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【黒ウィズ】ジーク(謹賀新年2018)Story

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2018/01/01

目次


Story1

Story2

Story3



主な登場人物






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story1



ここは、荒くれ者どもが集う酒場。

腕自慢の男たちが、日頃の憂さ晴らしに毎晩集まってくる。

カモがうっかり迷い込めば、たちどころに玩具にされてしまう危険な酒場だった。


「おい、親父。あいつは来てるか?」

「あ……ああ、いるよ。」


親父は、酒場の最奥にあるボックス席を顎先で示した。

この酒場のなかでも、一番上等な席だ。生半可な男が座れる場所ではない。


「ありがとよ。」

「でも、いまはやめとけ。とびっきり上等なメスと、お楽しみ中だ。」


カルステンは、親父のアドバイスを無視して、奥のボックス席に向かう。

ボックス席は、若い男がひとりで占領していた。


「にゃー。にゃー。」

「ふっ……。悪い子猫ちゃんには、お返しをしなきゃな。ここが好きだったよな? それともここがいいのか?」

ふにゃ~?

「お楽しみ中って聞いたから、ちょっとは期待したんだが、やっぱりそういうことか。」

「あまり気に入らないか? じゃあ、ここはどうだ?」

ふーっ!?

「無視すんな! あんた空賊のジーク(・・・)だろ?うまい話を持ってきたんだ。ちっと耳貸してくれよ。」


「おい、にいちゃん! その男に用があんのか?」


声がした。カウンターに座る数人の男たちが、こちらを見ていた。

どちらも腕に覚えがありそうな凶暴な顔つきをしている。


「そいつのこと知ってるのか? 知らねえなら教えてやるぜ。

そいつは喧嘩師ジーク。赤髭バロームの船にずっといたが、赤髭の野郎が死んでから、奴を止められるものは誰もいなくなった。

殺されたくなかったらそいつに近づくんじゃねえ。あと、奴の目の前で猫をないがしろにするな。警告はしたぜ。」

きっと奥のボックス席は、元は彼らの居場所だったのだろう。

どこか面白くなさそうに、猫と戯れるジークを眺めていた。

「その様子じゃ、あんたたちは、もう既にジークに痛い目、遭わされたみてえだな。」

「おい……。いまなんて言った、兄ちゃん!?お前も同じ目に遭わせてやろうか!?」

「あ……いやいや。一杯おごらせてくれ。って言ったんだ。そう、怒るなよ。」

「もうおせえよ!」


振りかぶった荒くれものの拳は、カルステンには当たらなかった。

席にいたはずのジークがいつの間にか後ろにいた。荒くれものの拳を片手で受け止めている。


「猫が逃げた……。」

「なんだよジーク、こいつを庇うのかよ?」

「猫が、逃げた……。」

「うるせえ! お前は関係ないだろ!? 邪魔すんじゃねえ、引っ込んでな!」


と、再び怒声を発した次の瞬間、ジークの拳が残像を残して消えた。

男は顎に凄まじい衝雌を受けて、気絶する。


「先ほど不愉快な名前を口にしていたな?赤髭バローム……と。

あの男には、鞭で打たれた記憶しかない。次、あの男の名前を口にしたら……殺す。」


荒くれものたちは、またしても(・・・・・)ジークの怒りに火をつけてしまったことを悟った。

以前散々な目に遭っているだけに、逃げ出す決断は素早かった。


「助かったぜ。噂通り、つえーなあんた。」

「空賊のジークだ。」


そうジークが名乗った瞬間、酒場のどこからか声があがった。


「空賊だと!?―隻の船も持ってない青臭いガキの癖に何か空賊だよ! 笑わせるな!」


ジークは、酔っ払いの冷やかしだと相手にしない。


「あんた空賊として、ずっとひとりでやってきたんだってな?だったら、仕事がいるだろ?」

「金は欲しい。船がいる……。」

「なら決まりだ。俺とー仕事しようぜ。報酬で船でも猫でも好きなもの買えばいい。おおいっ!」


と、手を振って誰かを呼び出した。


「これはどうも。」


ーーーーーー



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story1-2



「この子どもは?」

「こちらは由緒あるルフト国の王子さまです。68代目の国王になられる予定のお方です。」


ルフト国とは、ドルキマスから逢か東にある、草原の王国である。

国土は広く歴史もあるが、たいした軍事力を持たないため、周辺国からさして脅威と思われていない国だった。


「この王子さまは、王家の血を引く正当な後継者なんだってよ。

