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時のレクイエム・ストーリー・サブ幕間Ⅰ

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幕間Ⅰ

1-1-幻楽歌劇団

――グルイラオ南部の都市。

そこに「時の館」と呼ばれる名の知れた屋敷があった。そこには世界各地の高価な時計が集められていると言われており、一生に一度拝めるかどうかというほどの価値を持つ時計さえも保管されているという。

九月二日、ニュースボーイは半日ほど時の館の前で待機していた。早朝から時の館の正門を張り込み、「彼ら」の到着を今か今かと待っていたのだ――【幻楽歌劇団】の到着を。

「幻楽歌劇団」はグルイラオで最も有名な歌劇団だ。聞くところによると、「幻楽」という名の由来は、彼らの歌劇が見るものを幻想の世界へ誘うかのようであり、一度見たら忘れることが出来ないからだと言う。また、その劇は観客に自身が求める理想が現実になったかのような錯覚を覚えさせるほどだからだと唱える者もいた。

彼らの公演チケットは非常に入手が困難であり、歌劇団からの招待状が届いた者のみが、彼らの歌劇を楽しむ幸運を手に入れられる。

だが今宵、その幸運を自ら招き入れる者が現れた。

時の館の主人である「ガゼット公爵」が都全域に告げた。彼の誕生日パーティーに、歌劇団の主演級キャスト二名を招き、公演を行うことが決定したと。

ニュースボーイは公演を見ることは叶わないものの、館に幻楽歌劇団の主演が入って行く瞬間を写真に収めることさえできれば新聞社に高く売れるに違いないと考えていた。

そこで早朝から長い時間只々待ち続けたのだ。そして、ついに一台の馬車が屋敷の門をくぐる。しかし、馬車から降りてきたのはアタッシェケースを片手に白衣を着た男性一人だけ。さらに、どう見ても歌劇団の人間ではなかった。

ニュースボーイは少し戸惑いつつも、結局はカメラを構えて、こっそり一枚だけ写真を撮った……。


1-2-神秘の地下室

数ヶ月前

子爵邸廃墟

フランスパン「ウッ……!ゲホゲホ、ゲホ……。」

フランスパンは手で口と鼻をおさえていたものの、舞い上がる埃に咳き込まずにはいられなかった。だが、それでもなんとか前へ進もうとする。

ここは子爵邸の「存在しない部屋」。

火災事件当日、助けに入った者が手にしていた屋敷の建築図にさえ、その部屋は記載されていなかった。

もしあの火災で子爵の部屋の床が焼け焦げてボロボロになっていなかったら。もし彼が子爵邸火災事件の結論に納得しておらず、もう一度子爵邸へ調査に来なければ。きっと床を踏み壊し、その部屋にたどり着くことはなかっただろう。

部屋はとても広いものだった。試験管、注射器、薬瓶などが置かれていた……。

フランスパン(確か子爵に関する資料の中に、医学に関心があると言う記載はなかったはず。ならここの医療器具は一体誰が使っていたものなのでしょう?)

フランスパン(地下に隠された実験場ですか……隠れてまでする必要がある実験とはなんなのでしょう?実験に使用した薬品が発火源という線は?)

フランスパンは慎重に部屋に残されたものを調査する。すると埃の積もったガラス製品の中に、一際目立つ金属製の物体が目を引いた。

拾い上げて見ると「金属製の蛇頭」だった。それはまるで生きているのかと思わせるほど繊細に彫られた蛇頭で、大きさはワインボトルの栓ほどあった。

フランスパン(これはなんの装飾でしょう?)

フランスパンがそれをじっくり観察して見ると、断面が荒く、外的要因で壊れたのだろうと推測することができた。

フランスパン「うーん……他にはなにか……。」

しかし、その後いくら調査しても蛇頭に関わるものを発見することは出来なかった。


1-3-「ウェッテ先生」

一年前

公爵邸

執事「ガゼット様、子爵邸より紹介されておりましたウェッテが参りました。」

ウイスキー「お初にお目にかかります、公爵様。ウェッテと申します、どうぞよろしくお願いします。」

ウイスキーは微笑みを浮かべながら、公爵に向かって丁寧に礼をしてみせる。

公爵「ウェッテ医師か……見た所礼儀は心得ているようだな。子爵の勧めとはいえ、医学の腕も私を満足させるものだと期待するとしよう。」

公爵「ではもうよいぞ、有事の際には声をかけよう。これから私は少々体を休める。」

2ヶ月後。

公爵「執事よ……執事はどこだ!」

執事「お待たせしました、どうなされましたかガゼット様?」

公爵「ウェッテ医師はどこだ?奴を呼んでこい!」

執事「お体が優れませんか?ウェッテ先生はここに住み込みのを遠慮されました。屋敷まで来るのに一時間ほどお時間がかかるかと。屋敷におります他の医師に……」

公爵「他のものなどあてにならん!呼んで何になる?私のこの姿を笑いにくるのか!?――お前もお前だ!医師一人もまともに雇えんのか!いくらだ!欲しい額をやればいいだろう!」

