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血盟のドルキマス Story5

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黒猫のウィズ×コードギアス コラボ
2018/11/30

story 友




ルルーシュはドルキマス王都に留まっていた。

ディートリヒは散り散りになっていた自らの艦隊を集めたが、戦況は芳しくない。

イグノビリウムの大艦隊は、守りが薄かったフェルゼン王国の王都に停泊しているらしい。問題は――


「敵は分断作戦に出たようだ。」


王が蘇り、いくばくかの統率が生まれたのか敵の動きに変化が現れていた。

ドルキマス国と各地の方面軍との間に、イグノビリウムの艦隊があらわれ、行き来を封じたのだ。

これによってディートリヒはドルキマス軍の主力、シャルルリエ艦隊のみならず――

共闘状態にある天の使いファーブラ、竜騎軍ウォラレアルとも分断され――

小国ドルキマスの領内に孤立させられてしまった。

ことはディートリヒのみの危機ではない。分断は無線の通信距離を超えている。前線の方面軍に指示が届かなくなったのだ。


「それぞれの軍の長は有能だが、軍略というものを持たない。私の指示がなくては長くはもつまい。」


一桁の計算に答えるような明瞭さで、ディートリヒは窮状を口にする。

相対するルルーシュは――冷静にその窮状を眺めていた。



(ナナリーを救うには、あの強大なイグノビリウム艦隊と相対する必要がある。しかし、人類側の戦力も連携も著しくない。

せめてナイトメアを中心とした強襲部隊を組成しようにも、現在の戦力は、カレンとジェレミアだけ。

蜃気楼を入れてもわずか3機。これでは戦術すら……

せめて……せめてカレンに匹敵する力がもうひとつでもあれば……)


「策に窮しているようだな。」

「あなたこそ、まるで他人事のような素振りだ。」

「褒め言葉と受け取ろう。軍略家というのは現状を冷静に見る必要がある。ある意味では他人事として見ているな。」

「なるほど。それは大切なエルナ嬢が危険にさらされていても?」

「確かにエルナが死ねば、取り返しはつかない。だが、失ってはならぬものを失うのが戦争だ。」

「私は最愛の妹をさらわれた。そう考えることは出来ない。あなたはそれが出来るのだな。」

「あいにく、肉親の情なるものに縁がないのでな。」

「……。」

ルルーシュは何かを見定めようとしている。

「そんなあなたに意見を聞きたい。あなたにはこのような窮地に助けてくれる友はいるのか。」

ディートリヒは、なにかを思い出すように、あらわになっている片目を細くした。

「かつてはいた。歳は私よりも上だったが、不思議と気が合った。あのような友は二度と得られまい。」

「……過去形か。つまり……。」

「死んだよ。私が死地へと追いやった。勝利のために、必要だったのでな。」

「友を殺したのか。」

「友でなければ託せない任務だった。」

「友だから託す……か。」


ルルーシュは決意する。

「そうだな。あなたの意見が聞けて良かった。礼を言う。」

そう呟くと、ブリッジから出ていった。



「……驚きました。……その、閣下がブルーノ・シャルルリエ提督に関して人に語るのを、はじめて耳にしました。」

ディートリヒは副官の言葉に応えず、ただ瞳を閉じた。



 ***



ルルーシュは蜃気楼のコックピットにいた。

通信をつなげる。通信先は、かつて敵として登録したもの。ナイトメアフレーム――ランスロット。



”……ゼロ、いやルルーシュか。”

「……そうだ。俺がゼロだ。」

”……クッ。今度はごまかさないんだな。それで、僕になんの用だ?”

「頼む。いっしょにナナリーを助けてくれ!」

”ナナリーだと? ナナリーもこの世界に来ているのか?”

「ああ。敵に、イグノビリウムに捕らわれた。戦うにも戦力が足りない。頼むスザク! お前の力を貸してくれ!」

”……君の頼みなんか、僕が引き受けると思うのか?”

