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CHUNITHM攻略wiki SUN

九十九 宗治郎

最終更新日時 :
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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


Illustrator:小宮国春


名前九十九 宗治郎(つくも そうじろう)
年齢26歳
職業日本帝国軍陸軍少尉

日本帝国軍陸軍少尉として戦地へ赴く青年。

そんな彼だったが、気が付くといつの間に少し"変わった"風習がある故郷に帰っていた──。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1勇気のしるし×5
5×1
10×5
15×1

include:共通スキル(NEW)


  • コンボバースト【NEW】 [ABSOLUTE]
  • 一定コンボごとにボーナスがある、強制終了のリスクを負うスキル。道化師の狂気【NEW】と比べて、コンボノルマが1.5倍になる代わりにJUSTICE以下許容+100回となっている。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
  • GRADE100を超えるとボーナス増加量が鈍化(+10→+5)する。
  • スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300でボーナスの増加が打ち止めとなる
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「勇気のしるし」から変更された。
効果
150コンボごとにボーナス +????
JUSTICE以下150回で強制終了
GRADEボーナス
1+6000
2+6010
11+6100
21+6200
31+6300
41+6400
50+6490
▲PARADISE LOST引継ぎ上限
61+6600
81+6800
102+7000
142+7200
182+7400
222+7600
262+7800
300+7990
推定データ
n
(1~100)
+5990
+(n x 10)
シード+1+10
シード+5+50
n
(101~300)
+6490
+(n x 5)
シード+1+5
シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係
開始時期最大GRADEボーナス
NEW+289+7935
NEW337+7990
~PARADISE×386
2022/6/9時点
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

※NEW稼働時点でゲージ5本以降の到達に必要な総ゲージ量が変更。必要なゲージ量を検証する必要があります。

  • ノルマが変わるGRADEおよびGRADE300のみ抜粋して表記。
GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
1450
(3)
900
(6)
1350
(9)
1800
(12)
2400
(16)
3000
(20)
3750
(25)
41450
(3)
900
(6)
1350
(9)
1800
(12)
2250
(15)
2850
(19)
3600
(24)
56450
(3)
900
(6)
1350
(9)
1650
(11)
2250
(15)
2850
(19)
3450
(23)
76450
(3)
900
(6)
1200
(8)
1650
(11)
2250
(15)
2700
(18)
3450
(23)
87450
(3)
900
(6)
1200
(8)
1650
(11)
2100
(14)
2700
(18)
3300
(22)
114450
(3)
900
(6)
1200
(8)
1650
(11)
2100
(14)
2550
(17)
3300
(22)
131450
(3)
900
(6)
1200
(8)
1650
(11)
2100
(14)
2550
(17)
3150
(21)
142450
(3)
750
(5)
1200
(8)
1500
(10)
2100
(14)
2550
(17)
3150
(21)
179450
(3)
750
(5)
1200
(8)
1500
(10)
1950
(13)
2550
(17)
3150
(21)
202450
(3)
750
(5)
1200
(8)
1500
(10)
1950
(13)
2400
(16)
3000
(20)
245450
(3)
750
(5)
1050
(7)
1500
(10)
1950
(13)
2400
(16)
3000
(20)
281
(300)
450
(3)
750
(5)
1050
(7)
1500
(10)
1950
(13)
2400
(16)
2850
(19)
筐体内で入手できる所有キャラ
  • 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
バージョンマップエリア
(マス数)
累計*2
(短縮)
キャラクター
NEWep.Ⅰ
side.A
6
(165マス)
480マス
(-80マス)
サルゴン
・フェルネス
7
(215マス)
695マス
(-110マス)
九十九 宗治郎
8
(265マス)
960マス
(-140マス)
ユグドラシル
ep.Ⅰ
sideB
3
(55マス)
95マス
(-20マス)
土呂城 ゆい
ep.Ⅲ3
(255マス)
535マス
(-20マス)
ミスラ
・テルセーラ
4
(375マス)
910マス
(-30マス)
ヨアキム
・イヤムル
NEW+ep.Ⅴ3
(375マス)
825マス
(-50マス)
エヴァ
・ラグエル
4
(455マス)
1240マス
(-90マス)
闇よりも深い黒に染まる
バーニッシュ
ゲキチュウマイマップで入手できるキャラクター
バージョンマップキャラクター
NEWイロドリミドリ
~僕らの学園フェス編
五十嵐 撫子
/僕らの学園フェス編
※1
萩原 七々瀬
/僕らの学園フェス編
※1
葛城 華
/僕らの学園フェス編
※1
小野 美苗
/僕らの学園フェス編
※1
オンゲキ日向 千夏※2
柏木 美亜※2
東雲 つむぎ※2
NEW+maimaiでらっくすしゃま
/UNiVERSE
みるく
/UNiVERSE

