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モカ・エピソード

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モカのエピソード

自分では冷血無情だと思っているが、内心、優しい一面を持つ。情に脆く、純粋で善良な人に流され、「完璧」な軍人になることができない。例え自分の力では成しえることができないと知っていても、できる限り他人を守ろうとする。以前いた環境を嫌い、寒い場所を好むようになり、極寒の環境の中でたくましく生きながら可愛らしく生きているペンギンを凄く気に入っている。

Ⅰ.極寒


「ったく、金持ちの考え事はマジわかんねぇ。石を探すって何事だっつうの……でもまあ、そりゃそうか、命の危険を冒してんの、ヤツらじゃねぇしな……」


傭兵が話している最中、突然足元がすべり、彼が登り切ったばかりの崖の縁からまた危うく転びそうになった。幸い、彼の仲間が急いで彼を引き戻したから、ザラザラと落ちていく雪の塊を見てびっくりすることができた。


「もう良い、やめろ。こんな貧しいとこに雇い主が監視役を送ってくるとは思わんが……」


あいつらがこっちを見つめ、警戒するように口を閉じた。


極雪原では気温が極端に低く、口をわずかに開けると口のなかまで凍結しそうで、俺は何も言いたくなかったんで、


道を急いだ。


周りの景色が方向すらわからなくなってくるほど、どんどん白くなっている。俺は白い向こう側に向かって、羅針盤を取り出した。


「おい、次はどこに向かうんだ?」

「どうした?なにぼーっとしてる?」


そのうちの一人の傭兵が、俺を後ろからいら立ち気味に押しやり、俺がさっき見た方向へ目を向けた。


「おかしいなぁ、こんなとこになんでペンギンがいるんだ?」


傭兵たちの攻撃的な目つきに気づいたように元々先の空き地に大胆に立っていたペンギンたちが、石の後ろに隠れたり、そのさらに後に身を潜めたり、米粒のような小さな目だけを露わにして、遠くから俺たちを見ていた。


