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【黒ウィズ】謹賀新年2019 ヴァレフキナ編

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
開催期間:2019/01/01

目次


Story1 青い炎

Story2 路地の子

Story3 左手





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story1




雨上がりの石畳の上に、つめたく冷えた月の光が映っていた。

裸足の足が寄り添うようにその月を踏みつけ、未練もなく離れていく。少女が歩いている。

路地の影から少女に声がかかる。


「キミ……。こんな夜中にひとりで歩いてたら、親御さんが心配するよ。」

影の中から、月よりも青白い肌の少年が現れた。

季節感のない短パンだった。

「まだ眠りたくないから、散歩でもしようと思ったの。それに……。」

少女は少し考えるような素振りをしてみせた。

「笑わないでね。部屋にお化けが出るの。」

「お化けね。それは、どんなお化けなんや。」

「生意気な奴なの。ひとりで眠るのが怖いんだろうとか言ってくるの。たぶん子どものお化けよ。子どもの声だったわ。

だから、わたし、うるさいって! 言い返してやるの。でも駄目だった。今度、神父さんに相談しなきゃ。」

「神父さんよりも、たぶんボクの方がお化けには詳しいよ。お化けを退治する方法を教えてあげようか。」

「ホントに!? 教えて教えて!」

「そういう子どものお化けには言い返すより、口をつぐんだ方がいいんや。

そしたら、お化けは言うことがなくなって、黙ってしまうんや。そのうちお化けは諦めて帰るはずや。

「へえ。今度試してみるわ。あなた、名前は? このあたりではあまり見ない子ね。」

少年はポケットの中に手を突っ込んだまま、答えた。

「ヴェレフキナ。最近、ここに越してきたんや。」

「ヴェレフキナ? 難しい発音ね。また会えるといいわね。」

「ボクはここにおることが多いから、キミがここに来るなら、また会えるやろ。」

「そう、わかったわ。 あ、そうだ。あなた、わたしの指輪知らない? おばあさんからもらったの。大事なものなの。」

「いいや、知らん。」

「わたし、ずっと探しているんだけど、見つからなくって……。」

「見つけたら、キミに教えるわ。」

「お願い。」



その女は教会での下働きを終えて、掃路についていた。いつもとは違い近道をするために、細い路地に早足で歩いていた。

新年の祭礼を控えたこの時期は、例年仕事が積み重なる。夜遅くまで仕事に忙殺されることは多かった。

それが彼女の不運の理由だった。

彼女の最後の声は冷たい夜気に飲み込まれて、誰にも届かずに消えた。

死体の温もりが消えた頃、ヴェレフキナが路地に現れる。

死体を見下ろし、親しげに話しかけた。

「キミの方は順調か?」

まったく順調には見えない女の死体が震え始めた。強張った肉が波打ち、徐々に変容し始めた。

殺された女だった体が起き上がり、ヴェレフキナに答える。

「ヴェレフキナ、仕事が遅いぞ。言うことを聞かない魂は消せばいい。

歳末大往生キャンペーンを言い出したのはヴェレフキナだろ。その割には全然往生させてないやで。」

「まあまあ、キミが慌てる必要はないやろ。ボクの好きにさせてえや。

それとも、ボクを手伝ってくれるんか?」

「アホ言うなやで。私は私で忙しい。なにしろ歳末大往生キャンペーンだからな。」

「消してばっかはあかんよ。」

「うるさい。ボケカス死ね。」

言い捨て、シミラルの体は、再び死んだ女の姿に変わり、その場に崩れ落ちた。

「死ねは言い過ぎやで、シミラル。」



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story2




「ありがとう、ヴェレフキナ! あなたの言ったとおりにしたら、お化けがどこかに行ったの!」

路地に置かれた酒樽に腰かけたまま、ヴェレフキナは微笑む。

「それはええことやね。」

「でもね、今度は違うお化けが出たのよ。」

「次から次に大変やね、キミの家も。」

「そのお化け、わたしが何もしてないのに、怒ってるのよ。早く寝ろって言ってくるの。わたしはまだ眠りたくないのに。」

ヴェレフキナは自分の青白い膝を抱きかかえ、少女を見た。

「そういう時は耳を塞ぐんや。話を聞かんようにした方がええよ。そうすればお化けもいなくなる。」

「そうなんだ。やってみる。」

「ところでキミ。なんて眠りたくないんや?」

少女は両肩を上げてみせる。

「だって、眠たくないんだもん。それに眠ると何もできなくなるじゃない。

夜更かしして、本を読んだり、日記を書いたり、つまみ食いをしたり! 楽しいじゃない?