※1:入手には、同イベント進行度2までの全エリアのクリアが必要。

※2:入手には、同イベント進行度3までの全エリアのクリアが必要。

その他の条件を満たすことで入手できるキャラクター
  • 詳しい条件についてはキャラページを参照。
期間限定で入手できる所有キャラ
  • カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。

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ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 夢の狭間から「ここは……俺の、故郷なのか……? 俺は確か……戦地で……何も思い出せない……」

 どこまでも現実味を帯びた、長い長い夢。

 現実と夢が反転しているかのようなその長い夢から、九十九は目を覚ました。

 あたりは風もなく、眼前には穏やかな水面が揺蕩っている。自分の頭が何か柔らかいものを枕にしている事に気付き、体を起こすと、白無垢を纏った少女がこちらへ微笑んでいる姿があった。

 その顔を、夕焼けの光が真っ赤に照らしている――。


 九十九宗治郎は、片田舎の裕福な家の次男として生まれた。

 文武に秀でていた宗治郎は、村で初めての士官学校卒業生となり、現在では陸軍少尉の地位を獲得したエリートだ。

 他国との戦争が激化する現在。

 少尉である宗治郎は戦地に赴き、部下を指揮している――はずであった。

 だが、今宗治郎の目の前には、幼き頃水遊びをした川、遠く眺めながら草笛を吹いた山々、そして懐かしさを感じる少女の顔。まぎれもなく、戦地から遠く離れた故郷の風景だった。


 宗治郎は何か化かされたような気分で頭を抱える。

 ここへ来るまでの記憶が、何も思い出せない。

 それを見た白無垢の少女は、心配そうに眉を下げ、宗治郎の手を取った。


 「宗治郎さん……戦地で辛い目に遭って、記憶が曖昧になっているのですね……可哀想……」

 「あ、ああ……そう、なのか……」

 「じきに心も癒えます。さ、村へ行きましょう」


 少女はそう言って宗治郎の手を引くと、ゆっくりと歩き出した。

 向こうに見える村からは、祭りで活気付く声が聞こえてくる。


 (祭り……? そうか……今日は……“その日”なのか……)