「奇妙だな……まあいい、行くぞ。」


傭兵は俺が持っていた羅針盤をちらりと見て、仲間を呼び寄せては俺を避けて前に進んでいった。


だが俺はその2匹のペンギンの方に向かった。

彼らは俺を怖がっている様子はなく、ただボーッと頭を上げて見ていた。俺はバッグから魚の缶詰を取り出し、蓋を開けて彼らの前に置いたら、俺はその場を去った。


それから間もなくして、俺たちは目的地に着いた。


「ここか?」

「掘るか」


2人は本気で俺に意見を聞くつもりはなく、話している最中にすでにシャベルを手に取っていた。


俺もまた気にせずに道具を取り出そうとするが、突然、何やら違和感を感じた。


「危ない」


言い終わると、斜め前方の小山が突然、雪崩のように大量の雪が遠くから次第に襲ってきたーーある巨大な物体が俺たちに迫ってきている。


「クマ!クマだ!!」


傭兵は慌てて叫びだしたが、手は素早くライフルに構えた。


俺は彼の後ろに一歩踏み込み、彼の腕を掴んだ。


「やめろ、雪崩が来るぞ」


傭兵は舌打ちをし、再びクロスボウを構え、後退しながらクマの方向に狙いを定めている。


「もう来てる!」


2本の矢が的を外れている間に、クマが目前まで迫ってきていた。


生死に関わり、傭兵たちは逆に慌てなくなり、冷静にそのまま動かずに立っている。彼らはクマの丈夫な毛皮を近距離で貫通しようとしているらしい。


それを見て、俺も弓矢を手に取り、クマが飛び上がる瞬間に後ろに倒れ込み、雪の上を滑るようにその背後に回り込んだ。


3本の矢が同時に放たれ、1本が目に命中し、2本が前後で心臓の位置に命中した。


クマは空振りしたためか、怒りの咆哮を上げ、ふらつきながら前に2歩踏み出し、再び攻撃をしかけようとする様子だった。


傭兵はさらに2本の矢を射り、ついにクマは持ちこたえきれず、雪の中に倒れた。


「ふぅ……いいじゃねえか。初めてなのに、息ぴったりだな俺ら」


傭兵たちは既に何度も九死一生を経た身なので、すぐに泰然自若の顔を見せ、俺の肩を軽くたたきながら笑っていた。


俺はその手を避けることなく、ただシャベルを手に取り、積雪で覆われた鉱山へと向かった。


おそらく2時間後、一面の白い雪の中からようやく青黒い石の姿が見えた。


「俺らが命を落としそうになったのがこんなモンのため?どれどれ、なにがそんなに特別なんだ……」


不思議そうにその石に手を伸ばす二人が、背後に立つ俺がナイフを握っていることに気づかなかった。


驚きや怒りの声一つもなく、温かい血が静かに積雪と石の上に広がり、ゆっくりと流れていく。


気の所為か、人の血を浴びた石がかすかに光っているように見えた。


俺はナイフをしまい、冷静に言った。


「任務、完了」


Ⅱ.小休み


指示通りに石を回収し、死体を手早く処理した後、既に日が暮れた。


夜の雪原はさらに危険のため、俺はここに泊まることにした。


幸運なことに、鉱山内は人一人が泊まるには十分な広さがあり、バッグにも火をおこす道具が入っている。


用意が整った後、俺は突然、背後に2つの視線を感じた。


鬼神の説は信じてない質だ。それに、もしさっきの2人が悪霊になって復讐に来たとしても、俺はもう一度殺せる自信がある。


だから俺は焦らなかった。ただナイフを握りしめ直し、振り向いた。


「お前たち……」


洞窟の入り口には2匹のペンギンが立っていた。俺の言葉に対して、彼らはただ素早く瞬きをした。


「いつ来たんだ?お前ら……」


聞こうとするが突然言葉をやめた。ペンギンに質問を投げかけたところで、返事は返ってこない。


彼らも俺の言葉を理解するつもりがなく、吹雪の中で誇らしげに突っ立っていた。短いひれが突然ピクピクと動いて、どこからか魚を取り出し、パッと投げてきた。


俺はそれを見て、困惑した。


「俺に?」


「……」


「お前ら、中、入るか?」


ポタ。ポタ。


彼らがゆらゆらと入ってきた。


ペンギンは……寒さに強いはずでは?


焚き火の横で座っている2匹を見ながら、少し奇妙な気分になったが、まん丸いそのふたつの頭を見たら、さすがに追い出す気は出なかった。


焼き魚の香りが徐々に小さな洞窟を充満し、2匹も我慢できずに体を揺らし始めた。


どうせ、ペンギンは生魚も食えるしと思って、2匹の魚を彼らに渡した。


「ほれ、食え」


彼らは非常に賢い。人間と一緒に過ごした経験があるのか、魚を食べる仕草が非常に人間らしいものだった。


見ているとなぜか、こんな過酷な環境にいても、リラックスができた。


「ほんとは、殺したくなかった」


俺の声は非常に小さく、ペンギンたちはそれに気づいていないようで、まだ一心に焼き魚を食べている。


「やつらは、罰を受けるのは当然のことだ。いや……」


俺は急におかしく感じ、頭を横に振った。


「そんなこと言ったって責任転嫁なだけだ。俺は確かに人を殺した、それも一度だけではない」


ペンギンたちはついに焼き魚を食べ終えた。パクパクとくちばしを動かし、短いひれは満足げにパタパタしたら、ゆっくりと体を動かし、俺の足元に左右一匹ずつ寄り添ってくる。


