昇平楽・ストーリー・清平願「セイヘイガン」9~15
称賛
意気投合。
金髄煎が初めて離郷にやってきた話を終え、瑪瑙魚圓は笑いながら酒を飲んだ。
瑪瑙つみれ:……金髄煎を離郷に連れてきて、彼に生きる意味を教えてあげた。私のことを好いて、あなたを嫌うのはこれが理由だ。
白酒:……まるで俺が気にしているみたいじゃないか。
瑪瑙つみれ:お前は意外と金髄煎を気に入ってると思ったがな。違うのか?
白酒:……
瑪瑙つみれ:ほう、図星か?
白酒:……金髄煎は忠実で勇敢だ。信仰が崩れ落ちても、立ち直ることを諦めなかった。むしろ、すぐに正しい道を歩み、大局を見渡し、私情を挟むことはなかった。俺はそんな彼を心から称えたい。
白酒:金髄煎だけじゃない。東籬の皆さんのことは素晴らしいと思っている。
瑪瑙つみれ:お世辞はほどほどにしたらどうだ?これからはみんな仲間だ。そんな言い方したからって、お客様扱いすると思うな。
白酒:仲間……?
瑪瑙つみれ:なんだ、一緒に聖教を一網打尽にするって約束だろう?もう撤回するのか?
白酒:いや……
瑪瑙つみれ:ふん、ならいい。とにかく、お前は我が東籬にふさわしい。鳳脯はお前を歓迎する。薬師ともきっと馬が合うはずだ、あとは……
瑪瑙つみれ:金髄煎と上手くやれれば、あなたは我が東籬の護国将軍だ!
白酒:護国……将軍……
その称号に不満はあったが、瑪瑙魚圓の話は本当ではなく単なる冗談なのかもしれないと思った。そして何より、この楽しい雰囲気に飲まれた白酒は、ずっと困窮だったせいか、すこし気大きくなった。
白酒:(わざわざ必要のないことを言い、場の雰囲気を壊してもいけない……)
彼は釈然と笑い、久しぶりにいたずら好きな本性をあらわにした。
白酒:もし俺が本当に金髄煎とうまくやれたら、護国将軍が反乱を起こしても知らないぞ。
胡桃粥:ふふ、金髄煎に気に入られるのはそう難しくありませんよ。ただ……クコを褒めてあげればいいんです。
胡桃粥のアドバイスを聞き、白酒はいつも金髄煎のそばにくっついている犬の顔を思い出した……
小枸儿:ワン!
白酒:………………い……言えない……
瑪瑙つみれ:あはははは――なんて正直なんだ!ますますあなたを気に入った!
仲買人
盛世清明が真になることを願う
数年前
玉京の郊外
張千:ここは……どこだ……?
ふらつきながら、張千がようやく目を覚ました。意識が朦朧とする中、周囲を見渡すと全く知らない景色が目に入った。しばらくして、自分が牛車の中にいることに気がついた。他にも子供が数人おり、全員両手を縛られている。
張千:こ、これは一体?お供物を返しに行ったはずなのに……どうして……
子ども:うう……お母ちゃん……お母ちゃんに会いたいよう……お家に帰りたいよう……
仲買人:泣くな!うるせえな……母ちゃんだって?お前はその母ちゃんに売られたんだ!
牛を勧めていた男が怒鳴った。乗っていた子供が驚き、一瞬で泣き止んだ。
子ども:ど、どうして……
仲買人:ふん、今はどこも不景気なんだ。子供を売ったって何もおかしくねえ。恨むなら玄武皇帝を恨みな!
子ども:そ、そんな、母ちゃんがそんなことするはず……信じないぞ!
仲買人:関係ねえ。俺に売られたんだから大人しく言うこと聞け!
子供たちは恐怖で口を閉ざした。張千はしばらく唇を噛み、ようやく勇気を持って口を開いた。
張千:俺に両親はいない。俺は誰に売られたんだ?
仲買人:いちいち覚えてるわけないだろ。金はお前たちの族長にあげたんだ……そんなことを聞いても無駄だ。誰に売られようと、お前の運命は変えられない。
張千:……じゃあ俺たちをどこに売るつもりだ?
仲買人:どこに売ったってあの西荒よりはマシだろ?運が悪くて、金持ちの家に売られて副薬代わりにされても、この乱世で苦しみ続けるよりいい。
張千は恐怖に怯える子供達を見ながら、必死に頭を回転させた。そして、瑪瑙魚圓に教えてもらった方法で縄から抜け出すことにした。
仲買人:騒いでいるのは誰だ!?