 宗治郎の生まれた村に代々伝わる風習に則った儀式。

 その儀式に因んで、村では20年ぶりとなる祭りが盛大に催されていた。

 生きたまま人間を神への贄とする――“人身御供”の祭りが。

EPISODE2 その村に伝わる儀式「そうか……儀式の半分は済んでしまったのだな……ヨル……俺は、何もしてやれなかった……」

 九十九宗治郎が生まれた村には、人身御供の風習があった。

 だがそれは、恒例的に行われるものではない。

 村にとって忌み子とされる、“女の双子”が生まれた時だけだ。


 村に生まれた双子は、16歳を迎えると儀式を受ける。

 姉は白羽の矢が立った家に嫁ぎ、妹は人身御供の儀を経て神へ嫁ぐ。

 これが、生まれながらにその運命が決められた、村に伝わる悲しき習わしであった。


 九十九の家に白羽の矢が立てられたのは、宗治郎が14の時。

 九十九家は、村にとって忌み子である娘を長男が娶ることを忌避したため、家督を継ぐ事のない次男の宗治郎が、双子の姉『夕(ユウ)』の許嫁として選ばれたのだった。


 贄となる双子は、生まれた時より家族、許嫁以外の村人との接触を許されない。

 その事を、当時14歳だった宗治郎は憐れんでいた。

 村の風習は理解していたが、聡明で広い視野を持っていた宗治郎。

 だから、双子を邪険にする事なく、分け隔てなく可愛がった。

 そんな彼の優しさは幼い彼女達にしっかり伝わっており、宗治郎を兄のように慕い、心から愛していた。


 そして時は流れ現在。

 許嫁である双子の姉のユウは、白無垢を着て宗治郎の手を取っている。

 それは同時に、妹である『夜(ヨル)』が、神への贄となった事を意味していた――。

EPISODE3 幽世へと続く川「肚や鼓膜に響くこの音は、あの光景とよく似ている。……硝煙の香りが漂っていない事を除いては」

 山頂にある本殿、そこから真っ直ぐ下った先の川向こうにある大贄殿(おおにえでん)。

 この村は、その二つの社殿の間に収まる形になっている。

 村の者はこの社殿をそれはそれは丁重に扱ってきたが、特に大贄殿に対しては畏怖にも似た注意を見せ、宗治郎自身も幼い頃から祖母に「この村の人が死ぬ時は川を渡って神様の所に行くの。だからあの川は決して渡ってはいけませんよ」と、口酸っぱく言い聞かせられていた。

