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昇平楽・ストーリー・好时光

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好時光「コウジコウ」・弐

二度目の旅立ち。


 清々しい朝、よく眠れた瑪瑙魚圓は小鳥のさえずりに包まれながら気持ちよさそうに伸びをした。目を開けると、周りの景色に似つかわしくない恨み深い顔が目に入った。


白酒:……

瑪瑙つみれ:ぷ……ひどいクマだな、昨日はよく寝れなかったのか?

白酒:……おかげさまでな。

瑪瑙つみれ:ハハッ、冗談を言えるくらいだ。そんなに怒ってはなさそうだな……そうだ、手を組む話は答えが出たか?

白酒:実は、前に聖教に言い寄られたことがあった。その場で断ったが……今、彼らに近づいては、きっと不審に思われる……

白酒:だから、手を組むしかなさそうだ。

瑪瑙つみれ:聖教があなたを……前に、聖教は卑劣だって言ってたわよね。と言うことは、聖教についてもある程度知っているのね?

白酒:闇に潜む虫どもに過ぎない……聖教の一般的な事務は聖女が担当している。いつも聖女が口にする聖主は滅多に顔を出さないんだ。

白酒:聖教の秘密は聖女と聖主だけが知っているようだ。他のやつらは聖教に命を売ったただの操り人形だ。

胡桃粥:聖教という名は、私も耳にしたことがあります……彼らの悪行は、きっと山河陣以外にも他の仲間や組織が絡んでいるはず。その人たちから有効な手がかりを聞き出せるかもしれません。

瑪瑙つみれ:では、明日……それか明後日、玉京に行くのはどうだ?


 断定的な口調が突然質問に変わった。瑪瑙魚圓の問いを聞いて、胡桃粥は満足げに頷き、笑った。


胡桃粥:私も賛成です。

瑪瑙つみれ:決まりだ。ふむ……薬師はここ最近、また山に入ったのか?薬は足りるのか?


 胡桃粥はそれを聞いてすぐに持っていた風呂敷を叩いて頷いた。


胡桃粥:薬をたくさん出してもらったので、十分です。

瑪瑙つみれ:よし、じゃあしばらくの間、東籬はお前たちに任せたぞ、金髄煎荷葉鳳脯

荷葉鳳脯:安心してお任せを!あ!ちょっと待って!食料を渡してなかった!たくさん作ったの!ちょっと待ってて!

瑪瑙つみれ:……鳳脯が戻ってくる前に早く行くぞ!

白酒:?

瑪瑙つみれ:あの真っ黒に焦げた野菜を一人で平らげたいなら別だ。あと、塩で殺されたんじゃないかってくらいしょっぱい牛バラもな!


 それを聞いて、白酒も慌てて馬に乗った。しかし、厳しい顔をした金髄煎に止められた。


金髄煎:もし瑪瑙魚圓に何かあったら、お前を許さない。

瑪瑙つみれ:お前……私はあいつに守ってもらうほど弱くない。

金髄煎:……もしお前がまた理性を失ったら、こいつはお前の安全など顧みず、目的を達成することを優先するはずだ。

白酒:俺はそんなひどいやつじゃない。信じるかどうかはお前の勝手だ。

金髄煎:……

胡桃粥:安心して、私がいる限り、そのようなことはさせません。


 胡桃粥の言葉を聞いて、金髄煎もようやく安心し、馬に乗った三人を見送った。


───


 数十里ほど進んだとき、白酒は長い間考えていたかのように、口を開いて聞いた。


白酒金髄煎……彼の俺への敵意は、強過ぎないか?

瑪瑙つみれ:夜中に殺されていないだけマシだ。

白酒:……そうだ、以前、陶舞の話をしていたが、その嬢ちゃんはどこに?会ったことがないような……

瑪瑙つみれ:……


 瑪瑙魚圓の笑顔が一瞬固まったが、すぐに目の前の広い平原を指差して笑った。


瑪瑙つみれ:会ったことがない?この東籬を見ろ……これが陶舞だ。

白酒:?

瑪瑙つみれ:まあ、旅は長い。暇つぶしに説明してやろう。金髄煎がどうしてあなたをあんなに嫌っているのかを。


好時光「コウジコウ」・参

いわゆる犠牲。


白酒:玄羽衛?

瑪瑙つみれ:玄武を守る闇衛だ。玄武のために生き、玄武のために死んでいく人たちさ。山河陣の生贄がいない時は、もちろん彼らが真っ先に生贄として使われる。

白酒金髄煎は玄羽衛だった……でも生贄にはされなかったのか?