それにこうやって夜の散歩するのも好き。ヴェレフキナにも会えたし。神父様もそれでいいって言ってくれたもん。

それなのに気持ちの悪いお化けが、眠れ、眠れってうるさいのよ。ホント、最悪。

ヴェレフキナは眠るのが好き?」

「好きとか嫌いとかはないね。ただ……キミみたいに怖がってはないよ。」

「わたし……怖がってないわよ。」

「へえ、そうなんやね。知らんかったわ。」



その女は蝋燭職人の娘だった。年の終わりの掻き入れ時には、家族総出で働くのがいつものことだった。

活発な彼女はひとりで荷馬車の手綱を握って、街まで配達にやって来ていた。

新年の祭礼がある教会への配達は大事な取引だった。

妙齢に近づきつつある少女に繰談のひとつでも用意してやらなければと両親は思うのだが、ついつい便利に使ってしまっていた。

結局、その縁談を用意する必要は無くなってしまった。永遠に。

「キミ、またボクのとこ来て……。なんや、もしかして暇なんか?」

シミラルが石畳に横たわる体を起こし、服に付いた埃を払う。

「それか……ボクのことが気になって気になって、しょうがないとか、そういうやつか?」

「…………」

「なんや? ……っていったあー!!」

シミラルは無言でヴェレフキナの太ももをつねった。思いっきりつねった。

「ふざけたことを言ってると、つねり殺すぞ。」

「そんな死に方で死んだひとボクでも知らんで……。はー、いた。キミ、短バンのー番弱いところ突くのやめえや……。」

「ヴェレフキナの進捗が悪いから様子を見に来ただけだ。私はもう3体片付けたぞ。」

「その魂はどうしたんや? 消したんか?」

「やで。どうしようもないクズどもだったからな。生きてるうちでもクズで、死んだ後でもクズだ。

消す以外の解決方法はないやで。」

「そうか。キミに任せてるのはそういう類やから、まあええけど。」

ヴェレフキナはつねられた太ももをさすっていた。シミラルが隣に立ち、路地の壁に背中を預ける。

「ここは死人が多いな。」

「道楽で人殺ししてるヤツがおるからね。」

「同じ奴がやってるのか?」

「せやろね。みんな左手が無くなってる。そんなこと、普通やることちゃうからね。」

「物好きだな。」

「せやね、悪趣味やけどね。」

「ヴェレフキナ、そういうクズに対して、私たちはどうすればいい? そいつを消せば、私たちの仕事も減るんじゃないか?

