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カヌエ(謹賀新年2018)Story【黒猫のウィズ】

最終更新日時 :

白猫ストーリー

黒猫ストーリー


2018/01/01

目次


Story1 神様という奴が市場にいた

Story2 年末は神様とフグを食べた

Story3 年始は神様と蟹を食べた



主な登場人物


カヌエ
ソラ
リザ
リュディ




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story1



「……。」

少女は神様を見た。

年の終わりが近づき、多くの露店が並び、活気づく市場の中に神様はいた。


「だーいじょうぶだから。神様がだーいじょうぶつってんだから。だいじょぶだいじょぶ。」

「……。」

「だから、ほれ。壷買ってみ。」

神様は、壷を売っていた。


「もう一度確認するけど、その壷を買えばどうなるの。」

「縁結び。お金に仕事に恋に、なんでもこいだよ。

色んな縁を強くしてくれて、幸せになれっからー。なっちまうからー。」

「壷で?」

「だーいじょうぶだから。だーいじょぶだーいじょぶ。

壷買うだけで幸せになれっからー。なんだったら月賦でいいからー。」

「いらない。」

「ええ! 幸せ逃げるよ……?もったいないっしょー。だから買ってほしいっしょー。」

「いま人探ししてるの。そんな壷抱えてたら、邪魔になるでしょ。」

「そんなことないっしょー。小脇に抱えて、小物を入れたら鞄替わりになるっしょー。」

「うるせえ。」

店頭の少女は言い捨て、くるりと回り、神様の元から去ってゆく。


「信心足りてないっしょー……。世の中厳しいねえ……。」

神様は、ため息混じりに呟いて、ぽっくりと足元の椅子に座り込む。

露店の日よけが作る影が頭からつま先までを覆った。

年中気候が良いとはいえ、サンザールの街にも冬は来る。

ほんの少しの肌寒さを感じる空気は、街のそこかしこに差し込む太陽の光に、いつもと違う色合いを与えていた。

「ふいー……。」

それは神の顔色とも似ていた。


「そんな顔、お前には似合わないぞ。」

「ソラー!」

「どうするんだ? もうすぐ〈新炎の儀〉だぞ。御子がいないと、ヴィジテの人々が祭りに参加できないぞ。」

「そのことならだいじょうぶだいじょぶ。私が出れば問題ないっしょー。

神様が祭りに参加したらダメってことはないからねえ。ぷれいんぐ神っしょー。時代はぷれいんぐ神っしょー。

ようやく時代が神に追いついたっしょー。」

「ダメだ。」

「ええー。」

「神がそう何度も人の営みに関わっていいわけがないだろう。あの時は、異常事態だったからだ。」

「そうだねえ。やっぱりサマーがいなくなると大変だねえ。」

「だから私は言ったじゃないか! ちゃんと考えろって!」

「でも考えた所で、答えは変わるのかねえ?」

「それは……。」

「だったら先のことを考えるのが健全っしょー。」

「新しい御子か……。とはいえ、何のアテもないだろ。」

「だーいじょぶ、だーいじょぶだから。世の中縁だから、だーいじょうぶ。」



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story1-2



「……。」

少女はうなじに当たる日の光の温かさが、神の恩寵のように感じた。

神に見守られている。そんな気がした。

実を言うと、ここ数日、朝起きて街を散歩するたびに、背筋に神の視線を感じていた。


「じー……。」

少女は、そこに神が実在するような気がして、そっと後ろを振り返った。

「ササッ!」

少女の結んだ髪が翻るのを見て、神は急いで路地の角に隠れた。

「……。」

「こそこそ……。」

神はゆっくりと物陰から顔を出す。

「じー……。じーったら、じー……。」

「おいこら、そこのかわいい生き物。」

「ババ、バレちゃった? あわわわ。」

