいことだけまくし立てて、モブオタクは去っていった。はぁ……すっかり場がしらけちゃったよ。

 気を取り直して、わたしはモブカメコたちに微笑む。


 「ご、ごめんなさ~い。それじゃ撮影再開を――」

 「……俺もなんか違うって思ってたんだよなぁ。ドロッチ様はプライドが高くて、こんな格好を進んでするようなキャラクターじゃないんだよな」

 「あーやっぱそこだよな。分かるわ」


 ――は? ずっと過激なコスを接写してたモブのくせに、何を光のオタクぶったこと言ってるの!?


 あのオタクの声が、どんどんモブカメコたちの中に伝播していく。次第にわたしを取り囲んでいたカメコは数えるくらいに減ってしまっていた。


 「なんなの!? モブが調子に乗って偉そうに! ほら、そこのモブ! さっさとわたしを撮ってよ!!」


 これでもかってくらいのポーズを決めてあげたっていうのに。


 「……あー、こんなのドロッチ様じゃないわ」

 「冷めた冷めた」

 「え、えっ?」


 そして……オタクはいなくなった。

 なんでわたしがこんな目にあわなきゃいけないの!?


 ――

 ――――


 「……信じらんない」


 逃げるようにイベント会場を出たわたしは、衣装をつめたカートをガラガラと引っ張っていた。

 カートはわたしの心情を肩代わりしてるかのようにずっしりとした存在感を放つ。


 「――キミ」


 やっぱ、リアルはクソだ。


 「――ねえってば」


 わたしをチヤホヤしてくれるのはトイッターだけ。

 今回はそれを改めて実感させられた。


 「はぁ」

 「ねぇ、キミ!」

 「ぴ、ぴぎゃっ!?」


 き、急に横から飛び出してくるなんて、こいつ、何様のつも、り――!?


 「あれ、おーい、聞こえてる?」

 「あ、えっと、なんですか!?」


 突然目の前に現れたのは、思わず見惚れちゃうくらいのイケメンだった。


 「キミ、さっきドロッチ様のコスしてた子だよね? 背格好が同じだったから、もしかしてと思ってさ」

 「そ、そう、ですね……」

 「ほんと? よかった~当たってて!」


 くしゃっとした、イケメンのほほ笑み。

 その途端、周りの温度が急激に跳ね上がったような感覚に陥る。

 イケメンと会話する度に、体温がぎゅんぎゅんと上昇していく。ううん、それだけじゃない!

 このわたしが! こんな至近距離で!

 イケメンと同じ空気を吸ってても許されるなんて!

 し、信じられない! あぁ~生きててよかったぁ~!


 「それでね、せっかくだから一緒に写真を撮らせて欲しいなぁなんて思ってさ」

 「い、いいんですか? じゃあ今すぐ着替えて……」

 「僕は、そのままの君と撮ってもいいんだけどね」

 「で、でも、素のわたしはイモっぽいので……」

 「そんなことないと思うよ? 普通に可愛いと思うしね」

 「か、かわ――!?」


 ――それからのことは、あまり覚えていない。

 わたしはイケメンに言われるまま、連絡先を交換して一緒に写真を撮ったことまでは覚えてる。

 ただひとつ言えるのは、モブ男からしょーもないコメントをもらうよりも、モブカメコに囲まれながら撮影されるよりも、イケメンの口からただ一言囁かれた「かわいい」の方が、何百倍も気分がよかったってこと。

 これが、リアルでしか味わえない、真実のチヤホヤ!

 こぉ~んなに気持ちよかったんだぁ~!

EPISODE7 コスプレ炎上凸大会「は? わたしのアカウント、炎上して、りゅ……? ヒッ……、ふひっ、ふひひひひ――」

 初めてのコスイベで、こんな簡単にイケメンとお近づきになれるなんて凄くない? あーどうしよー! 今度デートに誘われちゃったらぁ! あんなイケメンとデートできるなんて、もう勝ち組じゃない?

