【黒ウィズ】ひねもすメアレス Story5
story
Fら、らっしゃーせー……。
フィネアは魔法を使えるようになったけど、まだバイトを続けるんだね、と君は言った。
Fはい。お金を稼がないといけないので……。
魔法が使えるようになったフィネアのために、このリピュア先輩が、〈巡る幸い〉亭の特別メニューを伝授してしんぜよーう!
Fえっ、そんなのあるんですか?
で、玉葱と、人参と、あとブロッコリーをね、トコトコーン!て食べやすーいサイズに切るの。でもって、牛肉に塩胡根パッパしといて。
そしたら牛肉を炒めてー、玉葱、人参も入れちゃって!
赤ワインどぼーってして、グツグツきたら、水ざばーしてまたグツグツさせてね。
アク取ってー、そっから弱火で、お肉がふにゃんってなるまで煮まーす。
ふにゃんてなったら火を止めて、シチュールーを溶かして、とろんってなるまで火にかけるの。
あ、あと横で苑でてたブロッコリーも混ぜちゃって。
次は、ポテト!ジャガイモの皮をむいてー、ゆでてー、そんでもってマッシュ!マッシュあ、硬さは牛乳で調整してね。
んで、ジャガイモこねて、シチュージンの形にしたら、上からシチューをざばっとな!
最後にジャガイモでおめめを作って、ケチャップでまーるく目立たせてあげたら、できあがり!
Fなるほど~。
Fえ?
Fええっ!?
さすがに全部は……と君が難渋すると。
Cなんだ?盛り上がってるな。
D聞いてくれよフィネアー!俺らついに〈ロストメア〉倒したんだぜ祝ってくれーい!
Dナニコレ!!!?
その日、〈巡る幸い〉亭に3つの悲鳴が重なり響いた。
ちなみに普通に美味だった。
story
がちゃりと扉を開けて、〈巡る幸い〉亭に入る。
通い慣れた店の中に、見慣れた人々の姿がある。〈見果てぬ夢〉の怪物〈ロストメア〉と戦う〈夢見ざる者〉――〈メアレス〉たちだ。
カウンターの空いた席に座ると、すぐに、店員の少女――〈黄昏〉リフィルが、注文を取りに来る。
かと思いきや、リフィルは、ことりとカウンターにグラスを置き、抱えていた瓶から淡い色合いの液体を注いだ。
こちらの不思議そうな顔に気づいて、彼女はちらりと、カウンターの奥に目を向ける。
そちらを見ると、奥まった席に座る少年――〈夢魔装〉ラギトが、微笑を浮かべ、手にしたグラスの氷を鳴らしていた。
からかうように言って、〈墜ち星〉ルリアゲハが隣に腰かける。
視線を向けると、ぱちりとウィンクが返ってきた。
あわただしく扉を開け、ミリィが飛び込んできた。〈メアレス〉たちの顔に緊張がよぎる。
言いながら、何かがカウンターの上に乗った。
ネズミだった。
本人(?)の主張はともかく、ほぼネズミだった。
とにかく戻せ!今すぐ戻せ!
いつも通りの騒がしさが店内に響き渡る。
その騒がしさを味わうような気持ちでカウンターに置かれたグラスに手を伸ばすと、ふと、リフィルと目が合った。
あなた、今、夢はあるの?
夢はある。
夢はない。
返答すると、
リフィルは、穏やかに微笑んだ。
意地を抱き、現実を見据え――戦う限り、〈夢想見ざる者〉よ。
そう言って、彼女は小さなグラスを掲げる。
あなたの選んだ道と、その道をゆく意地に。
互いのグラスを軽く打ち合わせると、からん、と軽やかな氷の音が響いた。
それはどこか、祝福のために鳴る、鐘の音のようだった。
黄昏メアレス | |
---|---|
00. フェアリーガーデン | 2014 02/21 |
01. 黄昏メアレス 序章・1・2・3 番外編1・2 | 2016 03/15 |
02. ルリアゲハ編 GP2016 瑠璃の時雨の降りしきる | 06/13 |
03. ラギト編 GP2016 〈ファインティングメア〉 | 06/13 |
04. 黄昏メアレスⅡ 序章・1・2・3・4・5 | 2016 10/31 |
05. 外伝 | |
06. 黄昏はろうぃん | 10/31 |
07. 黄昏メアレスⅢ 序章・1・2・3・4・5・6・7・8・9 | 2017 06/30 |
08. ルリアゲハ&リフィル編 年末メアレス | 01/01 |
09. リフィル編 GP2017 黄昏を背負う少女 | 08/31 |
10. 黄昏メアレスⅣ 序章・1・2・3・4・5・6・番外編 | 2018 04/13 |
大魔道杯 in 黄昏メアレス | 04/20 |
11. リフィル編(6周年) | 03/05 |
12. ルリアゲハ編(ザ・ゴールデン2019) | 04/30 |
13. ひねもすメアレス 序章・1・2・3・4・5 | 2019 06/13 |
14. リフィル編(GP2019) | 09/12 |