張千:お、お腹が痛いんだ!
仲買人:痛いなら我慢しろ。
張千:もう我慢できない!トイレに行かせてくれ!
仲買人:チッ、面倒かけやがって……
男はイラつきながら牛をとめると、飛び降りて後ろにやってきて、子供たちを睨みながらこう言った。
仲買人:静かにしろ、騒ぐな。トイレに行きたいガキはどいつだ?
張千:俺だ……
男は張千を引っ張ると、いつの間にか縄が解けていることに気づいた。男が反応する前に、自由を取り戻した両手をその腰に回し、車に縛られていた縄のもう一方の端で男を縛りつけた。
仲買人:このガキ……!
張千:逃げろ!早く!!
張千は男に抱きついたまま、後ろにいた子供達に向かって叫んだ。子供が慌てて逃げ出す中、男に圧倒され恐怖で動けない子供もいた。
仲買人:死にたいのか!!
男は硬い拳を思いっきり張千の背中に向かって振り下ろした。張千はうめき声を上げ、呼吸が止まり、喉に血のような鉄臭さが広がった。しかし、彼は、一番先に逃げ出した子供が見えなくなるまでその手を離さなかった。
彼は縄を解いた男によって地面に投げつけられ、ひたすら殴打に耐えた。
張千:(瑪瑙魚圓……これで恩は返せたかな……でもやっぱり足りないような気がして……)
張千:(もし来世があるなら、本当に役に立つ人になりたい……国の力になって人々を助け……みんなが……もう二度と苦しまないように……)
張千:(よく口にしていた栄えた国が……実現するように。)
偶然の再会
罪と後悔。
玉京
墨閣
氷糖湘蓮と話した後、胡桃粥は体に不調を感じ、客室に案内された。瑪瑙魚圓と白酒は胡桃粥が寝たのを見ると部屋を出て、外に向かった。
中年士兵:あなたは……や、山神様?
瑪瑙つみれ:なんだ?
外に出ると中年の男に出会した。瑪瑙魚圓は一瞬驚いたが、すぐに思い出した。
瑪瑙つみれ:あなたはあの時、兵士たちを率いて玉京に入った者か?
中年士兵:こんなにも経ったというのに、まだ覚えてくれているなんて……
瑪瑙つみれ:あまり変わっていないからな。だが、どうしてここに?てっきり……
中年士兵:田舎の家で余生を過ごしているとでも?ふふ……
中年士兵:昔から、建国に貢献した軍人の末路はひどいものでしたが、私は幸い……山神様はお元気でしたか?ここ数年はどちらに?
瑪瑙つみれ:まあ悪くない。私は東極におる。東籬の国が私の国だ。
中年士兵:そうでしたか……では、本日玉京へいらしたのは……昔の事ですか?
瑪瑙つみれ:昔の事?私がここに来たのは聖教を調査するためだ。そうだ、聖教について知っていることはあるか?
中年士兵:聖教……?初めて聞きました。
瑪瑙つみれ:気にするな、ついでに聞いてみただけだ。聖教はこそこそしているうえ、卑劣極まりない。調査しなければ知ることはないだろう。
中年士兵:……
瑪瑙つみれ:どうした?何か言いたいことでもあるようだな?
中年士兵:山神様、張千は見つかりましたか?
瑪瑙つみれ:……まだ探している。
中年士兵:……やはりそうでしたか。私の罪です……
瑪瑙つみれ:?
中年士兵:当時、私は嘘をつきました。本当は、張千と子供たちの居場所を知っていたんです……
中年士兵:私たちは彼らを売ったんです。そのお金で武器や食糧を手に入れた……仲介人も玉京に向かっていましたが、張千が誰に売られたかはわかりません。ただ……
中年士兵:あの時は情勢が混乱していました。みな、自分のために生きることに精一杯で、子供を買って育てることはあまりなかったはずです。おそらく……悪い結果を迎えるかもしれません。
瑪瑙つみれ:…………
瑪瑙魚圓は何も言わなかった。兵士はしばらくの間黙っていると、腰を曲げて彼女に跪こうとしたが、止められた。
中年士兵:山神様……
瑪瑙つみれ:当時のことは、お前一人の責任じゃない。それに、お前が跪くべき相手は、失踪した子供達や命を落とした子供たちだ。
中年士兵:……当時、玄武殿でおっしゃっていた山神様のお言葉は、ずっと覚えています……毎晩思い出し、悪夢を見るのです……
中年士兵:しかし、今でも当時の選択が間違っていたとは言えません。もしもう一度あの状況になっても……同じ選択をしていたでしょう……
瑪瑙つみれ:では、たとえ万年の罪悪感に苦しめられたとしても、悔いはないんだろう。自分が何をしているか、どのような結果をもたらすのか、わかっているならそれで十分だ。
中年士兵:山神様……
瑪瑙つみれ:昔話はここまでだ。私はまだ用がある。じゃあ……元気でな。
中年士兵:ありがとうございます……山神様……
兵士がふらつきながら離れていくのを見て、瑪瑙魚圓は終始何も言わずにただ立っていた白酒に言った。
白酒:?