 これがJKパワーってヤツ? ふひ、ふひひひ――


 「もうゆいちゃん? ご飯が冷めちゃうわよ。ちゃんとしっかり食べて、栄養たくさんつけなくちゃ。ほら、お替りは?」

 「あ、うんっ。お替り!」

 「良い食べっぷりだなぁ、ゆい。朝からゆいと一緒に食べられて、お父さんも嬉しいぞ! うんうん、イイ食べっぷりだ! ドンドン食べて、大きくなれよ!」


 久しぶりにわたしと一緒に食べるご飯が嬉しいのか、お母さんもお父さんもかなり機嫌がいい。

 ご飯を食べるだけで褒められるなんて思わないから、ついついいつもより食べすぎちゃう。

 でもまぁ、ちょっと太ったって問題ないよね!

 自撮りなら加工すればいいんだし!


 『――続いては、突如浮上したアキハバラについての続報です』


 その時、ふと適当に流していたニュース番組から、耳慣れない言葉が飛び込んできた。


 アキハバラが……浮上!?

 番組の映像には、空に浮かぶアキハバラと、ソレに吸い上げられていくオタクたちの姿が映っている。


 「嘘でしょ……本当にアキハバラが空飛んでる……」


 しかも、それに輪をかけて意味不明なのは、そんなアキハバラの中で無数のオタクとパリピが戦ってるってこと!

 い、意味が分からない。これが本当に現実かどうかさえ曖昧で、身体もどこかフワフワして……。


 ――ダメ、ダメダメダメ!


 これは現実よ! ほら! トイッターにはわたしの自撮りが並んでるし、通知もたくさん来てる!

 みんなの賞賛コメがわたしの安定剤、イーヨの数だけわたしは元気になれるんだ!


 「ふひひ、コメントいっぱい! しかも何? いつもより通知の数が多く――――へ?」


 な、なに、コレ……。

 なんで、なんでこんなことになってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


 『特定シマスタ。これから凸かましまーす!』

 『へえ~! 〇▽高校に通ってる1年生なんだ!』

 『これマジ? イモ女ー! 俺が学校の奴らに教えといてやるよ! もう学校これないんじゃね? マジうけるわ! ぶはは!』


 イヤ……わ、わたしの世界が……崩れる……ぐにゃぐにゃに……。


 こんな大量のコメント、ブロックしたくらいじゃどうにもなんない。いや、そもそもなんでわたしのアカウントが……ぁ――――


 わたしのアカウントを炎上させた大元をたどると、あの撮影会でモブカメコを罵倒した動画が見つかった。そこにはわたしのアカウント名と動画のキャプ画が一緒に紐づけされていて……。


 「こ、ここ、これ……! わたしのスク水……!」


 ようやく特定された理由が分かった。

 そう、あのスク水は、わたしの実名が印字されたままだったってことに――


 「ふ、ひひ、あひひ、ふひひ――」

EPISODE8 ヒメコウリン「ふひっ! な~んだ、こんな簡単なことだったんだ! 鬼蝮ユリア! わたしにその座をよこしなさい!」

 わたしのトイアカが大炎上してから数時間。

 アカウントはすぐに削除したけど、それぐらいじゃ収集つかないくらいの影響が現実で起こっていた。


 学校から呼び出されたわたしは、隠れるようにしてお母さんと一緒に車で学校に向かう。

 家は特定されちゃったし、あの場所にいるよりかはいくらかマシ、そんな風に思えた。


 「――土呂城、どうしてこんなことをしたんだ?」

 「ゆいちゃん、ちゃんとお話ししてくれる?」


 わたしは生徒指導室でお母さんと先生たちの前で事情を説明することになってしまった。


 「ゆいちゃんは、悪くないものね?」


 お母さんは今にも泣きそうな顔をしている。

 こんなつもりじゃなかったのに。どうしてわたしがこんな目にあわなきゃいけないの?