「思わない。それでもお前の力が必要なんだ。」

”身勝手だな。”

「わかっている。しかし、俺には、お前が……。

頼む! ナナリーのために……。」


”……わかった。ただし、条件がある。”



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story スザク




スザクの出した条件は、彼のもとへ、ルルーシュがひとりでおもむくことだった。

場所はフェルゼン王都――敵の集まっているまさにその場所だった。


「絶望的な状況で、人々を守るため、ひとりで戦っているのか。アイツらしい。

――もう8年も前になるのか。」


ルルーシュの脳裏に、はじめてスザクと出会った頃の光景がよみがえる。

父である皇帝シャルルの命で日本へとやられた ・ルルーシュとナナリーは、日本国首相枢木ゲンブに所縁のある枢木神社へと預けられた。

そこで出会ったのが、ゲンブの息子、枢木スザクだった。

まっすぐすぎるその性格ゆえにはじめはルルーシュとぶつかり合ったスザクだったが――

だからこそ、ルルーシュの生まれてはじめての友達となった。


「ナナリーを救うため、最後のー手を託せるのはスザクしかいない。お前が俺を受け入れてくれるのならば……。」


行く先は、敵の巣窟。ひとりで行くなど自殺行為だと、誰もが言うだろう。

だが、ルルーシュは、古い友のもとへ、迷うことなく向かった。



 ***



幼い頃の枢木スザクにとってルルーシュやナナリーと過ごす時間はなによりも大切なものだった。

だが、その幸せを守りたいと思うあまり、スザクは過ちを起こした。

ブリタニアヘの徹底抗戦を主張した当時の日本国首相、枢木ゲンブ――実の父親を、殺害してしまったのだ。

以来、スザクは繭罪を求め、死に場所を探して生きてきた。

――彼女と出会うまでは。


「ユフィ……。」


「私を好きになりなさい! そのかわり私があなたを大好きになります!」

神聖ブリタニア帝国第3皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニア。スザクを騎士に叙任した、彼の主。

「あなたのかたくななところも優しいところも、悲しそうな瞳も、不器用なところも、猫に噛まれちゃうところも、全部。

だから自分を嫌わないで!」


誰よりも優しかった彼女は、スザクのもっとも必要とするものを、生きる意味を、与えてくれた。

植民地として盧げられるエリア11を行政特区日本として、平等の世界にしようと戦う強さも持っていた。

彼女の生き方、彼女の願い、彼女の存在――それはスザクの希望そのものだった。

だがその希望は、失われた。


「日本人を名乗る皆さん、お願いがあります。死んでいただけないでしょうか?」

行政特区日本の式典において、絶対にするはずのない命令を彼女はくだした。

「えーっと、自殺してほしかったんですけど、だめですか。じゃあ、兵士の方々、皆殺しにしてください。虐殺です!」


その果てにゼロに撃たれ、スザクの見守る前で、ユーフェミアは短い命を終えた。

真実は意外な形でスザクにもたらされた。

人ならざる力、ギアスでユーフェミアの意志は捻じ曲げられ、盧殺皇女の汚名を着せられたことを、皇帝の実兄からスザクは知らされる。

なぜゼロが、ルルーシュがそうしたのかは知る由もない。

確かなことはひとつ。ユーフェミアから己の意思を奪い、死に至らしめた者を許すわけにはいかない。

――それだけだ。

そして今、スザクは、思いもよらず流れ着いた異世界で、仇敵である親友と対峙した。


「ひとりで来たのか?」

「約束だからな。」

「よく来られたね。」

「外縁から王都に入るには128のルートがある。イグノビリウムの目を掻い潜るには7つのルートが設定できた。地上を進むルートなら……。」

「違うよルルーシュ。よく僕の前に顔が出せるな。――そういう意味だ。」

「……。」

「それに、ルートを選んだ割には、敵に見つかってるじゃないか。ほら。」


スザクに促されるが、ルルーシュは振り返らない。そこにはどこからともなく湧きあがってきた、イグノビリウムの兵士がいる。

「その様子。気付いていたのか。」

「いや、気付いていたんじゃない。予測していたんだ。」

「どういう意味だ。」

「詳しい話は、こいつらを片付けた後だ。」


ルルーシュの左眼が輝く。


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story



「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! 貴様たちは死ね!」


抗うことの許されない絶対遵守のギアスが、迫りくるイグノビリウム兵の群れに向けて放たれる。

次の瞬間、敵は自らを撃ち抜き、地面に倒れ、塵に帰った。

その際、わずかな違和感を覚える。

(うん? 今のは……)

