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ポロンカリストゥス・エピソード

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ポロンカリストゥスのエピソード

綺麗で優しい青年。全ての人が彼を一目見ただけで彼の良さを感じ取り、そして保護欲が刺激される。自分の無害な外見と優しい言葉を武器に、相手の心の奥底に隠れている秘密を暴く。知り合って間もない頃は、彼を礼儀正しく嫌いになれない青年だと思うが、仲良くなった後は毒舌だということがわかる。しかしその外見のせいで毒舌も毒舌として受け取られないことが多い。

Ⅰ.おとぎ話

エクティスには、果てがない白と骨まで凍る極寒以外、何もない。

雪国とか、おとぎ話とか、全て子ども騙しの嘘だ。

ここは荒れ果てた地。極寒こそここにいる全ての生物の敵だ、食霊ですら太刀打ちできない。


かまどにある薪がパチパチと燃えている。どんなに威勢が良くても、窓に引っ付いている強固な氷は寸分も溶けない。


私は寒さの他に何も見えない窓の外を退屈そうに眺めながら、逃げ回っている子どもの帽子の紐を掴んで、彼女を自分の腕の中にねじ込んだ。


「言うことを聞かない悪い子は、海に放り込まれてサメの餌にされちゃうよ」

「嘘つき!サメはあたしたちのお腹に入るんだもん!」


あぁ……

世間知らずのクソガキだ。


キッチンで新鮮な生魚をまな板に叩きつけているニコラスの音に合わせて、私はふっくらとした子どもの頬をツンツンと無遠慮に突いた。


「じゃあ、魚を誰かに食べさせて、君で私のお腹を満たそうかな」

「いいよ!一匹の魚を五人で分けるなんて、お腹いっぱいになる訳がないし」


ヴァージニアは私の膝に乗って、冷たい風に吹かれて真っ赤な跡が残る顔を私に向けた。

興奮した様子で両目が輝いている。

分厚い帽子を被っていたせいで防御力が高い彼女の頭を軽く叩いて、笑いながらこう続けた。


「死者の前で文句を言うのは失礼だよ。君はお腹いっぱいにならないだけだけど、あっちは命を失うんだ」

「死者……?」

「もうすぐ、君のお腹の中に入るお魚さんのことさ」


子どもの体を包んでいる服は壁のように厚く、触れても人間の温もりがまるで感じられない。

それもそうだ。ここの人たちは生きるのに精一杯で、「人」のことなんて考えている余裕はない。


私はますます楽しくなって、彼女のお腹のあたりを指でなぞった。


「お魚さんが怒ったら、君たちのへそを噛み千切ってそこから出て来ちゃうよ!」

「うわぁー!」


炭火に投げ込まれたセイウチのように、子どもたちは私の話を怖がったのか部屋で暴れ出した。私が彼らを見て、腹を抱えて笑った。


「コホンコホン、コホン……」


突然、地底に埋められた数百年の枯れ木のような、聞くに堪えない老人の声がした。子どもたちは拠り所を見つけたのか、一斉にその乾いた懐に飛び込み、猫のように隠れてしまった。


「天から授かった力があるのなら、狩りに出るべきだ、こんな所で子どもを脅すなんて……」

「うん……氷水の中で漁をしていないけれど……私も君たちの役に立っているでしょう?」


老いぼれたちは私の言葉を聞いて動きを止めた。まるでくちばしを掴まれたアザラシのように、不満があってもため込むことしか出来ずにいた。その顔は笑える程に醜かった。


頭の角がチクチクと痛む。


食霊は普通の生物とは違う、この角には神経が通っていて、私にとってはほとんど手足と変わらない。

この人間たちのお腹を満たすために、手足が千切れるような痛みに耐えて来た。


角に巻かれている包帯が解けていないことを確認すると、私はまた枯れ草とボロ布で積み上げられた小さなベッドにもぐりこんだ。


エクティスの昼間は退屈だ。


村の若者たちは朝から狩りに出発する。疲れ果てて帰って来ても、この氷雪に呪われた土地で食料なんてちっとも見つからない。

私は、この老いぼれたちと子どもの面倒を見て、乾いた苦痛の魂と一緒に耐えるしかない。狩りに行った者たちが戻ってくると、収穫がないことへの八つ当たりも受けなければならない。


