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【黒ウィズ】ARES THE VANGUARD RAGNAROK 魔道杯 Story

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作成者: にゃん
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2021/06/25


目次


Story1 PUNISHMENT

Story2 OLYMPOS

Story3 SUPREME GOD



登場人物



story1 PUNISHMENT



 遥かなる神話の時代――カウカソス山の頂きで罰を受ける神がいた。


 名はプロメテウス。

 人類に火を与えたことでゼウスの怒りに触れ、山頂に鎖で縛り上げられ、鷲に肝臓を食われ続けるという刑罰を受けていた。

 不死の神であるため、死ぬこともできないこの極刑の刑期は、実に3万年にも及んだ。

 とはいえ、ゼウスだって本当に3万年もこの刑を続ける気はなかったんだろう、だから、ぼくを彼のもとに遣わしたんだ。


「……また来たのか、ヘルメス。」

「そりゃぼくはゼウスの使者だからね。命令されれば来るよ。」

「では、さっきとゼウスの用件を言うが良い。徒労に終わるだろうがな。」

「相変わらす強情だね、君は。ゼウスの要求はひとつだよ。

君が知っているというゼウスの秘密を教えるんだ。そうすればここから解き放ってあげる、だってさ。

内臓を毎日食われるなんて、うんざりだろう?そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」

 訊きながら、ぼくは返答がわかっていた。ゼウスの言いなりになるほど、プロメテウスは弱くない。

「帰ってゼウスに伝えるがいい。貴様に教えることはなにもない、とな。」

 プロメテウスはいつだってこうなんだ、自分の正しさを譲らない、相手が無敵のゼウスだとしてもね。

 ぼくはそんなプロメテウスのことが好きだった。ぼくと同類だと思っていた。

 神話を動かすトリックスター。そう呼ばれるのがふさわしいのはぼくとプロメテウスだけだって、そう思っていた。

「……ねえ、プロメテウス。ゼウスに言えないなら、それでいいよ。けど、ぼくにだけ、教えてくれないかな?

