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ブリヌイ・エピソード

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最終更新者:時雨

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ブリヌイのエピソード

「カーニバル」カジノの支配人。金ではなく、快楽を求めるために、スリリングなギャンブルゲームを主催する。酒が飲めるなら決して水は飲まない、自分のやりたいようにやるタイプ。人々が苦しむ表情を見るのが好きで、よく言葉で人を挑発する、愉快犯のような存在。


Ⅰ.カジノ

枯れた木の間から三日月が見える、落ちた影はまるで幽霊のようだ。

狭い廊下を通り、赤い扉を開けると、中の熱気が押し寄せてくる。


人の声が騒々しい、音符は一つ一つ渦巻いた模様の絨毯に落ちて、すぐに吸収された。

緑色の長いテーブルを囲む人々、その目には同じ緑色の光が映っていた。


ここに来る人たちは、主に2種類。

怠け者か命知らず。

わたしと一対一で「ファイナルゲーム」に挑んで来るのは後者だ。


「アハハッ、お客様、ごめんなさいね……あなたの負けよ」

テーブルに落ちたコインは、ピカピカに磨かれてあるから、上向きの面の数字がはっきりと見える。

同じくらいピカピカな額に青筋を浮かべた男は瞳孔が開いていた。


「ここのルールをご存知でしょう?わたしに負けたら、代価を支払わなければならない……」

わたしはコインを左目の前に置いて、目を細めて「5」という数字を見入った。

「そうね……思いついたわ!指5本でどうかしら?」


男は口を塞がれ、悲鳴も上げられずに連行された。口から出た悲鳴は、月の歪んだ夜に消えて行く。


近くでずっと傍観していた少年は、裏口まで蛇行する血痕を無言で見て、やっと勇気を出してわたしに近づいて来た。


「坊や、ここは未成年立ち入り禁止よ」


「俺はもう18だ……」

その声は掠れて聞き苦しい。体にフィットしていないボロボロなシャツを羽織っていて、右の袖は空っぽだ。


命知らず?