その思索を深めるよりも先に、硬質な声が、ルルーシュの背にかけられる。 


「その力で、みんなを操っていたんだな。」

スザクの瞳は冷たかった。


「確かめたい。君がユフィにギアスをかけたのか?」

「……ああ。」

「日本人を虐殺しろと。」

「俺が命じた。」

「なぜそんなギアスを……答えろ!」

「日本人を決起させるためだ。行政特区日本が成立すれば、黒の騎士団は崩壊していた。」

「シャーリーが死んだのは?」

「俺のせいだ。」

「人間じゃない。君にとってはユフィもシャーリーも野望のための駒にしか過ぎないのか。」

吐き捨てるような言葉と裏腹に、スザクのまなじりには涙が浮かんでいた。

「そうだ。全ての罪は俺にある。だがナナリーは関係ない!」

「卑怯だ! ナナリーをダシにして!」

「卑怯と言われようと頼むほかない。ナナリーを助けてくれ! 頼む!」

下げた頭をスザクが踏みつける。ルルーシュは戦火に汚れた地に頭を擦り付けるしかない。


「今になってなんだ、それは? 許されると思っているのか! こんなことで!」

「思わない……。でも今の俺にはこれしか……ナナリーを救うにはお前にすがるしかないんだ。」

「僕が、俺が許すと思うのか! みんなが許すと思っているのか!

お前に惑わされた人たちが! 死んでいった人たちが! ユフィだって!」


犯してきた罪をなじられ、糾弾されてもなお、ルルーシュは弁明しない。

見かねたスザクが強引に襟ぐりを掴んで、ルルーシュと目を合わせる。


「答えろ、ルルーシュ。お前はまた人を騙すのか、利用するのか。この世界でも、元の世界に戻っても。」

「……ああ。必要ならば……。」


(その目、知っている。秘密をしまいこんで、罰を受けている目だ。

だから俺はブリタニア軍に入った。償うため、悲劇を繰り返さないために……)


「嘘をつくな、ルルーシュ。俺には嘘をつかなくていい。」

「……スザク?」

「ここは異世界だ。元の世界のしがらみも何もない。今はただのルルーシュとスザク。そうだろう?」


ルルーシュの襟ぐりを掴む力が弱まっている。代わりにスザクの方が震えていた。


「お願いだから答えてくれ。君の本心を。8年前、初めて友だちになった時のように。」

「……俺は、8年前から何も変わっちゃいない。ただ、ナナリーが笑って過ごせる世界を手に入れたかった。」

「前に会った時、君がイグノビリウムと戦っていたのは、民衆を守るためなのか。」

目の前に困っている人たちがいるのなら、どんなに自分が辛くてもナナリーは手を差し伸べる。きっとユフィだって……。」

「……。」

スザクはその言葉に自分がイグノビリウムに抵抗を続ける理由を思い出す。


「日本人の皆さんは……、喜んでくれた?」

彼の主、ユーフェミアは、最期の瞬間まで、自身のことには構わず、日本人とスザクを心配していた。

(もしユフィがこの世界の人々を見たら、イグノビリウムから救いたいと願ったはずだ)

