中華フェス・ストーリー・サブⅠ
Ⅰ春陽門
年獣のうわさ1
物語 人食い怪獣?
タケノコ屋の前で、麻婆豆腐はしゃがみこんで熱心に物色中だった。だが、コレという決め手にかけ、選び出すことができずにいた。すると、麻婆豆腐の肩に乗ったパンダの小葱(こねぎ)が急に勢いをつけて跳ね上がった。
小葱「みぃーー!」
麻婆豆腐「ダメよ、小葱! 食べるのは買ってからよ!」
麻婆豆腐は、タケノコにしがみつこうとした小葱を慌てて止める。そのときだった。
村人「……年獣だって?」
工匠「ああ。また出たみたいだ。」
村人「ついこの間も見たような……年獣のヤツ、何回来るんだよ?」
麻婆豆腐(『年獣』? 何かしら……)
麻婆豆腐「すみません、何かあったんですか?」
工匠「おや、麻婆豆腐。あの人食い年獣が、またここにやってきたみたいだ。ついさっき、見たってヤツがいるらしい。」
麻婆豆腐「人食いだって!?」
村人「そうそう! 人間をまるごと飲み込んで、骨まで喰っちまうらしいぜ!」
麻婆豆腐「まるごとって……骨まで食べるの?!」
工匠「怖ぇな。あんたも知り合い連中に注意してやったほうがいい。それと小葱は、見るからにうまそうだ。年獣の餌食になるかもしれないぜ!」
小葱「みぃー?!!!!! みぃぃぃぃ!!」
麻婆豆腐「そんな泣かなくても大丈夫だよ。小葱のことはあたしが守るから。」
村人「おっと、そろそろ行かねぇと! またな、麻婆豆腐っ! 海神祭りで会おう!」
麻婆豆腐「ええ! また海神祭りで!」
・サブストーリー謎の影の計画1
物語 どうするつもり?
市場がたくさんの人が溢れている。そんな大賑わいの中、黒いフードで顔を覆って歩いている二人の場違いな男の姿があった。
二人は賑やかな町の人たちにはまるで興味を示さず、滑らかに傍らの路地に入る。
謎の人物甲「ちゃんと年獣の噂は広めたか?」
謎の人物乙「ああ、俺が手配した。今頃、町は大騒ぎだろうよ。」
謎の人物甲「本当か? それにしちゃ、町の奴らは随分と浮かれているみたいだが?」
謎の人物乙「うーむ、確かにそうだな……。まぁ。海神祭りがもうすぐだからな、仕方ねぇだろう。」
謎の人物甲「おい! なに納得してんだよっ!」
謎の人物乙「うっ……! でもよ、この町は年獣による被害が少ないしさ。だから、危機感がないのかもしれねぇぜ。」
謎の人物甲「ここのヤツらは堕神の襲撃にも慣れてるし、佛跳牆(ぶっちょうしょう)のヤツもいる……年獣くらいじゃ怖がらないってことか。ちっ!」
謎の人物乙「佛跳牆……目障りなヤツだな。あいつ、昔っから俺たちを敵対視してるだろ。」
謎の人物甲「ハッ! 今回はただじゃ済まさねぇ! あいつに一生忘れられない恐怖を捻じ込んでやるぜ! 行くぞっ!」
おばあちゃんの頼み
物語 麻婆豆腐が受けた依頼とは?
麻婆豆腐は、荒らされたキッチンを無言で片付けていた。そこに、一人の老人がやって来る。
老人「お邪魔するよ。」
その声は、よく聞く声近所のおばあちゃんの声だった。麻婆豆腐は汗を拭って、慌てて奥から出る。
麻婆豆腐「おまあちゃん、どうしたの?」
すると、おばあちゃんはまじまじと麻婆豆腐の顔を見ている。
麻婆豆腐「ん? あたしの顔、何かついてる?」
麻婆豆腐は不思議に思って、自分の顔に触れる。すると、先ほどまで薪を集めていたせいで、その頬は黒煤で汚れていることに気が付いた。
おばあちゃんはクスリと笑って、そっとハンカチを取り出して、麻婆豆腐に渡す。それを受け取った麻婆豆腐は、照れくさそうに舌を覗かせながらそれを受け取った。
老人「貴方は女の子なんだから、もっとおしゃれになさい。」
麻婆豆腐「薪集めに夢中になってたから気づかなかったよ……あはは。それはそれとして――おばあちゃん、私に何か用があって来たんじゃないの?」
老人「ああ。うちの隣に住んでいる赤ちゃんがいるでしょ? その子の部屋が年獣に壊されたらしくてね。」
麻婆豆腐「ええっ! 誰もケガしてない!?」
老人「それは大丈夫。ただ、あそこはうちと同じで、老人と子どもだけだからさ。あんたがなんとかしてやってくれいないかと思って。」
麻婆豆腐「あー……うちの若い衆は今、休みを取って帰省中なんだよね。でも大丈夫! 今、佛跳牆たちの代わりに、町の修繕を頼んでいる子がいるの。おばあちゃんとこに行くよう、伝えておくよ!」
老人「ありがとう。じゃあ、そろそろ行くわ。」
麻婆豆腐「あ、待って! 家まで送るよ!」
老人「ああ、まだ帰らないんだ。これから海神祭りに使うものを見繕いに行くつもりなんだよ。年獣たちが物を壊してないといいけど……こんなことで、海神祭りを楽しめなくなったら嫌だからね。」
麻婆豆腐「そうだね。」
老人「じゃあ今度こそ行くね。麻婆豆腐、海神祭りのこと、頼んだよ。」
麻婆豆腐「任せといて!」
こどもたちの願い
物語 いつだって純真な願い
麻婆豆腐は、年獣の聞き込みを再開した。そのとき、急に少年のけたたましい叫び声が耳を劈いた。驚いて上を見上げると、屋根の上にいる獅子頭(シーズートウ)と目があった。
獅子頭「わーっ!!! 麻婆姉さん、危ない!! どいてどいてー!!」
――ドスン!!