大丈夫。ゼウスに伝えたりしないよ。君とぼくだけの絆が欲しいんだ。

だから、そっと教えておくれよ。君が知っているという、ゼウスの秘密をさ。」

 柄にもなく、ほくは真剣だった。だからだろう、プロメテウスはしばらくぼくを見つめると、静かに口をひらいた。


「かつて全宇宙は、ティターン族の王、クロノスによって統治されていた。

だがクロノスはある日、「自らの子によって王座を追われる」という予言を受けた。

予言の成就を恐れたクロノスは、生まれてきた我が子らを次々と喰らった。

ヘスティア、デメテル、ヘラ、ポセイドン、ハデス――子は次々とクロノスに喰われた。

だが、最後に生まれた子のみが、母であるレアの機転で救われ、密かに育てられた。

その子は成長し、強大な力を身につけると、クロノスに喰われた兄弟たちを救出し、父に戦いを挑む。

そして長い戦いの果てに予言は成就し、父を殺した子は神々の王の座に就いた。その子の名は――」

「ゼウス、全知全能の偉大なる天空神。

――でしょ?それくらい知っているよ。ぼくにしてみれば父親と祖父の大喧嘩だもの。」

「そうだ、オリュンポスのものならば、だれもが知っている話だ。だが――

この話の中に、偽りが混じっているとしたら、どう思う?」

「ははは、おかしなことを言うね。たしかに、ゼウスの子であるぼくにとっては、生まれる前のことだ。真実は定かじゃない。

けど、現にゼウスは神々の王となっているし、ハデスもポセイドンもそれを認めている。

ゼウスがクロノスを倒したという事実に、疑う余地なんてないだろう?」

「そうだ。それは紛れもない事実だ。」

「だったら、なにが偽りだというのさ?」

「……おしゃべりはおしまいだ。ヘルメスよ、ゼウスの元に戻るがいい。」

 それきり、いくら訊ねても、プロメテウスは口をつぐんだままだった。


 ぼくはカウカソス山を離れた、けれども、すぐにゼウスのところへ報告しには行かなかった。

 プロメテウスの刑罰はゼウスの決めたこと。それに逆らうことができる神などいない、だれもプロメテウスを解放できない。

 あのバカ以外は。


軍神・アレス

「どうした、ヘルメス。お前が訪ねてくるなんて珍しいな。親父に睨まれても知らねえぞ。」

「アレス。プロメテウスという男を知っているかい?」

「ああ、ティターン族の。ちゃんと話したことはねえが、名前くらいは知ってるぜ。」

「そうかい。なら、お土産の笑い話に、彼がいま、どんな面白い目に遭っているか、教えてあげるよ。」

 ゼウスに疎まれ、神々の事情に詳しくないアレスに、ぼくはプロメテウスの犯した罪と、彼の受けている刑罰を伝えた。

 それはもう面白おかしく、内蔵を鷲についばまれる彼の表情まで克明に、笑いながら伝えてあげたんだ。

 最後まで話すことはできなかったよ、アレスのバカときたら、話の途中で飛び出していってしまったからね。

 ――アレスがヘパイストスの鍛えた鎖を引きちぎり、プロメテウスを解放した、と聞いたのは、そのすぐ後たった。

 プロメテウスを助けてくれ、だなんてだれも言っていないのに、本当にバカな奴だよ、アレスは。

 おかげでますますゼウスに疎まれ、オリュンポスでの立場をなくしたってのに、ぼくにお礼をいいに来る始末だ。

「ありがとよ、ヘルメス。お前のおかげで、親友ができた。」


 ああ、いまでもたまに思うよ。

 あの時、助けたのがぼくだったら、彼の親友になれたのだろうか?

 ……無駄な仮定だけどね、ゼウスに逆らうことなんて、ぼくにはできない、そんなことができるのはアレスだけだ。

 そう、ぼくにはできないんだ……‥


「……着いたね。」

 ヘルメスが物思いから覚めるのと、〈扉〉を脱し、その異界にたどり着いたのはほとんど同時だった。

 聖地オリュンポス。

 ヒーローとの戦いに敗れたヘルメスは、神々のいる異界へと帰還したのだ。





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story2 OLYMPOS



「……ずいぶん静かだね。いや、静かすぎる。

 ヘルメスはいぶかしげに周囲を見渡す、元と背後より声があった。

「おかえりヘルメス。ずいぶんと長いおでかけだったね。」

「あまり驚かせないで欲しいな。――ハデス。」


冥界神・ハデス

「またまた。君が驚くわけないじゃない。そうやって嘘ばっかりつくんだから。」

「いや、まったく気づかなかったから、本当に驚いたんだけど。それ、隠し兜でしょ?」

「え?ああ、最近、そうだったね。いつも着けているんだった。」

 ハデスは己の顔を覆う奇妙な布を指先でつまんでクスクスと笑う。

「またずいぶんと変わったものだね。」

「いいだろう?前の兜は無骨だったからね。」

「そっちじゃないよ。肉体のこと。」

「あれ?ああ、そうか。君が家出したの、私が再誕する前だったね。

ちょっとだけ、私も異界に行っていてね。そのために肉体を変えたんだよ。いい顔だろう?気に入っているんだ。」

「そうだね、とってもいい顔だよ。見えないけどね。」

「おやおや、そうだったそうだった。隠し兜をつけているんだったね。あはは。」

「肉体ならぼくだって再誕させているし、別に珍しくないよ。

そんなことより、ハデス。ずいぶんとオリュンポスが静かだけど、なにかあったのかな?」

「ああ、いまここにはほとんど神がいないんだよ。

ポセイドンがオリュンポスを出ていったんだ。アポロンやヘラもそれに続いたから、神や半神がどんどん追従していってね。

いまのここにはもう、片手で数えるほどしか神がいないんじゃないかな。」

「ポセイドンやヘラが?なんでまたそんなことに……。」

「ははは。君らしい無意味な質問だね。わかっているだろう?」

「……ゼウス、だよね。」

 かつてオリュンポスは異なる世界にあった。だが〈神話に終焉を告げる獣(マイスエンドブリンガー)〉との戦いを避け、神々はこの異界に移住した。

 それ以来、神々はおかしくなった。

 権益を求め、対立し合うのは神々の性、それでも、かつてはとこかで互いを尊重し合っていた。

 だがあの異界を捨ててから、歯止めを失ったかのように、神々の評いは深刻なものとなっていた。

(やはり、アレスがいなくなったのが、原因なんだろうね……)


