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【黒ウィズ】フェアリーコード Prelude story1

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世界には、人には聞こえない音――フェアリーコードが流れてる。その音が、世界の秩序を保ってるの。

今、聞こえてる音だよね。実は私、そういうのずっと聞こえてたの。小さい頃から。

今朝も、悲しい音がする方に行ったら、飼い主とはぐれて鳴いている犬がいたし……。

心配そうな音のする方に行ったら、その子の飼い主さんがいて。

そう。フェアリーコードは、人や獣や、あらゆる心ある者の音色が織りなすもの。

そして、その音色が正しく流れるよう律するのが、あたしたち妖精の仕事なの。

あ、ルミちゃん妖精だったんだ。そっかー。すごーい。

すごいですむんかい。

まあ……だけど、妖精ってのは悪戯好きでね。たまに、変な音を流して世界をいじっちゃう奴らがいるのよ。

そういう奴らを見つけてお仕置きするのが、あたしの役目。

これも悪戯だって言うの?

 ルミスは手近な壁を軽く撫でた。不気味に歪んだ音が響く。

フェアリーコードの音が外れてできた空間。本来の世界にはありえない、秩序の外の世界。

そういう場所を作って、気に入った人間を連れ去る”神隠し”は妖精の悪戯としちゃ、メジャーな例よ。

死人が出てないだけ、まだかわいい方ね。

人が……死ぬこともあるの?

妖精は感情の塊よ。人間の倫理や論理は関係ない。憎いという気持ちがたかぶれば、命を奪うことだって、ざらにある。

じゃあ、そういうことする妖精を、ルミちゃんがやっつけてくれてるんだ。

やっつける、っていうと違うわね。あたしはあいつを止めに来たの。

 ルミスは一瞬、遠くを見やった。

”気持ちが音になる”ってことはね。

ひとつの気持ちが大きくなると、その音が他のすべてをかき消して、止まれなくなる、ってことでもあるの。

今、あいつがこんなことをしてるのもそのせいよ。さっきも言った通り、妖精は、感情の塊みたいなものだから。

あいつはもう、止まりたくても止められない。

だからあたしが止めてあげるの。ぶっ飛ばしてあげることでね。



***



ここが、奴の巣ね。

 ルミスの言う通り、そこにはあの怪物――いや、妖精と、気を失ったトヨミの姿がある。

悪戯の時間は終わりよ。


wB悪戯なんかじゃない!昔、約束したんだ――この子が小さい頃!ボクのお嫁さんになってくれるって!

ボクはずっと待ってた。ずっと見守ってたんだ!なのにこの子はあんな奴と――!

ボクは――ボクはこんなに好きなのにッ!!

 強烈な音が爆ぜ、押し寄せてくる。空気という空気をぴりぴりと震わせ、他のあらゆる音を呑み込んでいく。

(”好き”って気持ちが、他の全部をかき消してる……!)

やっぱり、もう止まりそうにないわね。いいわ――

 ルミスは、手にしたフィドルを振った。

弓は細剣に、戦うための、本体は大剣に変わる。確かな力に。


その音色、あたしがここで止めたげる。



気持ちが音に、音が力になる異界にゃ。>ルミスは手練みたいにゃ。

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wBどうして、どうして邪魔をするんだ!ボクはこんなにあの子のことが好きなのにッ!

だったら――だったら――みんな死ねえぇええぇええええっ!!

 やぶれかぶれな叫びとともに、妖精が羽をこすり合わせた。心の音色が無数の矢と化し、ほとばしる。

ルミスヘ。そして、広場の片隅に倒れたトヨミや、その傍らで戦いを見守るリレイヘと。

――このおバカっ!