ピタリと立ち止まった麻婆豆腐の前を、激しい音を立てて瓦が落下していく。それが床に落ちるのを見届けてから、麻婆豆腐は勢いよく上を向いた。
獅子頭「ごめんごめん! それより、何かあった?」
麻婆豆腐「うん、仕事の進捗はどう?」
獅子頭「ばっちり! 頼まれたとこはぜーんぶ終わったよ。さっき行くように言われた、年獣が壊した部屋には、ガラス窓をつけておいた! 見た目は今まで通りだけど、夜にスイッチをつけると、寝たままで星空を見れるぞ!」
麻婆豆腐「へぇ、いいじゃない。あそこの子どもたちは、星を数え終わると両親が帰ってくるって信じてるみたいだね。夜になるといーっつも屋根の上で星を数えてるんだって。おばあちゃんが心配してた。」
獅子頭「それ、僕もおばあちゃんから聞いた。パパとママにそうやって教えられたみたいだよ。……っと、この辺で話は終わり! ボクはまだ仕事の途中なんだ!」
麻婆豆腐「わかった、ありがとっ! 続きも頑張れ!」
獅子頭「うん! 頑張るっ! 姉さんも頑張ってね!」
年獣のうわさ2
物語 年獣の角がない?
村人「おい! 聞いたか?」
工匠「あん? 何をだよ?」
村人「年獣のことだよっ!」
工匠「……聞くまでもねぇ。あいつらのせいで、うちの倉庫がめちゃくちゃにされた。まったく、なんだってこんな時期外れにきてやがんだ……?」
村人「さぁな。何の約束をしてる訳でもねぇ。律儀に年越しに来る必要はねぇよな。つーか、むしろ来んなって感じだが。」
工匠「うちの爺さんに聞いたんだが、昔出くわした年獣は大人しかったって聞いたぜ。その時の年獣には角が生えてたらしい。」
村人「うちの爺ィは、年獣は凶暴だって言ってたぜ。あ、でも、そのときの年獣は頭をケガして、角が折れてたって言ってたな。」
工匠「じゃあ、角が問題の可能性があるのかね。伝説で伝え聞く神様や化け物ってヤツぁ、角が折れると暴れ出すだろ?」
村人「確かに。じゃあ今、町で暴れてる年獣の角は折れてるかもしれねぇのか……ん? 麻婆豆腐じゃねぇか! お前、何か知らねぇか?」
麻婆豆腐は彼らから年獣に関する事情を聴いた。その話に、麻婆豆腐は首をかしげる。
麻婆豆腐(年獣が町で暴れているのは、角が折れたせいかもしれない……? あんまりピンとこないな。もっと情報が必要だな)
魚の骨マークの手紙
物語 佛跳牆が受け取った謎の手紙
麻婆豆腐「いつも通りってことね。何か異変はないの?」
松鼠桂魚「異変?」
麻婆豆腐「そう……例えば、北京ダックと連絡を取り合ってる、とか。」
松鼠桂魚「ないんじゃない? 北京ダックに連絡するには、いつも姉さん経由してたじゃん。」
麻婆豆腐「そう、だよね……。」
松鼠桂魚「あ、そういえば……おとといだったかな? 宛名のない封筒が届いたんだけど、佛跳牆が「自分のだ」って奪ってったんだ。誰からの手紙か聞いたけど、教えてくれなくてさ。叫化鶏(きょうかどり)は「ラブレターだ!」って言ってたけどね。」
麻婆豆腐「他に、その手紙で何か気になったことはなかった?」
松鼠桂魚「うーん……どこにでもある普通の封筒だったよ。あ、でも魚骨の印影が押してあったよ。どこのお嬢様の趣味なんだか……。」
麻婆豆腐(印影……魚骨のマークがついてた? どっかで見たような……)
麻婆豆腐「ま、いいかっ! 年獣には関係なさそうだし。今は、年獣の情報集めが先よ! 二手に別れて探しそう。頼んだよ!」
松鼠桂魚「うん! 任せといて~!!」
生命危機
物語 小葱があぶない?!
