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対シュネー艦隊戦 Story【黒猫のウィズ】

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王国暦532年。天の涙が落つる月の未明。

ドルキマス王国は、隣国シュネー王国との3年目の戦いに突入しようとしていた。


狭疑心の強い両国の王は、どちらも相手の権勢が膨らむことだけをおそれていた。

その挙げ句に起きたこの戦争は、現在も収拾の目処が立つどころか――

両国に多大な被害をもたらしながら、いまなお戦線の拡大がつづいていた。



ドルキマス国境から50空里離れた敵国内の空。

無数の砲弾を受け、黒煙を上げながらもなお、飛行をつづける駆逐型飛空艦艇が1隻あった。


”未明。敵艦隊と遭遇。我が艦隊との空戦となる。砲撃開始直後、敵艦艇の砲弾が、我が艦の艦橋と甲板に直撃。”

ドルキマス空軍所属ブルーノ・シャルルリエ少尉。

通信兵をまとめる士官としてこの艦に乗艦していた、この若き士官は、沈みゆく艦と命運をともにすることを決意していた。

”艦長以下、指揮命令を担う将校は、我の他すべて戦死したもよう。甲板上の主砲にも甚大な損害が認められる。”

上官が戦死した以上は、空軍司令部に送る報告をまとめるのは、己の最期の役目だとブルーノは考えていた。

死が目前に迫っているというのに、ブルーノは驚くほど冷静に被弾した艦の状況をまとめていた。

”我々将校の出血を代償とし、この艦の墜落を償うものなり……。”

右手でペンを走らせながら、空いたほうの手で拳銃を握りしめていた。

”しかし……まだこの艦には、ドルキマス兵が生き残っている。

彼らをひとりでも多く避難させ、そののち我は、この艦と運命をともにするものなり。”


艦内には黒煙がたちこめ、艦の姿勢も水平を保てない危険なありさま。

昏徘の外からは、生き残った兵たちが最後の最後まで希望を繋ぐべく奮闘する声が聞こえた。


(いまは、彼らのために生きねば)

ブルーノは、自決用の拳銃をホルスターにしまう。


部下から、艦の状況についての報告を受ける。艦の操舵は可能だが、戦闘継続は無理とのことだった。 

(操舵するといっても、私は艦を動かしたことがない。それに命令を下してくれる上官もいない……)



ふと、黒煙立ちこめる艦橋のなかで、悠然と佇み、敵艦隊を見据えているものがいる。

艦橋要員に生き残りがいたのか?それとも、兵卒が迷い込んできたのか?


「敵艦隊は、黒煙をあげる当方には、目もくれずか……。だが、こちらとしてはありがたい。」


若い軍人は、空に顔を向けながら、目だけを動かしてブルーノを一瞥する。

「貴様、所属はどこだ?艦橋要員でないものは、いますぐ離脱の準備をしろ!」


墜落しつつある艦に乗艦していながら、なんとその男は――ロ元に笑みを浮かべているではないか。


ディートリヒ・ベルク!?やはり、この男は生き残っていたか)

「ここから勝つなどたやすいことだ。なのに諦めるとは……。」


襟の階級章は准尉となっているが、このディートリヒという男は、ドルキマス空軍のなかではちょっとした有名人だった。

同じ艦員となってからも、ディートリヒの噂を聞かない日はなかった。もちろん、いい噂ではない。

(戦争好きの書生下士官。古代から近代の戦記、戦闘記録をすべて暗記し兵棋演習では負けたことのない戦争狂)