まるで俺を慰めるかのように、


やっぱり…可愛い。


ブンブンブンーー


静けさが突然破られた。いきなりの音に俺は重苦しく感じた。


バッグからノイズを発している小さな箱を取り出し、ボタンを押すと、洞窟は再び安寧を取り戻した。


その箱にはいくつかのボタンの他に、黒板のような空白の部分もあった。徐々に、そこにはぼんやりとした文字が現れた。


これはあの科学狂人が発明した通信機だ。原理はおそらく電報と似ているが、それよりもっと先進的で便利な品だ。


「任務は終わった?」


「はい」


「復讐ができて、おめでとう」


「ありがとう。御侍は元気か?」


「君に会いたがってるぞ。君が戻ったら、手術を行う」


「明日帰る」


「幸運を祈る」


俺は小さな箱を握りしめ、目の前の焚き火がだんだんと消えてくのを見ていた。


洞窟の中は、ここに存在しないかのように静かだった。


この静けさに呑み込まれそうになったとき、足元のペンギンたちが突然身を震わせた。


俺はハッとし、また焚き火人の種を投げ込んだ。


すると、洞窟の中は再び温かく、初めのように明るくなった。


Ⅲ.灼熱


俺は灼熱の地に生まれた。


裸で渇き、べとつく汗、そして貧しさ。


それがそこの全てだった。


モカ、準備して、出発するよ」


御侍が急いで外から入ってきて、口はパラータの熱気に上され、何を言っているかさっぱり分からなかった。


彼が水一杯を飲み干すのを待ってからまた尋ねた。


「何言ってた?」


「ここを離れるんだ。メンカウラーの密偵が死んだ。家族が彼の代わりに私を選んだ」


「でも……」


「言いたいことは分かってる。でもこれは家族命令だ」


御侍は真っすぐに俺を見つめ、鷹のような目には隠し切れない疲労と失望感が宿っていた。


俺は知っていた。彼がこの数年、仕方なく闇市でどれだけ頑張ったのかを。メンカウラーに行くということはつまり、今まで積み重ねてきたものをすべて捨てることと同じだ。


彼はもともと、少なくとも奥方とまだ名前もつけていない御侍のお子と一緒に離れて……永遠にクレメンス家の支配から解放されることができたはずなのに。


「断らないのか」


「断れば裏切ったと同じ、死、しかないのだ」


御侍は頭を左右に振り、急いで荷造りを始めた。


「パラータは私一人だけではない。家族は今回私を選んだのはおそらく、私の動きに気づいたからだろう……だから急ぐんだ」


「じゃあ奥方たちは……」


「彼女たちはここに残る」


俺はつい立ち止まった。ボーッとしている間に、御侍はすでに荷造りを終え、ドアの前に立っていた。


「ここにいる方が安全だろう」


「しかし、ここに残れば、クレメンスがすぐに見つかるんじゃないか」


「それが狙いだ。わざと妻子を人質としてここに残せば、家族が私の忠誠心を信じ、彼女たちを見逃してくれるかもしれない。さあ、行こう」


御侍の言葉を完全には納得していなかったが、俺は直接クレメンス家と関わったことがなかったから、御侍のほうがやつらのやり方をよく知っているのだろう。


パラータの日差しは刃物のようなものだった。俺たちは頭巾を被り、顔を覆い、出発した。


メンカウラーではすでに俺たちを迎える人が来ていた。やつは機械のように俺たちを住まいに連れていったら出ていった。


俺たちは任務をどう受け取るかを疑惑に思いながら、部屋の扉が開けた。


しかし、予想外の馴染みある姿がそこにあった。


奥方と、まだ喋ることすらできていない赤子だった。


二人は床に横たわり、もう息を絶えていた。


「ああ、すまない。奥様の遺体に踏んでしまいました。」


傭兵は驚いたふりをして、楽しげに御侍に一礼をした。


「これで安心して、家族に忠誠を尽くすことができようと、家主様がおっしゃった。」


続いて、もう一人の傭兵がファイル袋を御侍に渡し、それが彼の今後の仕事の資料だと。


俺は奥方の血がついた手を見つめ、つい腰の刀を握りしめたが、行動を起こす前に御侍に止められた。


御侍は不気味なほど冷静だった。彼はファイルを受け取り、二人の傭兵が去るのを見送った。


俺は彼らの後を追おうとしたが、また呼び止められた。


モカ、頼む……彼女たちを埋めてくれ」


御侍はまるですべての気力を失ってしまったかのように、そこに座り込んだ。


俺は無言で奥方と御侍のお子の遺体を抱き上げ、適切な埋葬地を探しに外に出かけた。


帰ってきたときにはすでに夕方になっていた。俺は御侍はまだそのまま動かないで座り込んでいると思っていたが、まさか部屋には一人もいなかった。


彼はわざと俺を離れさせ、一人でクレメンス家に復讐に行ったのだ。


しかし、彼一人ではあの大きな家族に対抗できるはずもない。


彼を見つけたとき、すでにもうボロボロになっていた。


血がポタポタと地面に滴り、その湿った感触で、パラータでの乾いても穏やかな日々がもう戻ってこないと、俺ははっきりとわかった。