瑪瑙つみれ:色々あって、あいつは生贄の部隊に追い付けなかった。それで私が拾ってあげたんだ。そういえば、胡桃粥と知り合ったのもその時だったな……


───


数年前

玉京城外


瑪瑙つみれ:これだけ歩いて、助けたのが自ら死を求める食霊だと……逃げられないようにキツく縛れ。

金髄煎:なんで縛るんだよ!離せ!

陶舞:け、怪我してる。じっとしてて……

金髄煎:気安く触るな!うぐっ……!


 肉まんを口に入れられ、金髄煎は目を見開いてイライラした様子でその犯人を睨みつけることしかできなかった。


瑪瑙つみれ:離してどうするっていうんだ?狂牛のようにあちこち騒ぎ回るつもりか?黙って食べろ。

金髄煎:うぐぐぐぐぐ!

瑪瑙つみれ:え?何言っているかわからないぞ。チッ、しゃべれないなら静かにしろ。

金髄煎:うぐっ……ペッ!離せ!戻らないといけないんだ!俺は玄羽衛だ、戻らないと!

瑪瑙つみれ:戻っても生贄を連れた山河陣の部隊にはもう追いつけない。玄羽衛はもう存在しない。玄武の王朝も終わった。

金髄煎:なら反乱軍を片付けて、陛下のために最後まで戦う……

瑪瑙つみれ:死にいくことがそんなに大事か?気になるんだ、教えてくれてもいいだろう?

金髄煎:……俺は玄羽衛だ。俺の命は陛下のもの。陛下のために死ねないなら、生きていたって……

瑪瑙つみれ:でも生きることが重要じゃないなら、その犠牲も無意味なものだ。

金髄煎:どういう……ことだ……

瑪瑙つみれ:ここがどこだか知ってるか?ここは玉京城からそう遠く離れていない。戦争のためのテントがいたるところに張られている……この旗や矢は耀の州に何をもたらしたと思う?災い、生き別れ、死別……

瑪瑙つみれ:でも聞いたところによると、お前の陛下が必死に作り上げた山河陣は、耀の州の人々を守るためにあるらしいな……もし耀の州の住民であるお前が命を軽んじたら、なぜそのような犠牲を払ってでもそれを守ろうとするんだ?

金髄煎:だが、陛下は最初から俺の命を犠牲にするおつもりだ……俺が生まれたのは、陛下のために死ぬためだ……

瑪瑙つみれ:犠牲をこの上ない栄光だと思っているなら、最初から生まれなきゃよかったんだ。みんな腹の中で死んじまえばいいんだ!

瑪瑙つみれ:自分が何のために死ぬのかも、自分の死が本当に世界に平和をもたらすかどうかもわからないなんて。お前の言っている犠牲は「忠臣」としての虚栄心を満たすためだけに過ぎない。


 突如、大殿で跪いていた西荒の死士たちが頭に浮かび、瑪瑙魚圓の目に怒りと悲しみの色が浮かんだ。


瑪瑙つみれ:ただ死ぬために生まれた人などいない。お前の陛下は死んだ。これからは自分のために生きろ。

金髄煎:自分のために……生きる?

瑪瑙つみれ:鈍い頭だ……まあいい。自分のために生きることが難しいなら、こいつのために生きたらどうだ?

小狗:ワン!

金髄煎:おい!どうしてそいつまで縛ってるんだ!

瑪瑙つみれ:なんだ?お前の犬じゃないのか?お前が気絶していた時、ずっと周りをぐるぐるしていたから、てっきりお前の犬かと……まあいい、今日からお前の犬だ!名前をつけてあげなさい。

金髄煎:あっ?

瑪瑙つみれ:早くしろ。名前をつけないなら今すぐそいつの首を切り落とす。

金髄煎:ま、待って!えっと……えっと……


 瑪瑙魚圓の目つきを見て、金髄煎はそれが冗談とは思えなかった。彼女はいつでも犬に刀を振り下ろせそうだ。金髄煎は頭に浮かんだ単語を必死に叫んだ。


金髄煎:クコ!クコだ!

瑪瑙つみれ:クコ?何だその変な名前は?

金髄煎:クコの実のクコだ。クコの実の畑の中で見つけたんだ……クコ……クコ?

小枸儿:ワン!