バンッーー


「ハァ……寒い……ニコラス!今日は運が良い!魚を二匹捕まえたぞ!」


狩りに行った連中が忙しなく入って来た。彼らの白い息によって、部屋の中は寒く、騒々しくなった。


「ニコラス!……あの老いぼれ。何の仕事をもしねぇから、食料の保存処理をさせてやってんのに、口も聞いてくれねぇとは……」

「それ以上はやめろ、聞かれたらどうするんだ。俺たちに隠れて老人や子どもを虐待し始めたらどうする?」


チッ。


「ニコラスは厨房で食材の処理をしいる。彼には耳がないから、私たちの声はあまり届かない、君たちも知っているだろう?」

「えー!耳がないの?!」


ヴァージニアは驚いた顔で私に近づいて来た、なんだかイライラする。

彼女の場違いな好奇心を遮ろうとした時、誰かの声がした。


「ニコラスは若い時、漁をするために海に飛び込んだが、サメに耳を齧られた。彼は私たちの英雄だ」


村長の声だ。

苦労してきたニコラスの半生を、あまりにも簡単に、たった一言で済ませた。

私は彼をちらりと見て、ヴァージニアの帽子越しに頭を撫でた。


「鹿、お父さんが言ったお話って何?」

「おとぎ話だよ」

「嘘だよ、怖い話だって」


私は嬉しそうに笑った。話に怯えているヴァージニアに見つめられている中、私は手でサメの口を真似して、彼女の耳をパクッとかじった。


「だから、おとぎ話なんだよー」


Ⅱ.秘密

絶滅の危機に瀕している村で、どうして未だにこんな伝統を守っているのか、意味がわからない。


プレゼント用のリボンを丸めてテーブルに放り投げる。少し乱暴な動きをしただけでニコラスに気付かれてしまった。

拾い上げた紙くずを宝物のように抱える彼を見て、私は堪えきれずに小声で呟いた。


「彼らは君の好意を受け取らないし、ちゃんと食材を処理しないって君を責める……どうして……」


ニコラスは首をかしげた。歳月によった老けていった顔には子どものような無邪気さが浮かんでいた、私の言葉が聞き取れなかったようだ。


「なんでもないよー安心して、ちゃんとプレゼントをあのおバカさんたちに贈ってくるから」


「……私がこうして穏やかに晩年を過ごせるのは、村の若者たちのおかげだ、だからそれに報いたい……私には子どもいないから、鹿に頼むしかないんだ……」


違う。君は私のおかげでこうして安らかな老後を送れているんだ。

まあ、御侍じゃなかったら、とっくに見捨てていたけど。


わざと笑顔を見せて、プレゼントの箱を掴んで外に出た。


雪風がなくても、エクティスは相変わらず酷く寒い。

まるで空気が殴っているようで、外にいると一秒毎に身体が痛む。

この時、ドアをノックするなんて氷を割るのと同じだ。だから私はいつも足でドアを蹴って、プレゼントを部屋の人に投げる。


彼らは驚いた顔でプレゼントを受け取って!その後に私のプレゼントボックスを見て、珍しがる。


私は必死で笑いをこらえた。

どうやら、私のプレゼントボックスには世の中の宝物が全部入っている、と前についた嘘が噂になっているらしい。


「これは村長へのプレゼントだよー」

「ニコラスは相変わらず優しいな……君もありがとう、鹿」

「どういたしまして、やるべき事をしたまでだよーじゃあお先に、ヴァージニアによろしくー」

「いや、ちょっと待って……」


村長は私を家の中に連れ込んで、何か言おうとしていた。


「しかし、君はもうピーターにプレゼントをあげただろう?彼は……君のプレゼントについて何か聞いていないか?」


ピーター……

村長以外で、最も村民の尊敬と信頼を受けている人だ。


あーなるほどね。


私は笑いながら、無邪気なフリをして頷いた。


「そうだよ、彼は私に、私のプレゼントボックスには全世界の宝物が詰まっているのではって聞いてきた」

「君はどう答えたんだ?」

「もちろん……正直に話したよ」


村長の表情はいきなり真剣になった。彼は私の方に近づき、耳に触れそうな距離で息を潜めながらこう言った。


「ピーターに気を付けた方が良い、彼は君のプレゼントボックスを欲しがっている……」

「待ってくれ、村長。それって……ピーターの秘密を私に教えようとしているの?」

「そ……そういうことだ、ピーターは……」

「待ってーー村長、知らないの?秘密は、とっても危険なものなんだよー」


エクティスにまた雪が降り始めた。僕はあたたかい村長の家を出て、白い世界に入り、風に吹かれて目を細めた。


「危険な目に遭いたくないのなら、方法は二つしかない。一つは、何の秘密も知らないこと。もう一つは、全ての秘密を知ること」


北風が白い包帯を吹き飛ばすと、村長は驚いた顔をした。その反応に私は機嫌が良くなった。血に染った角も、笑っている私につられてブルブルと震えている。


