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紫陽花と雨宿り・ストーリー・4-4・4-6

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クエスト4-4

晴れた日の午前中 桜の島 京海城のふもと

 ――皆で遊びに行こうと約束をしてから数週間後、やっとその約束が果たされる日がやってきた。

紗良:海なんて久しぶりだな。紗央が生きてるときに遊びに来た以来か。

うな丼:そうだな、あいつはお前と違って『遊ぶ』という概念を知っていたからな。

紗良:またお前は! そういう嫌な言い方を!

うな丼:違うか? お前は、水信玄餅に言われたから来たのであろう?

紗良:それは……まぁ、そうだが。

水信玄餅:御侍様、一緒に来られて嬉しいです。

紗良:そうだな。私もお前と来られて嬉しいよ。

水信玄餅:……良かったです。

流しそうめん:それにしても、まさかこの海に来るとはな。

猫まんま:君がバイトをしているところだったか。

流しそうめん:ああ、そこのたこ焼き屋だ。

晴れた日の昼 桜の島 海辺のたこ焼き

たこ焼き:いらっしゃい、いらっしゃーい! 美味しいたこ焼きが焼きたてやで~!

流しそうめんたこ焼き、相変わらず元気だな。

たこ焼き:あ、流しそうめんやないか!

たこ焼き:って……に、ひのふのみのよの……随分大所帯やな。

たこ焼き:あんさん、友達いたんか。少し安心したで。

流しそうめん:お前、何気に失礼だよな。ハハッ!

流しそうめん:せっかくここに来たからさ。お前の焼くうまいたこ焼きをみんなに食べてもらいたくて。

たこ焼き:ほうほう! それはええタイミングやったな! よし、特にたこ焼きの大きいとこ、入れたるわ!

 たこ焼きはいつもよりもさらに多くおまけをつけて、皆に振舞った。

水信玄餅:とても美味しいです。御侍様。

紗良:ああ、そうだな。まさかお前とこうして海を見ながらたこ焼きを食べられるなんてな。

紗良:想像もしてなかった。ちょっと、泣きそうだ。

 笑いながら、紗良が言う。水信玄餅は何とも言えない気持ちになって、紗良へと手を伸ばした。

紗良:ん? どうした? 水信玄餅

水信玄餅:その……よく御侍様がしてくれるやつをしようかと。

紗良:よく私がやる?

水信玄餅:御侍様は、よく私の頭を撫でてくれます。

紗良:お前は……なんと可愛いことを!

水信玄餅:御侍様は、悲しくありません。だから、泣く必要はないのです。

紗良:ばかっ、うれし涙だよ。

 紗良はたまらず水信玄餅にしがみついた。

水信玄餅:あの、御侍様。少し、苦しいです……。

 その様子を見て、他の者たちはたまらず笑った。彼が幸せそうにしているのが、とても微笑ましく映ったからだ。

たこ焼き:あんさん、ほんまええ顔で笑うようになったな。

流しそうめん:なんだよ、突然?

たこ焼き:悩みが解決したんか? 吹っ切れたように見える。

流しそうめん:それはまだだな。でも、進むべき道は見えた気がする。

たこ焼き:へぇ? ええやないの! それって、すっごい大切なことやで!

たこ焼き:あんさん、またここにバイトに来たらええ! 結構あんさん目当てで来る子もいるんやで。

流しそうめん:へぇ……。

たこ焼き:また、そんなあからさまに興味のなさそうな顔して。

流しそうめん:いや、いつもと同じ顔だって。たこ焼きは穿ち過ぎだ。

たこ焼き:ホンマか~? ちょっと疑わしいで、あんさん。

 たこ焼きは、じぃ~と疑いのまなざしを向ける。

流しそうめん:でもそうだな。またバイトに来るよ。ここでのバイトは楽しかったし。

流しそうめん:そのときはまたよろしくな、たこ焼き

 流しそうめんがにっこりと笑った。その笑顔は、とても爽やかで、魅力的で……たこ焼きは複雑な気持ちになった。

たこ焼き:あんさんという奴は……ホンマにもう。

流しそうめん:なんだ? 俺、また変なこと言ったか?