瑪瑙つみれ:いいだろう。結構気に入ってるみたいだな。じゃあ、これから育てるんだな?早く答えろ、でないと今すぐ首を切り落とすぞ。

金髄煎:お前……わかった、育てる!責任持って面倒を見る!

瑪瑙つみれ:動物が好きみたいだな……ふっ、わが国にはまだ……面白い動物がたくさんいる。そいつらの面倒を見ないか?

金髄煎:俺が面倒を……見る?

瑪瑙つみれ:早く返事をしろ。今すぐ目の前で角煮にするぞ。

金髄煎:……


 この時、金髄煎は相手の威嚇が全て虚勢であることに気づいていた。瑪瑙魚圓が自分を離し、自分を死なせてくれるまで、無視することもできたのに……

 だが、彼はあまりにも長い間、死の気配が充満する世界で生きていたため、「生きるために生きる」ということが彼にとってどれほど魅力的か……性格が悪そうだが信頼できそうな瑪瑙魚圓を前に、彼は本能的に信じたかった……

 自分は、ただ犠牲になるために生まれたわけではないことに。


金髄煎:……わかった。俺がみんなを育てる。

瑪瑙つみれ:ふん、約束だ。

陶舞:……


 重荷を下ろしてほっとしている金髄煎と満足げな瑪瑙魚圓とは違い、陶舞は思い詰めた顔をして瑪瑙魚圓をテントの中に引っ張った。


陶舞:魚ちゃん、西荒にそんなたくさんの動物はいないよ?なのに……

瑪瑙つみれ:西荒?西荒に動物がいるとは言っていない。

陶舞:え?でも、さっき、わが国って……

瑪瑙つみれ:そう、私が言ったのはわが国、西荒じゃない。

陶舞:えっと、こんがらがってきた……つまり、新しい国を作るってこと!?

瑪瑙つみれ:ふっ、頭はしっかり働いているじゃないか。こんがらがってないようだぞ?

陶舞:で、でも……国を作るなんてそんな簡単に……どうやって……

瑪瑙つみれ:安心しろ、方法はある。


 陶舞の心配そうな顔を見て、瑪瑙魚圓は説明を続けた。


瑪瑙つみれ:東極には、玄武のせいで「離郷」と化してしまった風水の宝地があるだろう。そこに新しい国を作るんだ。

瑪瑙つみれ:今度こそ、西荒の二の舞いにはさせない。


好時光「コウジコウ」・肆

救いの恩義。


瑪瑙つみれ:じいさん、これがいつもお前を邪魔してくる堕神だろう?

农户:おお!そ、そうじゃ……

(※「农户」とは、農家という意味。)


 農夫は床に転がる縛り上げられた堕神と、それに比べてかなり小柄な瑪瑙魚圓を見て、信じられないという顔で大きな口を開いた。


农户:本当に……捕まえた……

瑪瑙つみれ:当たり前だろ。給料は?

农户:あ、あるよ!まだ小さい子牛じゃが……

瑪瑙つみれ:いつか牛が大きくなる。連れて行く。

瑪瑙つみれ:そうだ、じいさん。あの絵のことを忘れるな。張千を見かけたら、絶対に離郷に来るよう伝えてくれ!

农户:わかったわかった……


───


 満足そうに農夫から縄をもらった瑪瑙魚圓は、金髄煎がこの今月五頭目の牛を見てどんな表情をするか、胸を膨らませながら帰った。


瑪瑙つみれ:ああ、張千には人に見返りを求めるなと教えたのに、今じゃ私が……まあ仕方ない、これも離郷のため。ただ……

瑪瑙つみれ:山河陣は一番の解決策じゃない。耀の州の外から堕神が侵入しないように防ぐだけ。元々いた堕神はすぐに片付けないと、増殖を繰り返す……

???:殺す……殺す……

瑪瑙つみれ:あれ?何の声……


 近くから奇妙な声が聞こえ、瑪瑙魚圓は不思議ながらもどこか聞いたことのあるように感じた……彼女は子牛を木の下に繋げ、早足で声のする方へ向かった。


胡桃粥:ゴホッ……堕神のやつ……殺されてたまるか……

瑪瑙つみれ:……


 草むらの中で、醜い堕神が一人の青年に馬乗りになっていた。涎を垂らしながら牙をむき出しにし、痩せ細った首に噛みつこうとしているが、青年が持っていた筆軸によって遮られている。

 この状況はどこか見覚えがあり、瑪瑙魚圓は思わず思いにふけた。その時、牙に対抗していた筆軸から破裂音が聞こえた。


胡桃粥:!!