「君は、自分が全ての秘密を知っていると思うのかい?」


Ⅲ.プレゼント

ピーターは死んだ。


村人たちの話によると、ピーターの家は荒らされ、血まみれになっていたという。死体は見つからなかったけど、確実に死んでいると。

彼らは辛うじて武器と言える銛を突きつけて、私とニコラスを死角に取り囲んだ。


「死体はきっとこの食霊の箱の中にある!」

「この人殺しめ!箱を渡せ!」


いやーこの人たちの目的、あからさま過ぎるでしょう。


状況がわからず刺されそうになっているニコラスを背後に隠しながら、プレゼントボックスを探し回る村人たちの視線を見て、思わず笑いそうになった。


「海に捨てられている可能性だってあるのに、どうして私のプレゼントボックスに入っていると言い切れるんだ?」

「ピーターはここ最近、あんたの箱にご執心だった。きっと盗もうとした時にあんたに殺されたんだろ!」

「ピーターは強いし、相手出来るのは食霊だけだ。お前でなければ誰の仕業だ!」

「無実というのなら、早く箱の中身を見せてみろ!」


彼らはお宝探しと同じくらいの情熱を死体探しに注いでいるりもっと早くやる気を出していたら、この村もここまで廃れていないだろう。


心の中で村人に白目を向いて、誤魔化そうとした時、群れの中から村長が出て来た。


「鹿、貴方の無実を証明するために、プレゼントボックスを私たちに調べさせてくれ。抵抗するなら……私は貴方たちを許さない」


真剣な表情に凛とした口調で話しかけてきた村長があまりにも可笑しくて、私は耐え切れずに笑い出した。


ほら、ニコラス。

例え私たちが泥棒に遭った被害者だとしても、君がこの村のために耳を失ったとしても、私がこのバカ共のために角を犠牲にしても、こいつらは私たちに刃を向けるんだ。


年老いた君に帰る場所がないから。

私が食霊だから。

村人たちが弱くて可哀想だから。

だから、全員を地獄に道連れにしようとしている。


でも残念ながら、私は人間の言いなりになるようなバカじゃないんだー


「この世の宝物全てが入っているかどうか気になるんでしょう?いいよー」


重たいプレゼントボックスを取り出し、村長に手渡した。


「だけど、村長は私が言ったことを覚えているかい?」


プレゼントボックスを開けようとした村長の手は、宙に浮いたまま行き場をなくした。微かな笑みを浮かべていたはずの顔からも表情が消えた。


「えっ?」

「秘密って、とても危険なものなんだ……本当に、プレゼントボックスの秘密を知りたいのかい?」

「……村長として、村の全員を、全てを理解しなければならない。これが私の役目だ」

「へぇーじゃあ、村長は村の秘密を全部知っているんだね?」


彼は訝し気に私を見ていた、次第に顔から焦りが見えるようになった。


「焦らないで。ヴァージニアの秘密を知っているかどうか、聞こうとしただけだよー」


家族の名前を聞いた村長は固まった。眉間に皺を寄せ、口をパクパクと動かしながらも、声の一つも出せないでいた。


村のこと、というより村長としての地位を守ることばかりに気を取られていた愚か者の父は、娘をちっとも気に掛けていなかった。


「ふふ……じゃあ、教えてあげよう。ヴァージニアは賢い子だ、私は賢い子が好きだから、何を聞かれても答えてあげた。例えば、村長の若い頃の様子だとか、前村長のこととか……」


そこまで聞くと、彼は一歩後ずさりして、屠殺場に連れて行かれた鶏のような怯えた表情を浮かべた。


「あれ?ヴァージニアは村長よりも秘密を知っているかもしれないねー」

「貴様……!」

「今更怖がっても……私とニコラスを子守りに使ったら、こんな日が来るってわかっているはずだよ」


彼の村長としての仮面が少しずつ崩れていくのを見ながら、私はニコラスの手を振り切って、一歩ずつ彼に迫った。


「ヴァージニアと一番仲の良い子を知っているかい?」

「……」


もちろん知らないだろうな。ヴァージニアがいかに善良な心を持っているかもね。自分の友だちが大人たちの汚い争いに巻き込まれるかもしれないって聞いて、すぐに知らせに行くほど本当に心の優しい子だと。


立派な村長は、何も知らない。


「そう、ヴァージニアと一番仲が良いのは、ピーターの息子だよー」


村長は地面に座り込んだ、落ちたプレゼントボックスの中にあるものも鈍い音を立てた。

あたたかく湿ったものを感じたのか、彼は慌て始めるけど、もう手遅れだ。


「ピーターのような荒くれ者が、誰かが自分を殺そうとしているって聞いたら、どんな反応をするのだろう?自分を殺そうとしている奴を、簡単に見逃すだろうか?部屋にある血痕は、本当にピーターのもの?ヴァージニアは今どこにいるの?」


