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失われた雀羽・ストーリー・メイン13章~16章

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第十三章-炎

城主の炎

 苛烈な戦いはしばらく続いた。地面には既に判別が出来ない程の残骸が散乱していた。最初は優勢だった一行だが、徐々に形勢が不利になっていく。まだやる気は残っていたが、絶えずわいて出てくる堕神に対抗する力がもう尽きそうになってきていた。

 動きが遅くなって来た者もいた。蟹醸橙は部品が外れたカニ型の機械を持って下がり、彫花蜜煎も欠けた刀を持って座り込んだ。

 松の実酒ヤンシェズも傷口を押さえ、流れていく霊力を止めていた。顔に汗が伝う京醤肉糸も、自分ももう長く持たない事を自覚していた。

 しかし凶暴な堕神は依然として鋭利な牙をむきながら、攻撃を続けていた。全てを呑み込もうと咆哮を上げながら……

 怪物たちはふらつく松の実酒に気付いたのか、彼に照準を合わせ、鋭い爪を高く掲げた。京醤肉糸が扇子を投げつける前に――爆発音が鳴り響き、どこからともなく飛んで来た砲弾が堕神に当たり爆発し火花を散らした。

辣子鶏:……ブサイクばっか、気持ち悪い。マオ・シュエ・ワン、やってやれ!

マオシュエワン:へへっ了解!この雷火弾を味わえ!

冰粉:そちらの方々、大丈夫ですか?

 京醤肉糸一行は突然聞こえて来た声の方に視線を送った。二人の真っ赤な見知らぬ人物が大手を振って歩いて来た、隣には落ち着きのある人もいた。

冰粉:某たちは用があってここに来ました。物音に気付いてやって来たのですが、まさか大変な目に遭っている人がいるとは。

辣子鶏:顔が汚いな……まあ良い、俺は今日気分が良いから、助けてやるよ。フンッ、離火、こいつらを吹き飛ばせ!

マオシュエワン:あああああ辣子鶏(らーずーじー)また俺の獲物を奪うな!

 人に話す隙を与えないまま、赤い鳥を従えている赤い服の青年は尊大な表情を浮かべて笑った。もう一人は怒りながら叫んでいた。もう一人の落ち着いた雰囲気の青年は、負傷した京醤肉糸たちを連れて赤い服の青年の傍まで歩いた。

冰粉:怪我をしてますよね、まずここで休んでください。城主、続きを宜しくお願いします。

辣子鶏:準備はできたのか?

冰粉:はい。

辣子鶏:離火焚心――!!

 天をも貫く灼熱の炎は、多くの堕神を呑み込み歪ませた。薄暗くジメジメとした地下宮殿で、まさかこのような灼熱の炎に焼かれるとは思いもしなかっただろう。最後に残った火花は逃げようとした堕神数体を一匹たりとも逃す事はなかった。

 京醤肉糸らは空をも燃やし、太陽をも呑み込みそうな炎とまだ続々と出てくる堕神を見て、どうにか立ち上がろうとした。

辣子鶏:傷ついてんのに無理すんな、休んでろ。虫だろ、すぐに終わる、焼き殺せば良い。俺の足を引っ張るなよ!

冰粉:城主、言葉を慎んでください。

 冰粉は前に出て辣子鶏への攻撃を防いだ。一瞬のうちに、見知らぬ人たちは息の合った攻撃を始め、辺りに殺気が満ちた。近づこうとした怪物たちはそれにあてられ、歩みを一瞬止めた。緊迫した局面は、また再び動き出した。

 食霊たちは各自行動を開始し、違う方向へと散った。巨大な怪物は先程よりも激しい勢いで叫びながら襲い掛かってきた。

 激しい戦いの音が空中で鳴り響く。怪物の間を縫っていく姿はまるで稲妻のようだった。鋭利な刃は空中を切り、炎は大地を燃やし、機械は回転を続け、そこには異様な光景が広がっていた。

 祭壇が、更には山が、この空前絶後の戦闘によって震えていた。咆哮の中に怒号も混ざり、霊力と機械の力が合わさって相乗効果を発揮していた。一行の破竹の勢いによって、勝利の音が鳴り響いた。

マオシュエワン:ハハハハッ――死ねっ――死ねっ!!!

冰粉:マオ・シュエ・ワン止まりなさい!

辣子鶏:…………

蟹醸橙:わっ――こ、ここここの花は人を食べるのか?!

辣子鶏:そうだ……こええぞ……普段から、全然俺を尊重してくれねぇんだ……

冰粉:コホンッ、城主何か?

辣子鶏:いっ、いや、何でもない。

蟹醸橙:あはっ、でもこの太った鳥はなんか面白いな、どこで拾ったんだ?

モフモフ鳥:誰が太った鳥だ!!!俺様は朱雀だ!!!

蟹醸橙:は?朱、なんて???

松の実酒:危ない!

辣子鶏:離火!もう一発かませ!