瑪瑙つみれ:まずい……!


 今にも尖った牙が青年の首に刺さろうとしている。瑪瑙魚圓は冷や汗をかいた。今までで一番早いスピードで弯刀を抜き出し、堕神に向かって投げた。

 間一髪で、弯刀は直接堕神の首を斬り落とした。鮮血が飛び散り、驚いている青年に降りかかった。


瑪瑙つみれ:だ……大丈夫か?

胡桃粥:本が……

瑪瑙つみれ:あっ?

胡桃粥:本に……血がついてしまった……

瑪瑙つみれ:……


 危うく死ぬところだったのに、巻物を心配している青年を見て、瑪瑙魚圓は言葉を失った。そこで彼女は気づいた。青年が先ほど必死に守っていたのは自身の命ではなく、巻物だったのだ。


瑪瑙つみれ:また命を軽んじるやつか……

胡桃粥:……助けてくれてありがとうございます。胡桃粥と申します。この巻物以外に、お返しできるものはありませんが、もしお好きであれば好きなだけ持っていってください。感謝の気持ちです。

瑪瑙つみれ:先ほどまで命を捨ててまで守ろうとしていたものを人にあげるのか?堕神の血がついたから、本の価値がなくなったとでも言いたいのか?

胡桃粥:本は汚らわしいものがついたからといって、その価値が下がることはありません。私はただ、あんな邪悪なやつらによって本を失いたくなかったのです。ですが、本を大切にしてくれる持ち主を見つけることができれば、本も幸せでしょう。

瑪瑙つみれ:そんなのもらっても仕方ない……でも、どうして一人でこんなにもたくさんの本を持っているんだ?

胡桃粥:お恥ずかしいのですが、玉京へ行って抱負を実現しようとしていたのです。まさか道に迷い、命まで失うとは……

瑪瑙つみれ:玉京へ?抱負を実現……つまり、皇帝に仕えるというのか。

胡桃粥:明君を補佐し、人々に平和をもたらせられるのであれば、悔いはありません。


好時光「コウジコウ」・伍

大志の方向。


 秋になり、緑と黄色の草原はまるで絵の具が混ざったようだ。金髄煎は丘の上に寝転がっていた。息を吸うたび、日に照らされた草のにおいが広がる。うとうとしていると、堂々とこちらへ向かってくる足音で目が覚めた。


瑪瑙つみれ:ほら、この子は任せたぞ。

金髄煎:……また牛か?こんなに小さきゃ、食べても腹を満たせないな……

瑪瑙つみれ:おい、この可愛い子牛ちゃんを殺して食べるつもりか?

金髄煎:離郷は干ばつで収穫がない。みんなが餓死してくのを黙って見ているわけにもいかないだろ……牛や羊は俺が面倒を見ているんだ。殺すなんて、もちろん嫌だよ。でもそれも「生きる」ためだ。

瑪瑙つみれ:だいぶ成長したな。もう、死ぬことだけを考えていた頑固頭じゃないようだ。

金髄煎:……全部、愚かな玄武のせいだ。あいつのせいで離郷の人々がこんなにも苦しんでいるんだ。今年の干ばつだって、きっとあいつが山河陣を作るために多くの人を犠牲にした天罰だ。

瑪瑙つみれ:そういう迷信はよくないぞ。天災は予想できない。私たちはできることをすればいい。

金髄煎:できること……人間は俺たちと違う。もし雨が降らなければ、餓死する前に渴死してしまう。人がいなきゃ、国とはいえない。

瑪瑙つみれ:渴死は大袈裟だが、陶舞が桃をたくさんあげただろう。どこから持ってきたのかは知らないが……

金髄煎:でもこの策は長くは持たないだろ。それに食糧の問題を解決できても、離郷の人々は戦争で疲弊している。祖国を再建する意思も力もない。それなのにどうやって彼らをまとめるつもりなんだ?

瑪瑙つみれ:私は体力仕事しかやらない。頭を使うことは専門外だ。

金髄煎:じゃあ誰がやるんだ?これまで、俺たちを騙していたのか?

瑪瑙つみれ:騙す暇なんてない。頭脳労働はいい候補を見つけた。

金髄煎:誰だよ……

胡桃粥:お嬢さん!