「お見事だ。家族の訓練を受けたことのない食霊が、身一つでここまで来れたとは……」


派手な服を着た男が上から俺を見下ろす。血まみれの俺を見て、まるでめずらしい武器を見つけたかのようだ。


彼は優雅に立って、やさしい笑みを浮かべて、無力に俯いている御侍頭を撫でながら、言った。


「君には、二つの選択肢がある。一つは死ぬこと。もう一つは俺に仕えることだ」


「……御侍はどうなる」


「ああ、そうだった。君が彼を生かしたいなら、特別に薬で彼の命を維持してやってもいいが、あるのは命だけだぞ」


俺は再び銃を上げた。が、弾はもう残っていない。


そこで俺はナイフに変えた。長い戦いで俺は少し意識がもうろうとしていた。ふらつきながらも俺はその男の前に歩み寄った。


彼は依然として優雅に微笑んでいて、何もかもが予測通りだったかのように、まるでこの世に彼を脅かすものは何もないかのように。


実際、そうだった。


俺が彼にナイフを向けようとすると、後頭部が一瞬ピリッと痛み出した。


そして、俺は意識を失った。


Ⅳ.汚れ


目を覚ますと、俺はきれいで柔らかいベッドに横たわっていた。


御侍は隣のベッドに何重もの包帯で巻かれている。かろうじて人であるとわかるぐらいだった。


「やっと目を覚ましたね」


窓辺に優しい表情をして立っている少年が近づいてくる。


「お前は……」


「僕はヴィダルアイスワイン。ヴィダルでいいよ。」


「お前が……助けてくれたのか?」


「残念ながら、ある意味で僕は君たちを助けているわけじゃないんだ。」


ヴィダルの顔から優しさが急に消え、その代わりに少し危ない笑みが浮かび上がった。


「僕は家族の食霊だけど、はっきり言って、いつまでもクレメンス家に縛られたくないんだ。だから……あの人達と取引をした」

「いや、正確には無数の取引をね。彼らは僕に数えきれないほどの無理難題を投げて来たけど、不運なことに、すべて僕に解決されてしまった。残っているのは……君だけ」


「俺?」


「そう。君を服従させれば、僕はクレメンス家から解放され、自由になれる」


「……」


「ふふ、顔が“俺に関係ない”って言っているみたいだね……もちろんあるよ」


ヴィダルは俺の警戒心と敵意に気にも留めず、気楽そうにしている。


「君の御侍は家族を裏切り、君も家族の敵になった。家族の人間を一掃しない限り、君たちは死ぬまでずっと追われ続け、生き地獄を味わうことになるでしょう……僕に従うしか、生き延びることはできないよ」


紛れもなく、彼と高慢で強欲なクレメンス家は同じ穴のムジナだ。


彼らにとって、利益以外のものはすべて価値のないゴミだ。


「もし、俺が死を選んだら?」


「そう、君の御侍の意見は聞かないの?」


俺は愕然とした。確かに、御侍なら、死してもクレメンス家と共に滅びることを選ぶのだろう。


ヴィダルは既に勝ち誇った表情をしている。彼はまた御侍の方を向いて、わざとらしい同情の顔を見せた。


「こんなに苦しめられても生き残れるんだなんて……妻子を殺されたかたきを討たないうちは、たとえ悪魔と取引をしても、死にたくはないだろうね。」


モカ……」


その呼びかけはとても軽かったが確かに御侍の声だ。俺は急いで彼のもとに近寄った。


御侍は弱々しく、それでも言葉に込められた意志は力強かった。


「従・い・な・さ・い……」


「……はい。」


御侍の言葉は予想内のものだったから驚かずに、ヴィダルの提案を受け入れた。


「俺に何をさせたい」


「言ったろう?僕は君を助けてはいないって」


奇妙なことに、ヴィダルの表情は再び柔らかくなった。


「家族から離れる条件は非常に厳しい。クレメンスは僕が離れた後も、家族のために働くことを望んでいる……だから僕たちの目的は、実は一致している。」


「……お前のかわりにクレメンスに従えってのか」


「それだけじゃない」


日の光の中に立つヴィダルは、聖なるオーラに包まれたように見えるが、その声は深淵に沈んでいくようなものだった……


「もちろん、君が嫌がることはわかっている。でも理解してほしい、より大きな目標のために、クレメンス家の滅亡のために、君は自分を地獄に置かなくてはならないし、

一時の汚れを我慢せざるを得ない。それに……」


「これは全て、君の御侍のためなんだ」


……


ヴィダルは非常に賢く、人の弱点を的確に突いてくる。


たとえば、彼は指名手配されているオレにたくさんの「ターゲット」を見つける手伝いをすると約束したり、フジッリの発明を絶賛し、彼のすべてを讃えたりすることができる。


彼はモントリオールに対しては野心を隠さず、パニーノに対しては思いやりと優しさを全力で見せる……


俺に対しては、御侍の命で脅してくる。


だから今彼が俺にさせようとしていることが、クレメンス家の指示であるか、または彼の言う「クレメンス家を欺くためのカモフラージュ」であるか、すでに何もかもどうでもいいのだ……