 妖鏡は炎が広がる中目を覚ました。なんだか……懐かしい、泣きそうになる位懐かしい炎を感じる……

妖鏡:……

 妖鏡は目を擦ると、ようやく目の前の状況を確認出来た。祭壇の前に後ろ姿がいくつか見えた。周囲は血で洗われたみたいになっていて、堕神が亡くなった形跡が荒れた土地の至る所にあった。キラキラと光る橙色の炎は全ての暗闇を呑み込んだ。

 明るい光は陽射しのように暖かい。遠くないところで一羽の丸い小鳥は赤い青年の肩にいる。その瞬間、目の前の姿は記憶の中のあの方に重なった。

第十四章-去る

彼は光になった……

地下宮殿

祭壇

蟹醸橙:鏡ちゃん――!起きたか――!

彫花蜜煎:その体……鏡ちゃん体どうしたの!

妖鏡:大丈夫……もう終わったの……あ……あの人は……

蟹醸橙:えっ、彼?彼は辣子鶏だ、彼が助けてくれて、怪物を倒してくれたんだ!

妖鏡:堕神……全部……いなくなったの……

京醤肉糸:そうだ、全部だ。貴方のおかげだ鏡ちゃん。今、貴方は自由になった。

妖鏡:僕は……

蟹醸橙:あれ……待って、地面が動いてる……待って……なんで地面がまた動いてるんだ?!

松の実酒:恐らく堕神の力を失ったから……法陣の効力がなくなったのかもしれない……

辣子鶏:チッ、やっぱり遅かったか……また朝鮮人参を探しに行かねぇと。

マオシュエワン:そんな事考えてる場合か?!早く出ないと俺たちも生き埋めにされる!ああああなんで今回に限って何も持ってきてないんだ!

辣子鶏冰粉にバレないようにこっそり出ようって言ったのはお前だろ!

冰粉:はい?

彫花蜜煎:ほ、本当に効力を失ったらどうなるの……

松の実酒:この法陣はこの祭壇を支えるもの、もし法陣が効かなくなれば……この山荘……いいえ恐らくこの山も崩れます……そして今は逃げ道すら……

 ボーッと辣子鶏の肩に止まっている黄金色のモフモフを見ていた妖鏡がゆっくりと口角を上げているのを誰も気づいてなかった。彼は身体を支えて、ゆっくりと立ち上がった。

妖鏡:僕が助けてあげる……

妖鏡:僕は長くこの法陣の中にいたから、とっくに力が繋がってる。だから僕の力があればしばらくは持つと思う……

蟹醸橙:じゃあ鏡ちゃん……君はどうなるの?

京醤肉糸:鏡ちゃん……

 体の半分が既に透明になっている妖鏡は俯いていた。そして再び顔を上げた時、素敵な笑顔を浮かべていた。

妖鏡:朱雀様の尾羽の力がないと、そもそも僕は長くもたない。君たちを無事に送り届けられる方が良いよ。

妖鏡:それに、僕の夢はもう叶えてもらったし。ありがとう。

蟹醸橙:えっ?鏡ちゃん今なんて……?

彫花蜜煎:鏡ちゃん!待って!

 妖鏡は引き留めている二人の事を気にする事なく、半分に割れた自分の鏡を持って、振り返って祭壇の中心へと向かった。まるで普通の別れのように、笑顔で手を振っていた。でもその場にいる全員はわかっていた、これは永遠の別れであると。

 割れた鏡は宙に浮き、妖鏡と同じ優しい光を全体から放っていた。その光は一つの力となり、祭壇の中心に向かって飛んで行った。地面には複雑で華麗な模様が浮かび上がり、力はそこに注がれていく。

 法陣の光が明るくなるにつれ、周囲の揺れは収まって行き、妖鏡の体も徐々に消えて行った……

妖鏡:僕の願いを叶えてくれてありがとう。

 妖鏡は消えそうになっていた腕を揺らし、叫んだ。最後は彼は眩しい笑顔を見せながら、一粒の光点となり法陣の中に入った。妖鏡は完全に消滅し、祭壇の中心には何も残らない。

 全員は静かに妖鏡が去って行った方を見つめた。誰も今の静寂を破ろうとはしていない。ただ黙々とたった今消え去って行った命を追悼した。

第十五章-情報

意外な収穫

少し前

荒廃した山荘

 乱雑な足音が山荘の地面を踏んで行く。周囲から微かに震動が伝わってきた。

 狼狽した黒服の者達は慌てふためいた様子で山荘内を走り回り、逃げ道を探していた。元々大勢いた隊列も、数人しか残っていない。

黒服のリーダー:チクショウ!全部使えないお前らの所為だ!あの鏡を壊しやがって、出口も塞がれて!

 隊列の先にいた黒服のリーダーは、ボロボロな服で怒り狂っていて滑稽な様子だった。

黒服のリーダー:面倒事しか増やさない。鏡は半分しかないし、どう上に報告すりゃ良いんだ!