 だが人身御供の儀を行う時だけは、大贄殿へ向かって川を渡る事を許されるものがいる。

 それは、神への贄である双子の妹だった。


 人身御供の儀には決められた手順がある。

 まず、双子は赤い紐で互いを繋ぐと、姉が村側の川岸に立ち、妹は川を渡る。

 川を渡り切ると、姉は「あの世」と「この世」を繋ぐ赤い糸を切り、妹は神の待つ大贄殿へと向かいその身を捧げる。

 その後、姉は許嫁と共に本殿へ行き神主に契りの儀を見届けてもらうのだが、その本殿への道中が村人へ初めて姿を見せるお披露目も兼ねている。

 これが、寸分違う事なく村へと代々伝えられた、人身御供の儀の手順であった――。


 宗治郎はユウと手を繋ぎながら、本殿を目指し、その道中にある村の中を歩く。

 太鼓や笛の音が飛び交い、酒の入った村人たちの楽しそうな大声があちこちから聞こえる。

 囃子――銃声――歓声――悲鳴――。

 視界に広がる祭りの賑わいが、戦場で叫ぶ仲間達の声と重なっていく。

 宗治郎は未だ夢から醒めきれぬ面持ちのまま、ユウに連れられるように本殿へと歩き続けるのだった。

EPISODE4 ユウとヨル「あの時、俺は戦地にいながら不思議と二人の事を思い出していた。できる事など、なにもないのに」

 幼い頃より何事も優秀だった宗治郎は、同世代の子供達から疎まれる事も少なくなかった。

 その感情はやがて子供達だけでなく、村の大人からも向けられてしまう。

 国のために力になればと宗治郎は士官学校へと進んだが、村人たちは宗治郎を「国のためとはいえ自ら進んで人殺しを生業にしている」として見下すのだった。


 士官学校への試験も合格し、あとは入学を待つだけとなったある日の事。

 村人の目に触れないよう、まるで座敷牢のように双子の姉妹が幽閉された部屋に、宗治郎はいた。

 宗治郎は時間を見つけては、まだ幼い姉妹の元へと足を運び、遊び相手、話し相手になっていたのだ。

 双子の姉妹――“夕”と“夜”は、宗治郎によく懐き、構って欲しい一心で彼の背中に乗ったり、あぐらをかいた膝に収まろうとしている。

 そのうち、話の流れで何かを思い出すと、憤りを隠さず強い口調で声をあげ始めた。


 「宗治郎さんが何をしたっていうのよ! あいつらも私達を殺そうとしているくせに!」


 宗治郎が村でどう思われているのか、家族づてにでも耳にしたのだろう。

 二人は幼いなりにも、彼を元気付けようとして怒ってみせたのだ。

 宗治郎自身は村人から邪険にされている事をそれほど気にしていなかったが、姉妹の心遣いが有り難く、温かな気持ちで頬を綻ばせていた。


 3人の他愛ないお喋りは続く。

 もうすぐ宗治郎は村を出て士官学校の寮へと入ってしまう。

 姉妹は寂しさを隠しながら、宗治郎にたくさん話を聞かせてほしいとねだった。

 寮とはどういうものか、何を学ぶとか、どんな仕事をするのか。

 そして――この村の外はどういうものなのか。

 村どころか、屋敷でさえほとんど出る事を許されぬ二人は、外の世界に憧れていたのだ。

 ユウだったか、ヨルだったか。今となっては思い出せないが、二人のうちどちらかがふとこぼした。


 「本殿には外の世界に続く抜け穴があるって噂、本当なのかな」


 村人との接触が禁じられている二人が、噂話を交わすはずもない。

 今となって考えると、それは二人の妄想から生まれたものだったのかもしれないが、その時の宗治郎はその一言がなぜか引っ掛かった。


 その日の晩。宗治郎は山頂にある本殿へと足を運んでいた。

 こっそりと神主の目を盗みながら、本殿のあちこちを探ってみる。

 もしかしたら。万に一つでも二人の噂が本当なのだとしたら。

 だが、外へ続く抜け穴など――どこにもありはしなかった。


 その後、士官学校への入学と同時に村を離れるまで、宗治郎がその事実を姉妹に明かす事はなかった。

 彼女達は、村で一生を終えるしかない。

 その一生の中に、ほのかに灯った希望を無残に消すような事は、宗治郎にはできなかった。


 ユウと共に、祭りで賑わう村の中を歩きながら思い出す。

 戦地で仲間が次々と死んでいくのを見ながら、宗治郎は考えていた。

 戦いに身命を賭しているわけでもないヨルが、なぜ村の風習などで死ななければいけないのだろうか、と。

 だが、もうヨルは川の向こうへと渡ってしまった。

 考えたところで、もう何の意味もない。

EPISODE5 いるはずのない、その姿「おい、どこへ行くんだ! 俺を忘れたのか!? 待ってくれ! 行かないでくれ……っ!!」

 山頂にある本殿まで続く石畳の登り坂を、宗治郎は歩き続ける。

 沿道では、誰もが祝福の声を上げながら宗治郎たちを見送っている。

 忌み子の許嫁になったとして宗治郎を毛嫌いしていた兄も。

 軍人ということで見下していた村人達も。

 皆一様に、拍手をしたり、手を振ったりと思い思いの形で祝福の気持ちを示していた。

 その中に、ユウとヨルの両親の姿もあった。

 二人も他の村人と同じように「おめでとう」などと口にしながら、笑顔を向けている。

 たとえ贄にされる運命だったとしても、今しがた娘のヨルがこの世を去ってしまったというのに。


 (なんだか……気味が悪いな……)


 あれだけ邪険にしていても。

 己が産んだ子を差し出しても。

 儀式のためなら笑えるのか。

 辟易とする宗治郎の気分とは反対に、祭りの活気は際限なく膨らんでいく。

 過剰ともいえるほどお囃子の音色は大きくなり、宗治郎は思わず軽く耳を塞いだ。


 (いくらなんでもやりすぎだ……というか……やけに人が多すぎやしないか……?)