なぜなら俺は、彼を拒むことができない。


目の前のまだ天真爛漫に笑っている少年を見つめながら、俺は自分のあらゆる感情を消し去り、極雪原から持ち帰った石を彼の前に置いた。


「ふふ、これでフジッリは喜ぶだろうね……今回は本当にお疲れ様、モカ。手術はすぐに始まるから、心配いらないよ」

「そうそう、君にまだお願いがあるんだ。この袋の中身を、この屋敷の中に自然に現させてちょうだいね。はい、これが住所」


ヴィダルから渡された袋を受け取り、予想外の重さを感じた俺はつい尋ねてしまった。

「……中身はなんだ?」


「あの屋敷の主を陥れるための証拠だよ」


「……」


俺は抵抗しないから、ヴィダルは俺に何でも隠さず言う。


彼は堂々と、極普通で、ありふれたことをしているかのように。


「さあ、行って。戻ったら、君は御侍に会えるようになるから」


「はい」


そう、俺が独自の思考を持たず、彼の言う通りにすれば、地獄に堕ちようとも、それはただの普通であり、ありふれたことに過ぎない。


そう、何もかもが簡単なことだ。苦しむ必要も、悩む必要もない。


そう、なぜなら俺はもう、汚れている。もう他に選択肢が残されていないからだ。


Ⅴ.モカ


モカは自分の生まれ故郷が大嫌いだった。


灼熱のパラータでは、呼吸すらも苦痛だった。


貧しさから脱出するために人々は売れるものを売ってきた。良心や人間性も含むあらゆるものを。


彼もかつては自分の御侍と同じく、力を尽くしてその地獄のような場所から逃れようとした。


しかし、まさか未来のある日に、その場所が恋しくなるとは思ってもみなかった。


少なくともそこでは、彼は死んでも、良心を捨て「得する」取引に手を加えなかった。


……


ヴィダルが教えた住所を辿って、モカはすぐにその屋敷を見つけた。


中に誰も住んでいないと予め伝えられたため、彼は直接ドアを開けたが、眼鏡をかけた少年が突然中から飛び出し、ドアはその頭に重く当たり、一瞬で涙が溢れでた。


彼は頭を上げ、小動物のように、警戒しながらも無邪気に尋ねてきた。


「君は……誰?」


予期せぬ出来事が起き、モカは無表情で、右手をゆっくりと腰の刀に向かわせた。


「ああ、僕は怪しい人間じゃないよ!僕は探偵だ、特にジェットの事件について調査しに来たんだ!」


少年は目を見開き、不器用で真摯に自分の身分と来意をモカに説明した。


モカは静かに聞いて、体は思わずリラックスした。


彼も同じく不器用に少年に嘘をつき、自分という人を陥れる者を被害者の友人としてでっちあげた。


思いもよらず、少年は一切疑わず、むしろ大喜びだった。


「よかった!君が手がかりを提供してくれたら、ジェットの無実は証明できるかもしれない!」


「……今日知り合ったばかりなんだろう。どうしてそこまでするんだ」


「知り合った期間なんて関係ないよ。ただ……白黒はっきりさせないと。僕は正しいことをしたいんだ!」


少年は正義に満ちた言葉で語りかけ、堂々として、光り輝く目をしていた。


それは地獄に住むモカが憧れ、なのに手を伸ばすことのできない光だった。


彼は一時的に少年と別れた。少年が去った後、モカはヴィダルの命令に従い、偽の証拠を無実のジェットの家に入れた。


ヴィダルはこうしたことを仕掛けるにはすでに慣れている。小さな探偵が見破られるようなトリックではなかった。


だからモカは自分をより深く汚れ物に埋め込み、この汚らしい取引を確立させ、小さな探偵を失敗させる。


彼はこれによって、自分があの光への憧れを消せると思った。


しかし、思いがけぬ事態が起きた。ヴィダルの今回の仕掛けは隙だらけで、探偵にはすぐに見破られてしまった。


探偵が危ない真実に歩み寄るのを見て、モカはようやくしびれが切れた。


「ちょっとおかしくないか、モカ、君はもうとっくに準備ができていたはずだよね?なぜラテさんが去った後に火をつけたんだい?元々の計画では、ラテさんと彼の御侍が火事で死ぬことになっていたのに……」