それが、スザクが戦いを選んだ理由だ。

目の前にいるかつての親友も同じように誰かの願いのために戦っている。――そんな確信があった。


「君はイグノビリウムを殲滅するといったな。それはナナリーを救うための方便か。」

「いいや、ナナリーの願いであり、俺の願いだ。」

「ならば、この世界を救うんだ。君の力でこの世界が平和に、みんなが幸せに暮らせる世界になるように。」


スザクは襟から放した手を、ルルーシュに差し出す。


「力を貸してくれるのか……。」

「この世界とナナリーのためにもう一度、君と。」


ルルーシュはその手を取る。


「お前となら、どんなことだって……。」

「ああ。君と僕になら不可能なことは無い。さあ、共にいこう。ルルーシュ。」

「ああ、スザク。すべては世界のために。」


分かたれたふたりの手は、今ふたたび、ひとつとなった。

殴り合いからはじまり、いつしか親友となっていた、あの頃のように――







story



ルルーシュによってドルキマス王宮に連れてこられた枢木スザクは、君に会っていた。


「君が黒猫の魔法使いか。噂は聞いているよ。よろしく。」

穏やかに微笑みかけるスザクに、君は、こちらこそよろしく、と頭を下げウィズを紹介した。


「頼りにしてるにゃ。」

「本当にしゃべる黒猫を連れているんだね。ウィズっていう名前なのかい? はは、可愛いね。」

スザクは君の肩に乗るウィズに、ふいに手を伸ばしてきた。

「にゃにゃ!? なにするにゃ!」

「痛っ!」

ウィズはスザクの手を思いっきり噛んだ。

「女の子に対していきなり失礼にゃ! キミ、もう行くにゃ。」

怒って去っていくウィズを追い、君はどこかへ行ってしまった。


「世界が変わっても、片思いなんだな……。」

と、スザクが苦笑していると――


「スザク……!」


いつの間にか来ていたカレンが、スザクの姿を見るなり駆け寄って――拳を振りかぶった。

カレンはこの世界に来る直前、ブリタニアに囚われて尋問を受け、あわや麻薬リフレインを打たれるところだった。

その当の尋問相手が枢木スザクだ。

カレンの左拳が容赦なくスザクの右頬を打ち抜く。


「ムカつく! 避けられるくせに、わざと殴られて!」

「僕は君に酷いことをしようとした。その憤りは当然だ。」

「はん! 私を安く見ないで! 状況が状況だから、今の一発で許してあげる。」

「それは助かるよ。」

「アンタのそういうところが大嫌いなのよ。」

「はは。カレンは真っ直ぐで助かるよ。」

「何それ? それで、肝心のゼロはどこに行ったの。」

「ああ。ディートリヒ・ベルク? この軍の元帥のところに行ったよ。」


 ***


イグノビリウムとの決戦に備え、作戦を練るディートリヒの旗艦のブリッジに、ルルーシュは姿をあらわした。

そこにはディートリヒになにかの命令を受けているレベッカがいた。


「レベッカか。ちょうど良い。新しく入ったランスロットを見てくれないか。単機で長期間戦闘を行っていたから、損傷具合を知りたい。」

「は~い。」

レベッカはふたつ返事で部屋を出ていく。

「アーレント開発官! あなたという人はいつもいつもそうやって自分の興味だけで動いて……!」

ローヴィがレベッカを追って出ていき、ブリッジにディートリヒとふたりきりになると、ルルーシュは告げる。


「作戦が決まったと聞いてね。」

「座りたまえ。」


ディートリヒはフェルゼン王都周辺図を机上に広げ、その上にチェスの駒を置いて、作戦を語る。

作戦の要旨は簡単である。陽動部隊で敵の陣を割いて、旗艦に突撃する。それだけだ。

だが、ルルーシュの目から見てもその用兵は完璧だった。

地形、艦の特性、進軍速度、提督の癖にいたるまで、考えつくして配置されている。

「流石は希代の軍略家。見事な采配だ。だが、これでは肝心の旗艦を攻めきる方法がないな。」

すると、ディートリヒはクイーンの駒を持ち上げ、スッと進めた。

「そのルートには障害物が…………いや、……そうか。」

「理解いただけたようだ。」