神はうかつにも、少女に存在を知られてしまった。思いっきり目が合った。

「あなた、ここ最近ずっと私の後をつけてるでしょ。」

「おほほほ。それを見抜くとは、なかなか勘が鋭いねえ。

そうです。つけてました!」

神がそう言ったので、少女は神の右手をむんずと掴んだ。

「然るべきところに行こうか。」

聞くと、神は平伏して、言った。

「勘弁してほしいっしょ。お上に突き出すのだけは勘弁してほしいっしょ。

神がそう言ったので、少女はお上に突き出すのを止め、しこたま説教することにした。

「勝手に人の後ついてきちゃだめでしょ。」

「ハイ。」

「いやでしょ、知らない人についてこられたら。いやでしょ?」

「ハイ。」

神が大いに反省しているようだったので、少女は許してやることにした。

「じゃ、私行くから。」

「ハイ。」

神に別れを告げ、少女は街の西に向かうために、大通りへ出る。

神は何事もなく、少女の後について歩き始めた。

少女は歩みを止めた。


「おいこら、そこのかわいい生き物。いまついてこようとしたでしょ。」

「ついていこうとしてないっしょー。たまたま行く方向が一緒だっただけっしょー。

言いがかりっしょー。」

それを聞いて、少女は神の両のこめかみに拳を押し当てた。

そして、容赦なくグリグリした。

「ひーーー!」

神は悲鳴をあげた。

少女は神が反省していないようだったので、再びしこたま説教した。


「屁理屈でしょ。いまのただの屁理屈でしょ。」

「ハイ。」

「ダメでしょ、屁理屈言ったら。」

「ハイ。」

神は懐からあるものを取り出し、詫びる言葉とともに少女にそれを差し出した。

「蟹の甲羅あげるから、許してほしいっしょ~。」

少女は容赦なくグリグリした。

「ひーーー!!」

少女は神の鼻先に蟹の甲羅を突きつけた。

「臭いでしょ? 蟹の甲羅臭いでしょ?」

「ハイ。」

「いらないでしょ、こんなもの。こんなの持ってても邪魔でしょ?」

「ハイ。」

「じゃ、今度こそ行くから。ついてこないでね。」

神は頷いてみせた。

安堵して少女は歩き始める。賑わう大通りへと手前まで進んでから、念のため後ろを振り向いてみた。

神はこちらをじっと見つめているが、別れた場所から一歩も動いていなかった。

ついてくるのは諦めたようだ。

神は両手の人差し指を少女に向けて、突き立てる。つんつんと前後させている。

「わたしのこと気になってしようがなくなってるっしょ~!」

「……。」

少女は猛ダッシュで神の元まで行き、グリグリした。

「ひーーー!」


神は痛みを和らげるためにこめかみをもみもみしていた。

念じるように、丁寧にもみもみしていた。

本気でちょっと痛かったからである。まさか神相手にここまで手加減なしだとは、神も思わなかったからである。

ひとしきりもみもみすると、神は言った。

「気になっているんだったら、話を聞いてくれてもいいんでないかい?」

それを聞き、肩の荷を下ろすように、少女はふうっ一息つく。


「いいわよ。私はリザ。」

その手が神の前に差し出される。神の手がその指先を握る。

「カヌエ。神様やってるよ。よろしくね、異界の旅人さん。」

少女は目をぱちくりさせて、神を見た。

何も言っていないのに、自分の正体を見抜いていたからだ。

目の前でへらへらと笑っている存在は、自分のことをただの旅人ではなく、「異界の旅人」と言った。

「あなた、何者?」

「だから、神様だって言ってっしょー。」

と、神はへらへらと笑った。



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story1-3



「御子になってください。一目見た時から決めてました。」

「うるせえ。」

「はうーー……。」

涙目で青空を見上げるカヌエにリザが声をかける。

「いきなりそんなこと言われても反応できないでしょ。まずは状況を説明してよ。」

「あい。」


カヌエはこれまでの経緯をリザに説明する。