松鼠桂魚と別れた麻婆豆腐は、被害に遭ったお店に出向いて話を聞くことにした。
商人「ああ、急にやってきてな。あっという間だったよ。角? どうだったかなぁ……。」
小葱「みぃーー!」
商人「わっ!? な、なんだよ!」
小葱「みぃー……」
糖葫芦屋が叫ぶ声に反応し、小葱は麻婆豆腐の傍を離れた。そして、糖葫芦屋の近くまで駆け寄っていく。その途中、小葱は突然、誰かに抱えあげられた。
龍鳳燴「お? 丸々してうまそうだな。こりゃ、シチューの具にピッタリだ!」
小葱「みぃーーーー!!!!」
雄黄酒「おいおい……そりゃどっかで飼われてるペットじゃねぇか? 早く下ろしてやれ。」
小葱は目を見開いて、龍鳳燴の手から逃れようとジタバタと激しく暴れる。彼らの会話の意味がわかったのか、その様子は恐怖に囚われていた。
龍鳳燴「ハハハハハッ!! 見ろよ、こいつ尻振ってるぞ! 可愛いなぁ!!」
小葱「みぃ!!!」
雄黄酒「まったく……噛まれても知らないぞ。」
雄黄酒が苦言を告げた瞬間、龍鳳燴(ロン・フォン・フイ)の指が噛まれ、驚いて腕を振り回した。
龍鳳燴「いたたーー! 離せ!! おい、離せッたら!」
麻婆豆腐「――小葱ー! どこ行ったのー!?」
その声に小葱はビクンと反応し、両手を羽ばたかせる。そして、走ってきた麻婆豆腐の胸を目掛けて飛び込んだ。
麻婆豆腐「わっ! こ、小葱!? 興奮してどうしたの?」
龍鳳燴「驚いたぜ……随分と鋭い歯をもってやがるな、そいつ。」
麻婆豆腐「あ、もしかして小葱に噛まれた!? ごめんねっ、すぐ医館に行った方がいいよ! あたしも一緒に行くから!」
龍鳳燴「……いや、大丈夫だ。ちょっと噛まれただけさ。気にしないでくれ。」
小葱「みぃ!」
小葱は、麻婆豆腐の胸にしがみついて、自分を捕まえようとした二人に歯を剥いて威嚇する。
麻婆豆腐「小葱! ダメだよ!」
龍鳳燴「ハハハッ! 俺がオメェを捕まえようとしたから怒ったんだろ。悪かったな、小葱。」
小葱「みぃ!」
小葱の頭を撫でようと、龍鳳燴は手を伸ばした。すると小葱はぶるると体を震わせ、小さく唸り声をあげる。龍鳳燴は仕方ないといった様子で、糖葫芦屋で一本糖葫芦を購入してきた。
龍鳳燴「オメェにこの糖葫芦をやるよ。さっき失礼した詫びだ。」
小葱「みぃ? みぃーーー!!」
小葱は匂いにつられて、差し出された糖葫芦に勢いよく食らいついた。一心不乱に肉を食べる小葱に、周りにいた皆が思わず笑ってしまった。
龍鳳燴「面白いヤツだな。」
麻婆豆腐「そうですね。この子、美味しいものに目がないんです。普段は本当に大人しい子なんだけど。」
龍鳳燴「ははっ。素直でいいじゃねぇか。気に入ったぜ! あ、名前を教えてなかったな。俺は龍鳳燴、こっちは雄黄酒だ。」
雄黄酒「……ど、どうも。」
龍鳳燴「ああ。麻婆豆腐……か。よし、覚えたぜ! これからも、よろしくな。」
黒と白の凶獣
物語 凶暴な獣
パスタはナイフラストから光耀大陸の景安までやってきた。話し相手は無口だが、干渉してこないオイスターを連れて買い付けをしている。この時間をパスタはそれなりに楽しんでいた。
パスタ「おい、オイスター。さっきから何を見ている?」
カキ「あの人の連れている生き物……ナイフラストで見たことがない。」
パスタ「ああ、誰かのペットだろ。光耀大陸には生き物以外にも、珍しいものがたくさんあるんだ。だからこそ、わざわざここに買い付けにきたんだからな。」
カキ「うん……ねぇ、パスタ。あの白黒の生き物も初めて見るよ。」
パスタ「白黒の生き物?」
カキ「ほら、あの女の人が抱きかかえてる子……」
パスタ「ああ。あれは『パンダ』だ。虎や狼より狂暴な猛獣だって言われているな。」
カキ(あの丸っこいやつが……猛獣?)
カキ「そんな猛獣が、どうしてこんな町中にいるの?」
パスタ「さて? 理由はわからんが、光耀大陸だからな。何があってもおかしくない。それより、そろそろ帰りの船が出る。ナイフラストに戻るぞ。」
カキ「わかった。」
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