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【黒ウィズ】リフィル編(GP2020)Story

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黒ウィズゴールデンアワード2020前半


サンセット=リフィル(cv.小清水亜美)
夢と現実の狭間にある都市で暮らす魔道士の少女。〈秘儀糸(ドゥクトゥルス)〉を操り、この世界では失われたはずの魔法を使いこなす。クールでストイックな性格だが、戦闘においては、苛烈な闘志をむき出しにする。
開催日:2020/08/31

目次


Story1 夢と現実

Story2 覚悟と確信

Story3 そして決断




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story



l繋げ――〈秘儀糸〉!

 指先から、光り輝く魔力の糸が伸びる。

 リフィルは素早く印を結んだ。応じて、〈秘儀糸〉が即座に無数の魔法陣を編み上げる。

来い――〈黄昏〉!

 雄々しく叫んで身構える〈ロードメア〉へと、リフィルは苛烈に呪文を唱えた。

l修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て降り荒べ!

 呪文と魔法陣が、練り上げた魔力に意味を与える、千々の雷条を降らせ、敵を焼き尽くす魔法として――

lくっ!

 リフィルのロから、うめきがこぼれた。

 同時に、今まさに雷撃を吐き出そうとしていた魔法陣の群れが、ー斉にパラリとほどけ、ただの光の糸となって散る。

 リフィルは頭痛をこらえるように顔を歪め、苦々しげにつぶやいた。

lやはり……だめか。

〈ロストメア〉の叫びで戦意を失う――夢を持っていることの証だな。

確かめ方としては、情緒がないというか、風情がないというか……夢のないやり方ではあったが。

 〈ロードメア〉は、あきれたように腕を組む。

その夢。〝魔道を究める夢〟か?

lそこまでじゃない。〝自分なりの魔法を、自分で納得できるくらいまで高める夢、……かしらね。

おまえが自分で納得できるくらいまで〟か。それは、〝究める〟と同義なんじゃないか?

lどうかしら。なんにせよ、今まさに自信を打ち砕かれたところよ。

 リフィルは嘆息し、軽く頭を振った。

l精神防御の魔法を使えば、夢があっても〈ロストメア〉と戦えるんじゃないかって思ったんだけど。

なんだ、そんなことを目論んでいたのか?

l〈園人〉は、〝世界を平和にする〟という夢を持っていながら、〈ロストメア〉と戦えていた。

なんらかの魔法で〈ロストメア〉の叫びを無効化していた――そう考えるのが妥当でしょ。

〈ロストメア〉とは〝自我ある魔法〟――であるなら、〝夢見る者の戦意を削ぐ叫び〟は、精神に干渉するー種の魔法攻撃と言える。

だったら精神防御の魔法で対抗できるんじゃないかと思ったの。

ふむ……聞けば確かに道理だが、現実には厳しいだろうな。

魔法は、魔力にイメージを付与する技法だ。当然、〝具体的に想像しにくい魔法〟ほど、威力も精度も控えめになる。

精神という目に見えないものへの攻撃を防ぐ魔法は、どうしてもイメージしづらい……だから精度もたかが知れてる、ということ?

雷を飛ばしたり、障壁で身を守ったり、そういう〝想像しやすい、魔法に比べるとな。

対して〈ロストメア〉の叫びは、見果てぬ夢で終わりたくないという、俺たちにとって何より強い思いのあらわれだ。

l精度の低い防御魔法じゃ、破られて当然か……何か方法を考えないと。

〈絡圓〉から直に魔力を得られるようになったおまえがあえて〈ロストメア〉と戦う必要などあるのか?

