メイン・ストーリー・121幻〜122交換
121.幻
仮説を証明するには実験が必要。協力してくれるわよね。
洞窟から逃げ出した○○一行は、洞窟から少し離れた木々の陰に身を隠すことにする。そこで休憩しつつ戦力を蓄えることにしたものの、どうにも空気は重たかった。
○○はサッと地面に座り、眉間に皺を寄せて考え込む。ミスラとシェーレは、互いに顔を合わせて、どう慰めたものかと頭を悩ませた。
ミスラ:あのさ、元気出しなさいよ。さっきはいい手段が見つからなかったかもだけどさ……
主人公:はあ……勝負の前にあんな大口を叩いた挙句、この有様とか……ないよね。
ミスラ:ちょっと待って。さっきから悩ましそうにしてたのって、そんなことを考えていたの?
主人公:あああ!恥ずかしさで、顔から火が出そうだー!
シルレス:げっ……
ミスラ:ほら、見なさい。シェーレだって呆れてるわ。さっさと立ち直ってちょうだい。そして、あいつを倒す方法を一緒に考えましょう。
主人公:でもさ、全然見当つかないんだ。堕神に唯一ダメージを与えられる食霊でさえ太刀打ちできないなんて、どうしたらいいのさ?
ミスラ:さっき気づいたことはそれだけ?他にはないの?
主人公:そうだな……他には――全力だったのに、まるで空気を殴っているみたいだったな。そもそもその感覚自体がおかしいよね。夢でもないのに、あの無力な感じはなんだったんだろ?
ミスラ:確かに……まるで夢でも見てるみたいだった……んん!?
主人公:どうかした?
ミスラ:夢……そうよ!もし夢を操ることができる夢喰いだったら……!?
主人公:ちょっと待って!『夢喰い』って……だったら、もしかしたら私たち……?
ミスラ:私たち全員、夢の中にいる可能性があるわ!○○、どう思う……!?
シルレス:夢……喰い?
主人公:そんなことってあるかなぁ?『あの戦いが夢の中だった』……なんて、考えられないよ。
ミスラ:でも考える方向としては、そう外れてない気はするの。だって、それだったら私たちがイキたちと違う時空に存在している説明にもならない?
ミスラ:更にそしてなぜ攻撃が効かないのか……全て説明がつくじゃない!それは私たち全員が夢を見ているから!そしてその夢は今、あの夢喰いによって操られているのよ!
ミスラ:ふふ……まさか夢喰いに夢を操られるなんて……そんな体験、そうそうできるもんじゃなくってよ!!これはちゃんと追求すべき課題ね。実証できれば、学院の科学研究工程賞を取るのも夢じゃないわよ!
主人公:あーコホン!そこの科学者さん?まずは目の前のことを解決しませんか?いや、実験を軽くみている訳じゃありませんよ。今はその、緊急事態だからね?
シルレス:ねぇミスラお姉ちゃん、もしこれが夢の中なら、目を覚ませばいいじゃない?
ミスラ:目を覚ませる?いいえ、まだ早いわ。
主人公:はぁ?
ミスラ:その前にやることがあるわ……いい?よく聞いて。もしこの夢を操ってるのが夢喰いなら、そいつを倒す以外に脱出する方法はない筈なの。それに、他にも検証してみたいことがあるわ。
主人公:検証したいことって、何?
ミスラ:さっき夢喰いが私たちに攻撃できたのは、彼女もまたこの夢の中にいるからよ。でもこちらの攻撃がまったく効かなかったのは……きっと、本体じゃなかったからだと思うの。
主人公:ふむふむ……それでそれで?
ミスラ:実はずっと考えてたんだけどね。どうして夢喰いは私たちを二つの空間に離れ離れにしたのかってこと……そこでひとつの仮説を立ててみたい。『これは二つの夢であり、夢喰いはただそこに存在した鏡像でしかなかった』――どう?
シルレス:きょ、鏡像?
ミスラ:私が定義した『鏡像』というのは、もうひとつの空間に霊力を送って、実体を確保する存在のこと……だから私たちが攻撃した夢喰いは、本体ではないのよ。イキの方も同様ね。
ミスラ:でも、もし私たちもこの方法を利用して自分の夢の意識を飛ばせたら……夢喰いを倒せる可能性は出てくるはずよ。少なくとも夢喰いは鏡像を作れてる訳で、だったら私たちも同じ性質の鏡像を作れる可能性はなくはないわよね?