 沿道に詰めかける村人達は、いつの間にかぎゅうぎゅうとひしめきあうほどに増えている。

 この村は決して大きくはない。

 だが今、宗治郎たちを祝う人の数は、村の人口をゆうに超えていた。


 その群衆の中、宗治郎は見覚えのある顔がちらほらといる事に気付く。

 この村の人間ではない誰か。

 だが、確実に自分が知っている誰か。

 未だ朧げな頭の中を探っていた宗治郎は、やがてその顔が誰なのか思い出し、表情を凍らせる。


 見覚えのある顔。それは――戦場で死んでいった宗治郎の仲間達だった。

 彼らは笑顔で宗治郎を一瞥すると、宗治郎達が目指す本殿とは逆。

 ヨルが渡ったあの川の方へと向かっていった。

EPISODE6 弾痕の意味「この傷は……一体、俺の身に何が……ユウ……君は、何を伝えようとしているんだ……」

 「森塚! 喜多野!」


 かつての戦友の名を叫びながら、宗治郎は離れていく背中に手を伸ばし追いかけようとする。

 だが、ユウの手がそれを拒んだ。

 軍で鍛えた身体でも抵抗できないほど、ありえない力で宗治郎を強く引っ張る。


 「離してくれ! 友人がいたんだ!」

 「……立ち止まってはいけません。せっかくの日なのですから」

 「しかし……!」


 宗治郎はそう言って、振り解かんとユウの腕を掴む。自然と、ユウの手首が目に入る。

 その手首には、儀式に用いられた赤い紐が輪になって括られている。

 ヨルと繋がったそれを、手元で断ち切ったはずの赤い紐が。

 だが、赤い紐の断面はどこにも見当たらず、今もどこかへ繋がったまま。

 それは宗治郎たちが歩いてきた石畳。あの川の方へと続いていた。

 長く――長く。


 何か薄寒いものを感じ、今は黙って従うのが得策だと考えた宗治郎は、ユウに連れられるように歩き続けた。

 そして二人は、儀式の締めを執り行う地、本殿へと辿りつく。

 だがそこには、神主も、神事を行う舞台もなく、宗治郎たち二人以外は誰もいない社があるだけだった。

 気付けば夕日はほとんど沈み、空には夜が訪れている。


 「君は……何をしようとしているんだ……」


 宗治郎の問いかけに、ユウは何も答えない。

 だが、言葉の代わりににこりと微笑んでみせると、ユウは宗治郎を抱きしめた。


 「何を……!?」

 「愛してるわ……宗治郎さん……」


 宗治郎の胸に顔を埋めながら、ユウは噛み締めるように呟いた。

 突然の行為に面食らいながらも、今にも泣き出しそうなその声からユウのこれまでの人生を振り返り、絆されそうになる。

 だが、今はこんな事をしている場合ではないと思い直し、宗治郎はユウの肩を掴んで引き離した。

 目の前に立つユウの姿。

 花嫁衣装である白無垢の胸が、真っ赤に染まっていた。

 何かの染料に染まったわけではない。

 戦地で幾度となく目にしてきた宗治郎には分かってしまう。

 それは、人間の血。


 「なっ……!? それは!?」


 ユウの身を案じ、それに触れようと手を伸ばす宗治郎。

 だがユウは、微笑みながらも寂しそうな顔を浮かべ、ふるふると首を振る。

 「それは私のものではない」と。

 宗治郎は驚き、慌てて己の胸に手を当てると、その手にべったりと血がまとわりつく。

 彼の胸には、痛々しいほどの深い弾痕が無数に開き、血を流し続けていた。

 その様子を見ていたユウは、寂しそうな顔を浮かべたまま、おもむろに口を開く。


 「……儀式の最中、宗治郎さんを見かけたんです。あの川……三途の川で……」


 そう言いながら、ユウはこれまで歩いてきた石畳の先――山下に広がる村の方へと目をやった。

 何の前兆も、音もなく。

 つい先ほどまで祭りで賑わっていた村は、水の中に沈んでいた。

 深い深い、川の底へ。

EPISODE7 使命を捨てた二人「この村は何かがおかしい……教えてくれ……君たちに起きた事、その全てを……」

 宗治郎の赴いた戦地での戦闘が激化しているという情報が村に伝わったのは、人身御供の儀が執り行われるその数日前の事だった。

 儀式には、双子の姉を本殿まで連れていく許嫁――つまりは宗治郎の存在が必要不可欠だ。

 本来であればとっくに帰省しているはずの宗治郎だが、戦況が悪化したためそれが叶わなかったのだ。


 儀式は定められた期間内に執り行わなければならない。それを過ぎると神の怒りが村を襲うと伝えられているからだ。

 しかし、その期日はもうそこまで迫っている。

 戦況を聞いた村人は、宗治郎が生きて戦地から帰ってくることはないと踏み、彼の帰りを待たず儀式を行う事を決めるのだった。


 だが双子の姉は、その伴侶と生涯を共にする事が決められている。