いや、その目には狂気も貪婪もない。

淀んだ水たまりの様だ。


わたしは軽く首を振る、明らかにわたし好みの獲物ではなかったから。


「お願い……俺を助けて!”ファイナルゲーム”に参加する必要があるんだ、そうするしか……」

彼はこう懇願してきた。


その無力な目を見て、わたしは考えを変える。

「そう……なら、コイントスで決めようかしら」


私はコインを手に取り、そっと回した。

すると少年の死んだような目が、一瞬だけ星を散りばめたように輝いた。


わたしは指にコインを乗せ、彼の前に押し出す。

……また「5」だ。


「残念、あなたの負けよ」


少年の目に宿った光は完全に消えた。だけどそこには見慣れた恐怖はなく、ブラックホールのような絶望しかない。

「代価は……?」


わたしはしばらく黙り込む。そして、何気なく指を伸ばし、空っぽの袖の袖口を指した。

「じゃあ……そのボタンを頂戴」


「えっ……?」


彼が反応する前に、わたしはボタンをつまんで、少し力を込めて引っ張った。

慌てて袖口を覆う彼、すると左腕にある痣や傷跡がちらっと見えた。


「坊や、誰かに言われてここに来たんでしょう?」

わたしは彼の目をじっと見つめる。


彼はわたしの視線から逃れるように俯いた。


「ギャンブラーか一般人かは、一目見ただけでわかるわ」

手に持った丸いボタンをコインに乗せると、ちょうどいい大きさで嵌った。

「もしかしたら……手を貸せるかもしれないわよ?」


少年はガバっと頭を上げる。その目にはまた小さな光が灯った。

「本当に……?貴方が強い食霊なのは知ってる。でも……どいして俺を助けてくれるの?」


重なったコインとボタンを手のひらで覆う。


「だって……わたしは他人にゲームを強要する奴が大嫌いなんだ」


Ⅱ.罪

三日月は死神の鎌かのように、空に懸かっている。廃工場の壊れた鉄の門は夜風に吹かれギシギシと音を立てた。


瓦礫を踏み越え、曲がりくねった石段を下りると、地下に隠されたもう一つの頑丈な鉄の扉が見えた。


先頭を歩く少年が立ち止まった。

「ここだ……」


鉄の扉の鍵穴を撫で、霊力を注ぐとそれはゆっくりと開いた。

埃が舞い上がり、部屋の中の匂いは鼻をつく。


少年は急いで部屋の隅へと走り、しゃがんで小さな声で誰かに話しかけた。

「ティナ、怖がらないで……お兄ちゃん、すごい人を探して助けに来て貰ったから……すぐにお医者さんの所に行こうね」


薄暗い光に慣れて、ようやく目の前が見えるようになった。

少年は小さな金属製の檻の前にうつ伏せになり、中で蹲っている女の子を慰めるように囁いていたのだ。

彼の周りには、他にも何百もの檻がひしめき合っていて、無数の怯えた幼い目が一斉にわたしを見てきた。


「クソガキ、何してんだ?!」


突然明かりがつき、険しい表情の痩せ細った男が入ってきた。


彼は檻を守るように身を挺している少年を睨みつけ、その後わたしの方を見てきた。

「食霊?なんだ、このクソガキに召喚されたのか?」


「いや……単純にこの地下監獄を見学しに来ただけだよ。ついでにぶっ壊そうかなと」

「監獄……ハハッ、ここには侵入者を阻む武器がたくさんあるんだ……もちろん、対食霊用の物もな!」


部屋の四隅にある通風孔から一斉に白い気体が吹き出す。

甘ったるい香りが鼻を抜けると、一瞬にして体から力が抜けた。


「良い香りだろう……」

男は陰湿な笑みを浮かべている。だけど彼が近づいてくるより先に、小さな影が突然彼に襲い掛かった。


「ああっ!クソッ、よくも俺を噛みやがったな!」

首筋から血が流れる男は怒り狂っている、少年は残った唯一の腕で必死に彼にしがみついていた。


なんですって?このわたしが子どもに助けられたですって?