 話していると、そう遠くない場所から声がした。瑪瑙魚圓は声がした方を見て、思わず笑った。


瑪瑙つみれ:ほら、来たぞ。

陶舞:魚ちゃん、ごめんね。彼はここが離郷だって知ってるのかと思って……

瑪瑙つみれ:問題ない。いずれ知るんだ。

胡桃粥:この命を助けてくれたことは忘れません。しかし、私は玉京に行きたいと言ったはず、どうして私を騙したのですか?

瑪瑙つみれ:逆に聞くが、玉京じゃなきゃいけない理由はなんだ?高い位や富が欲しいのか?

胡桃粥:違いますよ!私はただ、耀の州を良くしたいんです……

瑪瑙つみれ:ならここが相応しい。

胡桃粥:……


 ここまで話し、胡桃粥は瑪瑙魚圓の考えに対し、覚悟を決めていたが、あまりにも突然の出来事だったため、すぐには受け入れ難かった。それに何より……


胡桃粥:玉京の方が地形の面でも経済的な面でも優れており、どこにでもつながっているため耀の州の各地を統治しやすい……一方、ここにあるのは不毛の土地と弱い平民のみ……

瑪瑙つみれ:ほう、廃物を宝にする自信がないのか?

胡桃粥:廃物を宝にするというより……起死回生に近い……

瑪瑙つみれ:大殿で平凡な暇人になるより、険悪な情勢を挽回できる、起死回生できる有能な家臣になるほうがいいだろう。離郷の復興が急がれる今、腕を振るうチャンスだ。

胡桃粥:……つまり、ここを王城である玉京よりさらに繁栄した街にするおつもりですか?

瑪瑙つみれ:玉京より?玉京なんかと比べてどうする。離郷は玉京と関係ない。それに、私が求めているのは街じゃない……国だ。私は「犠牲」を崇拝しない国を作る。人々が、夜ご飯を魚にするか肉にするか、そんなちっぽけなことでしか悩まない国……

瑪瑙つみれ:そして私はこの国の王になる。その対価として、ここでの苦しみは全て私一人で背負う……どうだ?丞相になって、一緒に平和な国を作らないか?


好時光「コウジコウ」・陸

東籬の国だよ。


瑪瑙魚圓の部屋の外


 金髄煎は腕を組んでドアに寄りかかり、目を閉じている。陶舞は階段に座り、暇そうにクコの相手をしている。


陶舞:……二人が部屋に入ってから丸一日が経ったわ。一体何を話しているのかしら……

金髄煎:幸い、コップが割れた音が聞こえただけだ。もし本当に言い争いが起きれば、彼はきっと瑪瑙魚圓に殺される。

陶舞:魚ちゃんが胡桃粥さんをうまく説得できるといいんだけど……彼が離郷に残って魚ちゃんの力になってくれれば、私も安心できるわ……

瑪瑙つみれ:もう二度と離郷の話はするな。


 扉が中から突然開けられ、陶舞は部屋から出てきた瑪瑙魚圓を見て、信じられないという表情で目を丸くした。


陶舞:魚ちゃん……どういうこと?話し合いはうまくいかなかったの?胡桃粥さん、やっぱり玉京に行かれるんですか?

胡桃粥:や、私は……

瑪瑙つみれ:よし、我が丞相から新しい国名を発表してもらおう。

陶舞:!!

胡桃粥:……今日から、離郷の名を「東籬の国」に改めます。

金髄煎:東籬の国……

胡桃粥:ええ。東籬の国……争いとは遠く離れた、平和で穏やかな国です。

陶舞:よかった……よかったわ!!

瑪瑙つみれ:喜ぶのはまだ早いわ。これから忙しくなるわよ。

陶舞:でも、いいスタートが切れた!新しい国を作る……魚ちゃん、本当に成し遂げたのね!

瑪瑙つみれ:もちろんだ。ゴホン、建国後の一つ目の任務は、東籬の食糧の問題を解決すること……

瑪瑙つみれ:この中に雨を降らせる力を持ってる人はいないだろうな?うーん……いっそのこと、玉京へ食料を奪いに行くぞ!

胡桃粥:???ついさっき、「争いとは遠く離れる」って言ったような気が?

瑪瑙つみれ:これは争いには入らない。生きるためなんだから。それに、私は前から玉京が気に食わなかった。

胡桃粥:……「離郷は玉京と関係ない」と。あの時の態度は嘘だったのですか……?

金髄煎:玉京から食糧を運ぶのは時間も労力も必要だ。やめた方がいい。

瑪瑙つみれ:なら東籬に一番近いのは……戍衛郡?