「似た策を打ったことがあるのでね。あなたらしい手だ。これでチェックメイトというわけだ。」

ルルーシュは周辺図の外に転がる黒のナイトを拾い上げ、作戦図に目を落とす。


「しかし、これでは勝利を掴めない。」

「この布陣ならば、イグノビリウムの王を討てるはずだが。」

「言ったはずだ。あなたは『勝利するという意味』を見誤っている。」

「ならば、貴君は私に見せてくれるのかな。その『勝利するという意味』を。」

「もちろんだ。既に条件はクリアしている。」

「では貴君の腕前、見せてもらおうか。」

「承知した。では、お互いに健闘を祈る。」

と、ルルーシュはブリッジを後にした。


「面白い男だ。」

ディートリヒが作戦図に目を落とすと、周辺図の外に黒のナイトが置かれていた。



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story (イグノビリウム)大戦




翌日――

イグノビリウム大艦隊との決戦が始まろうとしていた。


「またイグノビリウムの王と戦うことになるとは思わなかったにゃ。」

今度こそ決着をつけよう、と君は言った。

君の魔道艇はディートリヒの旗艦、グランツ・デーゲンの側に配置されている。

ここから全速で進めば、大艦隊のいるフェルゼン王都は目と鼻の先だ。


「我がドルキマスの勇敢なる将兵よ。」

空軍元帥ディートリヒ・ベルクの声が、無線を通じて全艦に届けられる。


「私は無用な偽りは好まない。ゆえに告げる。ここは死地である。振り返るそこも死地である。

我らにもはや逃げ場所はない。諸君に残された選択肢はふたつ。戦って死ぬか、戦わずに死ぬかだ。

選ぶ権利は諸君にある。好きな方を選ぶがいい。だがもし諸君が戦いを選ぶのなら――

勇士達の屍の果てに、私はイグノビリウムに敗北を贈ることを約束しよう。」


すべての将兵が、その言葉で湧き上がる。みな、とうに死は覚悟していた。――ただ無駄に死ぬことを悔やんだ。

ディートリヒは彼らの死に意味を与えると約束した。ならばもはや恐れる必要はない。


ルルーシュは左翼に陣取っていた。ディートリヒより預かった艦隊の中心に、威容をまとった蜃気楼が浮いている。

その背後に、スザクのランスロットとカレンの紅蓮が控えている。


「いいのか、お前の旗艦を私に預けて。」

「ナナリーとエルナ嬢を救出したら帰るべき場所が必要だ。お前がそれを担ってくれ。」

「ふふ。いいだろう。いい女は帰るべき港たるものだ。」

「言っていろ。」

「ルルーシュ、必ず帰って来いよ。私を寡婦にするな。」

「フッ。言ったろう。さっさとこの世界を平和にして、元の世界に戻るさ。」


ディートリヒの無線が、最後の一言を告げる。


「全軍前進! イグノビリウムを殲滅せよ!」



「スザク! カレン! いくぞ!」

「ランスロット・コンクエスター、出る!」

「紅蓮可翔式、行きます!」


――イグノビリウムとの決戦は、こうして火蓋を切った。


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story 乱れ舞う紅と白





カレンの駆る紅蓮可翔式は、フェルゼン王都上空を縦横無尽に駆けた。

「邪魔するんじゃない、バケモノどもが!」

鎧袖一触。襲いかかるサザーランド部隊が見る間に蹴散らされていく。

飽きることなく数を増やし続ける敵に、異形の右腕をかざし、叫ぶ。

「まとめてぶっ潰してやる。これでも喰らいな!」

次の瞬間、拡散する赤い衝撃が、サザーランド部隊を突き抜ける。

“幅射波動砲弾。遠距離にマイクロ波を照射し、敵を加熱、破壊する紅蓮可翔式の特殊兵装だ。

紅月カレンの激しさを体現したようなそれは、さえぎる敵をことごとく壊滅させる。

「私は黒の騎士団のエースだ! ゼロは、私が守る!」

しかし、敵の数が多すぎた。砲撃範囲から偶然逃れた敵が、紅蓮と距離を詰める。

だがそれは、横合いからあらわれたナイトメアフレームの脚部により、文字通り一蹴された。

”突出し過ぎだ、カレン。敵の数は多い。すぐに囲まれるぞ。”