瑪瑙つみれ:言ったってどうにもできない。あの聖人のような奴が、もし張千に何かあったと知ったら、また心を痛めてしまう。元々体が弱いんだ。私のために傷ついてほしくない。
白酒:わかった、約束する。
瑪瑙つみれ:助かる。
お願い
細やかな気遣い。
玉京
墨閣
胡桃粥を客室で休ませ、氷糖湘蓮は部屋を離れようとした時、背後から聞こえた声に呼び止められた。
胡桃粥:お待ちください。
蓮の実スープ:どうかしましたか?
胡桃粥:お願いがあります。どうかお力を貸していただけませんか……
蓮の実スープ:何なりとおっしゃってください。
胡桃粥:少し手間がかかるかもしれませんが……お嬢さん、墨閣のためにある人を調べていただきたいのです。
蓮の実スープ:どなたですか?
胡桃粥:数年前に、西荒で失踪した孤児です。名前は張千といいます。
蓮の実スープ:他に……何か情報はありますか?
胡桃粥:瑪瑙魚圓が自ら描いた似顔絵があります。しかし、もう何年も経っているので、顔立ちも変わっていることでしょう。
蓮の実スープ:瑪瑙お嬢さんが絵を描かれるなんて、とても大切なお方なのですね……情報があれば、すぐにお知らせします。
胡桃粥:あともう一つ……もし悪い結果であれば、瑪瑙魚圓には秘密にしてください。
蓮の実スープ:それは……どうしてですか?
胡桃粥は苦笑いしたが、その表情にはどこか優しさが見られた。
胡桃粥:瑪瑙魚圓は強くて、何事をやるにもまっすぐで何も考えていないように見えますが。本当は、誰よりも慈悲深い人なんです……
胡桃粥:もしそばにいた人が命を落としてしまえば、ひどく苦しむでしょう……
胡桃粥:彼女をもう苦しめたくないのです。
蓮の実スープ:……わかりました。情報があれば、真っ先に胡桃粥様にお知らせいたします。
胡桃粥:ありがとうございます……
守護
城主の使命。
聖教の近く
山河陣の陣目
東坡肉:まったく、肉月餅がもったいない。出来立てだったというのに、お年寄りを敬うことを知らぬ若造に、食べる前に引きずりだされてしまった。皮すら口にできなかったぞ……まったく!
辣子鶏:お年寄りを敬う?そんなに年老いてないだろ……文句を言ってないで、後で食べればいいだろ。
東坡肉:後で?ちっとも美食に対する敬意が感じられんぞ!お前というやつは……はあ、もういい……
東坡肉:そういえば、なぜ突然こんなつまらぬ事に首を突っ込んだんじゃ?もし、彼らが本当に山河陣を壊してしまったらどうする?
辣子鶏:俺たちはそれを防ぐためにここにいるんだろ。それに、つまらない事じゃない。うすら木偶の坊も言ってたんだ。魔法陣の英霊がどんどん消えてるって……
辣子鶏:もしこれが全て聖教の仕業なら、東籬のやつらと聖教を倒せば、面倒なことも減るだろ。今みたいに、毎日壊された石碑を修復するのだってそう長くは続かない。
東坡肉:確かにそうだな。しかし、もし彼らの推測が間違っていて、山河陣が聖教となにも関係がなかったら、全てが無駄になるぞ?
辣子鶏:そうなったら仕方ない。俺だって、今まで無闇に動き回って振り回してきただろ。
東坡肉:おお!身の程をわきまえているんだな!
辣子鶏:……
東坡肉:ははは、冗談だ。お前は機関城の城主としてよくやってるよ。ずっと見てるさ。
辣子鶏:良くても悪くても、とにかく……山河陣は大勢の命によって作られたんだ。あんなに多くの命が……
辣子鶏:俺様がいる限り、山河陣の邪魔はさせない!