流しそうめん:だったら謝るよ、ごめんな……。

たこ焼き:謝らんでええ! そうやない……そうやないんや。

流しそうめん:よくわからないな、たこ焼きは。

たこ焼き:わからんでええ! でもな、あんさんはそんな頻繁に笑わんでええ。たまーに笑うくらいがちょうどええわ!

晴れた日の夜 紗良御侍の家

 そして日が暮れ、皆で紗良の家まで戻ってきた。

 紗良は皆のために、水信玄餅を作った。僅か三十分という短い時間の間しかその姿を保っていられない、幻の和菓子だ。

流しそうめん水信玄餅って、俺食べるの初めてだ。

猫まんま:吾輩もです。水信玄餅は食べたことありましたか?

水信玄餅:私は……たぶん、食べたことがない、と思う。

うな丼:拙者まで食べる必要はないのでは?

紗良:納得のいく水信玄餅を作れたら、一緒に食べてくれると約束をしたではないか。

紗良:よもや忘れたのではないだろうな?

うな丼:……納得のいく水信玄餅が作れたのか?

紗良:どうだろうな、だが水信玄餅を召喚できたということはそういうことだと解釈している。

紗良:……食べてみてくれ。この瞬間が、私の夢見た、幸せの瞬間なのだ。

 紗良の言葉に、皆が水信玄餅を一口食べた。

水信玄餅:これは……。

猫まんま:初めて食べる感触です。溶ける……いや、それとも違う……これはなんとも形容しがたいです。

 ほのかな甘みが口の中に広がる。それはとても洗練された繊細な味であった。

水信玄餅:とても、美味しいです。私は、これが好きです。

 思わず水信玄餅はそう呟いた。

水信玄餅:(何故だろう……初めて食べるのに、とても懐かしい。いつか食べたことのあるような、そんな感覚だ)

紗良:うな丼! これは、水信玄餅のお墨付きということで良いのではないか!?

うな丼:どうした、お前らしくない。そんな風に声を荒げるなんて。

紗良:それくらい嬉しいのさ! 私は今、最高に幸せだ……!

紗良:一緒に食事すらしてくれないお前と、唯一したこの約束……正直、こんな気持ちでこの願いを果たせるとは思わなかった。

紗良:ああ、ダメだ……! もう我慢ができない……!

紗良:こんなことがあるなんて……! 私は最高に幸せ者だ!

水信玄餅:お、御侍様……!

 紗良が泣き出してしまい、慌てて水信玄餅は彼女に手を伸ばす。

紗良:大丈夫、私は大丈夫だから。ありがとう、水信玄餅。ありがとう、みんな……!

 水信玄餅の手を取り、紗良は号泣する。

うな丼:まったく、大げさな女だ。この程度のことで、よくそこまで喜べる。

紗良:お前は! こんなときまでそんな意地悪な言い方を! だが、いい……今日は特別に許してやろう。

 水信玄餅はそんなふたりのやり取りを見ていて、思わず笑ってしまった。

水信玄餅:(なんて幸せな時間なのだろう……)

 御館様がいなくなってから、こんなに嬉しい気持ちになったことはあっただろうか?

水信玄餅:(流しそうめん猫まんまがいてくれたことで、私はなんとか生きていられたが……それでもやっぱり悲しかった)

水信玄餅:(でも、今は違う。本当に、心から嬉しい……)

水信玄餅:(御侍様と出会えて、こうしてみんなと一緒にいられて良かった)

水信玄餅:(この時間をみんなと過ごせて、本当に……良かった)

 水信玄餅はしみじみとそう思った。

水信玄餅は……。

・<選択肢・上>眠くなった。 流しそうめん+5

・<選択肢・中>幸せだと思った。 うな丼+15

・<選択肢・下>みんなに感謝した。 流しそうめん+15

クエスト4-6

晴れた日の夜 紗良御侍の家

 宴は終わり、皆が帰っていく。その様子を見送って、紗良は家の中へと戻っていく。

水信玄餅:あ、あの! 御侍様っ!

 その声に紗良は立ち止まる。ゆっくりと振り返り、目を細めて微笑んだ。

紗良:どうした、水信玄餅

水信玄餅:あの……少し、よろしいでしょうか。

紗良:なんだ?