 それは、生き死にに関しても。

 伴侶が死ねば、ユウも同じく死ななければならない。

 つまり、宗治郎を死んだものとみなしているということは、この儀式を終わらせた後、ユウも命を絶たなくてはならないという事だった。


 そして――宗治郎のいないまま、人身御供の儀は始まった。

 ユウとヨル。

 対岸に大贄殿を望む川には、彼女たち双子の姉妹以外は誰もいない。

 互いに見つめ合い、一度だけ頷き合うと、ヨルはゆっくりとその川の中へと入っていった。

 足首、膝、腰、胸、そして肩へ。

 神への贄であるヨルは、水の中へ身体を沈めながら、ゆっくりと対岸へ歩いていく。

 一歩、また一歩とヨルが歩を進めるたび、川岸に立つユウの手首に結ばれた赤い紐が、命の鼓動のように揺れていた。


 ユウはその紐ごと自らの手首を握りながら川を渡るヨルを見つめていると、ふと大贄殿のある対岸に、誰かが立っている事に気がついた。

 それは、これまで幾度となく行われたこの儀式の贄とされた少女たちの姿。

 皆、片方の手首から赤い紐がどこかへと伸びている。

 彼女たちをぼんやりと眺めながら、ユウはこの川が本当に三途の川だという事を実感していた。

 その時だった。


 川を渡るヨルの近くを、小さな小舟がゆらゆらと流れてきていた。

 この川に舟を渡すものはいない。ましてや重要な儀式の最中である。つまりは何かの異変である事は間違いない。

 舟には何かが乗っている。

 やがてヨルが視認できるほど近づいてくると、それが何であるのか判明した。


 舟に乗っていたのは――宗治郎だった。


 銃弾を受けた身体から血を流し、虚な目を浮かべている。

 呼吸をしている様子はない。

 生きているのか、死んでいるのか。

 まるで人形のように微動だにしていない。


 姉と共に、自分を愛し、可愛がってくれた大切な人。

 その宗治郎の悲惨な姿を見てしまったヨルは、儀式の事など忘れ、気がつくと舟の縁を掴んでいた。

 異変を察知したユウも慌てて川へと入り、ヨルと合流する。

 そして二人は、力を合わせて舟を押すと、渡ってきた道を折り返しはじめる。


 ユウとヨルは儀式を放棄し、禁忌を犯した。

 それは、あらかじめ示し合わせたものなどではない。

 ただ、二人揃ってどうせ死を待つ運命ならば。

 せめて禁忌を犯してでも、宗治郎を救いたかっただけだ。


 岸までたどり着き、息を切らす二人の耳に、誰かの声がした。

 自分たちと同じ年頃の、少女の声が。

 それは、対岸にいるかつての忌み子たちのものだと、ユウとヨルは誰に言われることなく分かっていた――。


「そんな……それじゃあ、君たちは俺を救うために禁忌を……」


 ユウから経緯を聞いた宗治郎だったが、その内容は衝撃的なものだった。

 なおかつ、今自分が致命傷を追いながらも身動きできている事に、大いに混乱する。

 ユウはそれに答えず、幼い頃のような口調で続ける。


 「本殿には外に続く抜け穴があるって話、昔したでしょ?」

 「……ああ。だが……ここに、抜け穴なんてものはない……一度探したが、どこにもなかった……」


 苦々しい表情で宗治郎が答える。

 ユウはあの噂話を信じて、ここから逃げ出そうと考えていたのだろうか。

 しかし、宗治郎はそんな抜け穴は存在しない事を知っている。

 禁忌を犯してまで自分を救ってくれた相手に伝えるには、あまりにも苦しい一言だった。


 「ふふふ。本当に探してくれてたんだ。やっぱり優しい人ね、宗治郎さん。そう、普段は抜け穴なんてない」

 「普段は……?」

 「抜け穴はね、外の世界から閉ざされてしまった時にだけ出てくるの。外の世界……“現世”へと通じる唯一の道」


 言いながら、ユウは手首に巻かれた赤い紐を見せた。

 輪になったそれを自分の手から抜き取ると、今度は宗治郎の手首へくぐらせる。

 何をしようとしているのか理解しかけている宗治郎はそれを遮ろうとするが、身体がまったく動かない。

 微笑んだまま、ユウは次の言葉を語り出す。


 「ヨルみたいな……昔の双子の妹たちが教えてくれたんだ。村から外の世界へ抜け出す方法を。それは、この村自体を贄として捧げる事。村もヨルも宗治郎さんも全部捧げて、唯一現世へと繋がるこの本殿で赤い紐を切る。そうすれば、この村、風習、ありとあらゆる全てのことから解放されるの。でも、それをできるのは誰か一人だけ」


 話しながら、ヨルは宗治郎の手首に巻いた赤い紐を、しっかりと結び直していく。


 「でもね、ヨルと話し合ったんだ。たとえ一人解放されたとしても、ヨルも宗治郎さんもいない世界なんて何の意味もないわ、って。そうしたら、『ユウ姉、私も同じだよ』だって」