身の程もわきまえずに参謀本部に憲見具申し、あげく司令部の高級将校を論破して、無用な恨みを買うのが得意の変人。


そんな目障りな兵は、当然『死刑台』と呼ばれる甲板の戦闘要員として送り込まれ――

敵戦艦の矢面に立たされたのち、空の塵となるのが常だが。

このディートリヒ・ベルクという男は、甲板に立たされても死なないどころか――

同じ死刑台に立たされた他の甲板要員を激励鼓舞し、機関砲、副砲、高射砲、小銃。手榴弾。発光銃。

ありとあらゆる装備を駆使して、必ず戦果をあげてくる。


はじめは、知識だけの書生下仕官と侮っていた将校たちも、ディートリヒの力を認めざるを得なかった。

そしてとうとうドルキマス空軍は、この男に下士官最高位かつ、空軍の長い歴史のなかでも数名しか存在しなかった――

『准尉特務兵長』の階級を与えたのだった。



「いま勝てると言ったな?ここからでも、勝てるというのか?」

上官であるブルーノの問いかけにディートリヒは戦争狂のあだ名にふさわしく、狂気をはらんだ笑みを浮かべてみせた。

「戦は、ここからが面白いのです。死神に背後から追い立てられ、絶望にすべてが染まった瞬間。

無我夢中で絞った引き金が、敵指揮官の命を奪うこともある。それが戦というものです。」

「我が艦は、甲板に被弾し副砲は全滅。主砲も半壊。おまけに艦橋要員も戦死し、腕と頭脳をもがれた状態である。

残念ながら、最後の一撃を放てる状態ですらないのだ。」

ブルーノも臆病な士官ではない。この艦が、反撃できる状態ならば、むざむざ諦めたりはしなかった。


「手と頭がなくても足があります。武器がなければ、この艦そのものを武器にすればいい。」

「まさか……!この艦ごと敵に体当たりさせるつもりか?」

相手がディートリヒでなければ、若い兵の立てた無謀な作戦だと、一笑に付していたところだろう。

「この駆逐艦は、小国ドルキマスが、貴重な資源と生産力を割いて製造した艦です。

それをむざむざ、敵国内に不時着させてよろしいのですか?それこそ資源の無駄というもの。

私ならば、この艦を有効活用し、艦隊戦をひっくり返す、逆転のー手にしてご覧にいれます。」


その弁舌は滑らかで、なによりひとを説得するのに必要な迫力と自信に溢れていた。

さらに、ディートリヒという男に授けられた2つの『黄金翼十字勲章〈おうごんよくじゅうじくんしょう〉』が、無類の説得力を発揮していた。


黄金翼十字勲章は、ただの勲章ではない。

戦況を覆す……または一艦隊規模の戦力を救うに等しい働きをした兵にだけ与えられるドルキマス空軍最高の勲章だった。

ディートリヒは、志願兵時代、壊れかけた旧舶にならず者たちを乗せて戦果を勝ち取るという――

奇抜かつ、奇跡的な手法であげた功績により。

この若さで最高位の勲章を2つも授かる栄誉に浴していた。


「……どうすればいい?」


ブルーノの口から自然と言葉がこぼれた。

死神がすぐそこまで迫っている。この広大な空で、味方艦隊は、まだ敵艦隊との交戦を続けている。

このまま被弾した艦とともに、敵国内に落ちていきたくはない。

ブルーノの空軍将校としての誇りと運を、この男――ディートリヒ・ベルクに賭けてみたい。

そう思わせるだけの魅力があった。


「かっ……ははははっ!?」


しかし、ブルーノの意地とプライドの薄っぺらさを見透かしたかのように、ディートリヒは、悪魔的に笑った。

……この男に頼ってはいけなかったのか?まさか、いまのは、ひとをあざ笑いコケにするためのはったり〈ブラフ〉だったのか?