l自衛のためよ。あの都市に住んでいる限り、いつ〈ロストメア〉に襲われるかわからない。

すべての〈ロストメア〉が門を通らない道を――あなたの言う〝救い〟を選んでくれたら、戦う必要もないんだけど。

そればかりは、当人の意志次第だからな。

言っておくが、対〈ロストメア〉用の精神防御魔法を編み出す練習に付き合えというなら、お断りだぞ、〈黄昏〉。

lわかってる。今日はあくまで、今の私が〈ロストメア〉と戦えるかどうか確かめたかっただけよ。

ならいいが。

とはいえ、手合わせの見返りは忘れんでもらおう。

今、新たに生まれた人擬態級の仲間と話しているんだが……うまくすれば、門を通らずに叶えられるかもしれん。

lわかった。レッジに伝えておくわ。都市に来させるなら、いつもの手はずを教えておいて。

 リフィルはふと、眉をひそめた。

l……今の私たちの関係って、なんて言ったらいいのかしらね。

さあな。敵でも仲間でもない。今はそれでいいんじゃないか。

lそうね。じゃあ、行くわ。

 〈ロードメア〉はうなずき、軽く腕を振るった。

 門を通って魂だけ〈絡園〉に来ていたリフィルの魂は、彼の力に導かれ、自らの肉体へ舞い戻っていく。

「いい夢を。

 冗談めかした別れの言葉が、薄れる意識に溶けていった。


 ***


l〈鉄血鋼身〉(クルオル・フェツレウス)!

リフィルは血体能力強化の魔法を唱え、路地裏の地面から近くの家の屋根まで、ひょいとー瞬で駆けあがった。

「わっ……速い。

 そのまま屋根から軽やかに身を躍らせ、驚くフィネアの前に危なげなく着地する。

l本来は全身を強化する魔法だけど、魔力が両足に集中するよう特化させれば、脚力を極端に強化できるわ。

「はーそういうこともできるんですね……。

lもちろん、すぐには無理よ。原型となる魔法の扱いに慣れてないと、応用を利かせるどころじゃないから。

ろくに作ったことのない料理を思いつきでアレンジしようとするとたいがい失敗する、みたいな感じでね。

「リピュアちゃんがよくやるやつですね。

 くすりと笑うフィネアに、リフィルも軽く微笑みを返す。

lそういうこと。まずは基礎を身体に刻み込んで、土台を固めるのが大事よ。

「わかりました。やってみます!

繋げ、〈秘儀――

l――フィネア!

 リフィルの発した警告をかき消すように、フィネアの後ろに立った影が咆嘩した。

 その叫びは、びりびりと空気を――そして、リフィルとフィネアの心を震わせる。

 心にさざ波が立ち、収縮するような感覚。

 胸にドスンと釘を打たれて、なすすべもなく抑えつけられるような――

l〈ロストメア〉……!?

「ひっ――

 ぱくりと。

 影は、フィネアを呑み込んだ。

 ー瞬の早業――というわけではなかった。脚力を強化した今のリフィルなら、サッとフィネアをさらうこともできたはずだった。

 なのに、動けなかった。

 弟子であり、年下の友人でもある少女が、異形の悪夢に呑み込まれるさまを、ただ見ていることしかできなかった。

 そんな自分が信じられなかった。

lフィネアっ!!

 リフィルは吼えた。目の前の敵への怒りを――何より自分への怒りを吐き出すようにして。

l繋げ、〈秘儀糸〉っ……!

 激情の力で、心の鎖を引き千切る。軋む身体に鞭打って、身に沁みついた構えを取る。

l(なめるな――ふざけるな!私の目の前でフィネアを――そんなことを許すものか!)

 熱く沸き立つ怒りの念が、戦う意思を奮い立たせる。

l(やってやる。叩き潰してやる!意地でもフィネアを取り戻す!)

 夢を潰して?

l――!

 夢を。

 こんなに尊く、大事なものを。

 叩き潰していいはずがない。打ち砕いていいはずがない。

 傷つけていいはずがない――

 そんな思いが――夢に対する、途方もないほどの共感と憐惘の念が、戦意も決意も、ざあっと洗い流していく。

l(違う!これは魔法だ――そう思わされているだけだ!)

 リフィルは必死に自分を叱咤し、戦うための魔法を紡ごうとした。

 だが、無理だった。

 自分のものであるはずの怒りが。自分の培ってきたはずの意地が。

 拾い上げようとする端から、波にさらわれた砂のように崩れ、こぼれ、わななく手のなかから滑り落ちていく。

 リフィルは、ゾッと戦慄し、恐怖した。

l(これが――)

 これが、〈ロストメア〉だ。

 意地や気合では、どうにもならない。夢を抱いている限り、〈ロストメア〉とは戦えない――

zカラミティマッシャー!