かつて御子を務めていたサマーという少女が、世界の時間を救うために別の世界に向かったこと。

それにより、御子が空位になったこと。そして自分がヴィジテの神カヌエであること。

年末に執り行われる祭りでは御子が必要なこと。


「ふーん。」

「動じてないねえ? もしかして信じてないのかい?」

「信じてあげるわよ。前にも言ったと思うけど、私は人を探しているの。そんな暇がないわ。」

「その探し人、わたしだったらきっと出会わせてあげられると思うねえ。なんつったってわたしは神様ですから。

縁結びの神様ですから。」

「無理よ。私と一緒に来たその人は、別の時代に飛ばされちゃったみたいなの。」

「ああー……それは……。」

「ほら、無理でしょ。」

「と見せかけて、えい!」

カヌエはリザに向けて指をビッと突き立てる。


「何したの?」

「結びました、緑。その探し人とあなたの緑を結びました。ガッツリ。そりゃもうぉーガッツリ。」

「じゃ、私行くね。」

「わああっ! 少しは信じてほしいっしょー。マジ勘弁っしょー。」

「あなた、いちいちやることが胡散臭いのよ。」

「でもマジモンの神だよお。あ、それなら、ヴィジテのみんなに協力してもらって、情報を集めるってのは?」

「御子になればそれが出来るの?」

「やらいでかーい! やらいでかーい! みんな御子に協力してくれるよ、きっと。」

「胡散臭いなあ。

でも、私みたいな余所者がなっちゃっていいの? 御子って。」

「だーいじょうぶ。ヴィジテは元々、異界から流れてきた人の知識をもらって、発展してきたんだよ。

ヴィジテにとって異界からの旅人は、そりゃもう、もんの凄いんだから。ビッグサプライズなんだから。

だからいいんでないかい? 御子、なっちゃっていいんでないかい?」

「そんな軽くていいの?」



 ***


「リザか……テタニアだ。歓迎する。話はカヌエ様から聞いた。」

「よろしく。本当に私が御子になってもいいの?」

「我々、ヴィジテは旅人を友として扱う。長い歴史の中では、旅人が御子になった例もいくつかある。

だが、あなたにもあなたの事情があると聞いた。なので、今回は代理だ。いまは新しい御子候補も勉強中だ。

それが済むまでだ。ただ、御子になるには、条件がある。」


テタニアは涼し気な目線を部屋の奥に送る。リザも目を凝らすが、薄暗くて見えない。

ぼうっと音を立てて、壁のランタンの火が灯る。

温かい炎の揺らめきに照らされるのは、台座に安置された杖だった。


「あの杖をどうすればいいの?」

「触れるだけでいい。あなたが適していれば、あの杖が反応する。」

「簡単ね。」

「ただ……ごく稀に事故は起こる。それでも儀式を行うか?」

リザはその言葉の奥に別の意味を嗅ぎ取る。冷たく、寂しいなにかの意味。

「あなたの探している人の情報を集めるのなら、御子にならなくても行える。ヴィジテが力を貸してあげられる。」

テタニアがはのめかす提案に、リザは首を横に振る。 

「私が前にいた世界はもっと厳しかった。あなたが言う「事故」にもっと背中合わせだったわ。」

「わかった。祭司たちを呼んでくる。待っていてくれ。」


テタニアが去った部屋で、杖を見つめリザは自嘲した。

「リザ、あなたって案外お人好しね。」

自分でそう言いながら、違うな、と思った。

借りを作りたくなかったのだ。ここもまた、去るべき場所なのだ。

とリザは自分に言い聞かせた。



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story2



リザの朝はどろどろホットチョコレートで始まる。

「ホットチョコレートのミルクとチョコの割合をちょっと変えるの。

ミルク少なめ、チョコレートが多め。」

「おおー、ドロドロぉー。」

ミルクパンの中には粘り気のあるホットチョコレートがとろ火で煮込まれていた。

リザは子どもの頃から、このミルクとチョコレートの割合がおかしいホットチョコレートを毎朝飲んでいた。

飲むというよりも食べるという感覚に近い。