「逃げろ……」

少年は血まみれになった口を開き、わたしに向かって叫ぶ。

次の瞬間、か弱い彼はその男に首を絞められて、高々と掲げられた。


「坊や、動ないで。あなたの助けは必要ない……」

刃のように薄いカードを手から放つ。


男の顔に恐怖が描かれ、それが彼の死に顔となった。

少年は地面に叩きつけられ、激しく咳き込む。


甘ったるい香りは一層強くなり、気分が悪い上に眩暈もする。

霊力を削るだけのものじゃないのか……


昏睡する直前、息絶えた男が上品な革靴によって蹴られる所を見た。

その後、少年は頭を押さえつけられ、引きずられていった。


人間は不思議だ……

取るに足らない馬鹿げた自分の価値を証明するために、自分より弱い同族に暴力を振るう者がいる。

弱いながらも、自分より遥かに強い食霊であっても救おうと考える者もいる。


そして、わたしは……

わたしがしたい事はなんだ。


黒潮が猛烈に押し寄せてくる。

意識が沈み、わたしは目を閉じた。


Ⅲ.悪夢

「1……2……3……」

悪夢のような声がこだまする。

夢か……


暗く長い廊下の奥にある部屋には、鉄の檻がところ狭しに積み上げられていた。

檻の中でたくさんの人が震えている。子ども、老人、女性……誰しもが骨の皮しか残らない程に痩せ細っていて、彼らの目には恐怖と絶望が満ちていた。

その前には、着飾った貴族が歩きながら人数を数えている。


人数を確認した後、貴族が優雅に手を叩くと、お供たちは香ばしい料理を運んで来た。

飢えている人々が蠢く、女性の腕の中に隠れていた子どもは、黒い瞳を見開き、唾を飲んだ。


「ふふっ……今日のゲームは……毒見だ!どの料理に毒が入っているか当てろ。全員きちんと選んだ料理を完食するんだぞ」

貴族は手拭いで口元を覆う、興奮した笑みを止められずにいた。


何かを思い出したかのように、上機嫌でわたしの方を振り向く。

ブリヌイ、このゲームの審判になってくれ」


わたしは腕を組んだまま、微笑みながら彼の下手な演出を見た。

やっぱり、夢の中にいても相変わらず気持ちが悪い。


「御侍、わたしは言ったじゃない……他人にこんなつまらないゲームを強要する人が一番嫌いだって……」

わたしは手を伸ばし、手入れの行き届いた彼の首筋に手を添える。


例えこれが夢だとしても……自分の手で再び彼を仕留める感覚は、実に悪くないわ。




目を開けると、手足は麻紐でキツく縛られていた。

微かに甘い香りが漂っている。


ここは薄暗い倉庫だ。

辺りには瓦礫や石が散乱しているから、わたしはまだあの廃工場にいるみたい。


ブリヌイ、こんなに早く目が覚めるとはな……」


着飾った青年は、わたしの前の椅子に優雅に腰掛ける。手には途中まで磨った葉巻を持っていた。

時折、黒い服を着た男たちが視線を投げかけてくる、倉庫内の状況を確認しているようだ。


「あら、これはこれは……常連のエドガー子爵じゃない」

鼻で笑いながら声を掛ける。


エドガー子爵、チャランポランな貴族の坊ちゃん。

そして、地下カジノの上客だ。


「フンッ、私たちは商売人だろう?お互いに干渉しないのが暗黙のルール、だけど今回は目に余るな……」


「商売?……あの少年をけしかけたのはあなたなの?」

わたしは笑顔をやめ、彼を冷たく睨みつける。


「そうだ。”ファイナルゲーム”で運試しをしてもらおうと思ってな……」

「まさかあの物分りの悪いガキが、あんな非現実的な幻想を抱いていたとはな……元々売れ残りだ。死んでも惜しくない」


エドガーは石のテーブルに葉巻を押し付け、まるで地面に落ちたパン屑について話しているかのように、意に介さない。