金髄煎:ああ。そこなら食糧もたくさんあるはずだ。

胡桃粥:……丞相の件はもう一度考えさせてもらっても……


 胡桃粥がこめかみに手を当てて悩んでいるのを見て、陶舞は近づいて笑って慰めた。


陶舞:心配しないでください。魚ちゃんは今、興奮状態なんです。今言ったことは全てでたらめです。もう少し冷静になるのを待ちましょう。

胡桃粥:冷静になる前に先に遠くへ行ってしまうのでは……

陶舞:いえ、魚ちゃんは見かけによらず、慎重なんですよ。

胡桃粥:そうであればいいんですが……しかし、食糧については確かに難題です。

陶舞:それは私に任せてください。

胡桃粥:えっと……失礼ですが、人は一生桃を食べていくわけにはいきません……

陶舞:違いますよ!とにかく、安心してください。


 彼女は嬉しそうに笑った。その笑顔は、人に安心感を与えた。


陶舞:干ばつはもうじき終わります。


数日後

東籬の国


 不眠不休で人々のために堕神を倒し、悪党を叩きのめし、瑪瑙魚圓は東籬にかなりの食糧をもたらした。希望を失っていた東籬の人々も、瑪瑙魚圓の貢献を見て、再び生きる希望が湧いた。

 乾季はまだ終わっていないが、次第に再建が進んでいった。東籬の人々は瑪瑙魚圓のために寺を建て、彼女を神として敬った。寺は簡素でボロかったが、瑪瑙魚圓にとって、これまでの中で一番居心地がいい大好きな場所になった。


胡桃粥:しかし……ずっとこのままというわけにはいきません。お体の健康状態もそうですが、もう東籬付近で盗みを働く者はいません。食糧を手に入れるには、これからはもっと遠くへ行かなければ……

瑪瑙つみれ:大丈夫だ。遠ければ遠いほどいい。そうすれば彼を見つける確率も上がる。

胡桃粥:彼……張千のことですか?今でも彼を諦めていないんですね?

瑪瑙つみれ:生死を問わず探し出すしかない。私は諦めない。

胡桃粥:……

瑪瑙つみれ:よし、他に用がなければ、陶舞を見にいってくる。


───


 何も言わない胡桃粥を見て、瑪瑙魚圓は早足で陶舞の部屋に向かっていった。扉は半分開いていた。彼女は扉を押し開けて中に入ると、ベッドに横たわる彼女を見て、思わずその場に固まった。


陶舞:魚ちゃん、来たのね……

瑪瑙つみれ:たった数日で、どうしてこんなに悪化してるの?あのヤブ医者……

陶舞:待って……薬師は関係ない、私がいけないの……


 陶舞は手を伸ばして瑪瑙魚圓を引き留めた。その手はかすかに震えており、瑪瑙魚圓の袖を掴んだだけで力を使い切ったようだった。瑪瑙魚圓はベッドの横に座り、心配そうに彼女を見つめた。


陶舞:魚ちゃん、私たちが会えるのは、これで最後だと思う。

瑪瑙つみれ:あなた……

陶舞:私の体はもう持たない。神様が来ても、もう元には戻れない……最後に、ずっと隠してたことがあるの……

陶舞:実は、私は人間じゃないの……

瑪瑙つみれ:……知っている。

陶舞:やっぱり……何でもお見通しだね……

瑪瑙つみれ:あの桃は、お前が霊力を使って変えてきたものだろう……体がこんな状態になったのも、霊力を使いすぎてしまったせいか?

陶舞:うふふ……私はそんなバカなことしないよ……でも、半分は正解……


 ポタ。


陶舞:私は霊族……私の名前は、梼杌……白虎……族……

(※檮杌(とうごつ / とうこつ)とは中国神話に登場する怪物の一つ。四凶の一つとされる。)


 ポタ。ポタ。


陶舞:白虎一族のために……私はたくさんの……過ちを犯した……罪を、償わないと……


 ポタ。ポタ。ポタ。


陶舞:これで、東籬が……繁栄、して……西荒の……後悔を……埋められますように……


 瑪瑙魚圓の手のひらに包まれた手が徐々に力、そして温度を失っていった。その時、窓の外から雨の音が聞こえた。

 陶舞が死んだ。突如やってきた大雨と、感激して涙を流す東籬の人々の歓声の中、この世を去った。


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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
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    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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