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【黒ウィズ】ARES THE VANGUARD編(8周年)Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん



目次


Story1 FAREWELL

Story2 REPENTANCE

Story3 SCRAMBLE



登場人物


ネーレス
アポロンⅥ
エウブレナ
ヴァッカリオ
アレイシア
ウィズ
その他    




story1 FAREWELL


n6どうした、その程度か?ならば終わらせてもらうぞ!

アポロンバスター!

Nお父様……見ていてくださいまし……!

デウカリオン・プリミラ!


Nダメ……でしたの……?

n6多少の才で埋められるほど、私の25年は甘くない。私にー撃を入れるにはまだ未熟に過ぎる。

N……。

n6だが、20余年の昔、アポロンⅥを拝命した時の私はもっと未熟であった。今後を期待するには充分だろう。

Nえっ……?そ、それでは!?

n6認めよう、ポセイドンOJ03、いや、新たなるポセイドンⅡよ。共に人々の平和を守ろうではないか。

Nハ、ハイ!ありがとうございます!


 ――それから数日後。



どこの異界に飛んだかと思えば……ここ、オリュンポリスにゃ。

 そうだね、と君はうなずく。しかもヴァンガード隊の基地の目の前だ。

もはや我が家のようなものにゃ。お腹も空いているし、ヴァッカリオにピザをおごらせるにゃ。

 今度こそツナマヨコーンをね、と君は固い決意を込めてうなずき、基地の中へと入った。



Aネーさん、おめでっとぉぉぉぉぉぉう!

Eネーレイスならきっとなれると信じていたわ。

Vいやあ、めでたいめでたい。よし、飲も飲も。

なにを騒いでいるにゃ?

Aあ、魔法使いさんとキャット先輩!ネーさんのお祝いに来てくれたんだね!

 なにかいいことがあったの?と君は訊ねた。

Nたいしたことではありませんわ。引退したお父様の後を継いで、わたくしがポセイドンⅡになるだけですのよ。

コリなに言ってんだよ!たいしたもんだって!ウチも先輩として鼻が高いぜ!

ハルあのアポロンⅥも認めたんだろ?ふひぇひぇ、信じらんねえぜえ。

Nほーほっほっほっ!わたくしの実力をもってすれば、当然ですわ、トーゼン!

なんだか調子に乗ってるにゃ。

ゾエナンバーズに選ばれたんだ。それくらいの資格はあるさ。

Vカーニバルで負傷して以来、ネフトじいさんが譲りたかってた、ってのもあるけどね。

Aでも、ちょっと淋しいぞ。ヴァンガートを辞めちゃうなんて。

E仕方ないわよ。ポセイドンフォースのトップになるんだもの。

じゃあ、これはネーレイスのお祝いを兼ねた送別会ってわけにゃ?

Vそゆこと。ま、おいらは飲めるなら、理由なんてなんでもいいんだけどね。

Aう~ん、でも、他のナンバーズって、リベッさんとかアポさんでしょ?ネーさんにああいう仕事できるかな?

 ナチュラルに自分を棚にあげたなと君は思った。

E確かに、ナンバーズともなると、現場仕事に専念するわけにはいかないと言うけれど……。

n9あ~、たいじょぶだいじょぶ。Ⅱのとこは、Ⅵちゃんのとこと並んで、組織の体制が完璧だから。

Aどぅわっ!リベッさん、いたんですか!?

n9仕事帰り~。ちょっとアレイシアちゃんを吸いに寄っただけ~。ん~、いい匂い~。

Aちょっ、ボクはそんなに臭いませんので!……臭わないよね?

Eえっ……!そ、そうね、汗の匂いくらいしかしないから、大丈夫よ、ウン!