だが、もう後戻りはできない。

ブルーノ・シャルルリエは、戦争狂の悪魔が差し出した魅惑の果実をすでに口にしてしまったのだ。


「頼む。我々を導いてくれ。この危機をどうやって乗り越えたらいい?」

笑っていたディートリヒの表情が、面をつけたようにピタリと固まる。


「いいでしょう。教えて差し上げますよ。黄金翼十字勲章の取り方をね。」


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story2



ドルキマス空軍艦隊と敵国シュネー艦隊との交戦は、太陽が地平から顔を出し終える直前から開始された。

空軍司令……いや、ドルキマス国王が、いかなる目的をもって敵国内に艦隊を派遣したのかは一一

将校といえど艦長ですらないブルーノの立場では、理解が及ばず、また理解する必要もなかった。


「我がドルキマス艦隊を率いるのは、レーベンクラン大将閣下だ。戦機を見定めるのに長けた大将との噂だ。」

ドルキマス艦隊の中央後方に巨大な戦艦がある。それが、レーベンクラン大将が搭乗している――艦隊旗艦だ。

もちろん、シュネー国の艦隊にも艦隊旗艦が存在している。

切れ切れの雲の遥か向こうに見える敵戦艦が、ふてぶてしくも旗艦であることを示す三角旗を掲げている。


「簡単なことだ。あの旗艦を落とせばすべて終わる。」

ディートリヒは、なんでもないことのように言うが、このままでは、近づくことすら容易ではない。  

「敵艦隊は、比較的小型の駆逐艦と巡航艦を前方鋒矢状に展開し、旗艦はその最後尾に位置する――   

一方、我が軍も、艦隊陣形をとっていたが、敵の砲撃に押され、陣形が崩されつつある。」

敵は、自国の空を守るため、死に物狂いだ。おまけに地上からの高射砲の援護もある。

いわゆるシュペーア・ビルドゥングの陣形をとっていた。

「敵はますます勝ちを意識しているだろうな。いいぞ……それでこそ、付け入る隙がある。」


いつの間にか、ブルーノに対する口調がぞんざいになっている。

だが、そんなことに拘っていられる状況ではなかった。


「ここから、どうやって勝ちを呼び込むというのだ?」

「貴君は、自分の艦隊を指揮する大将を信じられないのか? レーベンクラン閣下は、老いているとはいえ、一流の空戦指揮官だ。

劣勢のまま終わる指揮官ではない。必ず、悪い流れを逆流させる一手を打つ。我々は、その流れを利用させてもらうのだ。」

下士官の分際で、ディートリヒは味方の指揮官のことをまるで、自分の部下のように詳細に把握していた。

レーベンクラン大将がこれまでどんな戦に参加し、どのような功績を挙げてきたかなどは、当然のように頭に入っている。


「流れに乗り遅れぬように。まずはこちらの艦の態勢を整えねばな。貴君、やることは山のようにあるぞ。」

戦況が推移しつつある間にディートリヒは、伝声管を使って操舵経験のある兵を呼び、他の兵には、艦の修復作業の指揮を出した。

その手際は、長年この艦を仕切っていたかのようだ。

これが本当に下士官の手際かと、ブルーノは驚きを隠せない。



ディートリヒは、瞬く間に艦の制御を取り戻す。そして、主な乗員を艦橋に呼び込んだ。


「これで準備は整った。では、これより我らは戦場に復帰する。」

艦橋に集められた兵士たちの顔が、緊張でこわばっていた。


「ただし、無駄に死にに行くのではない。我々は、ドルキマスに勝利をもたらすためのー手を打ち込みにいくのだ。

我々の動きでこの戦況をひっくり返す。劣勢に甘んじているレーベンクラン閣下に月桂樹の冠を差し出しに行くのだ。

我々は誇り高きドルキマスの空軍兵。空は、我らの戦場であり、墓場であり、栄光の楽園でもある。

貴君らに栄誉に繋がる階〈きざはし〉を踏ませてやろう。

勝利ののち、祖国に戻れば英雄だ。私とともに栄光を勝ち取ろうではないか。」

雄弁であり、なにより兵にとって戦闘意欲を掻き立てられる内容だった。


ディートリヒは、甲板要異に追いやられたときも、ならず者を古い艦に乗せて敵に突撃するときも一一

必ず、こうした演説を行い、周囲を鼓舞し、戦意を喚起して栄光を勝ち取ってきたのだった。


(不思議だ。この男の言葉を鵜呑みにすれば、どんな負け戦でも勝てそうな気がしてくる)