執事「その……ウェッテ先生が代金は必要ないと……」

公爵「ならば欲しいものをやればいいだろう!ぼさっとするな!私を死なせたいのか!!」

執事「……はい!ガゼット様、承知いたしました。」


1-4-時計

事件当日

時の館応接室


フランスパン「執事さん、ガゼット公爵がこれほど多くの時計を収集するのには、何か特別な理由があったのですか?」

執事「えー……特別な理由は思い当たりませんね。ただ、ガゼット様は時間厳守は品格ある行為であるとお考えで、時計はそれを代表する物だと。」

フランスパン「ガゼット公爵は時間に厳しい方だったのですか?」

執事「そうかも知れません、ガゼット様は時間を秒単位で気にされておりました。最近ですと体調を崩されたことで、スケージュールが変更されたことに激怒されておりました。」

フランスパン「ガゼット公爵が体調を?」

執事「ええ、ガゼット様はここ2年【突発的な頭痛】に苛まれておりました。多くの先生に見ていただいたのですが、ウェッテ先生の処方された薬だけが効果があるようでして。」

フランスパン「そうでしたか……」

執事「そういえば、奥様が時間に厳しいことも、ガゼット様が時計を愛する要因の一つかと。」

執事「奥様は毎日午後四時に庭でアフタヌーンティーを楽しまれますので、時の館に奥様を住まわせて、その時間を逃さないように配慮されていたほどですから。」

フランスパン「(どうやら、ガゼット公爵は時間という概念を本当に大切にしていたようですね……)」

1-5-ファン

事件当日

応接室


フランスパンが書斎に向かい遺体の調査へ向かっていた頃、広々とした応接室には息がつまるような、重苦しい空気が漂っていた

オペラは窓辺に寄りかかり、ぼんやりと窓の外を眺める。何かを考えながら彼の手は無意識に自分の首に触れていた。

ウイスキー「首に包帯を巻いているようですが……お怪我でも?」

唐突に落ち着きのある男性の声が聞こえ、オペラは少し間を置いてから声の方へと振り返る。そこで目にしたのは笑みを含んだような眼差しだった。

ウイスキー「ごきげんよう、オペラ。私はウェッテと申します。縁あって貴方の歌声のファンになりました。」

オペラ「……。」

ウイスキー「申し訳ありません、他意はないのです。ただ、少々貴方の顔色が優れないように思いましたのでね。本当に大丈夫ですか?」

オペラ「大丈夫だ。」

オペラは簡単に返事を済ますと、遠くで同様に何かを考えていたブルーチーズに目線を向ける。

すると、こちらの目線を感じ取ったのか、ブルチーズオペラの方へ視線をやる。

ブルーチーズ「ええ……オペラ、こちらへ来てもらえますか?すいません、ウェッテ先生、僕たちは話がありますので。」

ウイスキー「はい、構いませんよ。」

ウイスキーは微笑みを浮かべながら身を引き、ご自由にという意を表現してみせる。

そうしてオペラはブルーチーズのもとへ向かい、二人は応接室の一角までやってきた。

ブルーチーズ「あなたのファンと言っていましたが、少々忍耐力を欠いていませんか?」

オペラ「嘘をついていたんだ。」

ブルーチーズ「……そうですか、とにかくこんな状況で私たちに近づくような者は警戒して損はありません。少なくとも「あの件」が解決するまでは誰にも勘付かれないようにしてくださいね。」

オペラ「わかった。」

1-6-蝶

公爵夫人は聡明で高貴な人物に違いない。スティーブンからの口撃に対しても、全く動じることなく反論までしていた。ただ夫人として、夫を失ったと言うのにどうしてここまで落ち着いていられるのだろう?

フランスパンは現場を調査中、ふと応接室へと入っていく一見華やかだが、どこか怪しげな女性を見かけた。彼の本能が警鐘を鳴らしていたのだ、あの公爵夫人は危険だと。

フランスパン(おや!?)