そう言えば、この臆病なお坊ちゃんは「ファイナルゲーム」の報酬を死ぬほど欲しがっていたけど、一度も自分でプレイした事がなかった。

敗者の惨状を見て、近くのテーブルで漏らしていた様子が記憶に新しい……


「しかし、その少年には感謝しないとな……」

エドガーの気持ち悪い笑顔が近づいてくる、なんだかご機嫌のようだ。


「彼がいなかったら、貴方はここに来てくれなかっただろう?まさかあの残酷で無情なブリヌイに、こんな優しい一面があったとは……本当にバカでカワイイな……」

「霊力が使えないんだろう?辛いだろう?アハハハハハッ……高値で貴方を売り飛ばした後、貴方が大事にしているカジノを貰おう……」


エドガーは明らかに自分の妄想に酔っている。

だけどゆっくりと起き上がるわたしを見て、口角が滑稽な角度を保ったまま、彼の笑顔はすぐに凍りついた。


「あら、ごめんなさいね……あなたがうるさすぎて、もう聞いていられなかったの……」

わたしは眉をひそめて、キツく縛られたせいで痺れた手足を動かす。


「いや……ありえない……もう霊力は使えないはずだ……」

エドガーは椅子に座り込み、震えながら入口に向かって叫んだ。

「誰か!早く来い!……チクショウ!」


その声と同時に数十人の男たちが突入してきて、銃をわたしに向けた。


「エドガー子爵、道具の効き目を信じすぎたみたいね……それとも、わたしの食霊としての力を低く見ていたのかしら……」


そっと手を上げると、トランプが翼でも生えたかのように手のひらから飛び出した。

叫び声が上がる中、全ての銃が地面に落ちた。エドガーの悲鳴も聞こえてくる。


「悪くない。さっきの演説よりは耳当たりがいいわ」

手でトランプを広げると、エドガーは地面に倒れ込んだ。


「エドガー子爵……”ファイナルゲーム”にそんなに興味があるのなら、じゃあ……ご自身でプレイしたらどうかしら?」

「心配しないで。今日はきっと一生忘れられない悪夢になるって、約束するわ」


Ⅳ.ゲーム

「今日のルール……一人ずつカードを引いて、数字が大きい人だけがここから生きて出られる」

わたしは革製の椅子に座り、ディーラーを嬉々として演じた。

「皆様、ゲームスタート」


石のテーブルの上には、裏返しにしたトランプが置かれている。

エドガーと彼の手下たちは、トランプを見て躊躇していた。


「あら……もうこんな時間」

わたしは仕方なく壁の時計を見る、時間は22時15分。

「15分以内に勝者が決まらなければ、あなたたち全員が敗者よ」


全員が身震いし、カードの奪い合いが始まった。

やはり……時間と数字が発明されたのは、先延ばしをしたがる人間の惰性に対処するためなんだとわかる。


やがて、状況は収拾がつかなくなった。

誰かが床に落ちていた銃を拾った。


数字は順番を決められるが、ただの冷たい数字に過ぎない。

目の前の人を全員殺せば、一番小さい「1 」を取っても勝者になれる。


人間は弱肉強食のゲームにはもう慣れ親しんでいるのだ。


分針が地面を指している、22時30分だ。

深紅の匂いが部屋に充満していた。


「私の勝ち……私が勝った……私を解放しろ……」

哀れなエドガーは、いつもの余裕を失い、私の足元で泣きながら懇願してきた。


「チッ、汚い」

足をズラし、血で汚れた彼の顔を見つめる。

「シーッ……落ち着いて、まずエドガー子爵に是非聞かせたい話があるわ……」


「ライナー卿をご存知かしら?礼儀正しい教養のある紳士で、町のホームレスを受け入れるための福祉施設を自ら設立したお方……しかし残念ながら、それは彼が作り出した幻想に過ぎなかった」