 戦神アレス、神々の争いが起きればすぐに首を突っ込み、己の身を顧みず正義を為すお人好し。

 その清廉さをゼウスに疎まれ、神々よりつまはじきにされてもなお、なにも変わらなかった愚かな神。

 どんな争いをしていても、どの神も、心のどこかにあったのだ。

 この諍いも、アレスがなんとかするのだろう。――そんな気持ちが。

 だが、なによりも変わったのは、神々の王、ゼウスだった。


「やっぱり、みんなゼウスについていけなくなったんだね。」

「そうだね。なにせオリュンポスをこの世界に移してからのゼウスときたら、奇妙な命令ばかり出したからね。

あちらこちらの異界に神や半神を遣わせて、変なものを集めはじめるし、その理由も教えてくれない。

そのくせ逆らったり失敗したりすると、厳しい罰を与えるんだもの。

いくら天空神たるゼウスの命令でも、そんな状態が何千年も続いたもので、みんな嫌になっちゃったのかもね。

君だってそうなんだろう?ヘルメス。100年近く帰ってこなかったものね。」

「それは……。」

「ああ、そんな顔しないで。私は怒ってなんかいないから。

それに、さっき言っだろう?私もしばらく異界に行っていたんだ。君のことを言える立場じゃないよ。

さて、そんな君がわざわざ帰ってきたんだ。ゼウスに伝えることがあるんだろう?そろそろ行くかい?」

「……そうだね。伝令神の役目を果たすとするよ。」

 かくして2柱の神はオリュンポスの中枢、大神ゼウスの神殿へと向かった。


「それで、12神はだれが残っているんだい?まさか全員いないとは言わないよね?」

「安心しなよ。アテナが残っているから。」

「ああ、彼女がいるんだね。それはよかった。」

 アテナは父であるゼウスの寵愛を受けている。怒らせることなくゼウスに進言できるのは、知恵の女神である彼女くらいのものだ。

「彼女に聞きたいことがあってね。残っていてくれて助かったよ。」

「そうだったのかい?だとすると、少し残念かもしれないね。

多分、なにを聞いても答えはないと思うよ。」

「それ、どういう意味?」

「いまにわかるよ。」

 そうしている内に、ふたりはゼウスの神殿にたどり着く。

 ヘルメスは目を見張った。

 オリュンポスの神殿は、神々の多彩さをあらわすように様々な色彩を用いて表現されるのが本来だ。だが――

「こ、これは……。」

 その戸惑いをも塗りつぶすように、神殿から小さな影があらわれ、色のない声で告げる。

知恵の女神・アテナ

「来たか、ヘルメス。父様がお待ちだ。」




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story3 SUPREME GOD



「ま、待ってよ。まさか……アテナなのかい?」

「ああ、言っていなかったっけ?彼女も再誕したんだ、珍しいことじゃないだろう?」

「それは、そうだけど……。でも、あれは……。」

 ヘルメスの視線は、少女神の目をふさぐ黒い布に注がれている、ヘルメスの記憶が正しければそれは……

「見ての通りだよ。ゼウスが彼女にあげたものだ。」

「そんな……ゼウスは、いったい……。」

「父様がお待ちと言ったはすだ。もたもたするな。」


 たどりついた玉座の間では、忘れようとしても忘れることのできない美貌が、笑みを浮かべながら待っていた。

天空神・ゼウス

「よく連れてきてくれたね、アテナ。」

「父様の望みとあらば、当然です。」

「他の神とは違って、お前は賢いね、アテナ。」

「ありがとうございます。父様のおかげです。」

 見せつけるように充分にアテナをなでてから、ようやくゼウスの視線はヘルメスを捉える。

「久しぶりだな、ヘルメス。よく帰ってきてくれた。」

「お久しぶりです、我が父にして神の王よ、本日はお伝えしたいことがあって参りました。」

「報告を許す責務を果たすがいい。」


 ヘルメスはひざまずき、語るオリュンポリスのこと、ヒーローのこと、神器のこと、その知り得る限りを。

 聞き終えたゼウスは、まずかたわらの少女神に声をかけた。


「知恵の女神アテナよ。お前はいまの話をどう思う?」

「決まっています、ヒーローも神器も、ただちに父様のものとするべきです。」

「お前は賢いね。けど間違っているぞ、アテナ私のものにする必要などない。

あの異界はもとより私のものだからね。すでに手にしているものを、また手に入れることはできないよ。」

「申し訳ありませんでした。父様の仰せのとおりです。」

(アレス……プロメテウス……。ぼくは……。)

 ヘルメスはしばしためらい、しかし、意を決して頭をあげると、生まれた時より仕えていた主に告げる。

「……おそれながらゼウスよ。果たして本当にそうでしょうか?

