シナリオ:APOCALYPSE
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概要
一部を原文から再訳.
1.
誰かが追ってくる。捕まったら死ぬ。
走っていると、急に足に痛みを感じた。あ・・・ またブービートラップを踏んでしまったのか。
このパターン一体何回目だよクソ・・・
言葉通り、足を引っ張られてもう動けない。終わった。
このまま死ぬんだ、この感覚にももう慣れたようだ。何もかも諦めてしまいたい・・・
「おい、起きろ。」
目を開けると、俺の脇腹を足で軽く蹴っているアイソルと水を差し出してくれているヘジン、
そして木と草に溢れた風景が見える。
公園か? 森のようにも見えるが・・・
「大丈夫ですか?」
「このまま殺せばよかったのに。その方がお互い楽だろ。」
「・・・また記憶を失ったのか。もう殺す必要はなくなったんだよ。」
「アイソル様の仰る通りです。実験は終わりましたよ。」
ヘジンが笑う。そういえばアイソルの表情も普段と比べて柔らかい。
「最後の任務だけ果たせば、約束の報酬も支給されるそうです。」
「何の任務だ?」
アイソルの顔が険悪になった。いや、本当に聞いた覚えがないんだけど・・・
「なんで重要な部分すら覚えてないんだ? 怪物を狩ればいいんだよ。」
怪物? いきなり何の怪物だ?
殺されたり殺したりしなくていいなんて、実感がわかない。
2.
建物の中に入ると宅配の箱がたくさん積み上げられているのが見えた。
ここに集まることになってるらしい。
にしても、ここはどこだ・・・? 一体どこに怪物なんかがうろついてるんだか・・・
「ヒョヌ様、これを見てください。」
ヘジンが小さいカップ麺を持っている。幼い頃に飽きるほど食べたから見るだけで嫌気が差す。
目を逸らそうとすると、ヘジンは周囲を見回しながらこちらへ近寄ってくる。
「これ、ハングルなんです・・・」
「は・・・? あいつら、ここがどこだか言ってたか?」
「え? あ・・・それは教えていただいていないのですが・・・」
まさか・・・いや、無いよな。
それにカップ麺は輸出も多いだろうから容易に結論は出せない。
「そろそろ出発しないか。」
フィオラの声に振り向くとジャッキー、フィオラ、ヘジン、アレックス、アイソルがいる。
厄介そうな奴らが見えるんだが・・・ この任務、簡単にはいかなそうだ。
3.
川辺を捜索している間ずっと、ヘジンが俺に何かを伝えたそうにしている。
なんだろう。ほっておこうかと思ったがやはり気になる。
「どうかしたのか?」
「あの筒状の建物、見覚えありませんか?」
「俺は初めて見るぞ。」
ヘジンはもう一度辺りを見回す。
「ここ、ソウルみたいです。」
俺も同じように周りを見回した。幸い、みんな各々の仕事に集中している。
「先ほどチラシを一枚拾いましたが・・・確かです。ここはソウルです。」
「なのに、こんなに人がいないのか?」
「件の怪物が伝染病を広めて・・・。多くの方が・・・お亡くなりになったそうです。」
なんだって? ソウルがこの有様なら他の地域は?
母さん、母さんは無事なんだろうか。
「捜索に集中して欲しいんだが。」
振り向くと、フィオラがレイピアで俺の肩を押している。
「何か企んではいないだろうな。無駄なことはやめておけ。皆を危険な目に遭わせたくなければ。」
「自信がなければ大人しくしててね~? 怪しいことしたら殺しちゃうかも。」
ジャッキーは腕輪をした方の腕を振りながら、ゾッとする笑みを浮かべて言った。
4.
俺たちは湖に向かった。
湖に近付くと遠くにテレビで見た、見慣れた建物たちが見える。
有名な遊園地、高いタワー、そして湖を囲む散策路・・・本当にソウルだ。
「私たちだけ知っておきましょう。余計に疑われますから。」
ヘジンは湖に視線を置いたまま小声で言った。俺も芝生を見る振りをした。
「お前は気にならないのか?家族や友達がどう過ごしているのか。」
「・・・だけど、今はソウルを守るのが最優先です。」
ヘジンは俺を通り過ぎてフィオラのところに行った。
アイツは大人過ぎて話にならない。俺がソウル出身だったら今すぐ抜け出して行っただろうに・・・
ため息をしながら視線を逸らすと遠くの端から人が歩いて来るのが見えた。
誰だ? 実験体ではなさそうだけど・・・
しかし、おかしい。歩きは不安定だし、なんか血も流れているみたいだ。
「おい、アイソル。あっちに誰かいるぞ。」
「・・・説明通りだな。あれがあの『スキュラ』だ。」
5.