「うるっさい……な!」


紅蓮の右腕がランスロットの方向に向けられ、幅射波動砲弾が放たれる。

加熱を誘導するマイクロ波はランスロットの背後を狙っていた敵のサザーランドを撃ち落とした。


「スザク。アンタこそ行儀が良すぎじゃない? いつものアンタならもっと無茶してるでしょ。」

”そんなつもりはないよ。”

と、折りたたまれていた砲身を展開し、プアリスを発射装置として、強力な一撃を放つ。


カレンとスザク。戦場はこのふたりを中心に回っていた。

ともに単機でありながら、それぞれが1艦隊を上回る戦果をあげ、イグノビリウムを翻弄している。


(枢木スザク。ナイトオブセブンにしてランスロットのパイロット。……敵だった時はこんなに厄介な相手はいなかったけど………)

(紅月カレン。黒の騎士団のエースである紅蓮のパイロット。味方にすると、こんなに頼もしいとは)


戦場を駆け回る2機が交錯するのはー瞬。ふたりとも、すぐに別々の方向に散開する。

離れる刹那、カレンはスザクにだけ通信をつないだ。


「スザク……。アンタはルルーシュの事を……。」

”正直わからない。答えを出すには、僕たちはまだ交わした言葉が少なすぎる。”

「そうね。私たちはまだわかり合うのに時間が足りない。」

”ああ。だから、この戦いに勝つ!”

「ええ。そして、話し合いましょう。未来のために!」


2機は次なる敵を求め、戦場を駆けめぐる。



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story 軍略と戦略



”フェルゼン王都西方の敵艦隊に動きあり! そちらに向かっています!”

”王都東方の敵艦隊にも動きあり! 全艦、そちらに向かっています!”

”王都北方! 同じく敵全艦が向かっています!”


どうやら襲撃に気づいたイグノビリウム軍は一斉にこちらに向かっているようだ。

対して、その敵艦隊が邪魔をして、依然としてドルキマス軍は各方面軍と連携がとれずにいる。

このままでは同盟軍が気づく頃には、ドルキマス軍は壊滅しているだろう。


「……戦況はよくないみたいにゃ。」

ウィズのつぶやきに、そうみたいだね、と君は言った。

スザクやカレンは大活躍をしている。しかし戦いは数がものをいう。

無限にも思える敵の数に、ディートリヒの主力艦隊は次第に押されはじめていた。

「キミが出ていれば、もっと抵抗できるはずにゃ。」

君の魔道艇はディートリヒの命令で待機していた。いまだに出撃許可が出ていない。

「このままじゃ戦うこともなく負けるにゃ。ディートリヒはなにを考えているにゃ。」

「そんなに戦いたいのか?」

「そんなの決まっているにゃ! ……って、なんでここにいるにゃ!?」


魔道艇に、いつの間にかディートリヒが乗り込んでいた。副官のローヴィも連れていない。ひとりだけだ。

「魔法使い。貴君も戦いたいか?」

君はうなずき、みんなが戦うのを見ているだけだなんて、いちばん辛いからね、と言った。

「では出撃を許可する。敵の旗艦に向けて、ただちに突撃するのだ。」

「にゃにゃ!? 旗艦に突撃って、敵だらけでそんな道はないにゃ!」

「道なら、いまつくる。――やりたまえ。」

ディートリヒが無線でどこかへ伝えた瞬間――

轟音とともに、目の前の障書物――王都の高層建築物が崩れだした。

それもひとつだけではない。直線上にあるすべての建物が次から次へと崩れていく。


わずかな時間が過ぎた後、君の魔道艇の前には、ぽっかりと空の道ができていた。

その先にあるのは――イグノビリウムの旗艦。



「わかったにゃ! ディートリヒは最初からこれを狙っていたにゃ!