主人公:お、おお!ってことは、つまりその、あれだね……?えっと……簡単にまとめてもらっていい?
ミスラは失望した眼差しで○○を見つめた。そして苦笑した後、石ころを地面に二つ並べ、そして両手を交差させて左右にある石を人差し指で指した。
ミスラ:さっき私たちと戦った夢喰いは実はイキたちの夢にいる夢喰いの本体。そしてイキたちが攻撃したのは私たちが見ていた夢喰いの本体……ってこと。
シルレス:つまり、イキたちの方へ行けば、本物に会えるってこと?
ミスラ:そうよ!でも、これもただの推測に過ぎない。本当にそうなのかどうかは、検証する必要があるわ。
主人公:やってみる価値はあるね。というよか、他に打つ手もないし。ま、失敗したらまた逃げればいいからね……。
主人公:でも、どうやったらイキたちのところに行ける?
ミスラ:一番簡単な方法は、再び夢を見ることね。はい、○○。今すぐ寝てちょうだい。
主人公:え!?戦ったばかりでまだテンションも高いままだし、いきなり言われても寝れないよ?
シルレス:確かに、急に『寝て』って言われても、そうそう寝れないよね。
ミスラ:言いたいことはわかったわ。でも、『寝る』のはそう難しいことじゃないわ。私に任せてちょうだい。さて、シェーレ、この石を持ち上げて。
シルレス:う……うんっ!これでいいかな!?
主人公:ちょ……ちょっと待って?ミスラ、君一体、何するつもり!?
ミスラ:○○、いい子だからちょっと我慢してね。そうよ、本当にちょっとの辛抱だから……!
主人公:ちょ、っと……!ミスラ!?あの、やめっ!!ぎゃあああああぁっ!!!!
122.交換
やっとここまで来れた。次は突破口を探そう。
イキ:○○!○○!
意識が朦朧とする中、◯◯は慌ただしい呼び声に気づく。己の名を呼ぶその気配と、激しい痛みに目を開けた瞬間、銀髪の少年がバケツを掲げているのが見えた。
主人公:えっ?イ……!
言いかけたその瞬間――イキはバケツをひっくり返し、○○に水をぶっかけた。冷たさと冷えで、○○は悲鳴を上げて猛然と起き上がる。
主人公:ちょっとイキ!!なにすんのさっ!?
ライス:御侍さま!!よ、よかった……ようやく、目を覚まされましたね……!
イキ:ほら、効果抜群だろ?眠ったヤツを起こすにはこれが一番だ。
オリビア:だが、○○はお怒りのようだぞ。
イキ:えっ?!
主人公:よくもやってくれたな!許さないぞ、この白髪(しらが)野郎!
イキ:ちょっ!誰が白髪野郎だって!?これは元からで別に白髪じゃないぞ!
イキ:つーか!ちょっと落ち着いてくれ!水かけたのは○○が意識を失ってたからだからな!?悪気あってのことじゃない!
オリビア:――○○。落ち着いてくれ。ひとまず話を聞かせてほしい。何故お主は突然こっちに現れた?向こうで何かあったのか?
主人公:えっと、話すと長くなるけど……といっても、推測の域を出ない話だけどね。
○○はミスラの話をすべて語った。石で頭をぶん殴られてもう一つの空間に来たことで信ぴょう性は増したものの、やはり○○自体、ミスラの話は半信半疑である。
ライス:鏡像……?話を聞いただけですと、よくわかりません……。
オリビア:ミスラらしい、面白い発想だな。それでこちらに来ることができたということは……ミスラの推測は当たっているかもしれぬな。一旦、この可能性に賭けてみようか。
ライス:でも、御侍さまひとりで……大丈夫ですか?他の人は呼ばないの……ですか?
主人公:うーん……ここに来るにはなかなか荒治療が必要だからね。でも、誰かこっちからも向こうに行かないといけない。ミスラの仮説だと、夢側にいる者がもう一つの空間に行って、本体を倒さないといけないらしいから。
ライス:では……誰が、あちらへ……行きますか?