怪物は攻撃しようとするとすぐ遠くに逃げて、避けようとするとすぐ近くまで寄ってくる。
銃でも刀でも倒すことができない。クソ、あいつを追うのにかなり走った気がする。
ここはどこだ? 競技場みたいなものが見える。
「ヒョヌ! よけて!」
怪物が早い速度で俺を通り過ぎた。待て、俺の後ろに誰がいるんだ?
「イ・・・ウア・・・」
怪物はヘジンの前に止まったまま変な音を出している。そう、今だ!
「ヒョヌ様!」
突っかかる途中、急に体が浮かぶ。そのあっという間に胸倉を捕まれて遠く飛ばされたようだ。
壁にぶつかって頭と背中に激しい痛みが感じられる。痛すぎる・・・早く起きなきゃ・・・
「後退だ!」
アイソルの声だ。
「ヒョヌはどうする!」
フィオラ・・・
「一旦後退しろ!」
アイソルあの野郎・・・今すぐ起きて一発殴ってあげたい・・・のに・・・目の前がぼやけていく・・・
6.
目を開けると夜空が見えた。
体には古い上着が乗せられていて、左腕には木の枝と包帯がまばらに巻き付けられているのが見える。そして・・・
「え・・・」
色が薄い金髪に白いワンピース姿の女の子が焚火の前に座って俺を見ている。
知らない顔だ。俺とほぼ同じ年に見えるんだが・・・生存者か?
「腕が折れているようだったから・・・初めてやってみたんだけど・・・めちゃくちゃだよね。ごめんね。」
女の子は初対面なのにタメ口で話しかけてきた。しかし声は優しい方だ。
「まあ、でも・・・ありがとう。」
骨は既にくっついたようだ。この体の回復力なら副木はあまり意味ないだろう。
「・・・で、なんでここにいるんだ?」
「・・・この展示場・・・友達と一緒に来てた場所だから。」
周りを見ると擦り切れた万国旗と展示を広告する立て看板が見える。
「ここは危ない。生存者がいると報告するよ。」
女の子は静かに首を横に振る。
「まだ・・・ここから出られないの。友達を探さないと。」
「友達・・・? じゃあ仕方ないな。」
俺が立ち上がると女の子は残念そうな顔で目を逸らす。
「一緒に探してみよう。」
女の子、エヴァは目を丸くして俺を見上げた。
7.
「そのヨンビンって子はどんな感じ?」
「君と似てる。」
「じゃめちゃくちゃだな。」
「そんなことないよ、二人とも。」
夜が明けてエヴァと繫華街に出た。ここの地理に詳しいようだ。
夜に色んな話をしながら感じたことは、エヴァが思ったことよりお喋りだということだった。
でも嫌な感じではなかった。
「君は戻らなくても大丈夫なの?」
先を歩いていたエヴァが足を止める。
「問題ないから、とりあえずその子を探そう。」
正直確信はない。大きな問題が起こらないことを願うだけだ。
「このバンド知ってる?ヨンビンが好きだったバンドなんだけど・・・」
エヴァはほとんど破れて辛うじて壁にくっついているポスターを剝した。
バンドは何処かで見た覚えがあるんだけど・・・ちょっと待て、公演日が2019年3月20日?
「もしかして今2019年なのか?」
「うん。多分今は2月なはずなんだけど・・・正確な日付は知らない。」
記憶はごっちゃだが実験が繰り返されるということは知っている。
なのに5年も過ぎただと? クソ、母さん一人でそんなに長く・・・
「大丈夫?」
ふらつく俺をエヴァが支える。これからどうすればいいんだ?
8.