 路地裏の奥から、鮮やかな光弾がほとばしった。

 光弾は怪物の胴体を直撃し、ずがん、と大きく跳ね飛ばす。

 怪物は、怯えたように引き下がり、ものすごい速度で奥へ逃げて行った。

うわ。速ッ。何あいっ。虫みたいでキモいんだけど。

 戦場にそぐわない、あっけらかんとした声――その主である少女の姿を、リフィルは茫然と眼に映し出した。

あなた……。

lあ、どもども、お久~。

 少女はニパニパと笑って、手を振った。

ユピナだよん♪




あたしのいる時代はさ、ここよりちょい先でさ。

そこでまー、ちょくちょくちょくちょくガッコにバケモン出てくるから、そのたびにブッ飛ばしてんだけど。

ちょっと前に出た奴がさ、なんか、いきなりピカッて光って消えちゃって。

魔法で追跡かけてみたらさ、なんと、過去に跳んでるとかで。マジかよってなって、追っかけてきたってワケ。

pつまり……未来人のタイムトラベル!?すごいすごーい!サインちょーだい!

r荒唐無稽は慣れっこのつもりだったけど……時間旅行者まで来るなんてねえ。

gそれで……未来の怪物が、どうしてこの時代に?

f昨日、〈ロストメア〉が1体、門を通ったろう。その副作用ではないかね。

zホントなんでもありだな、夢と現実の狭間ってのは。

kその怪物っていうのは、どういう奴なんですか?

えーとね、なんか人に取り憑いて悪さすんの。

あたしも取り憑かれちゃってさー。マジビビッた。

kえ。

うりゃって心ン中でブッ飛ばしたら、魔力だけ残ってさー。んで魔法使えるようになったの。あたし、すごくない?

mすごいっていうか……マジすか?やってること、ラギトさんと同じなんですけど。

g似た者同士か。いるところにはいるもんだな。俺の場合は〈ロストメア〉だが。

l……この子の言う怪物も、そうよ。あれは間違いな〈〈ロストメア〉だった。

ユピナ。あなたが住んでいるのは、未来のこの都市なの?

あーあー、そういう質問はパスパス。

未来のことなんてさ、訊くもんじゃないって。面白くなくなっちゃうじゃん。

lなら、〝今〟に関わる質問をさせてもらうわ。どうすればフィネアを助けられる?

取り憑いてるヤツをブッ飛ばす。それっきゃないね。

jそれでなんとかなるのか……?いったいどういう〈ロストメア〉なんだ。

そもそも、〈ロストメア〉が人に取り憑くのは、そういう能力がある場合だけのはずだ。どうして未来ではそれが頻発してる?

だーから、それはこっちのハナシなんだから、過去のあんたらが考えてもしょーがないって。

z要は、逃げた〈ロストメア〉を見つけて倒しゃいいってことだろ。金も手に入る、フィネアも助かる。いいことずくめだ。

dほんとに倒して大丈夫なんだろうな?中のフィネアが死んだりしないだろうな!?

だいじょぷだいじょぶ。あいつら、人間に憑依しないと存在すんのも難しーから、死ぬまで〝中身〟を守ろーとするし。

gなるほど。状態としては、俺の装甲に近そうだ。普通の〈ロストメア〉と違っで中身、がある分、魔力を攻撃力と防御力に集中できる。

c普通の〈ロストメア〉より強いということか。だが、どちらにしても、倒さない限りフィネアを救い出すことはできない……。

dくそっ。なんでこんなことに――

l……私のせいよ。

私が戦えていたら――みすみすフィネアを攻撃されることもなかった。

r……仕方ないわ。夢を持つ者は〈ロストメア〉とは戦えない。そういうものなんだから。

mそうですよ!ホントしょーがないっていうかなんていうか……とにかくリフィルさんのせいじゃないですって!

g気に病むな。奴は俺たちでなんとかする。

z強敵なら、報奨金も多いだろうしな。

l……そうね。

任せるわ。あなたたちに。



うわ。リフィル、こんなとこ住んでんの?めっちゃ古風じゃん。超アンティーク。

lあなたにはそうでも、この時代じゃ普通よ。

は~。これが普通か~。時代の流れを感じるな~。

pねえねえユピナ、未来ってどーなってるの?汽車は飛んでる?ウチュージン来てる?

ニヤリ。

pえ、それどーゆー意味のニヤリ!?

Nearly~♪

pうわーん気になる~!!

l未来については答えない主義みたいだけど。あなた自身についてなら、問えば答えてもらえるのかしら?

お。なになに、あたしに興味アリ?そっかー。仕方ないよなー。あたしだもんなー。気になるよなー。わかるわかる。

l……未来人ってみんなそんな感じなの?

いんや、あたしはオンリーワン。

おぜひそうであってほしいところね。

〈ロストメア〉と戦えるってことは、あなたも〈メアレス〉……夢見ざる者なの?

