【黒ウィズ】リフィル編(6th Anniversary)Story
2019/03/05
目次
登場人物
story
わかった、と答え、君は魔法を解き放つ。
黄昏に染まる屋根の上。走りながら放った魔法が異形の怪物を直撃し、屋根に転がした。
怪物の名は、〈ロストメア〉。いつか誰かが抱いて捨てた、〈見果てぬ夢〉のなれの果て。
彼らの目的は、〝現実〟に出ることだ。捨てられた夢である彼らが〝現実〟に出ることは、その夢が実現することを意味する。
だから、走る。この夢と現実の狭間の都市を。都市の中央に立つ、〝現実〟に通じる門を目指して。
転がった〈ロストメア〉に、たちまち〈メアレス〉たちの攻撃が殺到する。
〈夢見ざる者〉――〈メアレス〉。夢を持たぬがゆえに夢を潰せる、〈ロストメア〉の狩人たち。
熾烈な猛攻を受けてよろける〈ロストメア〉へ、君とリフィルは、とどめの魔法を浴びせかけた。
君とリフィルの魔法が詐裂し、〈ロストメア〉は木っ端みじんに砕け散る。
魔力は輝く蝶へと変わり、黄昏の空に羽ばたいた。
リフィルがこちらを振り向き、ふわりと笑った。〈メアレス〉たちもまた、それぞれ笑みを浮かべている。
あれ?と君は思った。なんでみんなで戦っているんだろう?と。
よほど強力な〈ロストメア〉が相手でもない限り、〈メアレス〉が手を組むことはないはずだが――
あ、夢だな、これ。と君は思った。
夢だとわかるや否や、目の前の光景が歪んでいって――
気がつくと、見慣れた都市に立っていた。
まぎれもなく、夢と現実の狭間の都市だった。
まだ夢を見ているのだろうか、と目をこすっていると。
聞き慣れた声が、足元から聞こえた。
なんかいた。
……え?
黄昏に、ウィズの叫びがこだました。
***
君は、リフィルを抱えて歩きながら事情を聞いた。
言えてなかった。
なるほど、と君はこの異界に飛ばされたわけを理解した。
「あのカード」が、この状況をリフィルの危機とみなし、君をこの都市に招いたのだろう。
いいよ、と君は答え、首をかしげた。そういえばルリアゲハは?と。
さすが妖精。ド自由だった。
こんな感じで。
死屍累々……もとい、ちび累々だった。
そのときだった。
突然、〈ロストメア〉が突っ込んできた!
story
〈ロストメア〉は大声を上げて頭を振り、ふとリフィルに目を留めた。
大きく口を開け、丸呑みにしようとしてくる。君はリフィルを腕に抱えたまま、あわてて飛びのき、これをかわした。
〈ボンノウン〉(と言うらしい)の口から、謎の光線が放たれる。君は、辛うじてかわしたが――
流れ弾に当たった市民たちが、次々とちっちゃくなってしまった。
君はリフィルを抱え、風の魔法を使った。噴き上がる風に乗り、ー瞬で屋根の上に到達。即座に走り出す。
これまでは、大した被害は出てなかったんだけど。まさか、特殊能力を使う〈ボンノウン〉が出てくるとはね。
〈ボンノウン〉が、口から謎の光線を撃ってくる。
君は逃げながらもかわしたが、いつまでも避けられるものではない。あのラギトでさえ、避けきれなかったのだ。
地味に魔道士殺しだな……と君は思った。
魔法で迎撃したいところだが、相手の光線をかわすのが精いっぱいで、それもままならない。
どうしようかと思っていると、リフィルが、くいくいと袖を引いてきた。
つぶらな瞳に、鋭い光が映えていた。
***
君は、背後から飛んできた光線を転がってかわしざま、屋根の上にリフィルを解放した。
リフィルがウィズに飛び乗り、ウィズが全速力で駆け出す。
〈ボンノウン〉は君には見向きもせず、リフィルを追った。
ウィズはリフィルを乗せたまま、猫ならではの機敏さで〈ボンノウン〉の光線をかわす。
その間に〈ボンノウン〉は、じわじわと距離を詰めてくる。ほどなくして追いつかれるだろう。
ついに、ウィズは屋根の端に差しかかった。いくらなんでも隣の屋根までは飛べない。
〈ボンノウン〉が、叫びを上げて迫ってくる。
リフィルはウィズの背から降り、相手の位置と速度を冷静に測って、数秒を数えたのち、叫んだ。
駆け抜ける〈ボンノウン〉の足元に、魔法陣の光が咲いた。
魔法陣から雷撃が詐裂。上を通り過ぎようとした〈ボンノウン〉は、感電して動きを止める。
――そこへ、背後から追いかけていた君が、魔法による追撃を叩き込んだ。
〈ボンノウン〉が飛び跳ね、目を回す。
すると、ぽん、という軽快な音がして、リフィルの身長が元に戻った。
少女の瞳に、ぎらりと烈火が燃える。
リフィルの指先から、光り輝く魔力の糸が伸びた。彼女はそれを鮮やかに操り、無数の魔法陣を織り上げる。
君も、新たなカードを取り出し呪文を唱えた。
君たちは同時に魔法を放つ。
ふたつの魔法の挟撃が〈ボンノウン〉を直撃し、その全身を打ち砕いた。
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驚いたよ、と君が笑うと、リフィルは満足そうに微笑んだ。
そういえば、と君は思い出す。
「私も磨くわ。私の魔法を。次に会うとき、あなたたちを驚かせられるように。」
あのとき、彼女はそんなことを言っていた。その言葉通り、「自分なりの魔法」を研究し、着実にものにしているのだろう。
困ったように言ってはいるが、どこか楽しそうでもあった。
いつの間にか、リピュアが追いついてきていた。
さすが妖精、とあきれていると、リフィルがふと、空の彼方に目をやった。
陽が、ゆっくりと空を燃やしつつある。夢と現実の入り混じる刻限――〈ロストメア〉が門を目指す頃合いだ。
あれ、と君は首をかしげて尋ねた。〈ロストメア〉退治は?
自分なりの魔法を極めたいって気持ちが、夢である可能性もあるから。自分では、まだよくわからないけど。
夢を持つ者は、〈ロストメア〉とは戦えない。この都市では、当たり前の理だ。
君は、なんだか不思議な感慨を覚えた。あのリフィルが、こんなことを言うなんて。
なんでもないよ、と君は笑った。
からかうようなリフィルの笑顔を見て、君はもうひとつ、前に彼女が言った言葉を思い出す。
「お返しの方法を考えておくわ。助けられてばかりじゃフェアじゃない。」
ウィズも思い出したのだろう。嬉しそうに口元をほころばせていた。
作ってくれないの?と尋ねると、リフィルは仏頂面で答えた。
にぎやかな笑い声が、黄昏に溶けていく。
夢のような時間が訪れることを期待しながら、君はリフィルたちとともに歩き出した。
リフィル、これどう思う?と君は尋ねる。
『この世の秩序を守るため、力を合わせて〈夢〉を討つ。それが〈メアレス〉!そうでしょう?』
ですよね。
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