いつの間にか大通りを歩いていた。エヴァは先から口を利かない。
「ジャン・ヒョヌ!」
向こうからフィオラとイヘジンが走ってくる。
「幸い無事だったようだな。隣は誰だ?」
「今が2019年なのは知っているのか?」
俺はフィオラの言葉を切った。
「・・・なに?それは一体どういう・・・」
フィオラの声が若干震えた。
「その島で5年もいたんだ。アイツらが何かしたんじゃないなら説明ができない!」
レイピアが落ちる音がした。フィオラも俺と同じく複雑な気持ちになったようだ。
「今はスキュラを捕えることが最優先です。」
イヘジンはフィオラと違って動揺しない。まさか、知っていたのか?
そういえば昨日川辺でチラシを拾ったとか言ってたな…
「今怪物が問題か?最初から俺たちは騙されてたんだよ。アイツらの掌の上で弄ばれるのもお前は運命だって受け入れるつもりなのか?」
「おやめください!私が好きでこんなことをしていると思いますか?」
運命とか言わなきゃよかったのに。怒らせてしまった。
「この都市を守ることが先です。今も人々は死んでいるんですよ!」
イヘジンはそう言いながら弓を俺に向けた。弓弦が緩いから本当に打つつもりはないのだろう。
「やめて!」
エヴァが叫びながら弓を持ったイヘジンに向かって手を伸ばす。一体何を…?
いきなり弓が粉々になった。な…なんだ?イヘジンも呆然と血が流れる自分の手を見ている。
騒ぎを感じたのか向こうからジャッキーとアイソルが走ってくるのが見える。クソ!こんなことになるなんて…
「おっと、非常状態ですね。」
何処からか空き缶が飛んできて、そこから煙が出てくる。
そしてその煙の中から見えてくるのは黄色い髪と見慣れたサングラスだった。
9.
「伝染病に露出されても平気なのを見ると確実ですね。まだ彼らは知らないようですが。」
アレックスは腕輪をしていないエヴァの手首を示しながら言った。
エヴァは顔を見ると調子が悪くなったようだ。それを見たフィオラが自分の上着をエヴァに着せた。フィオラは俺たちと共に逃げた。しかし結局イヘジンは…アイツ、手は大丈夫だろうか。
「これからどうします?」
アレックスが俺を見る。何をどうするか。正直何の対策もない。
「一緒に脱出しましょう。助っ人たちももうすぐ来るはずです。」
「どうやって脱出するって言うんだ?位置も見えるし、いざとなったら爆破することもできるんだぞ。」
フィオラが腕輪を示す。
「ここでなら、それを解除する方法があります。」
どうやって?誰が俺らを助けてくれるんだ?
「ソウルを抜け出したらまた詳しく説明しましょう。」
怪しい。アイツ怪しすぎる。
「ここにいたらエヴァも実験体ナンバーを付けられる羽目になるだろう。こっちもあまり信用はできないのだが…彼らが何かを隠していることは間違いない。」
フィオラはエヴァの調子をうかがいながら言った。
エヴァも適合者だから捕まって行くんだろうか。こんな地獄に引き入れたくないのに…アレックスは信頼できないけど一旦一緒に行くしかないか。
「みんなで一緒に脱出しよう。ここから」
フィオラが俺を説得している。もし脱出に成功したら…プサンにも行けるかな…
「イ…ウア…?」
何処かから淡が絡んだような不快な声が聞こえてくる。音が聞こえたのはエヴァの後ろ、イヘジンが捕えたがっていたその怪物だった。
10.
しばらく必死で走った。怪物は100mを走るのに10秒も掛からない模様だ。
水が入ったチャムスギョまで来てやっと怪物の動きが鈍くなった。
「イ…イ…ウ…!ア…」
怪物はエヴァを見ながら変な音を出す。イヘジンを見た時と同じだ。エヴァは怖がりながらも怪物から目を離さない。
「安全な脱出のためには死んでもらうしかないね。捕まるのも困るしな。」
アレックスが銃を取り出して怪物の頭を狙った。フィオラがエヴァの目を覆う。
俺はエヴァの前に出た。飛ぶ血でも防ぐために。でもエヴァは俺とフィオラを押しのけ、怪物の前に立った。エヴァ?お前何をするんだ…?