 ルミスは後方に跳躍し、剣を振るった。トヨミとリレイの方へ飛んだ光矢を、ことごとく撃ち払う。

しかし、なおも音の矢は降り注ぐ。かんしゃくを起こした子供が大泣きするように。

剣で撃ち払える数ではなかった。ルミスは背中の”翅音”(はね)を、自分とリレイたちをかばうように広げる。

光矢の謀雨が、”翅音”を叩いた。”翅音”の主たるルミスの顔が、負担のあまり苦しげに歪む。

ぐうっ……!

 苦痛の雨にまみれても、夜空色の瞳が力を失うことはなかった。喚き散らす妖精を見据え、叱るように叫ぶ。

そんな気持ちで好きな子を傷つけたら!あなた、きっと後で泣くわよ!!

 ”翅音”を広げ、剣を振るい、矢の雨をしのぐルミス――その音色が、変化を見せた。

リレイはハッとした。凛として戦意を保ちながらも、同時に悲しみと思いやりに満ちた旋律だった。


(あの子は、私たちを守ろうとしてくれてる。ううん――私たちだけじゃない。あの妖精の気持ちも、助けようとしてる――)

 ”好き”という気持ちが止まらなくなって。”好き”なのにという思いが暴れて、好きな子を傷つけてしまおうとしている。

そうしたらきっと後で泣いてしまうだろうから。そうさせまいと、ルミスは必死に身体を張っている。

(そういう子なんだ)

 わかる。伝わる。確信とともに。彼女が何を願い、何のために戦う人なのか。流れる音が、物語る。

リレイは、カッと胸が熱くなるのを感じた。

誰もの心を救うために戦う、苛烈なまでの優しさと気高さが、直に胸に響いていた。


――あうっ――

 1本の矢が、左手から大剣を弾き飛ばした。大剣は、広がる”翅音”の外側に音を立てて転がる。

リレイとトヨミをかばわねばならぬ以上、ルミスが拾いに行くことはできない。

リレイは思わず、大剣の方へ飛び出した。

あっ、ちょ、おバカ!

 ”翅音”の外へと飛び出せば、たちまち矢の驟雨にさらされる。

ただの矢ではない。音の矢だ。どう飛んでくるか、リレイには聞こえる。だから避けられる。その自信があったし――

(あの子がああまでしてくれてるのに、ただ見てるだけなんてわけには!)

 心の音は、どんな言葉より雄弁だ。音色ひとつで思いが伝わる。

あの音色を聞いてしまっては、ただじっとしているだけなんて、できるはずがない!


 リレイは滑り込むようにして矢の雨をかわし、大剣の元へと辿り着いた。

手を伸ばし、つかみ取る。

瞬間、大剣がカッと激しい光を放った。

え!?

リレイ!

 固まるリレイに、矢が迫る。

そのすべてが、甲高い音を立てて弾かれた。

リレイの身体から広がる”翅音”――心の音色のはばたきに払われて。



フェアリーコードを!?

 手の中で、大剣が形を変えていた。馬鹿でかい銃――のようなギター(・・・・・・・)。まったくよくわからないゲテモノじみた武器へ。

リレイは顔を上げた。胸が高鳴る。心が躍る。

場に満ちる音が塗り替わる――リレイの音に。リレイの抱いた心の音色に。


よくわかんないけど――

感じる。心がノッてきた!

 思いのままに少女は吼えて、手にした銃の引き金を引いた。


 ***

リレイの音色が聞こえるにゃ!>これなら勝てるにゃ!


ええいっ!

 心の音色は、散弾と化して宙を馳せ、降りしきる光矢を撃墜した。

もちろん、銃など撃ったことはない。ただ心のままに狙い、引き金を引くと、弾は意志あるもののごとく目標へ飛んだ。


wBこのおっ!

わ、わ、わ!

貸して!


 ルミスが割り込み、銃をひったくった。

それは一瞬で夜空色の大剣に戻り、鋭い軌跡を描いて妖精を捉える。

wBぎゃあっ!