この世に未練を残す人が減る。」

「生きてる人、皆が皆、納得がいって死ぬわけとちゃうからね。それこそ、理不尽な死に方で死ぬ人もいてる。

そういう魂が悪さをすることもある。この世に未練を残すわけやから。

でも、ボクらの仕事は悪さをしてる魂の問題解決や。この世のことに手出したらあかんのがルールや。

それに、もしボクがソイツを始末したら、ソイツにとってはそれこそ理不尽なことやろうね。

ボクらみたいな人生の部外者に殺されるわけやから。」

「クズは生きていても死んでいてもクズだ。さっさと始末した方がいいに決まってる。」

「なんや、キミ。反抗期か? キミにもボクの仕事の意味を理解してほしいわ。ボクもいつまでもおるわけちゃうよ。

ボクがおらんようになった時に、あんまり過激な考え持って仕事されるのは困るわ。」

「ヴェレフキナは死なないやで。」

「さあ? どうやろね。

誰でも死ぬときは死ぬよ。」



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story



孤独と貧乏が染みついたような部屋の片隅に、薄汚れた毛布が敷かれていた。

窓から入る背白い月の光より白い足が人の詣で汚れた毛布の傍に立つ。

「キミ、まだ眠りたくないんか?」

毛布に包まった少女がぼんやりと青白い炎のように光る足を辿り、ヴェレフキナを見上げる。

「ヴェレフキナ? うん。まだ眠りたくない。まだまだ夜は楽しいことでいっばいだもん。それに――

見えない? あの天井のシミみたいなの……あれもお化けなの。とても怖い顔をしてるの。

あのお化けも、眠れって言ってくるの。」

「そういう時は目を瞑るんや。そうすれば、怖いお化けも見えなくなる。」

少女は瞼を下ろす。

「何も見えなくなった……。お化けも、何もかも。真っ暗よ……。誰もいない。」

「ボクが傍におる。さあ、他のお化けもやって来たみたいやね。教えた通りのことをしてみるんや。」

ヴェレフキナの青白い手が少女の頭の上にそっと置かれる。滑るように無垢な手が彼女の頬へと下りた。

「何も話さず、何も聞かず、何も見ず、眠るんや。」

毛布の裾を握っていた少女の手が、自分の頬に添えられた手を握る。

「怖い……。ねえ、わたしはいつ目覚めるの? ホントに目覚めるの? このまま、目覚めないんじゃないの?」

「大丈夫や。」

ヴェレフキナが少女の手を握り返す。その手に肉はなく、黄ばんだ骨が残っているだけだった。

その手を彼女の胸元に戻し、囁いた。

「キミの瞼の裏に何か見える? 何か見えへんか?」

あのうるさいお化けたちがいる。……違う。お化けじゃない……! パパ、ママ、アーティー坊や!