 「黙っていたら何も分からないぞ?」

 「私たちは土呂城さんの味方よ」

 「わたしはただ、写真をあげただけ。勝手に飛びついて、勝手に燃やしてっただけ。どうしてわたしが悪いみたいに言われなくちゃいけないの? そんな暇あったら、今すぐあいつらをなんとかしてよ!」

 「ゆ、ゆいちゃん!? なんてことを言うの!?」

 「わたしは知らない、関係ない! 勝手にやってればいいじゃん!」

 「と、土呂城!?」


 わたしはそのまま指導室を飛び出していく。

 大人は誰もわたしの味方じゃない、助けてくれたりなんかしないんだ。


 「――あれ? ゆーたんじゃね!?」

 「うお! マジだ!」

 「おい! ここにゆーたんがいるぞー!」

 「ぶはは! ゆーたーん! 同類相手にイキって楽しかったでちゅかー?」

 「ゆーたん! いつものセクシーポーズ見せろー!」

 ――は?


 『はい、ゆ・う・た・ん! ゆ・う・た・ん!』


 ……気持ち悪い。

 テンションが振り切れて猿みたいになったあいつらはネット上でわたしに群がってくるモブ野郎と同じだ。


 「おいおい、またダンマリかよ、ゆ~たん!!」

 「――――さい」

 「はぁぁ?」

 「――――さいッ」

 「聞こえねえよ、このイモ女!」


 ――パァン!!!!


 「うるっさいんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 廊下が一瞬で静寂に包まれる。


 「へ?」「え?」


 わたしは鞄から取り出した仮面と鞭で武装して、猿たちの前に鞭を叩きつけてやった。


 「このモブがぁ! “アタシ”に喧嘩を売るんじゃねぇぇぇぇ!」


 鞭で叩くたびに、モブのテンションが萎んでいくのが手に取るように分かる。

 最後にダメ押しの一発!


 ――パァン!!!!


 「まだ文句ある!?」

 「い、いえ……なんもないです……」

 「フン! だっっっさ……!」


 負の感情と共に吐き捨てる。

 すると、さっきまでの鬱々とした気分はどこかに吹き飛び、虹が差したように晴れやかな気持ちが、わたしを満たしていた。


 「ど、ドロッチ様……」「今の本物だった……」と、別の意味で盛り上がるモブたち。

 反撃もできないモブたちは、ただわたしの姿を撮影するだけで、なんにもしてこない。


 ――ふひひ、あぁ~~気持ちいぃ~~!

 怯えて目も合わせられないその表情!

 もっと、もっと怯えさせたくなっちゃうでしょ!


 ふひひ、チヤホヤされるのもいいけど、下僕を作ってくのもいいかもしれないわね!

 そうだ、手始めにこいつらを――


 「――おい!! 見ろよこれ!!」


 モブたちが、スマホを見ながら何か喚いてる。

 全員釘付けになってて、もうわたしのことなんて一ミリも興味がなさそうだった。


 「はぁ? あんたたちこっちを見なさいよ!」


 強く出ても、みんな上の空。

 一体、なんだってのよ! モブからスマホを奪い取り、何が映ってるのかチェックする。

 それは、この前のニュースで見た天空に浮かぶアキハバラ。

 それだけならもう大して興味もわかない。

 でも、今画面に映っているものに、わたしは釘付けになっていた。


 「おに、まむし、ユリアァァァ!?」


 そこには、わたしの自撮りコスが霞んじゃうくらい、面積の少ない服を纏った女の子が映っていた。


 「な、なんなのよ、これぇぇぇ!?」


 白で統一された衣装に、真っ黒なツインテール。

 それにあれは……天使の、羽ぇぇぇ!?

 余りにもあざとい。あざと過ぎる!

 極めつけは、その画像についたコメントとイーヨの数!


 「イーヨが1万……2万……まだ増えてく……!?」


 画面を更新するたびに、新しいコメントが世界中から飛んできてる。


 「反則でしょ、こんなの……」


 ずるい、ずるいずるいずるい!!

 コスしてるだけであんなにチヤホヤされるなんてずるい。そんなんで注目浴びてるんだったら、そこにわたしが行けば、もっと注目されるに決まってる!!


 「行かなくちゃ、アキハバラに」


 待ってなさいアキハバラ! 鬼蝮ユリアぁ!

 わたしがその座から引きずり降ろしてあげる。

 その場所は、わたしのもんだ!!

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脚注
  • *1 マップ短縮20マスを含む
  • *2 RANK15で解放
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