主人公:それはもちろん、戦闘力が高い人……どちらか片っぽだけで攻撃して倒しても、半分は生きてることになるから結果的に倒せないだろうって。だから、確実に止めがさせる人……それだと、オリビアが適任……
オリビア:あら――?
主人公:えっと……
オリビアの眼光に威圧された○○は、とても彼女に石をぶつける気にはなれなかった。そうなると、もう候補はひとりしかいない。先ほどの仕返しにもなるし、ちょうどいい。
主人公:イキ、さっき水をぶっかけられた件は帳消しにするよ。これで、おあいこってことで。恨まないでくれよ……!
123.
そして、○○はオリビアとライスのふたりと洞窟へと向かった。向こうの空間では同じようにイキにミスラ、シェーレの三人が洞窟にいる。そして、○○の存在に気づき、夢喰いはすぐにこちらの思惑を察した。
夢喰い:
主人公:頭の回転が速い仲間がいてね……でも、そんなにすんなり認められちゃうと逆に怖いな。
夢喰い:フフフフ!さてさて、からくりがわかったところで、妾に勝てるかしら?
主人公:くっ……!ちょっと不気味だな。まだ何か手立てがありそうだ……けど、ひとまずこっちは、戦う以外の術はない……。
主人公:どっちにしろ、鏡像だっていうのは合ってるんだよね?だったら、倒せるよね?
ライス:御侍さま、なんか不気味です……大丈夫ですか……?
イキ:『どうかな……なんか雲行きが怪しいな。』
オリビア:今はこいつをぶっ叩く以外に方法はない。ミスラ!!
ミスラ:『え、ええ……とにかく、戦いましょう!話はそれからよ!』
主人公:うん!今度こそ倒すぞ!みんな、行くよ!!
イキ:『やった!成功したみたいだぞ!!』
ライス:や、やりましたね!御侍さまっ!!
シルレス:『料理御侍って、すごいなぁ!』
夢喰い:………………
主人公:大人しく投降しろ。そして私たちをこの夢から出すんだ。
夢喰い:………………もう遅いわ。
主人公:あっ?
夢喰い:そなたらがこの島に入った時から、もう取り返しのつかない結末になっていたのよ。
イキ:何言ってるんだ?まさかこいつ、時間稼ぎしてる?
夢喰い:どう思うかはそなたらの自由だが、ここで終わりだ。そなたらの望み通りにしてやろうぞ。目覚めてから後悔するなよ。
その途端、夢喰いが纏っていた煙が少しずつ広まり始めた。一行はそれを警戒し、身構える。すると、空から突然ガラスの割れるような音が響いた。慌てて見上げると、澄んでいるはずの青空に、血のような赤い亀裂が入った。
主人公:え…!?なんだあれ!?
その真っ赤な亀裂に呼応するように、大地も激しく揺れ始めた。山の石は、重力の呪縛から解き放たれたかのように空へと浮かびだしていく。そして稲妻が走り、○○は我に返る。ポタリ、と冷や汗がしたたり落ちた。
ミスラ:違うわ。いいえ、この光景は……なんだか懐かしい気がする……何かの本で読んだことがあるような……?
オリビア:おとぎ話の絵本じゃないのは確かだな。
イキ:おい、お前!いったい何をした?!
夢喰い:妾か?妾はただ、美しくも儚い夢を見せてあげただけだ。本当の現実は、そなたらにとって、真の悪夢だろうね。
主人公:これ以上、その無駄な話はもう結構だ!みんな、すぐにここから離れよう!
○○たちは、すぐに撤退の準備を始めた。だがふと振り返った瞬間、○○は目の前の強い光に包まれて、気を失ってしまった。
………………
………………
…………力が……
主人公:……え?
……力が……蘇りました……
無意識の中、○○は誰かの急くような声を耳にした……このとき、自分の目が焼かれたように痛み、体も自分のものじゃなくなったようで、ただただ無力なままだった。
主人公:だ……れ?
……わたしを……思い出して……神様……新たに始まるの。
主人公:新たに……始まる?
……待っている………………
――御侍さま。
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