 問いに、ユピナばうーん、と腕組みした。

夢。夢か~。そーいやないかも。

ほら、あたし、たいてーなんでもできちゃうからさ。これやりたい!みたいなの、今ンとこ特にないんだよね~。

l魔法は?

カイブツとユーゴーして魔カゲットしてから、ひょっとして魔法とか使えんじゃね?って思って昔の本読んで試したら、意外とイケた。

lなにそれ。常識外れもいいとこね。

まーね。なんせあたしだから。

 照れるでもなく誇るでもなく、あっけらかんとユピナは答えた。

 万事が万事、そんな感じの少女だった。

 怪物に取り憑かれようが、魔法を習得しようが、過去の世界に飛ぼうが、何もかも平然と、娯楽、道楽、物見遊山とばかりの態度でいる。

 ただ。

 なんとなく、それだけではないのだろう、と思わせる少女でもあった。

 娯楽であり道楽であり物見遊山であるとしても、決しでそれだけ、ではない。〝それ以上〟の何かを、常に心に持っている。

 どんな瞬間でも挑戦的な瞳が――世界にも自分にも常に挑み続けるような敢然たる眼差しが、そう思わせてならない。

lあなたはどうして戦ってるの?

なんとなく、ってわけじゃないんでしょ。

 ユピナはー瞬、意外そうな顔をしてから、〝おぬしやるのう〟とばかり、ー転、ニヤリとした笑みを見せた。

まーね。

最初はさ。しょーがなくっていうか?あたししかできないんだし、やるしかないじゃん、みたいなノリだったんだけど。

今はさ、なんてーのかな。おりやー!人のカラダ使って好き勝手やってんじゃねーぞ!みたいな?

そんな感じでヤツらをとっちめるのが、こう、自分的にパチッとハマるっていうか、カチッと来るっていうか……。

lしっくりくる。

イエス!まさにそれ!そーゆー自分が、しっくりくるんだよね。

何もしなかったらあたしじゃない。人が襲われてんのを黙って見てるなんて、らしくないし、あたしの風上にも置けない。

だからさ、リフィル。あの子のことは任せといて。

あたしがあたしの名に懸けて、バッチリなんとかしとくから!

 お気楽で大雑把で適当で能天気な発言。

 だが、そこにはまぶしいほどの確信がある。

 自分ならできる、という自信でも、できるはずだ、という過信でもなく。

 そういうことをするのが自分だ、そのために挑み続けるのが自分だ、という、パシリとはまった確信が。

 リフィルは、太陽を見つめるように目を細めた。

l任せていいのね?

そりゃもちろん。

なんせ、あたしだし!



 疾走。

 黒い絵筆を迷いなく走らせるような高速移動。ー見でたらめなようでいて、障害を残らず迂回し最速で目的地に到達するための芸術的最短軌道。

 コピシュを、レッジを、ミリィを突破し――というよりほとんど素通りしながら向かうのは、神秘的な光を宿した巨大な門。

シャイニーリバー!

 異形の影の向かう先、光の滝が降り落ちた。

 門の下部――〝現実〟に通じる光そのものをまるごと遮蔽する光の湿布。高速でそこに突撃しかけた異形は、あわてて後方へ飛びすさる。

見たか必殺、どうあっても最終的に門を通ろうとすんなら、魔法で出口を閉じちゃえぱいーじゃん作戦!

 ニヤリと不敵に微笑むユピナヘ、黒の疾風が襲いかかる。

どわっと!

 あわてて避ける少女の背後で即座に反転、急襲。

 そこへ銃弾。熾烈な連射。怪物は寸前で〝突撃〟を〝回避〟に変更し、仕切り直すように距離を取る。

お蝶の姉さん、ありがとさん!

r素早い〈夢〉とやり合うのは初めてじゃなくてね!

にしても、こいつ、ちょっと速すぎない?いったいどういう〈夢〉なのよ。

g〝絶対に捕まるものか〟という意思を感じる。何かの機械をいじるイメージも見えたが――

あれかなー。ハッカーになりたい的な。

jハッカー?なんだそれは。未来人ならではの夢か?