わたしは……わたしは……。」

少女が青白い光の粒に包まれる。

「もうええんや。ゆっくり眠り。きっとええ夢が見れるはずや。」

光の粒が少女から剥がれ、宙へと散っていく。真っ暗な部屋をわずかに青に染めて、光は闇に飲み込まれた。

「おやすみ。往生しいや。」

ヴェレフキナは少女のもう一方の手も胸の上に置いてやる。

左の手首から先が失われているせいで、手を組むことは出来なかった。

「指輪。見つけたら持ってくるわ。」

いつの間にか、宙に3つの鬼火が踊っていた。

「娘さん、死界に行ったよ。ボクとの約束通りキミらも死界に行こか。」

3つの鬼火は喜びを伝えようとしてか、何度かヴェレフキナの周囲を回り、それから消えた。

「これでボクは4体目や。キミは?」

ヴェレフキナは背中に寄り添う闇の中に声をかけた。闇の中から声が応じた。

「7だ。全然遅いやで。ヴェレフキナ。」

言いながら、シミラルは自慢げに指で7を作ってみせる。

「ゴイスーやん。でも残念やね。ボクの方はこれからもっと増える予定や。」




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story3




その街の教会では、一年の終わりの夜に祭礼が行われた。

祭礼は日が変わっても終わらず、信徒たちが去っていく年とやってくる年を祈りと共に迎えるのだ。

冬の長い夜が峠を越えた頃にようやく信徒たちもそれぞれの家に帰る。

だが教会から吐き出された人々に逆らい、教会へ向かう者がいた。

青白い肌と銀髪。そして季節外れの短パンの少年であった。

祭礼の終わった人気のない教会内を、神父が最後の見回りをしていた。ベンチに誰かいることに気づいた。

「誰ですか? もう新年の祭礼は終わりましたよ。」

「キミ、ここの神父さんか?」

片膝を抱えて、こちらを見返す少年に、神父は罪のようなものを感じた。

頭の中を激しく駆けまわる恐ろしい背徳の予感。自然と神父の目線は少年の左手の指先に向かった。

ほっそりとした指は世俗の何もかもを知らない無垢の美しさがあった。

「そうですよ。一体こんな時間にどうしたのですか?」

もし帰る場所がないというなら、今日はここに泊まっていくといいでしょう。

顎に力が入らない。珍しく神父は緊張していた。

「ちょっと教えてほしいことがあるんや。……人は死んだらどこに行くんや?」

「わかります。不安なのですね。人は死ねば皆、神様の国に行くのですよ。」

「そこはどんなとこなんや?」

「花が咲き誇り、病もなく、この世で犯した全ての罪を赦された人々が安息に暮らせる美しい場所です。」

「ふーん……ボクの知ってる所とはちゃうなあ。」

「はい?」

「この世の罪が赦されるっていうのは……どんな罪でも?」

「ええ、そうですよ。」

神父は少年の隣に座る。

信徒を導く時にはいつもそうするように、少年の左手を取り、その上に自分の手を重ねた。

少年の無垢な手はほんのり冷たく、それに触れる自分が、わずかに震えていることに気づいた。

「どんな罪も神様は赦してくれます。」

「女の子を殺して、その左手持って行っても?」

神父の手が思わず少年の手から離れた。

「事実を知ったその家族を異端者として弾劾しても? その彼らを死に追いやっても?