でも、母親の身分が低かったせいで、可哀想に捨てられちまってよ。」

「どこかで聞いた話だな。」


いまの時代、似たような話は、どこにでも転がっている。


「年老いた王は、後継者を選ぶにあたって、慌ててこの子を探しはじめたそうです。」

「もうじき、ルフト国で新年の祝賀会がある。それまでに、王子さまに国に戻ってきてもらって家臣や貴族たちにお披露目したいんだとさ。」

「まるで配達人だ。そんなものは、空賊の仕事とはいえないな。」

「気に入らねえかもしれんが、金にはなるぜ。前金も、ほらこんなにたんまり!」


硬貨の入った重たそうな袋を掲げて見せた。


「……金か。」


金に釣られるような男ではない。だが、ジークには野望があった。

いろいろな鯉昧で世話になった(・・・・・・)赤髭バローム。あいつを超える空賊になるという野望が――

そして、男として生まれた以上、誰の風下にも立ちたくなかった。

だが、いまのジークは、『赤髭バロームの元手下』という肩書きで語られることが多い。

認められるには、一人前の空賊になるしかない。そのためには、何を差し置いても自前の船がいる。

「引き受けよう。

「よっしゃ、話のわかる奴でよかったぜ。あんたがー緒なら、その辺の賊なんて目じゃねえよ!

腕前は、さっきの喧嘩で確認済みである。

「……ただ、この汚いガキを連れて行くだけにしては、羽振りがよすぎる。気になるといえば、気になるな。

「今回の件をご依頼された公爵さまは、たいへん懐の広いお方です。私も、たっぶりお金を戴きました。養育費として。

「なにが、養育だ!ひとを奴隷みたいに扱ってたくせに!

いたっ!

「まあまあ、過去のことはすべて水に流しましょう。それでは、あんたらよろしく頼むよ?

歩み寄るジーク。そして、いま王子を殴った商人の腕を取った。

「この子を奴隷として扱っていたのか?

「え? い……いや、違う。王子だと知らなかったから……。

ジークの表情が怒りに満ちている。

子どもの頃、階い牢に監禁され、好き放題された記憶は、ジークがもっとも思い出したくない記憶のひとつだった。

王子のひとことで、その時の嫌な記憶が蘇ってしまった。

「いたたた……いててててっ!こ、殺すつもりか!助けて! 誰か!

商人は、腕を軽く捻られただけでこの世の終わりのように絶叫している。

「失せろ。

「お、覚えていろ!


「孤児を捕まえて、奴隷として働かせている商人だったのか。とんでもねえ野郎だぜ!

「おい、子ども。お前は、王子になりたいのか?

「別に……。いままで、奴隷同然の扱いしか受けてこなかった。いまさら王子とか言われても、わかんねーよ。

「当然だな。俺が、お前でも同じように思うだろう。

「きっと王宮での贅沢な暮らしが待ってるぜ?

「それでルフト国へは、どうやって行くつもりだ?

「艦艇も馬車もないんじゃ、歩いていくしかねえよな?

「めんどくせえな。

「……俺に案がある。



ルフトの王都は、大草原のまっただ中にある。

草原のあちこちに遊牧民が住み着いており、他国を侵略することも、されることもなく、国民はのんびりと暮らしていた。

「ところが、そんな国でも王族や貴族どもは、他の国に負けず、王宮内でドタバタの権力闘争を繰り広げているんだとさ。


艦艇を持っていないのなら、徒歩で向かうしかない。

徒歩で行くのが嫌なら、荷馬車にでも乗せてもらうしかない。

「どこの国にもくだらない奴がいる。そうじゃない奴を見つけるほうが大変だ。

「……。

王子は、文句言わずについてきた。本人は、別に王子とか王族の身分に興味があるわけではないそうだ。

「生まれた以上、一度は父親の顔をみたい。下らない野郎なら、子どもとして名乗るのは、やめるつもりだ。

それと……できれば、なぜ俺を捨てたのかも訊いてみたい。答えが気に入らなかったら、ぶん殴る。

「王を殴って、ただですむと思うか?

「しらねえよ。殴りたかったら、殴る。それだけだ。


「おい、うるせえぞ。いい加減に黙りやがれ!

同じ荷台に乗っている強面の男が、ふりかえって怒鳴りつけてきた。

ジ一クの目の前にいる男も脅すように手に持った刃を煌めかせる。

「おめえら、これから奴隷市場(・・・・)につくまで、一言も喋るんじゃねえぞ!

「へ……へえ、すみません。

おい!これが、お前の言う妙案かよ?

そりゃあ、この馬車に乗ってたら黙ってても、ルフト国へは連れていってくれるだろうけどよお……。

その前に、奴隷として売られちまったら、どうするんだよ?

「ふっ……。

「ちゃんと策があるんだな? ほっとしたぜ。

「あ、すまん……。全然、聞いてなかった。

「じゃあ、なんでいま笑った!?どうせ、猫のことでも考えてたんだろ!?そうだろ!?

「―言も喋るなって言ったよなあ!?