 門を通ることができず、広場を高速で飛び回る異形の手元が、ふと、複雑怪奇に閃いた。

 かと思うと、その周囲に無数の魔法陣が生まれ、同じだけの数の雷を――千々の雷条を吐き散らす。

pうわわ!魔法だ!

dおい、ありやフィネアのじゃねえか!

g宿主の力を勝手lこ使えるのか……厄介だな。

 次々と魔法陣が浮かび、雷撃を放つ。

 千々の雷条、のたくる雷撃、躍り咲く雷火――それらはいずれも、ユピナを狙って轟いた。

おっとっと。そりゃそーか。あたしさえ倒せば門を通れるもんね、うん。

 人間離れした動きでひらひら雷を避けながら、ユピナはうんうんうなずいている。

だけどあたしを舐めんなよ!

 臆するどころかウィンクを飛ばし、ユピナは手にした杖を回した。



 人気の絶えた大通りに、置き忘れられた影法師のごとくぽつねんと佇んでいたアフリトは、ふと思いついたように後ろを振り返る。

 そこに、いた。

 リフィル。〈黄昏〉の字を持つ少女が。

 黄昏そのものを背負うようにして、立っていた。

fいかなる用か――と尋ねることさえ、無粋かね。

 妖しく笑うアフリトを、少女は、ひたりと見据えて問う。

lアフリト翁。あなた、確か――

人の夢を喰らう魔法が使えたはずね。

 天地を染める黄昏の光のなかにあって、その双眸だけが、空の蒼さを――混じりけのない現実を映したように澄んでいた。

 太陽のまばゆさから目を背けることなく、むしろ挑まずにはいられぬような、ひどく苛烈な覚悟を帯びて。



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story



 幼子が、画用紙を黒く塗りつぶすように――高速で移動する怪物の描く残像が、広場を黒く染めていく。

j〈ディテクトブラストウィール〉!

 レッジが追尾式の光矢を放つが、怪物は魔法陣の障壁を生み出して防いだ。

jくそっ!魔法さえなければどうとでもなるものを!

 〈メアレス〉たちの攻撃をことごとくかわしつつ、〈ロストメア〉はユピナヘ魔法攻撃を放ち続ける。

 コピシュとゼラードがユピナを挟み、四方八方から飛来する雷撃を剣で斬り払うが、ふたりの顔色には焦りの色が濃い。

kこのままじゃ保ちません!

z誰かとっととなんとかしろよ!

mしたいんですけど速すぎですよ!

 ふと、ー条の雷が、ユピナではなく、門を覆う光の瀑布へと飛んだ。

 瀑布は、パリンと音を立て、ガラスのように砕け散る。

うわうわ!マジで?ハッキングされた!?

 〈ロストメア〉は、もはやユピナに目もくれず、障害の失せた門へと飛んだ。

 その道ゆきを止めようと、ユピナが魔法を飛ばすよりも早く。

Z修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て降り荒べ!

 雷の雨が降り注ぎ、〈ロストメア〉を直撃した。

 真上からの急襲。狙い澄ましての不意打ち。その上、寸前で気づいても咄嵯に回避しきれない、広範囲へのー斉放火。

 〈ロストメア〉は門に到達する直前で、いくつもの雷条に身を焼き焦がされ、悲鳴を上げて飛びすさった。

 入れ替わるように、門の前に少女が降り立つ。

 苛烈な戦意を瞳に宿す、黄昏色の髪の少女が。

rリフィル!?なんで――

l魔法を使って戦うのには慣れていても、魔法使い相手の戦いは不慣れみたいね、ユピナ。

 ユピナは、ぷう、と頬をふくらませた。

任せてって言ったじゃんか~。

lあなたと同じよ。

私のすべき戦いを、誰かに任せて待つだけなんて――らしくもないし、主義じゃない!

 きっぱりと言い放つリフィルヘ、地に墜ちた〈ロストメア〉が憤怒にまみれた咆哮を叩きつけた。

 しかし、リフィルは揺らがない。その叫びを真つ向から受け止め、むしろ洞々たる戦意の眼光を叩き返す。

 〈ロストメア〉が、びくりと怯んだ。

 無駄に動けば即座に狩られる――そう理解したように、身体をたわめて縮こまる。

kリフィルさん――まさか……捨てたんですか?夢を!

lそう見える?