わたしは身を乗り出して、床に落ちている血まみれのハートのエースを拾った。

「……彼はギャンブラーでもあった。でも、自分のイメージを保つため、カジノに行く時はいつも変装をしていた」

「あの日、わたしは彼にハートのエースを渡した。ウフフ、あれは魔法のカードよ……ああ、ついでに少しだけ小細工をして、彼の下手な変装を更にリアルにしてあげたわ」

「次の日、彼は道端で死んでいたわ。イカサマをしていたのがバレたらしい……」


カードの垢は眩しい程に輝いているが、エドガーの顔は対照的に青白くなった。

「弱い者は、自分より弱くて助けを必要とする同類を苛める事しか出来ない。あなたと同じね……本当に嫌いだわ」


カードが過る、エドガーの目にはもう妖しく光るハートのエースしか映らない。

「クズ、自分の実力を証明したければ……わたしの元へおいで」


ギャンブルで全てが壊される気持ちを、味わわせてあげる。


22時45分、わたしは地下室にいた子どもたちを全員解放した。


遠ざかる彼らの姿を見つめ、帰ろうとしたら服の裾を引っ張られた。

「お兄ちゃん……どこ?」

ティナという女の子だ。


彼女の純粋な瞳を見て、わたしはしばらく黙り込んだ。

「……彼はここよりも良い所に行ったわ」

「うぅ……お兄ちゃんのところに行きたい」

「今行ったら、彼に迷惑を掛けてしまうわ」


わたしの言葉を聞いてティナは諦めたように俯いたが、その小さな手にはもっと力が入った。


「ちゃんと生きて。そうしないと彼には会えないわ」

私はため息をつきながら、彼女の手を取って金貨10枚を載せる。

「お兄ちゃんは言っていたわ。あなたが立派な大人になった時、会いに来てくれるって」


ティナは涙を流しながら、まだわかっていないような顔で、ようやく頷いた。


暗い空で、三日月がぼんやりと優しい光を放っている。


再び黒潮が押し寄せ、彼女に別れを告げる前に、わたしは再び意識を失ってしまった。




「目覚めの時だ」

冷たい声が黒い水面を過り、波紋が広がる。

水底でまどろんでいたわたしは、勢いよく目を開いた。


目の前には、見知らぬ若い男がいた。

その気配から、強い霊力を持つ食霊なのはわかったが、敵意はないようだった。


「貴方は毒を盛られた状態で無理に霊力を使った。だから気絶したんだ。これは解毒剤」

彼は茶色の液体の入った小瓶をわたしに手渡したが、わたしは手を伸ばさなかった。


警戒しているのがわかったのか、彼は小瓶を開け一気に飲み干した後、ポケットからもう1本取り出した。


「さあ……でも、これに毒が入っていないという証明にはならないな」

ジェノベーゼは本気で顔をしかめ、手にした小瓶を見つめて悩み始めた。


わたしは無言で小瓶を受け取って飲み干し、彼に目を向ける。

「あなたは誰……?」


ジェノベーゼ

月光が彼の目に映り、また消えていく。


「どうしてわたしを助けたの?」

「貴方を助けられたから」


……

おかしな人。


その後、彼はわたしをカジノの入口まで送ってくれた。

帰り際、彼は狂気に陥った人たちを見て、何か熱心に考え始めた。


「”カーニバル”にカジノを開くのも、いいかもしれないな……」


Ⅴ.ブリヌイ

「カーニバル」とは有名な娯楽施設だ。

そして、そこのカジノはギャンブラーの聖地としても知られている。


しかし、天国と地獄は紙一重だ。


豪華絢爛な室内、大きなガラス窓には夜の街の明かりが映し出されている。

青黒い天幕には、満月が金貨のように刻まれていた。


人の声で騒々しい、渦巻く模様の絨毯は貪婪な魂を吸着していく。

歪められて「もっと、もっと!」と泣き叫ぶ口のように見える。


「残念、あなたの負けよ」

ブリヌイは嘆きながら頭を振る。

「一人の運には限りがある……三連続で勝ったのなら、そこで止めるべきだったわ」


「そんな……ありえない!ありえない!」

テーブルの上のサイコロを見て、男の目は焦点を失い、信じられないとばかり頭を激しく振った。

「そんなはずはな……もう一回だけ!次は……次こそ勝つ!」


「ウフフ……お客様、“ファイナルゲーム”がしたいの?負けたらもうやり直しは効かないわよ」


「いや……お願いだ、次は勝つ、必ず勝ち取る!」

黒い服の男たちに取り囲まれ、彼はテーブルや椅子に手足を絡めながら必死で反抗する。


「しぶといわね、次?……ウフフ、わたしが知る限りここ一か月で全財産を使い果たしたんじゃない?」

男の指が一つずつ外されて行く様を、ブリヌイは高みの見物をしていた。


「商売、言え……妻女……売れるものは全て売ったじゃない、次なんて言う資格があるかしら?」

「まだ、おれ自身がある、俺の命を賭ける!」

「あなた?フフッ……ふざけないで頂戴、ここに座った瞬間から、掛け金はあなた自身だったじゃない」


そうだ、彼がギャンブルのために全てを放棄しようとした瞬間には、もう彼にはなにもない。

これがギャンブラーの末路。


男の喚き声は遠ざかって行き、渦の中でかき消された。

他の客はまだ楽園の夢に溺れている、誰もこの茶番を気にしていないだろう。


ブリヌイは足元に積まれた骨董や宝石を興味なさげに眺めながら、一つ背伸びをした。

これらにはもっと相応しい場所があるわ。


梅雨が明けて、珍しく晴れた日の午後。

静かな木陰で鳥がさえずるいい日和だ。


「あら!これは貴重な宝物よ、材料も作りも一流……きっと高値で売れるに違いないわ!」

レッドベルベットケーキは、まるで金塊を丸ごと持っているかのように、何度も何度も手の中の骨董品を撫でた。

「こんな珍しい物、どこの上客が負けていったの?」


「ウフフ……没落した貴族よ。賭けをすれば必ず負ける、なのに引き下がらない。今回こそ本当に全財産を失ったんじゃないの」

ブリヌイは精巧なカップに淹れた紅茶を一口飲んだ。

「先祖は伯爵らしい、落ちぶれてはいるが家には骨董がたくさんあるそうよ」


「あらら、危うく自分の靴まで負けそうになってた爺さんか……確かに弱かった、あたしよりもね……ふふっ……」

レッドベルベットケーキは眉を上げた。

「あいつらは本当に狂っているわ、十戦九敗だとしても諦めないなんて」


「ギャンブラーってそういうものよ。彼らが心配するのは消えて行く金や代価ではなく……明日もカジノはやっているかどうかよ」


ブリヌイはカップを置くと、椅子からすくっと立ち上がった。


「次またこんな上客に出会えたら、宝物を多めに貰って来てあげるわ」


「どうせわたしの元にあっても仕方ないし……彼らの富を奪うよりも、自業自得な様子を見たいもの……全てを失って醜く歪んだ顔をね」


地獄の執行者は楽しげに笑う。


こうして、ゆったりとした午後のティータイムが終わりを告げた。



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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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