私はしゃがみ込んで、村長の瞳に映っている笑顔を見た。


「このプレゼントボックスに入っているのは、一体なんだろうね?」


Ⅳ.不運

「箱の中身は何だと思う?」


こんなつまらない話を聞いた女の子は何故か目を輝かせていた。私もなんだか機嫌が良くなったから、わざともったいぶった。


「……ヴァージニアの、死体?」


地面に座っているサルミアッキちゃんは、手の包帯が絡まるぐらい興奮して前のめりになっていた。

聴衆の熱意こそが話し手への何よりのご褒美なのだ。だけど私が答えを明かす前に、彼女の後ろに立っていた青年が躊躇いがちに口を開いた。


「……そ、そのプレゼントボックスって、もしかして私が前に入った……」

「サンちゃん、もちろんだよ。一個しか持っていないからね」

「うぅ……つまり、死体を入れたことが……」

「ふふ……ボックスの色は、元から赤だと思っていたの?」

「ちょ、ちょっとお手洗いに行ってきます……」


そそくさと去っていくサンデビルの背中を見て、涙が出そうになるほど笑った。

かつて「血に飢えた悪魔」と呼ばれた戦鬼が、こんな話に驚いて逃げ出すとは。こう見ると、学校生活は確かに戦場や、あの荒れ地よりも遥かに穏やかなものだな。


サルミアッキちゃんが急に私の過去を聞いてこなければ、あの冷たく野蛮な記憶は、まるで前世のものかと思う程だった。


「鹿、教官……ボックスの中には、一体何が……」

「おや?サルミアッキちゃんがそんなに気になるとはね。いいよ、教えてあげる、ボックスの中身は……」

「ちょっと先生!また子どもを脅かしているんですか!」


突然飛び込んできたのはらこの学校で一番任期が長い私が一番頭を抱えている学生だった。


「ブリュレちゃん、この時間は練習場にいるはずじゃないの?ひょっとして、またサボった?」

「違います!陛下から、先生を執務室に呼ぶよう仰せつかったんです!」

「陛下が?」

「へへっ、先生が陛下に内緒で何かやましいことをして、それがバレたのかもしれないですよ?」

「可能性はあるね……じゃあ、この情報を提供してくれたブリュレちゃんへの感謝の証として、来月の情報課試験は明日に前倒すとしようー」

「ええー!」


ブリュレちゃんの悲鳴を聞きながら、サルミアッキがいる校医室を出て階段を上がった。


陛下が学校に執務室を設けて以来、私はそこの常連となった。

学校のことや帝国連邦のことも、相談役として呼ばれる。

私がどんな過去を持っているか、彼は知っているはずなのに……


「陛下、ブリュレちゃんから伝言を預かったよ。もし嘘だったら、今から彼女に愛の教育をしに行かないと」

「何をごちゃごちゃと、早く座れ」


本当のようだね。


シャンパンの、公文書が一切置かれていない無駄に大きなデスクの向かいで、突き出された赤い封筒を見下ろした。


「昇進通知がこんなオシャレだなんて、知らなかったよ」

「……任務だ」


そうか、それなら安心だ。

笑顔のまま封筒を開け、中の便箋を広げた瞬間、妙な感じがした。