 凛とした返答に、コピシュは目を丸く見開く。

kいえ――、でも、じゃあ、どうして?

l〝ない〟を〝ある〟に変える――それが魔道の理よ。

普通の精神防御では、精度が低すぎて、〈ロストメア〉の叫びを防げない。

だから、効果をー点特化させた。夢に対する干渉だけを退けるよう調整して、精度を極端に強化した。

こんなやり方は初めてだけど、やれぱなんとかなるものね。

 ごくあっさりとした、その言葉に。

 〈メアレス〉たちは、ー様にあきれの表情を見せた。

zなんか知らんが、よーやるよ。

gわざわざ専用の魔法までこしらえて、横槍を叩き込みに来るとはな。

rホント、意地でも人任せにしたくないのね。

 リフィルは、ふん、と鼻を鳴らした。

lどうせ苦戦してるだろうと思って、仕方なく来てあげたのよ。

ついでに報奨金もいただいていこうかしら。蓄えは多いに越したことないし。

zあ、こら、ふざけんな!こっちは生活がかかってんだぞ!

rん?報奨金?――あ!もうコンビじゃないから、全部持ってかれちゃうわけ!?

l嫌ならとっとと仕留めることね。。

 告げて、リフィルは腕を振る。

 途端、途方もない実感が胸に押し寄せるのを感じた。

l(これが、私だ)

 現実が、どれほど悪夢に見舞われようと、〝負けてたまるか〟という意地を胸に、あらゆる手段を尽くして挑み続ける者こそが。

(それが〈夢想見ざるもの〉(メアレス)――〈黄昏〉(サンセット)リフィルのやり方だ!)

夢のないやり方ではあったが。

l(夢はなくても、意地がある)

 あきれるほど無様で、情緒も風情も、夢もないやり方であろうとも。

 それで、失いたくないものを失わせないよう戦えるのなら。

lやってやる!!

 獅子吼のような咆嘩とともに、リフィルはその手で魔法を紡ぐ。

l繋げ――〈秘儀糸〉!

 黄昏に、高らかな詠唱が轟いた。


 ***


l馳せ来れ、咆嘩遥けき地雷!

 蛇のようにのたくる雷が、リフィルの意思に応えてジグザグに飛翔し、高速で飛び回る怪物を捉える。

 怪物は魔法陣の障壁で雷を食い止めたが、

j〈ディテクトブラストウィール〉!

 そこヘレッジが追尾式の矢時雨を放ち、〈ロストメア〉を直撃――苦痛と衝撃とで、その身を宙に縫い止めた。

pリピュアの3秒クッキング!

mえーっとあーっと新機能!

 怪物の動きが止まった〝ー瞬〟を的確に補足し、ミリィが砲弾を、リピュアが魔法を発射。やたらねばねばしたものが怪物に絡みつく。

gすまんな。手癖が悪いんだ!

rぜんぷ当たればおなぐさみ!

dほんとにフィネアは大丈夫なんだろうな!?

c今は信じて撃つしかない!

 ラギトの鎖と、ルリアゲハたちの銃弾が殺到。動きの鈍った怪物は、捉えられ、撃ち据えられ、戸惑うように地面へ落ちる。

z剣のサビにしてやるぜ!

k後で研ぐの、わたしなんですよ!

 挟撃。ー閃。剣の乱舞が黒を裂く。怪物は呻き、悶え、絶叫を撒き散らす。

そろそろとどめの刺しどきじゃん?

lちょうどそうする1秒前よ!

 編み上げる。魔法を。力を。

 〝今の自分〟の結晶とでもいうべきものを。

l目覚めよ神雷!空の静寂打ち砕き、あえかな夢を千切り裂け!

カラミティマッシャー!

 巨大な雷槌と、鮮やかな光の奔流。

 異なる時代の異なる魔法が、黒い悪夢を呑み込み、砕く。

 吹き上がる断末魔の絶叫を、リフィルは静かに受け止めた。


 とさりと倒れる無傷のフィネアを、駆け寄ったダリクとグラースが抱き起こす。

d息してる……良かったぁ~~~~。

c外傷もなさそうだ。うまく倒せた、ってことだな。

 離れたところからその光景を見つめ――リフィルは、力尽きたようにその場にくずおれた。

rちょっとリフィル、だいじょうぶ!?

lぜんぜんだいじょうぶじゃない。

精神防御の魔法を維持しながら戦うなんて、同時にふたつのことに集中するようなものよ……正直、なるべくやりたくない……。

え?それそんな大変?よくやるやつじゃん。

lあなたといっしょにしないで。

すいませんね~。あたしなもんで。

 ユピナはニヤッと唇を歪め、リフィルの肩を気安く叩いた。

ま、そのチョーシでがんばっといて。この時代に魔法使いがいないと、未来のあたしが魔法覚えらんないからさ。

lあなたの使う魔法の流派、私のものとは違うでしょ。

わかんないよ~。リフィルの魔法が巡り巡って、いろいろ改良に改良を重ねた結果、あたしの見つけた魔法になったかもじゃん。

lどうかしら。あなた〈秘儀糸〉も使ってないし、そもそも詠唱の方向性からして、私の魔法とはぜんぜん――

「下天ボンバー

「地雷ストライク!