黒服のリーダー:どうした?口も利けねぇのか?使えないな!早く出口を探しに行け……

 黒服のリーダーは部下を説教しようとしたが、振り返った瞬間、最後の言葉が喉元に詰まって発する事は出来なかった。

 彼は硬直して口を開いたまま、瞳孔が震えていた。長髪の男が地面に倒れた死体を踏みながら、颯爽と歩いてくるのを見ている事しか出来なかった。地面に広がる鮮血はまだ熱を帯びていた。まるで艶やかな蕾のように石板の上で咲き誇っていたが、その男の服には一切の血痕はなかった。

 黒服のリーダーは自分の四肢が何か見えない力で抑えられている事に気付いた。呼吸すらも奪われていた。長髪の男は掴みどころのない笑顔を浮かべていて、全身から危険な気配が漂っていた。

黒服のリーダー:ゆ、許してください!

 明四喜は土下座し始めた人物を興味あり気に眺めた。その人物の黒い服は汗水で全部濡れていた。

明四喜:緊張しないでください、知っている事を話してくれるだけで良いんです――

明四喜:あの男の子をどうするつもりなんですか?

黒服のリーダー:言います!言います!あれは自然の神としか知りません……どう、どうするつもりかは……俺たちはただ聖女の命令に従っただけ……本当にし、知りません……!

明四喜:聖女?

黒服のリーダー:せ、聖教の聖女です……これぐらいしか、知りません!

明四喜:ここの法陣については、どれだけ知っているのですか?

黒服のリーダー:法陣、ってなんですか?知りません!本当です!聖女様は、山荘の中や地下の墓地に妖怪が潜んでいるかもしれないと、教えてくれた、だけで……法陣、なんて聞いてません!

明四喜:十分です、もういって良いですよ。

 冷たい声が頭上から聞こえて来た。黒服のリーダーは終始俯いたまま、顔を上げる勇気がなかったが、この言葉を聞いてやっとホッとした。

黒服のリーダー:あ、ありがとうございます!

 彼は喜んで慌てて立ち上がり、歩き出した。しかし一秒も経たない内に、首筋に冷たさを感じた。ねっとりとした赤い液体がゆっくりと流れ、濡れた黒い服に暗い赤が広がった。

明四喜:「いく」の意味までは言ってませんよ。

明四喜:聖教……聖女……悪くないですね……

明四喜:(崩れそうですね……)

 明四喜は目を細め、四喜鏡を軽く撫でた。周囲の震動は強まり、彼の顔に一縷の躊躇いはあったが、すぐに黒服のリーダーの最期の視界から消え去った。

第十六章-大詰め

一旦終了。

南離印館

書斎

 静かな書斎で、京醤肉糸は頬杖をつきながら、書類を眺めていた。扉を叩く音が響いた。

京醤肉糸:どうぞ。

 京醤肉糸は俯いたまま返事をした。懐かしい気配を感じるとゆっくりと顔を上げた。目の前にはいつもの笑顔を浮かべている明四喜がいた。

京醤肉糸:副館長か。

明四喜:また館長の事務作業の邪魔になってしまって、申し訳ございません。

京醤肉糸:構わない、副館長は私に呼ばれて来たのだ、邪魔な訳がなかろう。

明四喜:この間の一件ですが……ヤンシェズは館長にご迷惑を掛けてないでしょうか?

京醤肉糸:副館長は考えすぎだ、彼は良い子だった。

明四喜:それは何よりです、では神物は――

 明四喜が単刀直入に聞いてくるとは思っていなかった京醤肉糸は、視線を精巧な宝箱に移して見せた。

明四喜:館長は本当に、此度の式典を指揮する権限を不才に任せてくださるのですか?

京醤肉糸:合意しているのだから、これ以上何度も確認する事はないだろう。

明四喜:不才は本当に考えすぎているのやもしれません。ただ入念に準備を進めたいのです。

京醤肉糸:なら、きちんとやってくれ。今回の式典は……貴方が知っている事は私と大差ないだろう。

 京醤肉糸は笑って、自分の語り口を強めた。もちろん明四喜もその言葉から警告の意味を感じ取ったが、焦らず視線を合わせた。

明四喜:館長が言いたい事は――勿論承知しております。


 門を隔てても外に立っている松の実酒は中の修羅場のような雰囲気を感じ取っていた。彼は早めに来なくて良かったと胸をなでおろした。

 次の瞬間、明四喜が扉を開いて中から出てきた。彼は箱を持って礼儀正しく松の実酒に会釈をして去って行った。そして、すぐに部屋の中から彼を困らせる声が聞こえて来た――

京醤肉糸:おお、松の実酒やっと来たか――じゃあ残った書類は頼んだ――少し出てくる、夜には帰るよ。

松の実酒:館長っ……!

 松の実酒は頭を抱えて、上がった眉を抑えた。深呼吸してからやっと部屋に立ち入った。

 京醤肉糸の姿はもうとっくになく、机の上の紙には水墨画で笑顔の人の絵が描かれていた。それは窓から来た風に吹かれて、体を揺らしていた。


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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
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    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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