A汗の臭いしてたんだ……気をつけよう……。

n9だいじょぶだっての~。それがいいんだから~。あ~、仕事の疲れが吹き飛ぶ~。

Aうう……仕事帰りにエリュマ行くときも臭いしてたのかな……?もしかしてピザの匂いかも……気をつけよう……。

Eアレイシアが年頃の女の子っぽいことを……。喜ぶべきことのはずなのに……なんだろう……なんか複雑……。

n6ともあれ、ポセイドンフォースの体制は盤石。ナンバーズの仕事は時間をかけて学んでいけば良い。

Vお兄ちゃん、なんでいるの!?今日、夜勤じゃなかったっけ?

n6いまは休憩中だ。忙しいので、10分交代でな。移動時間を考えると、ここにいられるのは、あと5、4、3――

時間だ。私は行く。本部にナンバーズが揃う日を楽しみにしているぞ!

n9あ、充電終わったし、あーしも明日早いから帰るわ。んじゃ、またね~。


Aネーさんもああいうこと、できるようになるのかな?

Vう~ん、アポロンⅥから学ぶことは多いけど、ワーカホリックだけは学はない方がいいかな。


エリュシオンマートで~す!ピザ、お届けに参りました~!

こちら、ご注文のツナマヨコーンピザです。そしてこちらはサービスのペパロニピザです。増量期間なので4枚お持ちしました。

A……いえ、サービスの分は結構です。そんなにピザばっかり食べませんので。

Nちょっと!わたくしの送別会なのに。なんでそっちで盛り上がっているんですの!今日の主役はわたくしですのよ~!


 こうして様々な人が訪れ、ヴァンガード基地はいつになく賑わっていた。

 その喧噪の中、ヴァッカリオはエウブレナに近づくと、耳元に口を寄せ、ほかの者に聞こえないように囁いた。

V悪いが、屋上に来てくれないか?



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story



Vいや~、飲んだ後の夜風は気持ちいいね~。祝杯の後だったら、なおさらだ。

Eどうしたんですか、隊長?急にふたりっきりで話がしたいだなんて。

v時間が遇ぎるのは早いよねえ。ネーレイスちゃんが来てもう1年。エウちゃんたちが来てからは1年半近くだもの。

V知ってる?30越すとさあ、時間の流れがもう光速なのよ。気持ちはまだピチピチの10代だってのに。

Eはあ……そういう話はよく聞きますが……。

Vピンと来ない?いいねえ、若さってのは。おいらなんて、もうよぼよぼのおじいちゃんよ、いつ死んでもおかしくないくらい。

Eあの、わざわざ呼び出した用件というのは……?

Vお前の父親を殺したのは俺だ。

Eえっ?あ、あの、いまなんと?

Vお前の父親、先代ハデスⅣのクリュメノスを殺したのは俺だ。そう言ったんだ。

Eわ、悪い冗談が過ぎます!だってパパはティタノマキア事変の時に……。

Vそうだ。クリュメノスはあの事変の時に死んだ。ディオニソスⅫの手によってな。

E嘘……ですよね?隊長ったら、また悪酔いしてそんなこと。

 ヴァッカリオは答えず、ただ静かに目をつぶった。ただ静かな顔が、その言葉が真実であると告げていた。

E……なぜ、なんですか?なぜ、隊長が仲間である父を……?