「ああ、まさか、モカがジェットさんに同情している?でも、彼のような可哀そうで哀れな人を、君は何度も見ているだろうし、もしかして……」


ヴィダルはひらめいたように目を見開いた。


ラテさんが原因?」


「違う」


モカが急いで答えると、ヴィダルは満足げに笑った。


「それなら良かった。なぜなら、君はラテさんが一番嫌いなことをやってくれたからね、彼のことが好きになったら、後々辛い思いをするよ」


言い終わると、無表情のモカを見て、ヴィダルは密かにほっとした。


モカの御侍の命はもう長くない。この使いやすい「道具」を操るための新しい「人質」が必要だ。


ラテさんはいいタイミングで現れてくれた。


そしてすぐに、ラテヴィダルアイスワインのもう一つの「道具」となった。


彼はあの冤罪を忘れ、探偵の身分を忘れ、さらには陥れられて死んでしまった御侍をも忘れた。


彼は過去のすべてを忘れたが、それでも彼の瞳から純真と機敏は消えなかった。彼は陰謀と策略に満ちた「ヘブンファクトリー」でいろんな汚らわしいモノを見つめ続けた。


しかし、彼の目の中の光は消えたことがなかった。


それ以上に熱烈に、さらに眩しくなった。


そのせいで、モカはその存在をもう無視することができなくなった。


モカ!今からオレを探しに行こう!彼女がまた何か馬鹿なことをしようとしたら、すぐに阻止しないといけないから!」


「……ヴィダルから任された仕事を忘れたのか」


「まあまあ、君も僕も言わなければ、彼にはバレないよ〜」


モカラテの肩に伏せたビーバーを見て、また彼の首につけている金属の首輪を見て、考え込んだ。


ビーバーはラテを監視するために送り込まれたもので、首輪はラテがロボットに改造された日から体内に埋め込まれた時限爆弾だ。


ヴィダルもラテの小細工には気に留めなかった。それが終わった後、モカが等価のモノを提供できればいいことだけだ。


そこでモカは頷いた。彼はラテに「いいえ」をほとんど言わない。


ラテは笑顔を花のように咲かせ、モカを褒め倒した。


モカも慣れっこで、過剰に反応はしなかった。逆に、ラテよりも積極的に外へ向かった。


「待って待って、今回はペンギンは一緒に連れて行かない方が良いよ?」


「ペンギン?」


モカラテの指さす方向を見ると、なんと、極雪原で出会った2匹のペンギンが遠く離れてついてきていて、彼は驚いた。


「お前たち、なんでここにいる?」


「え、うそ、気づいていなかったの?何日もついてきてるよ?!」


「……敵意がなかったから気づかなかった」


モカはペンギンたちをぼんやりと眺めた。心にたくさんの疑問があったが、ペンギンがそれに答えることはできないこともよくわかっている。


ペンギンたちも同じくだ。


彼らは自分の同胞を殺しているのに、2度も貴重な食物を彼らにあげたこの人間が善か悪かをわからない。


ただ、極雪原の氷雪ように冷たく見えるこの生物が、彼らに向ける視線が温かいものであることは知っていた。


彼らはその温かさが好きだ。寝るときに彼の足元に寄り添うときと同じくらい、安心感を感じた。


だからこそ、恐ろしい極雪原を捨て、この場所まで辿り着いたのだ。


彼らはこの生物を信頼している。いつか、寒さや飢えよりも恐ろしい危険が迫るとき、この生物は何があっても彼らに同じような安心感を与え続けるだろうと信じている。


「今さらだけど……なんでモカは僕の頼みを断らないんだ?」


「……俺を疑ってるのか?」


「そんな!モカは僕がヘブンファクトリーで最も信頼できる人だよ!だから!モカも同じように僕を信じてくれないと!今はモカに守ってもらってばっかだけど、もし将来、なにか危険があったら、僕も絶対、迷わずにモカの前に立ちはだかるっ!」


「……うん、信じる」


「え?ねぇ、さっき笑ったよね?全然信じてないんでしょう!もうぉ……わあ!待って!一人で夜道を歩くのは怖いんだから待ってって!」



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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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