公爵夫人はこちらの視線を感じ取ったかのようにフランスパンの方に振り返る。その表情は微笑んでいるようにも思えた。そんな時だ、彼女の頭上で何かが動いた。

フランスパン(気のせいでしょうか?頭上にある宝石の蝶が少し動いたような……)

彼は自分の目を何度も擦りながら真偽をはかれず、只々公爵夫人の方をじっと見ることしかできなかった。

すると公爵夫人はいつの間にか振り返った時の態度から一変して柔らかな雰囲気になる。

公爵夫人「もしわたくしが裁決官様のお役に立てることがありましたら、どうぞ、遠慮なさらずに。」

フランスパン「(公爵夫人の言葉はどうしてか反対言葉に聞こえますね……ですが、今はあまり深く考えないようにしましょう)」

1-7-裁決官

事件当日

応接室


フランスパンは執事の後について二階へと向かう。一階で待機していた召使いたちは何かを話ているようだった。

ボーイ「いきなり俺たちを一階に集めて何かあったのか? まさか誕生パーティーが取り消しってわけじゃないよな?」

メイド「嘘でしょ? 公爵様が街中に幻楽歌劇団のことを告知までしてたのよ?…それから本当に歌劇団の人が来たわけだし。てっきり盛り上げるための冗談かと思ったのに。」

ボーイ「幻楽歌劇団の人はもう来てたのか? なら、さっき執事さんが連れてたのは誰だ? 見た感じ歌劇団の人間ではないみたいだけど。」

執事はそんな会話を聞いて一つ咳払いをし、召使いたちに目を向ける。

執事「私はここで待機しなさいとは言いましたが、雑談をしていいとは言っていませんよ?」

そう言って執事は申し訳なさそうにフランスパンに一礼する。

執事「申し訳ありません、お見苦しいところを。」

フランスパン「お気になさらず、それよりも現場に急ぎましょうか。」

謝罪を述べる召使いたちを後にし、フランスパンは執事と共に二階へと向かった。


1-8-「ウェッテ先生」&「リリア」

一年前

時の館


時計の音が響く中、ウイスキーは執事と共に時の館へとやって来た。花の咲き誇る庭園では公爵夫人が優雅に茶を堪能していた。

執事は客人の来訪を公爵夫人へ告げ、ウイスキーを彼女の前に招く。

執事「奥様、この方はウェッテ先生。本日よりガゼット様の専属医師となりました。これからこの館によくいらっしゃることになるかと。」

公爵夫人「公爵の病気を見るのにどうしてわたくしの時の館へ? ウェッテ先生?」

公爵夫人はあざ笑うかのように語尾を伸ばし、まだ何か言いたげな雰囲気を醸し出していた。

執事「奥様にご迷惑をおかけしません。ただ、ウェッテ先生は時計に大変関心があるようでして、ガゼット様の許可を頂いて自由に時計を見られるようにと……」

公爵夫人「公爵が認めたのであれば仕方ないわね。それじゃあ、今後はどうぞよろしくお願いしますね、ウェッテ、先、生。」

ウイスキー「ええ、よろしくお願いします。公爵夫人。」

どうしてか執事は、ウイスキーが礼の際に浮かべた笑みに違和感を感じずにはいられなかった。

執事(奥様とウェッテ先生…まさか以前に会ったことが?)

公爵夫人「もう退がりなさい、アフターヌーンティーの邪魔よ。」

執事「はい…」


1-9-ホルスの眼

事件当日

時の館


公爵夫人が礼服の試着をしていた時、突然そこに一人の召使いが訪れ、執事が探している旨を伝えた。

公爵夫人「いったい何事? どうして公爵ではなく、わたくしに?」

執事「奥様……ガゼット様が……何者かに命を……」

話を聞いても公爵夫人は落ち着いた様子で衣服を選んでいる。

公爵夫人「どこなの?」

執事はあまりに落ち着いた反応に一瞬戸惑いを隠せなかった。

執事「しょ、書斎でございます。奥様……」

公爵夫人「今このことをしている者は誰なのかしら?」

執事「誰にも言っておりません…召使いは全て一階に集め、二階へ行くことを禁じております。そうでした! ウェッテ先生も知っておられます。私たち二人が現場を発見しましたので……」

フルーツタルトの手がようやく止まった。目には奇妙な笑いが浮かんだ。

公爵夫人「わかったわ。貴方、「ホルスの眼」は知っていて?」

執事「「ホルスの眼」…あの食霊執法機関ですか? 奥様、まさか食霊の仕業だと? ですが、この館に食霊は……」

公爵夫人「スフレ? 彼にそんな度胸はないわよ? でもそれ以外に何もないとは限らないでしょう? 時の館の隠し事なんて、少し調べてみればわかるわ。」

公爵夫人「とにかく、あなたは先に二階へ行きなさい。着替えたら向かうわ。」

執事「で、ですが……」

公爵夫人「心配ないわ、ウェッテ先生も来ているのでしょう? 彼を甘く見ないことね、彼は単に病の治療ができる医師ってだけじゃないわ。「ホルスの眼」が来るまでは彼の指示に従いなさい。」

執事「はい…」

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