事実、前線の兵たちは、ディートリヒを将校たちのように侮ってはいなかった。

ディートリヒとともに戦ったものたちは、口を揃えて彼をこう評する。

『戦神が、ドルキマスに勝利をもたらすために我々の前に現れたのだ』と――



被弾し、いまだ煙を立ち上らせている駆琢艦が、ディートリヒの命令で戦線に舞い戻った。

「では、操舵手。面舵―杯。前方を航行する巡航艦の後尾につけ。彼らを盾にして進むのだ。」

しかし、中破状態で甲板は半焼。主砲すら撃てない艦を気にするものなど敵側にも、味方側にもいなかった。


「味方艦から通信。半壊している艦が、航路上に入り込むなとのお叱りだ。」

「では、こう返せ。我、敵砲撃を受け、操舵不能なり。

しかし、艦内の士気はいまだ旺盛。救援無用。……とな。」

「それは、ただの嘘ではないか。」

「構うものか。どうせ、この艦は空の塵となって消えるのだから。気に病むことはない。」

ディートリヒの思惑どおり、味方艦からのそれ以上の通信はなかった。

「そんなことよりも貴君は、功績をあげる機会を見過ごすことをおそれるべきだ。」


これでもう、誰にも邪魔されることはないと、ディートリヒは、心のなかで笑っていた。


勝利の機会は一瞬。それを逃せば、空の塵となる運命。

無謀な賭けだ。なのにディートリヒは、この状況を楽しんですらいる様子だった。

狂気ともいえる無謀な作戦の遂行は、着々と進められていた。


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「面舵15度。両機前進半速。

巡航艦の後尾に張りつけ。いまはまだ追い越す必要はない。」


ディートリヒたちの駆逐艦は、味方巡航艦の1方に位置し、ほとんど距離を離さずに進んでいた。

ここならば、敵の砲火にさらされず、また敵から存在を気取られることもない。

すでに味方艦隊には、操舵不能であることを無線で通達してある。

戦闘が一区切りつくまでは、誰も構うものはいないだろう。


「しかし、このまま味方艦を盾にして進むだけでいいのか?」

「貴君、我々が盾にしている巡航艦の艦長は、誰か知っているか?」

「当然だ。ドルキマス空軍の勇士であり、「獣牙〈じゅうが〉」とあだ名されるオトカル中佐だ。」

艦隊を率いるレーベンクラン大将をして「突破力に関しては、ドルキマス軍に並ぶ者なし」と言わしめた艦隊戦の達人である。

「同時にオトカル中佐は、堅実かつ粘り強い指揮で与えられた役割を確実にこなす優秀な艦長だ。

目立ちたがり屋の多い空軍将校のなかで得がたい人材。ゆえにレーベンクラン閣下もその手腕を大変、買っておられると聞く。」

そこまで知っているのかと、ブルーノは、感心してうなずくのみであった。


「まだ、私の言いたいことがわからんか?」

表情にわずかな呆れが宿っている。

「レーベンクラン閣下は、このー戦におよぶにあたって、オトカル中佐に勝利の鍵を託したのだ。」

「その可能性はあるだろうな。だが、それは君の当て推量に過ぎんだろ?」

「では、見たまえ。オトカル中佐の巡航艦を。」

その隣に、念入りにも予備の推進機関が、ふたつも取り付けられている。


「予備推進機関は、艦隊戦には不必要。下手をすれば、逃走の用意かと味方から勘ぐられるため、搭載しない艦がほとんどだ。

中佐ほどの男が、そのような不用意をおかすと思うかね?」

そこまで説明されて、ブルーノはようやく理解した。


「先ほど言った流れを変える一手を打つための準備か?」

「その流れに、こちらも便乗させていただこうではないか。そのあとは、個々の指揮官の力量がものを言うだろう。」



ディートリヒの読みは当たった。

艦隊戦が中盤にさしかかったこる、オトカル中佐の艦が突如一一

予備推進機関を可動させ。最大戦速で伸びきった敵艦隊の右翼側に回り込もうと機動する。


「こちらも最大戦速。中佐の巡航艦に引き離されるな。」

優勢だと信じ、無警戒に陣形を伸ばしきっていたシュネー艦隊は、側面をあっさりオトカル中佐に明け渡してしまった。

オトカル中佐の巡航艦は、まるでかぎ爪の先端のように鋭く敵艦隊の側部を突き剌した。

敵艦隊を前後に分断するべく、右翼側から左翼側へと突破を試みる。

事前の打ち合わせどおりなのだろう。機動性能の高い他の艦もオトカル中佐の艦に追従していた。

そのなかにはもちろん、ディートリヒたちの乗る駆逐艦もあった。


「さすがに、敵の砲撃が激しすぎるな。このまま中佐の尻にくっついたままでいるのか?」

「オトカル中佐というかぎ爪が、敵の肉に食い込み、骨まで達したところで――