「ひえっ!すいません。

 (くそう。やべえ男を相棒に選んじまったかもしれねえ

俺……生きて帰れるかな?)



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story1-3




さらに馬車は進んでいく。窮屈な荷台に押し込められて、身動きもろくにできない状況はさすがに辛かった。


「奴隷市場とやらは、どこにある?

「ルフトって国の王都だ。次喋ったら、指を切り落とすぞ。

「おいおい、あんまり痛めつけると、奴隷としての価値がなくなっちまう。ほどほどにしとけよ?

「へっへっへっ。傷が目立たねえように痛めつけるのは得意だ。


「ジークよぉ。俺っち、お腹が痛くなってきたぜ。

「……寝てろ。

「俺は、お前ほど肝が据わってねえんだ。あと、どんぐらいで到着するんだろうな?

荷馬車は、なにもない草原のど真ん中を静かに進んでいった。

しばらく行くと、前方に村らしきものが見えた。


「到着だ。おい、そこの娘は、あの売春宿に置いてくぞ。

娘? そんなものは、荷台のどこにもいないはずだ。ジークたちは、首をかしげていた。

売春宿!?そんなところに売られるのは、やだよー!?

荷台の隅にある大きな麻袋が、もぞもぞと轟いていた。

「ひっ!?

やがて袋の口が開き――

「ぶはー!? 中暑すぎー!死んじゃうところだったよ!

「女の子がっ!袋から出てきた!?なんで、袋に!? ええっ!?

「……落ち着け。空賊たるもの女の子から袋が飛び出てきた程度で狼狽えるな。

あんたが、落ち着け!

 「勝手に喋るんじゃねえよ!

袋から出てきた女の子とジークの目が合う。

「きゃっ、いい男。

「いやー、それほどでも。

「お前はなんだ?なぜ、袋に入れられていた?

 「勝手に喋るなと言っただろ!?

「ナディちゃんは、軍楽隊のエースだったの。ほら、そこに楽器あるでしょ?

「軍楽隊? 軍人か?

露骨にいやそうな顔をする。

「その顔、まさか軍人嫌い? わかるよ。ナディも、自由に演奏できない軍がキライになって逃げ出してきたの。

 「だから……勝手に……。

「楽隊員だったのなら、なにか演奏してみろ。演奏次第で、お前を生かすかどうか決める。

「横暴な男!?でもそういう偉そうなところが、男として逆にありかも。

「まってね。いま演奏するからね。

「いい加減にしろ!? 今度喋ったら、指を切り落とすと言ったよな。

「いま演奏がはじまるんだ。静かにしてろ。

男は、手に持った刃をジークに突きつける。

「ま……待て! 待て待て! このままじゃ、俺の目に刺さっちまう!

刃をつかみ、押し返す。ジークの力に男は、抵抗を試みるが……。

「おい、野郎ども! なにぼ一っとしてやがる!こ……このバカを伸しちまえ!じゃねえと俺の目が……ひいいいっ!

「こいつ仲間を呼びやがった!

外にいた奴隷商人の手下たちが、荷台の幌を開いて飛び込んできた。

それぞれ手に得物を持ち、ジークたちを取り囲む。

「こ……こんなにいるなんて訊いてねえぞ。落ち着け。ここは、話し合おうぜ。な?

「へへへっ。いまさら、びびったのかよ?

「喧嘩するつもりか?このジーク・クレーエ相手に……。ふっ、その度胸だけは認めてやろう。

ナディに目で合図を送った。

「危機―髪のマーチ!

ナディの演奏開始を合図に喧嘩がはじまる。

いや、それは喧嘩と言うより、ジークによる一方的な攻撃だった。

奴隷商人どもを次々翻弄し、衝撃を与えて、ふき飛ばしていく。

相手を殴り、押し倒し、意識を失わせー―そして次の相手に向かう。

すべては一瞬。人間の感じる速度とは一線を画した動きで、肉眼で捉えるのは不可能。

魔法はいっさい使っていない。

喧嘩に明け暮れてきたジークにとって、この程度の相手、魔法などに頼るまでもないことだった。

「ひいいいっ!

男たちは散々にやられて、賞品である奴隷よりも、自分の命が大切とばかりに一一

蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「どうだった。ナディちゃんの演奏は?

心が躍った。いつも以上の力を出せたかもしれない。

「でしょ?

あんたつえーな。よかったら俺に喧嘩の仕方を教えてくれよ。

「喧嘩が強くなる方法は、簡単だ。

気に入らない奴を見つけろ。そいつを殴りたいと強く思えば思うほど、勝手に身体が動いてくれる。

喧嘩が強くなる方法は、簡単だ。

よくわかんないな。そんなもんなのか?

わからないってことは、お前には殴りたいほど憎い相手がいないのだろう。

それはそれで幸せなことだ。無理に敵を作ることはない。




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