だが、この世界に来てからは、長い間ありつけないでいた。

「ちょっと失敗。ここの暖炉は初めてだから、火加減がわからないわ。」

少し残念そうに、ミルクパンの中のチョコレートをカップに移す。

「そうなんだねえ。前はどんな暖炉使っていたの?」

ドロドロと流れ込む様を、カヌエが目を寄せながら見つめている。興味津々である。

「ここのは薪でしょ。燃え方が違うから難しいのよ。前は燃えやすい小悪魔を使ってたから、もっと火が強かったわ。」

「こあ? こあくま? へえ……いろいろあるんだねえ。」

ミルクパンの縁にこびりついたチョコを丁寧にすくい取って、カップに流し込む。

甘い匂いが朝の肌寒い空気に混じりながら漂い、空っぽの胃袋に朝を知らせてくれる。

ふたり分のカップを持ち上げて、リザはキッチンの邪魔者を急かした。

「はいはい、テーブルに移動して。」

カップから尾を引くように立ち昇る甘い湯気には、神様であるうと従わざるを得ない。

カヌエはリザの後をついて、テーブルに向かう。

用意された朝食。

フルーツいろいろ。バターがたっぷり生地に練り込まれたパン。それと、リザのどろどろホットチョコレート。

ご機嫌な朝食だ。

「マシュマロはお好みでどうぞ。スプーンですくってフーフーして□に運びなさいよ。

「ふー、ふー……ほい。ふむふむ。」

口の中に放り込まれた甘くて熱くて、優しい味の塊を吟味するように、カヌエは口をもごもごさせる。

「ほ! ほ! ホッチョコレート!ホッチョコレート! ほほほーい。」

「ホントにあなた、神様なの? ただのかわいい生き物にしか見えないわよ。」

「ほほほーい、ほほほーい。ホッチョコレート、ほほほーい。」

リザもどろどろのホットチョコレートをスプーンで口に運ぶ。

その一口がもたらす懐かしさが、これまでの出来事を思わず想起させた。


ここまで辛かった。

一緒に異界を旅するはずの、相棒のリュディといきなり離れ離れになった。

話によると、リュディはこの世界の過去に飛ばされ、いまはもう故人となっているらしい。

少し前、この世界は時間がぐちゃぐちゃになったという。

どうやらその影響で、ふたりは別の時代に飛ばされてしまったのではないか、というのが神様の考えだった。

今のところ解決策はないが、リザは御子代理になり、カヌエという神様と同居している。

本当なら御子が住む御所に住まなければいけないのだが、あくまで御子代理だとして、辞退した。

すると、なぜかアパートメントの一室で暮らす神様と同居することになったのだ。


「ほほほーい、ほほほーい。ホッチョコレート、ほほほーい。」

「ふふ。」

ホットチョコレートのおいしさに小躍りしているカヌエを見て、リザは自然と笑顔になった。

思えばいつ以来笑ったのか、わからないくらいだった。

「そういえばあなた、あんなところで壷なんか売って何してたの?」

椅子の上で、くるくる回っていた神様はぴたりと正面を向いて、止まる。

「ぷれいんぐ神だよ。いまヴィジテは御子だったサマーがいなくなって、大変な時期なんだよね。

だからここはいっちょわたしがね、神様のご利益をだだ漏れにして、みんなの信心を高めてあげようって思ったのさー。

でも、これからはリザが御子の代理やってくれっからー。やっちゃってくれっからー。いけるっしょー。」

「そういえば、なんかのお祭りがあるみたいね。そこで御子同士が対決するんでしょ? 何するの。」

「競技は直前に決められるから、わからないんだよねえ。

でもぉ……今回ばっかは負けられないっしょー。ヴィジテの危機に、発奮しなきゃ、ウソっしょー。

ここで負けたら、みんながバラバラになっちゃうかもしれないからねえ。負けられないよねえ。

「まあ、そうね。私も御子の代理として、負けたら存在意義がないわよね。」

「その意気その意気。」

「私、生まれてこのかた、負けたことないから。」

「これマジ金脈掘り当てちゃったしょー。」

飛び跳ねて喜ぶ神様を見て、リザは思った。

(こいつ、クソかわいいな)