Vなにを言っても言い訳になる。大事なのは、俺が殺したという事実と、お前にはその罪を裁く権利があるということだ。

 そう言うと、ヴッカリオは腰に下げた杯――〈尽きざる密の神酒杯(アペイロン・ネクタル)〉を無造作に放り投げた。

Vボスには話をつけてある。俺をどうしようが、罪には問われない。

エウブレナ。ハデスⅣを継ぐものとして、裁きをくだしてくれ。


 長い沈黙が落ちた。

 エウブレナはゆっくりと話しだす。


E……私が幼いころ、父が家に若い男の人を連れてきたことがありました。

とても背の高い、無愛想な人で……ひどいんですよ?私が挨拶しても、顔を逸らして目も合わせてくれないんです。

それで、私ってば躍起になってしまって……。その人にかまって欲しくて、高い棚の上に無理やりのぼったんです。

子供のころの考えって、不思議ですよね。これで私の方が高いから無視できないだろう、なんて思いながら、その人に声をかけて――

その瞬間、足を滑らせて落ちてしまいました。

頭が真っ白になって……気がついたら、その人が私を抱きかかえていました。

私が足を滑らせた瞬間、駆け寄って、抱きとめてくれたんです。ぽかんとする私に、その人は言いました。

「大丈夫か?――無事でよかった。」

ありがとうって私が言うと、その人は顔を赤くして、またフイッと顔を逸らしました。

でも、子供にそんな優しくしたんですもの。そうはいきません。その後は1日中、その人についてまわって遊んでもらいました。

それからしばらくして父が亡くなり、あのぶっきらぼうで優しくて照れ屋な人とは、それっきり会うことはありませんでしたけど――

やっと、わかりました。あれ、隊長だったんですね。

 くすくすと笑いヴァッカリオの投げ捨てた神器を拾う。


Eどんな事情があったのかは知りませんし、言いたくないなら聞きません。

けど、いまも昔も、あなたが私たちを見守ってくれているってこと、もうわかっていますから。

そんなあなたがいたから、パパの最期の顔があんなに穏やかだったってことも。

 そう言って、神器をヴッカリオに手渡すとエウブレナは背を向ける。

Eその顔。下に戻ってくる時は、いつもの隊長に戻っていてくださいね?アレイシアにバレちゃいますよ。


 屋上にひとり残されたヴッカリオは夜空を見上げ、つぶやく。

Vクリュメノス……。お前の娘は、本当に強くなったよ……。

ゾエおっさん臭えぞ。まだそんな歳じゃないだろ。

Vやっぱ見てた。やだねえ、地獄耳は。

ゾエでなきゃヴァンガードの司令は務まらねえよ。

 ゾエルはヴァッカリオの隣に立つと屋上の柵にもたれかかり、夜空を見上げる。

Vそうだな。やっぱり、アンタがボスで正解だった。



「お願いです、ディオニソスⅫ!あなたの力を貨してください!」

「ルールの先を行く部隊、ね……。アンタ、俺のことはどこまで知っている?」

「……おそらく、すべてです。」

「この身体が壊れかけのポンコツだってことも?それを知っていて、頼んでるわけだ。」

「無茶を言っているのは承知です!この部隊を率いることができるのは、あなた以外にいないのです!」

「……いいだろう。ただし条件がある。その組織のボスは俺じゃない。アンタだ。俺はアンタの部下になる。」

「そんな……!最強のナンバーズが、だれかの部下になるなんて……!」

「予感がする。そろそろプロメトリックは動く。その時、俺が生き延びられる保証はない。

だから、トップに立つのは、正義のためならどこまでもしぶとく生き延びられる奴じゃないとダメだ。」

「それが、アタシだと……?」

「自身がないか?だったら話はこれでおしまいだ。ヘラフォースに戻るんだな。」

「……わかったよ!やってやるよ、この×××××野郎が!こき使ってやるから、ついて来やがれ!」


ゾエ……な~んて言ってたわりに、ずいぶんと長く生きてくれるじゃないかい。ふざけろってんだよ。

Vいや~予想外だよねえ。おいらもびっくり。いい部下ができて、サボれてるからねえ。

ゾエふん。そのまま限界までサボってな。時が来りゃ、アタシがこき使ってやるさ。

Vはいはい、期待してますよ、ボス。



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story


ハルな~、持ってきてんだろ、〈トライデント〉。いじらせてくれよぉ~。最後のチャンスなんだよぉ~。な、な?

コリなあなあ、ウチとツーショット撮ってくれよ!神スタにあげたら、みんな喜ぶと思うんだよ。ウチとネーの仲じゃん。な、な?

Nあ、あなた方!ナンバーズに対する礼儀とか敬意とかはありませんの!?


 騒がしい夜はつづく。夜風にあたりたくなった君は基地を出た。


A魔法使いさん。

 すると、意外なことに、アレイシアが君のあとをついて出てきた。

Aヘヘっ、君は油断するといなくなるからね。ちゃんと話しておこうと思って。

ありがとう。いつも助けてくれて。さすがボクらの先輩だね。

 もとをただせば、君の方が先にゾエルたちのもと働いていた。アレイシアはそれを言っているのだ。

 もっとも、当時は地域ふれあい課として地味な仕事はかりをしていたが……。

Aヴァンガードがみんなに受け入れてもらえたのは、魔法使いさんか地域ふれあい課としてがんはってたからだよ。

ヒーローは戦うだけじゃない。みんなの生活を守るのも大切な仕事だよね!