「どいてくれ。それはウイルスを広めた怪物だぞ。」
フィオラが落ち着いた口調でなだめるように言った。エヴァはずっと怪物を見ている。
「イゥア!!!!」
銃声と同時に怪物がエヴァを押し倒した。怪物の背中に銃弾が当たってエヴァの白いワンピースに血が飛ぶ。
「裏切り者たちとスキュラを発見。」
銃を撃ったのはアイソルだった。
続いて怪物の足に矢が刺さる。怪物に視線を固定したまま歩いて来るイヘジンの前に、ジャッキーが笑いながら走ってくる。
それを見たフィオラが前方に掛け出した。彼女はジャッキーの胸の方にレイピアを突きながら叫んだ。
「ジャン・ヒョヌ、エヴァを守れ!アレックスは掩護してくれ!」
アレックスは待っていたかのように銃口をアイソルとイヘジンの方に向けて射撃を始めた。アイソルも迷いなく応射する。
イヘジンは他のひとは構わず弓弦を引っ張って怪物の頭を狙った。エヴァがまた怪物の前に立つとイヘジンは弓を捨てた。そのままイヘジンは歯を食いしばって走ってきては、エヴァの顔に拳を投げた。
「何するんだ!」
俺はイヘジンの手首を掴んだ。アイツは負傷した手を包帯で巻いていた。
「ウ…ウアアアアアアア!!!」
いきなり怪物が声を張り上げて再び立ち上がったと思ったら、あっという間にイヘジンの胸倉を掴んで、彼女を遠くまで投げてしまった。
11.
「みんな~ どこなのかしら~?」
ジャッキーの鼻歌が聞こえる。銃に撃たれて倒れていた怪物が再び起きてから、みんなバラバラになった。
俺はエヴァの手を握ってしばらく走り、古いタンクがある建物の中に隠れた。…が、運悪くもジャッキーが俺らを探しているようだ。
「…ごめんね。」
鼻歌が遠くなると、エヴァがとても小さな声で謝った。俺は頭を振りながらエヴァの手を握った。
エヴァは俺らみたいに死に慣れていないだろう。
とにかくあの怪物野郎は人間と似たような形をしているから。あの怪物…一体何だろう。
「何だよもう~かくれんぼに邪魔しないで!」
金属がぶつかる音がする。あれはフィオラか?一緒に戦わなきゃ!
エヴァの手を放してドアを開けると大怪我をして倒れているフィオラが見えた。ダメ…
「うぅっ…!」
拳を握って奴に突っかかろうとしたが、突然ジャッキーが持っていた電気のこぎりが粉々になって破片が飛んできた。これは…エヴァ?
「早くよけろ!」
アレックスの叫びと同時に、もう一度銃声が聞こえた。今度はエヴァの背中が真っ赤に染まっている…
12.
息が切れる。エヴァを抱えているからもっとキツイ。でも止まることはできない。
一緒に山を走って登っていたアレックスは火炎地雷を踏んでしまった。
大怪我を負ったヤツを置いて行きたくなかった。
しかしアレックスは [エレボス] という名前を覚えろと言いながら銃を振って見せては、隣の茂みに身を隠してしまった。
弾丸もとっくに切れてるだろうに…投げつけでもするつもりだろうか。
「ヒョヌ…」
「もう少し待ってろ!すぐに治療してあげるから!」
「私…ちょっと降ろしてくれる?」
丁度ベンチが見えた。エヴァを降ろしてから見ると俺の体は自分の汗とエヴァの血でめちゃくちゃだった。
「私…ヨンビンに会ったの。」
「は?」
「何か間違ってるみたいだったけど…確かにヨンビンだった。」
その言葉を聞いてやっとエヴァの行動が理解できた。スキュラは本当に人間だったのか。
「包帯もちゃんとしてあげられなかったのに…一緒にヨンビンを探してくれるって言ってくれて…本当にありがとう。」
エヴァが俺の手をぎゅっと握った。目には涙があふれている。
「そして…ごめんね。」
急に体が痺れる感覚を感じる。視界がぼやけていきながら頭と背中が痛い。エヴァ…これは…一体…?
「お陰で手間を省いたわ。よくできました。エヴァちゃん。」
最後に聞こえたのはジャッキーの声だった。
ー完ー
備考・その他
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