 ユウは肩をすくめながら困ったように笑うと、白無垢の袖から小さな糸切鋏を取り出した。

 「やめろ」「待ってくれ」、そう何度も投げかけようとするが、宗治郎はもう声さえ出ない。

 声にならないながらもそんな彼の思いを分かっているのか、ユウはもう一度真っ直ぐ宗治郎へと向き合うと、その口元へ己の唇を重ねた。

 そして、糸切り鋏を宗治郎の腕から伸びる紐へとそっとあてがって――


 「宗治郎さん、あなたは生き残るべき人です。楽しい日々をありがとうございました。さようなら」


 それだけ言うと、紐を切り落とす。

 瞬間、宗治郎は意識を失った――。

EPISODE8 赤い紐「今も思い出す。天真爛漫な二人の姿を。いつかきっと君達のところへ行くまで、俺は決して忘れない」

 「ユウッ……!!」


 宗治郎が目を覚ますと、そこは戦地の野戦病院だった。

 無数の銃弾を受け、誰が見ても絶望的な状態だった宗治郎が目を覚ましたことで、軍医たちは大慌てしている。

 長い眠りから覚め、まだどこか夢心地の宗治郎は、ふと手首に違和感を覚えて顔を向ける。

 そこには、万一にもほどけたりしないよう。

 そんな祈りを込めたかのようにしっかりと。

 赤い紐が結び付けられていた――。


 一命を取り留めたものの、戦火の収まらぬ前線において、将校である立場の宗治郎は部隊の指揮に追われてしまう。

 多数の犠牲を出しながらも生き延び、戦地からの帰還命令が下った時には、もう数ヶ月の時が立っていた。

 本部に戻った宗治郎に、短い休暇が与えられる。

 その休暇をどう使うか。それはすでに決まっていた。


 故郷へ向かう列車の中。

 窓枠に肘をつき、頬杖をつく宗治郎は、ひとり車窓の外の景色をじっと眺めている。

 士官学校へ入学するため、村を出る時にも同じように頬杖をついて眺めた同じ景色。

 それが、まるでフィルムを巻き戻すかのように流れていく。


 列車をいくつも乗り継ぎ、最寄りと呼ぶにはあまりに遠過ぎる駅から、己の足で山を越える。

 歩くほどに近代的文明は薄れていき、木々は生茂げ、懐かしい風景を連れてくる。

 片田舎の、悲しき風習の残る故郷。

 村までは、もう間もなくだ。


 まるで、現実のような夢だった。

 祭り囃子の音、石畳を歩く感触、繋いだユウの手。

 全てがありありと思い出せる。

 きっと村に帰れば、自分の中で朧げになったままの全てが腑に落ちるはず。

 その一心で、宗治郎は歩き続ける。


 ――だが、宗治郎が村に帰ることはなかった。

 正確には、帰ることができなかった。

 山を超えた先にあるはずだった故郷の村は、田畑も、屋敷も、何もかも。

 ひとつとして残すことなく水の中へ沈んでいたからだ。

 宗治郎は混乱し、辺りを駆けずり回ると、まだ新しい立て看板が設置されている事に気がついた。

 物々しい色使いで記されたそれには、豪雨によって川が氾濫し、一帯が水没してしまった事。危険なので近づかない事。

 それだけが注意書きとして残されていた。

 日付は、今日から遡って数ヶ月前となっている。


 宗治郎は、“湖”と化した村を前に、思わず膝をつく。

 一体どこからが現実で、どこまでが夢なのか。

 もう宗治郎には分からない。

 生まれ、育ち、離れ、そして救われた故郷は無くなった。

 いや、初めから存在したのかさえ分からない。

 その答えは全て水の中で、もはや確かめる術もないのだから。


 「ユウ、ヨル……俺はどうしたらいいんだ……何もかも、俺の前から消えてしまった……」


 頭を抱え嘆いていた宗治郎だったが、ふと何かを思い出し、外套のポケットに手を入れると、赤く染め上げられた紐を取り出した。