水信玄餅:私は……御侍様に謝らなきゃいけないことがあります。

紗良:お前から謝られるようなことはないと思うが。

紗良:まぁいい。言ってみろ。

水信玄餅:は、はい……あの、私は以前、御侍様にとても悪いことを言ってしまいました。

紗良:……私は、何を言われたっけ?

水信玄餅:その! 私は、御侍様のことを何も知らずに、ひどいことを言いました!

水信玄餅:御侍様は、優れた料理御侍で……そのために、ご両親と弟様を亡くされた、と。

水信玄餅うな丼に、聞きました。

紗良:あいつ……余計なことを。

水信玄餅:大切なご家族をその力のために亡くされた御侍様に、私は……自分の感情をぶつけてしまった。

水信玄餅:それはとてもよくないことだと……だから!

紗良:良い。気にしてはおらぬ。

水信玄餅:でも……!

紗良:人の心の内は、誰にもわからぬ。誰かにとって辛いことでも、その他の者にとってはなんということはない、ということは往々にしてあることだ。

紗良:だが、その傷ついた感情は確かに存在し、無視はできぬもの。

紗良:その事実から目を逸らさず、しっかりと認識すべきだ。だが、捕らわれてはならぬ。辛い感情に縛られていたら……ずっと辛いままだ。

紗良:私が言っても、あまり説得力はないかもしれぬが。

水信玄餅:……そんなことは。

紗良:誰かが傷ついていたら、その痛みに寄り添える者となれ。そして共に支えられる相手が見つかれば……お前はきっと幸せになれる。

紗良:時間というのは、優しい。人を癒してくれる。

紗良:だが、ときに残酷なのだ。そこにとどまることを許してくれない。

紗良:家族を失おうが、最愛の御侍を失おうが――何があろうが、前に進まねばならぬ。時間が流れている限り、な。

水信玄餅:御侍様……私は。

紗良:すぐに変われとは言わぬ。

紗良:ただ、前を向くことを忘れないでほしい。

紗良:そうしたら、いつか道が開ける可能性が生まれる。

紗良:あくまで可能性だから、必ず実るものではない。だが、前を見ていなかったら、その可能性を見つけられない。

紗良:今なら私は言える。馬鹿なことだとわかっていて、水信玄餅を作り続けてよかったと。

紗良:あの先に待っていたのは、うな丼と共に弟を思い出して食す、というただそれだけの行為だったが……。

紗良:それでも私は朝が来ることに、そこまで絶望せずには済んだよ。

紗良:がむしゃらに生きることは恥ずかしいと笑う者もいるかもしれぬが……私は構わない。

紗良:誰かの頑張りを笑う者に、価値はない。そんな者は捨て置け。

紗良:水信玄餅、お前はもう見つけているじゃないか、最高の友を。

紗良:お前が困ったときに、駆け付けてくれる友がいるというのは、この上ない幸福だ。

紗良:これからお前はたくさんの縁を結ぶだろう。だが、忘れてはいけないよ、そうした者がいたことを。

水信玄餅:それは、流しそうめん猫まんまのことですか?