 逆袈裟。妖精は大きく弾き飛ばされた。ざっくりと切り裂かれた胴体から、音が――気力がこぼれ落ちていく。

好機だった。ルミスは細剣を大剣に添え艶やかにかき鳴らす。

音が変わった。高らかにして鮮烈なる音色。ルミスが絶対の勝利を確信したからこそ流れる音なのだと、リレイは感じ取る。


ブレイクよ!


 ***


はあっ!

大いなる烈閃が奔った。

妖精は逃げようとした。だが逃げられなかった。勝利の旋律が流れているからだ(・・・・・・・・・・・・・・・)とリレイは悟った。世界が、その音色に律されているから。

勝利の旋律(フィニッシュコード)の流れるままに、夜空色の大剣が、妖精の胴を横薙ぎにした。


wBう――あ――あ――あぁあぁあああああっ!


 叫びとともに、音が弾けた。

荒ぶり狂える”好き”の音色が打ち砕かれ、妖精の全身に罅(ヒビ)が入る。

高らかな旋律が鳴り荒ぶなか”妖精は”粉々に砕けた。

散り散りになった羽根が、最後に淡く切ない音を奏でて、消えた。



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じゃ、リレイちゃん、またねー。

うん。またね、トヨちゃん。


 放課後。

校門を出てしばし、とりとめのない雑談を交わしたのち、リレイとトヨミは、いつもの道で別れた。

軽い足取りで去っていくトヨミの背中を見つめ、リレイは小さくつぶや<。


トヨちゃん、ほんとに覚えてないんだ……。

フェアリーコードが聞こえない人間は、音の外れた場所で起こったことを覚えておけないの。

わ。ちっちゃい。

昼間はこうなの。トロウはね。

トロウ?

シェットランドの妖精。わかる?シェットランド。

えーと……あ、あれだ!

シェットランドシープドックのいるとこ!そっかー、ルミちゃんあそこの人かー。


 ふと、リレイは聞きたいと思っていたことを思い出した。

ねえ、ルミちゃん。あの妖精、死んじゃったの?

音に戻っただけよ。あたしたち妖精は、みんな音から生まれた存在だから。しばらく経てば元気になるでしょ。

あ、そんな感じなんだ。

そ。言ったでしょ?”休止(ブレイク)”。フィナーレじゃないってこと。

それより、あなたよ。人間なのにフェアリーコードを操れるなんて。いったいどうやったの?

ノリで。

 それ以外、答えようもなかった。ルミスは、はあ、と嘆息する。

フェアリーコードを聞けるだけならともかく、操れるってなると問題なの。それって、世界の秩序を変えられるってことだから。

そうなの?

場に流れる音を明るいものにしたら、そこにいる人たちは楽しい気分になる。逆に暗い音を流せば、みんなわけもなく悲しい気分になる。

ある意味、人の心情を操れるようなものよ。

確かに。悪用されたら大変だね。

制御できなくても、大変よ。だからあなたには、しばらく、あたしのレッスンを受けてもらうわ。いい?

いいよ、ルミちゃん。

ルミちゃんはやめい。





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番外編「ついでにフェアリー



ルミちゃん。

やめい。

ルミっち。

それもヤ。

ルミにゃん。

イーヤ。

ルミ蔵。

ルミ蔵!!!???


***


リレイ、今日のご飯、何?

なんだろうね。ご飯はお兄ちゃんが作るから。

そういえばルミちゃん、ウチに来る前は食事どうしてたの?

食べたくなったら、食べたいものをそのへんからちょちょっと。

それって窃盗――

妖精の悪戯よ。いいじゃない、そのくらい。それに、ちゃんと、もらう代わりに”幸運”を残してってあげてるんだから。

いやでも窃盗――

ルミス、難しい言葉よくわかんないルミ~。

(こんにゃろう)






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2019
01/17
01. Fairy Chord
  序章
2019
03/14
02. ルミス編(GP2019)08/30
03. リレイ編(GP2019)09/12
04. フェアリーコード2
  序章
2019
11/26
05. フェアリーコード3
  序章
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