〈神話に終焉を告げる獣〉があらわれた時、我らは奴から逃げ、あの異界を捨てました、その判断をくだしたのは、ゼウス、あなたです。

そして奴を倒し、人々を救ったのはアレスです。ならば、もはやあの異界は、あなたのものとは呼べないのではありませんか?」

「ふむ、ヘルメスよ。オリュンポスとはなんだと思う?」

「話を逸らすのかい?そんなもの、神々の住むこの地の名前に決まっているよ。」

「違うぞ、ヘルメス、オリュンポスとは、私だ。このゼウスこそがオリュンポスそのものなのだ。

私が望む限り、あまねく異界の全ては、このゼウスのものだ、たとえ私が見捨てようともだ。」

「ゼウス、なぜそうなんだ!ポセイドンたちが去ってなお、なにもわからないのかい!?」

「まだ理解していないのか?オリュンポスとは私だ。私さえいれば、ポセイドンもアポロンも不要なのだよ。」

「その果てがアテナの意思を奪い、傀儡のようにして弄ぶことなのかい!?ゼウス、ぼくは……!」

 そこから先の言葉を発することはできなかった。

 アテナの剣が、ヘルメスの胸を買いていたからだ。

「え……?」

 崩れ落ち、激痛に悶えるヘルメスにアテナは熱のない言葉で告げた。


「控えろ、父様への口ごたえは許されない。」

「アテナは賢いね。他の神にお前の半分ほども知恵があれば、私の苦労もなかったろうに。」

だが、ヘルメスに壊れてもらっては困るな少しばかり生意気だが、貴重な私の遣いなのだから。」

 ゼウスがかるく手を振るすると、ヘルメスを襲っていた激痛がふいに止まり、傷が消滅していた。

 天空神ゼウス。その権能とは、全知全能である。

 ヘルメスは理解した。

(ああ、そうか……無理なんだ……、もういかなる神も、どんな存在も、ゼウスを止めることはできないんだ。

抗おうとするだけ無駄。全ての異界がゼウスのもとにひれ伏す、滅ベと言われれば滅びるしかないんだ。)

「理解したようだな、ヘルメス。もうー度だけ機会を与えよう。

ヒーローを倒し、全ての神器を私のもとへ持ってくるのだ。良いな。」

 もはや、拒絶する気力は失われたヘルメスは震える身体でうなずこうとする。

「まあ待ちなよ、我が弟ゼウス。ヘルメスは帰ってきたばかりで疲れてる。

ここは私に任せてほしいな。ヒーローに興味があるんだ。」

「我が兄にして冥府の王たるハデスよ、あなたが先陣を務めてくれるというのなら、私に異存などあるはずもない。」

「じゃあ決まりだね。ヘルメス、君はくつろいでいるといいよ。」

 そう言って去るハデスの背を、ヘルメスは無力感とともに見つめることしかできなかった。



「あの街も久しぶりだね。ふふ……みんな元気にしているといいな。」

 ハデスは薄く笑うと、自らの顔を覆う布を取る、露わになったその顔は――

「エウブレナ、アポロニオ、ヴァッカリオもうすぐ会えるね、再会が楽しみだよ、ふふ、ふふふふふ……。」


 ***


「アテナ。少しだけひとりになりたい。下がってくれるかい?」

「はい、父様の仰せのままに。」

 アテナは下がり、玉座の問には神の王だけが残される。

 ゼウスはしばし黙っていたが、やがてゆっくりとつぶやいた。

「私が逃げた、か……。〈神話に終焉を告げる獣〉よ。確かに私はお前と戦うことを避けた。

お前と私は共に並び立つことの許されぬ存在、出会うわけにはいかなかったゆえな、だが、喜ぶがいい、我が同胞(はらから)よ。

終焉は甦る。いや、終焉を超える存在が生まれるのだ。この私――

〈世界に終焉を告げる神(ワールド エンド ブリンガー)〉の手によってな。







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