紗良:さて。お前が思い浮かべた相手こそが正解だ。

紗良:いつか、その相手と決別する日が来ても、それまでに生まれた想いは不変だ。

紗良:お前の中で糧になる。前に向ける力となる……。

紗良:水信玄餅。ありがとう、私のところに来てくれて。

紗良:私はもういつ死んでも悔いはない。両親が死に、弟が死んで、私は絶望に打ちひしがれたが……。

紗良:お前のお陰で笑って死ねそうだ。

紗良:最後に、幸せだったときの気持ちを思い出せる……まだ両親も生きていて、弟もいた。あの、幸せな時間を。

紗良:そして、最後にお前と過ごせた時間は私にとって何よりも最高の宝物だ。

紗良:ありがとうと何度でも言おう。お前は私の人生に、最後の潤いをくれた。

紗良:お前は僅かな時間しか出会えない、貴重な存在だ。

紗良:その瞬間に、私は立ち会えて。こうして共に時間を過ごせて、最高に幸せだよ。

紗良:ありがとう、水信玄餅。私は、お前が大好きだ。

水信玄餅:……御侍様。

紗良:いつか、お前の心の枷が外れる日が来るといいな。私はそう願って死ぬとしよう。

水信玄餅:そんなこと願うのは、ずるいです。御侍様。

紗良:最後くらいいいじゃないか。これは、お前の幸福へも繋がることだから。

紗良:御館様も願っていたさ。

紗良:みんなお前を愛して、お前の幸せを願っている。もしお前が化け物だというのなら、それは愛され過ぎる化け物だということだな。

紗良:それくらい、お前は特別な存在なのだから。

紗良:あと少し。何日あるかわからぬが、私と共にいてくれ。それが、お前の御侍として、最後のわがままだ。

 ポン、と紗良が水信玄餅の頭を撫でる。水信玄餅はゆっくりと、そして大きく頷いた。

水信玄餅:はい、御侍様。私は御侍様の食霊です。御侍様の最後の時まで、ずっとお傍に……いさせてください。

雨降る朝 紗良御侍の家

 それから半年ほどして、紗良御侍は亡くなった。

うな丼:忘れ物はないな?

水信玄餅:はい。

 水信玄餅の荷物は殆どなかった。召喚されたときも身一つで来たのだから当然ではあるが。

猫まんま:これでもうここには来ないのか。それはそれで寂しくなります。

 紗良の家の扉が閉められる。主がいなくなり、この家から水信玄餅は出て行くことになった。

水信玄餅:私は、どこに行こうか。また御館様の村に戻るか……。

流しそうめん:何言ってるんだ、水信玄餅。お前はこれから料理御侍ギルドに行くんだぞ。

水信玄餅:え?

流しそうめん:聞いてないのか? うな丼、どういうことだ。

うな丼:どういうこともなにも……お前たち、言ってなかったのか。

流しそうめん:俺たちに話して、本人に言ってないとは思わないだろ。

水信玄餅:……あの、どういうことでしょうか?

猫まんま:吾輩たちはこれから君を料理御侍ギルドに連れて行く。紗良御侍が、君のためにそのように手筈を整えてくれていたのです。

水信玄餅:御侍様が……。

猫まんま:君は希少な食霊です。その存在をまた悪い者に狙われないとも限りませんから。

うな丼:別に閉じ込められる訳じゃない。頼れる先を作っておいたってだけだ。

猫まんま:そうだ。君は自由です、水信玄餅

水信玄餅:自由……。

その言葉は水信玄餅に、少しの安心と少しの寂しさを感じさせた。

流しそうめん:大丈夫だ。料理御侍ギルドなら、俺たちだってすぐに行けるし。

猫まんま:鳥居私塾からもそう遠くない場所にあります。これまで通りですよ。

水信玄餅:そうですか……。

まだ実感が湧かない。思った以上に水信玄餅にとって、ここでの生活は楽しかったのだ。

水信玄餅:御侍様……。

流しそうめん:また出会えるさ、心を許し合える御侍にな。

流しそうめん:中にはむかつくやつもいるかもしれないけどさ。

猫まんま:同じ御侍様に仕える日も来るかもしれません。そういう楽しみを抱けるのも、吾輩たちの特権です。

水信玄餅:……。

 水信玄餅は、まだそこまで前向きになれなかった。

水信玄餅:そうですね。

 けれど、それでも顔をあげる。紗良がそう願ってくれていたから。

水信玄餅:では、行きましょうか。料理御侍ギルドへ。

 躓くことはきっとあるだろう。悲しみに打ちひしがれ、その場に立ち尽くすこともあるかもしれない。

水信玄餅:(けれど、それでも前を向くことは忘れない……)

 いつか、自分の枷と向きあうことになるだろう。その日まで、決して前を向くことをやめない――

 そう強く決意をし、水信玄餅は前へと進むのだった。

 ――最後に、ありがとうを。

・<選択肢・上>流しそうめん猫まんまに。 流しそうめん+15

・<選択肢・中>うな丼に。 うな丼+5

・<選択肢・下>紗良御侍に。 うな丼+15


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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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