だからこの街に軍を置かず、住人がいなくなるように仕向けていたんだにゃ!」

「貴君らが想定より粘ってくれたおかげで、工作兵に爆薬を仕掛けさせる時間は十分にあった。」

「でも、よく敵の場所が予想できたにゃ。倒壊させた建物がバッチリにゃ。」

もしかして、高い建物全部に爆薬を仕掛けてたりして、と君は言った。

「にゃはは。いくらディートリヒでもそこまでやっているはずないにゃ。」

「……。」

「な、なんか言うにゃ!」


「王を倒せば、敵の勢いは止まる。以前と同様にな。

さあ、発進するのだ。あまり時間はない。すぐに敵が集まるだろう。」

ディートリヒは旗艦に戻らないの、と君は言った。

「イグノビリウムの王は貴君にもういちど殺されるために健気にも蘇ったのだ。

ならば、また私が見てやらねばなるまい。無様な敗北者の姿をな。」


感情の読み取れないその言葉に背筋を凍らせながら、君は魔道艇を発進させる。

この戦いを終わらせるために。



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story





敵の旗艦まではあとわずか――

だがそのあとわずかが、違い。無数の敵が阻み、君の魔道艇をもってしても、近づくのが困難だ。

いちど撤退した方がいいかもしれない、と君が言うと、ディートリヒは断じた。


「否、だ。ここまで来た以上、退くことはあり得ない。」


戦争の最中、時にディートリヒが垣間見せる狂気すら濠ませる鋼鉄の意思。それが死してもなお戦うことを選んでいた。

だが、敵は目の前のものだけではない。ありとあらゆる方角から、イグノビリウムの大軍が迫っている。それを止めるものは……。


通信が入った。

”クイーンでは決め切れなかったようだな、ディートリヒ。”

「ゼロか。私を笑おうというのか。」

”違うな。その逆だ。

あなたには鋼鉄の意志がある。如何なることかあっても勝利を掴もうとする揺るぎない意志が。

それこそが人々を立ち上がらせる勝どきとなる。それこそが人々を導く戦旗となる。”

”さあ、始まるぞ。ここからが本当の戦いだ!


――と、まさにその時、旗艦グランツ・デーゲンのローヴィから無線が入る。


”か、閣下! こちらに向かってきていた敵の進軍が停止いたしました!”

「原因は。」

”援軍です! すべての敵軍の前に、何十隻もの艦が立ちふさがっています。”

「まだ立ち上がる力のある国があったか。どこの国だ。」

”それが、どの艦も年式も国もバラバラで統一されたものはないと――あ、ちょっと待ってください!”


「……ゼロ。これが貴君の戦略か。」

”そうだ、ディートリヒ。軍略家のあなたは与えられた戦力でいかにして勝つかを考える。

だが戦略家の私は、いかにして戦力を創り出すかを考える。”

「その答えが……。」

”そう――"

"脅威に抗う人々の力だ!”


”いま件の艦の一隻から無線が入りました! 我々はイグノビリウムに反逆するために立ち上がった――有志の民間人である、と。

それだけではありません。イグノビリウムに呑まれていた全ての地で、レジスタンスが立ち上がったと!”


「よくやってくれた、ジェレミア。お前がもっとも危険な役割だった。」

”ハッ! もったいなきお言葉。重要な任務を任されたこと、光栄に思います。”



ナナリーがさらわれたあの日、ジェレミアはルルーシュより特命を受け、ひそかに旅立っていた。

目的はイグノビリウム占領下で抵抗している人々に接触すること。彼ら同士をつなげ、大陸全土で一斉に反旗をーすことだ。

旅立ったのは彼だけではない。ルルーシュはディートリヒから預かった部隊の多くを、他国に潜入させた。

言うまでもなく、イグノビリウムに占拠された土地は危険極まりない。それでも彼らは命を賭して、潜入行を成し遂げた。

ナイトメアフレームの機動性を活かし、もっとも危険な土地におもむき多数の民衆を説き続けたのがジェレミアだった。

この世界は戦乱に明け暮れていた。ゆえに打ち捨てられた老朽艦、どこにも属さない空賊の艦――

そうした小さな戦力が、いたるところに潜んでいた。あと必要なのは、結びつけるものだけだ。


「なにが彼らを結びつけた? 大国はすべて呑み込まれ、大陸をまとめあげる名など、存在しないはず。」

”それはどうかな。耳を澄まし、己の耳で確かめるといい。”


君は耳をそばだてる。戦争の爆音にまぎれ、眼下の都市から、それは確かに聞こえてきた。


――リヒ!