それに、どんな苦しい時でもボクが踏ん張れるのは、魔法使いさんたちのおかげでもあるんだ。

どういう意味にゃ?

A前に、異界の話をしてくれたでしょ?ボク、それがすっごい嬉しかったんだ。

ヒーローはひとりじゃない。いろんな世界にいろんなヒーローがいて、みんな、なにかを守ろうとしている。それがわかったからね。

なにより、どこか遠くの世界で、魔法使いさんも戦っている。それを考えると――

「負けんとよおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」って、力が湧き上がって、何度でも立ち上がれるんだ。

 アレイシアが、拳を握り、君の前に突きだす。

A隣にいないその時も、君はボクのヒーローだ。これからもよろしくね!

 それはこちらの台詞だよ、と君は言い、突き出された拳に、自分の拳を重ねた。


 楽しい時間は過ぎていく。夜も更け、送別会も終わりの時を迎えていた。

 ネーレスは一同の前に出て、最後のあいさつをすることになった。


Nほんの1年でしたけれど、いい経験になりましたわ。

ナンバーズになっても、ここで得た経験を生かして、みんなを救う……ヒーローに……。

 別れの言葉がそこで途切れる。

 ネーレスは顔をくしゃくしゃにして涙を流していた。

Nひとりでも……立派なヒーロー……として……。

 そう言ったきり、言葉を詰まらせ、ネーレスはうむいてしまう。そこへ――

Aネーさん、パンチじゃあ!

 突然の叫びに、ネーレイスが顔をあげると、アレイシアが己の頬をトンと叩きニッと笑っていた。

 ネーレイスは少しだけ戸惑い、それから拳を固く握ると仲間に向けて駆けだした。

Nだっしゃしょかですわぁ!

A……気持ちのこもった、い~いパンチじゃあ。これこそヴァンガードの拳じゃ!ワシらのHEARは同じじゃの!

 離れても、想いはなにも変わらない。隣で戦うだけが仲間ではない。交わした拳が、そう伝えていた。

Nふ……ふふふ……。

ほーほっほっほっ!冗談はよしてくださる?わたくしがポセイドンⅡになった以上、ヴァンガードの出番なんてありませんわ!

アレイシア!エウブレニャ!このポセイドンの足を引っ張らにゃいよう、せいぜいがんびゃることにぇ!

 そう言って、ネーレイスは高笑いをあげながら、去っていった。


……キミ、ネーレイスを送っていくにゃ。

 アレイシアやエウブレナでは、別れが辛くなる。君は師匠の配慮に納得し、うなずく。

私はここで残りのピザを食べるから、がんばってくるにゃ。

 独り占めしたいだけなのかも、と思いながら、君はネーレイスを追って基地を出た。


E行っちゃったわね。

(私もいつまでも先延ばしにはできない……。そろそろ覚悟を決めるべきなのはわかってる。……でも、あともう少しだけ……。)

A大丈夫だよ、エウさん。ボクらはみんなヒーローだもん。すぐにまた会えるよ。

Eそうね。すぐにまた会えるわよね。

ハルおぉ?だれかと思えば魔法使いからじゃん。ふひぇ、なんかあったのかな?


 通信がつながるなり、君は叫ぶ。ヴァンガート隊、出動だよ、と。

N”帰り道でヴィランに遭遇しましたの!三人組の放火魔……ホーカマイラですわ!すぐに来てくださいまし!”


Vどうやら想像以上に早い再会になりそうだな。

ゾエいいじゃねえか、ウチらしくてよ。垂直離着陸機を出すぞ!全員、いけるな!

Aよぉぉぉぉぉぉぉぉし!みんな、いくぞおぉぉぉぉぉぉぉ!

ゾエヴァンガード、スクランブルだ!


「「「「「了解!」」」」」




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