我らは1本の毒針となって敵の心臓をひと突きする。

そこまでしないと、勝利を呼び込めん。そうは思わないか?」


心臓とは、すなわち麹む監隊旗艦――敵の親玉のことだ。

大胆不敵を越えた、誰も予想しない狂気の戦策。

ディートリヒは、口元に笑みを浮かべて操舵手に告げる。

「取り舵45度。両機最大戦速。」

駆逐艦の船首が、艦隊奥に鎮座している敵旗艦へと向けられる。

最初からそうすることを意図していたかのように――

「この艦そのものが、一発の砲弾であり。ドルキマス国に栄光をもたらす、ひとふりの剣である。」


ディートリヒのいう、戦場の流れに上手く乗れたせいか――

あれほど違い場所にいると思った敵旗艦が、現在はもうすぐ目の前にあった。

「進め。奴らの主砲が狙いをつける前に、我々の一刺しが貫くだろう。」



敵旗艦にとっては災難だった。

オトカル中佐たちの変化した艦隊運動に注意を注いでいる最中――

中破した駆逐艦が、味方を離れて追ってくるのだ。

彼らにとっては、降って湧いたような不運であった。

蛙首を傾け、なんとか駆逐艦の体当たりを回避しようと試みるも……手遅れだった。

一足早く、ディートリヒたちの乗っていた艦が、敵旗艦の艦橋に突き刺さった。


死を目の前にしたシュネー艦の将校らは、悟るのである。

我らは、天運に見放されたのでも、不運な事故に巻き込まれたのでもない。

何者かが打つべくして、手を打ち。我らはそれによって死んでいくのだと……。



 ***



「つまらんなあ……。こうも上手くいってしまうと、まったく張り合いがない。」


ブルーノ・シヤルルリエは、避難用の小型艇のなかで、この前生まれたばかりの娘の写真を見つめていた。

「まさか生き残れるとは思わなかった……。」

あのまま敵艦に体当たりして、散り去る運命だと思っていた。

あそこで死んだとしてもドルキマス軍人としての面目は、十二分に保たれただろう。


「貴君は、使える男だ。だから助けた。資源の少ないドルキマス軍に、人的資源を無駄遣いする余裕などない。」

「使える?私は、今回なんの役にも立っていないが?」

「今回、艦を立派に導き、空軍に勝利をもたらしたではないか?『黄金翼十字勲章』は貴君のものだ。」

「ふざけるな!私はひとの手柄を横取りする男ではない!」

「いいや、貴君には勲章を貰ってもらう。……しかし、代わりといってはなんだが、頼みがある。」

声のトーンが突然変わった。この男が、勲章の代わりに望むものとはなんなのか気になった。


「まさか、士官に推薦しろというのではないだろうな?」

「そのまさかだ。上り詰めなければいけない理由があるのだ。」

頼み事をするのが苦手なのか、若い下士官は、表情を隠すように帽子を深めにかぶる。


志願兵のディートリヒは、たとえ能力があるうと士官になる資格がない。いまの階級が限界だ。

正当なるドルキマス国民でないと、士官になれない決まりがあるのだ。


しかし、それにも例外はある。

准尉の階級にあり、なおかつ現役士官の推薦がある場合に限り、志願兵にも将校への道が拓ける。

現在のディートリヒは「准尉特務兵長」の階級にある。あとは将校の推薦があればいいのだが……。


「どういうわけか現役の将校には、ことごとく嫌われていてね。……できれば、貴君に力になってもらいたい。」

「どういうわけか……ねえ? くっ……ふふふふふっ。あははははっ。」


おかしくてたまらなかった。この男、どうやら自分が嫌われている理由を理解していないらしい。

戦場ではなにもかも見通していたのに。自分のことになると、なにも見えていないとは。


「笑うな。失敬だぞ?」

「すまん。すまん。……くくくっ。」



数ヶ月後、ディートリヒの襟の階級章は、ブルーノと同じく少尉の階級章に変わっていた。

その後、瞬く間に、ブルーノを追い越し、元帥までの階段を駆け上っていくのだが……。


ディートリヒとブルーノの関係は、本人たちも予想しなかったことに、士官に推薦して終わりとはならなかった。

元帥号を授かるまでディートリヒの側には、常にブルーノ・シャルルリエの姿があったと言われている。 





 対シュネー艦隊戦 ―完―

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ブルーノ・シャルルリエという男は、私にとって必要な男だった。
だが、奴の冥福は祈るまい。そのうち私も、奴の所に行くだろうからな。


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