そんなことを何度も何度も繰り返しても、か?」

神父は少年から距離を取るように身構えていた。

「そんな都合のええ神様、ボクの知り合いにはおらんわ。」

神父は少年の瞳の中に、髑髏を見た。自分に笑いかける不気味な髑髏。

あるいは、それが自分の土の下での姿かもしれないと思った。

曖昧で、断片的な、記憶の切れ端が脳中を過ぎ去って、気づけば神父は少年の細い首を両手で締め上げていた。

「あ……か……あが……あ、あ……。」

「何を……何を知っているんだ、お前は!」

「あ……あ……は、あう……。」

「神は隔てなく赦しを与える! 私は神に仕える者だ。何よりも赦されているんだ!」

細い首に神父のごつごつとした指が食い込む。少年の白い肌に血が滲む。

「は、あ、あ、……あ……あ。」

「君も、きっと赦される……。」

少年の首がぐにゃりと後ろへ倒れる。宙を仰ぎ見る瞳に、光は無くなっていた。

神父は握りつぶし、どす黒くなった首へかける力を緩め、周囲を見渡した。

誰もいない。誰にも見られていない。

神父はふと冷静になり、少年の美しい手を綺麗に切り落とさねばと思った。

こういうことは時間が全てなのだ、とすぐに仕事に取り掛かろうと立ち上がる。

少年をベンチにもたせ掛けると、突然後ろに倒れた首が持ち上がった。

「キミ、人殺すのに、神様、言い訳にしたらあかんで。」

その瞳に再び髑髏が宿る。のけぞることすら出来ず、神父はその場に固まってしまう。

自分を見つめ、そして見つめ返す少年の顔がみるみるうちに崩れ落ちる。

肉が腐り、髑髏を宿した瞳からは涙の如く姐がはい出た。


その日の夜の終わりに大量の鬼火が見えたという。

新たな年の吉兆だという者もあれば、凶兆のようだという者もあった。



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story





「はあ、はあ! 馬鹿な……。馬鹿な。」

前夜の悪夢のような出来事がまだ頭から抜け切らぬまま、朝が来た。

神父に降り注ぐステンドグラス越しの光が、まるで神の恩寵のようであった。

ただ男はうわごとを呟き続けた。多くの足音と教会の扉が開く音すら、もはや気づかなかった。

「あなたたちは……?」

ようやく自分が街の人々に取り囲まれていることに気づく。

「神父さん……この教会の床下を調べさせてくれ!」

ドスンと太い釘を心臓に打ちつけられた気がした。

「昨日、娘が夢に出たんだ。死んだはずの娘がこの教会の床下を探れと言って泣いていたんだ。」

「この人だけじゃない。あたしだって同じような夢を見たんだよ!」

見るとこの街だけではない。隣やさらに遠くの街の人間もいた。

「何を言っているのですか……あなたたちは……?」

皆、見覚えがある。皆、娘を亡くした親たちである。

自分が殺した娘たちの葬式で見た顔ばかりである。

「教会の床下に何かあるというのですか……?」

神父の心臓に再び釘が打ち込まれる。

「娘が……娘がいるんです。」

失神しかかった神父がよろける体を支えようと片足に力を込める。

偶然か、神のいたずらか、はたまた死者の魂の導きか。床板が突然寿命を迎えて、音を立てて割れた。

「ひぃ!」

地獄の底に引き込まれるように、床下に転げ落ちた神父を受け止めたのは、いくつもの手であった。

防腐剤の詰まった瓶に入れられた手。

「こ、この指輪! 娘のよ!」

「あああ! あの子は子どもの頃に火傷をしたんだ。これだ、これがその痕だ!」

街の人々は瓶に詰まった忘れ形見を見つけると、それを抱え、神父を見た。

「お、落ち着きなさい……。」

神父は床下からはい出て、神の像が置かれた教会の奥へと逃げる。

それを追うように、神父を取り囲む街の人々の輪が小さくなっていく。

神父は背中にごつごつとした感触を感じる。ついに逃げ道が無くなった。

見上げた神の像は朝露で濡れていた。

まるで泣いているようだった。

その夜、燃え盛る教会の壁には、傑にされた神父の姿があった。

腹には彼が犯した罪が書き綴られていた。ナイフによって作られた傷で。




「これ、キミのやろ。キミに返すわ。」

ヴェレフキナは少女の遺体に左手を置いてやる。骨だけとなった指には指輪が光っていた。

「干渉しないんじゃないのか?」

「ボクは何もしてへんよ。魂が人々を真実に導いたんや。裁いたのもこの世界の人々や。」

「脆弁やで。」

「いや、ギリギリセーフや。」

とヴェレフキナは微笑む。

「死に切られへん魂たちの願いを叶えてやるんや。それがボクらの仕事や。

さて、もう一仕事やね。」



「神父さん。少しは懺悔でもせえへんかったんか? えらい見た目が変わってもうて。

そんなん死界にも来ていらんわ。」

「言っただろ。クズは死んでもクズだ。さっさと始末した方がいい。」

「それでも、ボクらが人殺したらあかん。アウトとセーフの線引きは重要やからね。

けど、死んでも治らんアホは……。」

ポケットに突っ込んでいた左手を抜き出し、つめたく笑う。

「完全にアウトや。」

青白い炎がその手に宿った。

ヴェレフキナが手のひらをかざすと、歪んだ魂の怪物は燃え上がった。

「往生しいや。」

「終わりだな、やで。」

これでボクは36人目や。キミはいくつやったっけ? 7とか6とかやった気がするけど?

どうやら、歳末大往生キャンペーンはボクの勝ちやね。」

「…………。」

「いったあー!! キミ負けたからって、太ももつねるのやめーや。」

「最後のヤツは私もちょっと手伝ったから山分けだ。」

「すごい暴論やね、キミ。そんなに手伝ってなかったやん。」

「うるさい。つねり殺すぞ。」

「だから、それどういう死に方なんや……?」

答える気も見せず、シミラルはその場を離れようと、踵を返す。

「仕事も終わったから、死界に帰るやで。」

後を追うようにヴェレフキナも続く。左手は再びポケットの中に戻っていた。

「せやね、ほな餅買うて帰ろか、シミラル。」

「フグも買って帰ろう。」

「ああ、あれ毒あっておいしいよね。」


いつか、どこかに、見たこともない短パンの少年が現れる時。

青白い炎が人知れず、死せる者たちの涙の理由を焼き尽くす。

真の意味での魂の救済。それが彼の仕事だからである。


ちなみに。


「ヴェレフキナ、餅もっと焼きなさいよ。全然足りないわよ。」

「餅持ってこい、コノヤロー。」


「キミら、ボクの炎は餅焼くもんちゃうよ……。」


「わたしは……アンコがいい。」


その炎は、餅も焼く。





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