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story2-2



「いまからー、御子としてのアレコレをー叩き込んじまうからー、マジヨロシクっしょー。」

ここ数日カヌエは、リザに御子としての厳しい特訓を課していた。

「これ年末まで続くからー、負けらんねえからー。つってー。」

「はーい。」

「まずは、ゴンドラで水路ぐるっと一回りしようかねえー。」

「はーい。」

「わたしの言う通りにやってたら勝てっからー。だーいじょうぶだからー。だいじょぶだいじょぶー。つってー。」


「はーい。動きますよー。」

唐突なゴンドラの動きに、船首に立つカヌエはバランスを崩す。

「うわ、たったった……だーいじょうぶ、じゃなーい……。」

水しぶきを上げて、神様が水路に落ちた。

ゴンドラをゆっくりと停止させ、リザはカヌエが落ちたあたりに目をやる。

ぷくぷくと水面に気泡が浮かび上がる。水鏡の奥でうっすらと見える影が次第に濃くなってくる。

清々しい光が乱反射している。時折、眼を焼いた。


「ぶはあ!」

「ほらー、浮かれてっからー。落ちちゃうっしょー。はい、擢に捕まって。」

「とほほだねえ、面目ないねえ……。」



 ***


「水かけはサンザールの華だからー。やらないわけにはいかないからねえー。

ガンガン水かけていくっからー。」

「……。」

リザは無言のまま、手持ちの水鉄砲でカヌエの顔に水をかけた。

「ぶわっち!何するっしょ。」

「いや、水かけろって。」

「わたしじゃないねえ。ちゃんと練習相手用意したから、そっちにガンガンかけてほしいねえ。」

リザは再びカヌエの顔に水をかけた。

「ぶわっち! ぶるるるる! 何するっしょ~。」

「ガンガンかけろっていったから。」

「だから、わたしじゃないって言ってるっしょー。練習相手にかけてほしいんだよお。」

「えい。」

「ぶわっち! ぶるるるる。」

(かわいい生き物だな)


「ちょっと神様に対して好き放題し過ぎだねえ。どういう育ち方してるのかねえ。」

「私、魔界で育ったから。」

「なんかヤバそうな名前のところだねえ。」

「私のバックに魔王ついてるから。」

「これヤバいの拾ってきちゃったっしょー。一番神様と違い所にいるっしょー。」

「あんまり私を甘く見ると……あるかもよ、報復。」

「これ触らぬ神に崇りなしっしょー。完全に立場逆転しちゃったっしょー。」


などとああだこうだやりながら、カヌエとリザは年の瀬の時間を過ごした。

そして、お祭りを翌日に控えた夜。

カヌエはリザに宣言した。


「フグを食べよう。」

「フグ?」

「年末と言えばフグだからねえ。それにここまで特訓頑張ったからねえ。

食べるよ、フグ。食べちゃうよお。」

「フグって何?」

「フグはやばいよお。すっごくやばいよお。」

「なに? そんなに美味しいの?」

「やはいよお、フグ。毒があるからねえ。」

「そっちのやばい!? そんなのどうやって食べるのよ。」

「ぐふふふ……。神頼み。」

「絶対食べない。」


***


「なんだ、神頼みってそういうことなのね。心配したわ。」

「はっはっは。おおかたカヌエがわかりにくい説明をしたんだろう。」

「ソラはねえ、釣りの神様でもあるから魚には詳しいんだよ。」

「それならフグの調理もばっちりね。」

「実を言うと、毒の部分を取って調理するのは初めてだけどな。」

「え?」

「私ら神だから、フグの毒くらいでは死なないからね。いつもは特に処理してない。」

「は?」

「だーいじょうぶ。だーいじょうぶだから。」

「おい。いますぐやめろ。」


 ***


リザの目の前にはぐつぐつと煮立ったフグの鍋があった。

リザはフグの身をひとつスプーンですくい、目の前に持ち上げる。

じっくり見たところで、毒があるかないかなどわからない。

もはや当たるも当たらないも運次第のように思える。


「だーいじょうぶ。だーいじょうぶだから。神様が調理してんだから。だーいじょうぶだから。」

「あなたの大丈夫はすごく不安なんだけど。」

「大丈夫、ちゃんと毒の部位を取り除いたから。」

「そうよね、大丈夫よね。」

「たぶんな!」

「神様だからって殴る時は殴るわよ。」

リザは意を決してスプーンを口に運んだ。その瞬間、これで死んだら間抜けだなあ、と少しだけ思ったが、食べた。

「あ。美味しい。鶏肉に似てる? 優しい味。」

「だしょー。フグはおいしいよねー。食べた後の煮汁は雑炊にも使えるんだよねえ。

明日は雑炊だねえ。ぞーすい、ぞーすい。ぞーのすい!」

神様の鼻歌を聞きながら、この神様は明るくって、温かくって、不思議な神様だと思った。

「本当の所、すこし寂しかったんだ。ここに来てからずっと。

でも、なんか楽しくなってきた、カヌエといると。……いや、カヌエ様か。」

「そんな、カヌエ様とか言われると恥ずかしいっしょー。照れちゃうっしょー。」


リザは、明日はこの神様のために勝ちたい。

強くそう思った。



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story3









だが、そこにはカヌエの姿はなかった。

しばらく待ったが、それでもカヌエは帰って来なかった。



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story3-2







「たーべよー、たーべよー。チーミチャンガたーべよー。」

もちろん神様も、チミチャンガに夢中だった。




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――――カヌエ イベント――――
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