協力
ノスタルジア。
地府
人参のところ
白酒:力を貸してくれて助かった。礼を言う。
高麗人参:……いえ、全ては山河陣のためです。
高麗人参:彼らは……あなたの力になってくれる方達なのですか?
白酒:ふっ、瑪瑙魚圓に聞かれたら、また刀を向けられるな。
白酒:この世界で、気が合う同じ志を持つ仲間に出会えたとしても、いつまで一緒にいられるかなんてわからないんだ。だったら運命にまかせて一緒に前に進めばいい。
高麗人参:それも……そうですね……
白酒:……俺もそろそろ瑪瑙魚圓たちに会いに行く頃だ。じゃあな。
高麗人参:わかりました……
───
聖教
薬盧
冬虫夏草:君たち二人はお酒を飲んだんだから、先に戻っててって言ったでしょう。なのになぜ着いてくる……
虫茶:お兄ちゃんがお酒弱いから……いや!あたしたちもお兄ちゃんの薬草コレクションを見てみたかったの!そうよね、ピータン?
ピータン:……
冬虫夏草:わかったわかった。せっかく来たなら、いい子にしててよ。鍵を探すからちょっと待ってて……
ピータン:……痛い……
冬虫夏草:痛い?どこが痛いの?おい……
ピータン:頭が……痛くて……痛くて……うっ……
ピータンは突然辛そうに頭を抱え、血管が浮き上がっている。それを見て虫茶は慌てて一緒にしゃがみ込んだ。この時、白い影が暗闇から慌てて去っていくのが見えた……
ピータン:陛……下……
冬虫夏草:?
冬虫夏草:……大したことはないよ。でもどうして突然……虫茶、先に彼を連れて出ていって。薬を取りに行ったら帰ってくるから。
憤怒
江太史文龍の失踪。
聖教
薬盧
冬虫夏草:嘘だ……嘘だ……
冬虫夏草は何者かに盗まれて空になった薬庫を見て、ショックと怒りで手が震え、しばらくの間「嘘だ」以外に何も言うことができなかった。しばらくして、彼は怒って内殿に行き、先ほどまで一緒にいた人を探した。
冬虫夏草:便利だから君のところに貴重な薬草を置いておいたのに、聖教の警備がこんなにも無防備だなんて!これじゃあ明日にも根こそぎ持っていかれるよ!あれ……
罵声が突然止まった。冬虫夏草は崩れ落ち、眉を顰めて微かに息をしている洛神花茶を見た。様子がおかしく、思わず口調が和らいだ。
冬虫夏草:どうしたの?さっきまで問題なかったのに、君も盗まれたの?
冬虫夏草:人がいなくなったのか……
冬虫夏草は思わず口を開いたことに後悔した。今の洛神花茶は冗談を言える雰囲気ではない。怒りが実体となって彼の体にまとわりつき、人を近づけない。かつてないほどの怒りだ。
しかし、冬虫夏草もどうしようもなさそうに手を振り、長い間準備していた毒虫を放った。
冬虫夏草:ボクを睨んでも無駄だよ。あの子は人にいじめられる性格じゃない。聖教から人を連れ去るなんて、相当な実力者か、あるいは内通者か、もしくは自分の意志で離れたかだね。
冬虫夏草:あの子の心の中に君がいることは知ってるけど、もし彼に騙されていたらどうするの?
ハイビスカスティー:……
冬虫夏草:眉までしかめちゃって。蛇スープがいなくなって、辛いのは心だけじゃないでしょう。毒虫で応急処置しよう。
洛神花茶はそれを聞き、何も言わずに目を閉じた。応じる気はないようだ。その様子を見て、冬虫夏草も気分が悪くなった。
冬虫夏草:もうボクには手に負えないよ。聖女を呼んでこようか?
ハイビスカスティー:あの女は蛇スープがいなくなってさぞ喜んでいるだろう……しかし、人を探すとなると、聖教の人手を借りないわけにも……
ハイビスカスティー:どうやら決着をつける時が来たな……
冬虫夏草は心の中で、あの子を探すなど一言も言っていないと思った。しかし洛神花茶の様子を見て、なんとか言葉を飲み込んだ。
冬虫夏草:何か考えがあるの?
ハイビスカスティー:私の者に手を出すなど……息の根を止めてやる!
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