極寒と、白。

不運。


「……野蛮に生存し、冰霜塗れの、溶けない悪魔……」


呪いのような文字によって、人を凍死させる程の寒さを連想させた。エクティスを離れる前に見た、氷海に沈むその目を思い出した。


「鹿、その鬼を連れて来い。もしくは……殺せ」


これは実に、とんでもない不運だね……


私はまた笑った。誰もそれが偽装だと気づかないだろうという確信を持ちながら。


「陛下の仰せのままにー」


Ⅴポロンカリストゥス

ポロンカリストゥスにとって、エクティスに生まれたこと、これが最大の不運だった。


先祖代々自然に対抗してきた人間たちは野蛮かつ強大だあった。初めてここで生まれた食霊は氷海に繋がれ、魚を捕る道具にされた。二番目にここで生まれた食霊は力がないため、縛られて遠くのグルイラオに売られた。


ポロンカリストゥスの場合、目を開けると既にまな板に押し付けられていた。

飢えのせいで理性をなくした人間たちはポロンカリストゥスの地を飲み干し、肉を食べ尽くそうとした。

口を酸っぱくして言い聞かせ、どうにか一先ず奇妙なエネルギーを含んだ角を人間に食べさせることで、一命を取り留めた。


彼の角は折れては生え、生えてはまた折れ、その苦しさに耐えられなくなった彼は新たな生き残る術──秘密を模索した。


その後、自分の御侍・ニコラスが海に落ち、サメに両耳を食べられることになり、命は助かったものの、村長を続けることが出来なくなった、理由を知った。


ポロンカリストゥスは次期村長のためにその秘密を守ったから、二度と角を折られることはなくなった。


残酷なおとぎ話のような世界で、彼は自分なりの処世術で生きてきた。

偽りの仮面を被り、変わらぬ本心を隠してきた。


その後、村長に有力なライバルが出来た事を知った。よりによってそのライバルのピーターには、健康な後継者がいた。

ピーターに嫉妬した村長は邪魔者を排除しようと、かつて自分を助けてくれた食霊に密かに協力を求めた。


しかし、ポロンカリストゥスはその秘密を共有することを拒否した。


村長は真っ赤に染まった角を見ながら、自分こそ彼の御侍を海に落とした張本人であることを思い出した。


それで村長は、ピーターと打ち合わせをするフリをして、ピーターの家に食霊の角と引き換えた毒薬を残した。

ピーターを殺してからあの憎い食霊に濡れ衣を着せ、漁夫の利を得ようとしたのだ。


しかし村長は思いもしなかっただろう、ポロンカリストゥスはヴァージニアにこの秘密を教えた。善良な女の子は深夜の吹雪の中、親友一家に知らせに行ったのだ。


そして……


「プレゼントボックスの中には、一体……何が入っているの?」


こんなにしつこく気にするサルミアッキを初めて見たクレームブリュレは、ため息をついた。


「最後まで聞いてください、サルミアッキ先生」


喉から手が出る程欲していた不思議な箱が目の前にあるというのに、村長はポロンカリストゥスに誘導され、ピーターに殺されたヴァージニアが入っていると思い込んでしまった。