「八十葉ドーン!

 リフィルは、はたと言葉を止めた。

(……いや。いやまさか。あれは省略詠唱だし。どうやったところで、詠唱ひとつであれほどの威力を出すなんて無理なはず……)

 でも、未来なら?

 自分や、自分に連なる魔道士が、改良に改良を重ね、新たな手法を見出したら?

 いつか空を飛ぶ汽車も開発されうるとしたら――〈秘儀糸〉も使わず、詠唱ひとつで強力な魔法を使えるようになる可能性もあるのではないか?

l(もしそうなら――ここで私が夢をなくしたり、フィネアを救えなかったりしていたら、ユピナが魔法を使えることもなかった?)

 まさか、彼女はそこまでわかっていて、この時代に飛んできたのでは。

 リフィルは思わず、まじまじとユピナを見つめた。

 ユピナは、リフィルならそれに気づくと悟った上で、なお真実を明かすつもりはないと明示するような、いつものニヤリとした笑みを浮かべた。

さてさて。そろそろ戻んなきゃ。

いろいろ助かったし、楽しかったよ。リフィルも、みんなも、元気でね。

そんじゃま、バイバイ。またフューチャ~♪

 言うだけ言って、ユピナは消えた。

 考えてみれば――時間移動など、リフィルの知る限り、魔法で実現できた例はない。

 つまりユピナの見つけた魔法とは、世界から魔法を失われる以前には存在しない、〝これから先に生まれる魔法〟なのだろうか。

 あるいは――ひょっとしたら。このまま魔法を磨いていけば、この自分が時間旅行の術を編み出せる可能性も、意外となくはないのか?

l……さすがに夢が広がりすぎね。

 リフィルは、自分にあきれたようにつぶやいた。


 冷たい夜の路地裏に、ふうっと白い煙が浮かぶ。

 アフリトは、ゆっくりと振り向き、視線の先に吐いた煙を同じくらい白い相貌を見つけた。

fうまく行ったようだねえ、〈黄昏〉。

lおかげさまでね。

f〈ロストメア〉の咆嘩を、〝意地でも夢を守る魔法〟で防ぐ……おまえさんらしい、〝現実的〟なやり方だ。

わしで予行練習をしていくあたりが、特にな。

lぶっつけ本番で試して失敗したら、目も当てられないでしょ。

fわしの魔法を――夢を喰らう魔法を防げなんだら、とは考えなかったかね?

lあなたにしては愚問ね、アフリト翁。〝負けて死ぬかもしれないのに、どうして戦いに挑むのか?〟と問うようなものよ、それ。

それに、喰われたら喰われたで、戦えるようにはなる。どう転んでも、フィネアを救うという目的は果たせる。

fなるほどな。夢より命――いや。

 アフリトは、くつくっと面白そうに笑う。

f夢より、〝意地〟か。

lどちらも失わずに済むのなら、それに越したことはないけどね。

fそれで、礼を言いにきただけかね?

lまさか。報奨金の受け取りがメインよ。

fおまえさんに報奨金を渡すのは、とてつもなく久々だという気がするねえ。

何やら昔を思い出すようだ。

 金を受け取り、去っていくリフィルの背を見つめ、アフリトはー際大きな煙を吐いた。

f辛い現実に屈することなく、甘い夢想に溺れることもなく、現実と夢想の狭間で戦い続ける、か……。

〈黄昏〉の字が、板についてきたようだ。

それにしても、変われば変わるものよ。

夢を持ちながら〈ロストメア〉と戦うことも、〈ロストメア〉との関係がただ潰し合うだけではなくなることも……あの頃では考えられなんだ。

 夜の闇に溶け込むような門の威容を見つめ、アフリトは小さく笑った。

f巡り巡って幸が来た、か。

続く未来が楽しみだ。そう思わんかね?おまえさんも、な……。




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01/01
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11. リフィル編(6周年)03/05
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序章
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