 あれが現実でも、夢でも、もはやどちらでも構わない。


 「……生き残るべき。君はそう言って救ってくれた。ならば託されたこの命、尽きる日が来るまで燃やし続けよう……」


 あの時、愛し愛された姉妹に自分は生かされた。

 紐こそが、証明だ。

 そのたしかな事実だけを胸に、宗次郎は静かに振り返り、帰路へと歩む。

 また明日を、生きるために。


 湖の向こう。

 対岸には幾人かの少女たちが、蜃気楼のようにぼんやりと揺らぎながら立っている。

 そのほとんどが肉親と離れ離れになる憂き目に遭った者であるにも関わらず。

 唯一、ひと組の姉妹だけが手を繋ぎ合い、宗治郎の背中を見守っていた――。

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脚注
  • *1 マップ短縮110を含む
  • *2 エリア1から順に進む場合
コメント (九十九 宗治郎)
  • 総コメント数10
  • 最終投稿日時 2022年08月11日 19:05
    • チュウニズムな名無し
    10
    2022年08月11日 19:05 ID:t3ysfoqw

    >>6

    >曲は残っているよ。キャラが削除しただけ。

    あっマジで?確認不足ですまん

    • チュウニズムな名無し
    9
    2022年08月11日 18:24 ID:bsr6banj

    >>6

    "中国版"では未登場されているんですね…。海外版(International Ver.)では登場してます。

    • チュウニズムな名無し
    8
    2022年08月11日 17:14 ID:sh4xbr52

    >>6

    曲は残っているよ。キャラが削除しただけ。

    • チュウニズムな名無し
    7
    2022年08月10日 11:01 ID:t3ysfoqw

    >>6

    曲だけでも入れて欲しかったな… 悲しい

    • チュウニズムな名無し
    6
    2022年08月10日 02:28 ID:m34e8n9m

    >>5

    あまりここでは言いたくないが、あの服かつ職業名そのものが"海外版"にとっては色々とタブーだからなぁ…

    実装当時「このキャラ、海外版どうなるんだ…?」ってパッと見て懸念していたが…そうかぁ…

    • チュウニズムな名無し
    5
    2022年08月09日 23:50 ID:t3ysfoqw

    海外版で存在消されてて草

    • チュウニズムな名無し
    4
    2021年11月19日 23:34 ID:k4bxwe8q

    >>3

    残念ながらないですね

    • チュウニズムな名無し
    3
    2021年11月19日 23:06 ID:bl1x6hc3

    九十九さんって御影昴/アドラス君みたいなトランスフォームあるんですか?まだレベル6までしか上げられてなくて…

    • チュウニズムな名無し
    2
    2021年11月09日 01:31 ID:njws284p

    すげぇ頭身高いな。10mくらいありそう

    • チュウニズムな名無し
    1
    2021年11月07日 02:01 ID:k1o7kuf5

    少尉だけに傷痍…

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