彼は恐怖で精神に異常をきたし、大暴れして、足を踏み外して焚火を踏んでしまう。あまりの熱さに驚いて氷の海に飛び込んだが、サメに両耳をかじられてやっとポロンカリストゥスによって岸に引き上げられた。


ポロンカリストゥスは血まみれになった丸い物体を見て、「これで公平になったね」と笑いながら言った。


そして、村長の前にしゃがみ込み、赤いプレゼントボックスを置いた。


「これは君へのプレゼントだ、気に入ってくれるかな?」


村長の悲鳴の中、ポロンカリストゥスは蓋を開けた。眠っていた女の子は、悪魔のような金切り声によって目を覚ました。


……


「終わ……り?」


怖い話に夢中になっているサルミアッキは興奮冷めあらぬ様子だった。クレームブリュレは照れたように後頭部を撫でて笑いながら言った。


「やっぱり、先生の方が話し上手ですね。ごめんなさい、サルミアッキ先生、あたしが知っているのはこれだけです」

「うーん……どうして、鹿教官は嘘をついたの……?」

「嘘?」


サルミアッキは真剣な顔で頷きながら、手で包帯を遊んだ。


「そう……鹿教官は……箱の中には、何もないって……」

「ああ、それは先生の職業病ですよ」

「職業……病?」


クレームブリュレは大雑把に椅子に座り、思慮深そうな顔を作って語り出した。


「先生は、世界でいっっっっっちばん危険な秘密を手に入れる事が仕事だから、身を守るには嘘をつくしかないのです。あたしが聞いたこの話も、かなりの確率で嘘だと思いますよ」


クレームブリュレは……鹿教官が好きなんだね」


「は?!いやいやいや……あんなに恐ろしいひと……ほら、あたしたちが聞いた話の中で、あのピーターさんの結末がどこにもないよね。村長があんな自信満々に先生を問い質しに行ったってことは、村長はピーターが死んでいると確信していたってことです。つまり……」


クレームブリュレサルミアッキの耳元に顔を寄せ、神妙に声を潜めながら言った。


「先生は村長がピーターを殺そうとしている事を知っていたのに、救おうとするどころか、ヴァージニアという可愛い女の子を火の中に突き落とそうとしたんですよ……まるで悪魔だ!」


「悪魔?でも、前にブリュレちゃんが校庭で走っていた時、私を世界で一番良い先生だって言ってたよね?」


「キャーーーーー!」


ポロンカリストゥスが後ろに立っていることに気付いたクレームブリュレは、錆びついたゼンマイ仕掛けのおもちゃのように、カクカクとしながら振り返った。


「あ、あたしは今すぐ校庭で五十周してきます!先生!許してください!」

「ブリュレちゃんは相変わらず足が速いね……それじゃあ、私も陛下からのお役目を果たさないと……ん?」


ポロンカリストゥスは足を踏み出したが、止められてしまった。サルミアッキがそっと彼のマフラーを掴んだから。


「その話には、もしかして……三つ目の結末があるの?……死者が、出ていない……鹿教官が、彼らを救った……」


ポロンカリストゥスは一瞬呆気に取られたが、すぐに楽しそうに口角を上げ、冬の寒さを溶かす程のあたたかい太陽のような笑顔を、サルミアッキに向けた。


彼はゆっくりと身を屈め、少女の澄んだ瞳を凝視した。悪戯っぽく綺麗な鹿の角が生えた頭を傾げながら、彼女にこう告げた。


「ひ・み・つー」


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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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