―――トリヒ!

――ディートリヒ!


フェルゼン王都だけではない。大陸のあらゆる場所でいま、人々はひとつの名を叫び、戦っていた。

ディートリヒ・ベルクの名を。


「あなたの活躍は調べさせてもらった。以前は戦争狂として周辺国に忌むべき名として語られていたという。

だがイグノビリウムの出現より1年余り。奴らに抗い続け、王を討ったあなたの名は人々の希望となった。」

だからルルーシュは、各地の民衆に呼び掛けた。ディートリヒがイグノビリウムに仕掛ける決戦に参加して欲しい、と。

もはや大陸に戦いのない土地はない。無限にも思えるイグノビリウムの戦力も分散された。その結果――


無線が立て続けに入る。


”ベルク元帥、ご無事ですか!?  クラリア・シャルルリエ中将、まもなくフェルゼン王都にたどり着きます!”

”どうやら卿の命運は尽きていないようだな。ファーブラ、じきにそちらに到着する。”

”邪魔していた艦隊はたったいま潰したわ。もうちょっと待ってなさい。今度こそ、私が大将首をもらうんだから。


各地の方面軍が、決戦の地へと集結している。この瞬間、イグノビリウムの旗艦は袋の鼠となっていた。


ディートリヒ・ベルク。あなたはあなた自身の名がもつ意味にまったく気づいていなかった。いや、目を背けていたと言ってもいい。」

通信ではない。ルルーシュの乗る蜃気楼が、いつの間にか魔道艇の隣にいた。

「確かに貴君には私に見えていないものが見えているようだ。これが戦略というものか。」

「そうだ。これで盤上の駒は揃った!」


蜃気楼の胸部が輝きを放つ。

拡散構造相転移砲。狙った敵を逃さないルルーシュの力が群がる敵を捉えていた。


「さあ、魔法使い。チェックメイトヘと駒を進めるぞ!」


了解、と君は応え、照準を敵の旗艦に合わせた。



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story





魔道艇の砲撃が敵の旗艦を貫いた。

巨大な敵の戦艦は、全力の砲撃でもわずかに揺れるだけで、依然、宙より人々を見下ろしている。


「やっばりダメにゃ。大き過ぎるにゃ。」

”駄目じゃない。”


蜃気楼、ランスロット、紅蓮の3機が敵の旗艦へと向かう。


”僕たちふたりならなんだって……!”

拡散構造相転移砲、ハドロン・ブラスター、そして幅射波動砲弾が一斉に放たれ、一点に集中する。

”そういうの、妬けるんだけど!”

「外壁に穴が開いたにゃ!」

”スザク! カレン!”

声をかけるよりも早く、ランスロットが蜃気楼の後をついていく。その背後を、敵の部隊が追いすがってくる。


”すみません、ゼロ。私はここで奴らを食い止めます。”

”くっ! すまない。”

”いいから! ナナリーが待ってる!”

拡散する幅射波動砲弾が敵を薙ぎ払い、後続する敵の前に紅蓮の翼が広がる。

”ナナリー!”

蚤気楼とランスロットが旗艦内へと消えた。


「魔法使い。我々も行くぞ。進め。」

君は魔道艇の速度を上げ、蜃気楼の後に続いた。


そしてイグノビリウムの旗艦に乗り込んだルルーシュ達の前に広がった光景は――


「こ、これは……あの時の……!」


かつてルルーシュが迷い込んだ、黄昏の広がる奇妙な空間だった――



back top next 六章 ギアス




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