血盟のドルキマス Story3
黒猫のウィズ×コードギアス コラボ |
2018/11/30 |
story 魔神と元帥
ルルーシュたちがドックに戻ると、留守番のC.C.とレベッカが出迎えた。
「ルルーシュ。調査の結果、重要なことがわかった。」
真剣な顔で言うC.C.に、ルルーシュは目を細めて訊く。
「お前が自ら調査とは珍しいな。報告してくれ。」
「チーズが足りない。」
「……なに?」
「ここのピザはチーズが足りない。だから味がいまいちなのだ。
できれば質にもこだわりたいが、なにを言うにもまずは量だ。調達ルートを確保する必要がある。」
「……ふざけている場合じゃあない。」
「なぜだ? 私は本気だぞ。」
「留守の間、他にやることはなかったのか?」
「私にやれることなんて、あるわけないだろう? ナイトメアも無いんだ。無茶を言うな。」
ルルーシュは諦めたようにため息を吐いた。
「わかった。余裕があれば探しておく。」
「それじゃ、あたしも良いかしら?」
「お前もか。レベッカはあのピサで満足していたのではないのか?」
「そうじゃなくて、報告よ、報告。報通信機が直せそうなの。
受信の方に問題があると思って調べたら、ドルキマス軍の通信がノイズになっていたみたいなの。
それで特定の周波を遮断する装置を作ってみたから、早速、試してみませんこと?」
***
ルルーシュは蜃気楼の通信機で、レベッカの作った機能を試す。
すると、待ちかねていたように、プライベートチャンネルがなにかを受信した。
「これは……。」
「どうした?」
「C.C.。お前に頼みたいことがある。ナイトメアが無くても問題ない。」
「……?」
***
周辺の哨戒を終えた君が、ドックを訪れると、そこにいたのはルルーシュとレベッカだけだった。
他の人はどこへ行ったのか、聞こうとすると――
「にゃにゃ? だれか来たにゃ。」
「あらぁ? この音、もしかして……。」
近づいてくる戦艦の飛行音に、君たちは外に出ることにした。
***
「なんだ。通信機の不調はこれが原因なんじゃない。」
見上げた空にいたのは、小型でありながら、見る者を圧倒する戦艦だった。
この空に戦う者で、その戦艦の名を、それを駆る者を、知らぬ者などいない。
すなわち、ドルキマス空軍元帥旗艦、グランツ・デーゲン(輝ける剣)――
ディートリヒ・ベルクの艦だった。
「魔法使い。そこにいるな。」
ドック前に着陸したグランツ・デーゲンからディートリヒが姿を現す。
「元帥、お久しぶりですわ。地面に足をつけるなんて珍しい。」
「ほう、これは驚いた。アーレント開発官、まだ生きていたか。」
まるきり驚いていない平静の声で、ディートリヒは告げる。
「ディートリヒはドルキマス王宮から、全軍に指示をだしていたはずにゃ。なんてここにいるにゃ?」
「魔法使いの報告を受けて“客人”を迎えにな。」
その言葉を待っていたかのように、ルルーシュが姿を現す。
「はじめまして、ディートリヒ・ベルク元帥。お目に掛かれて光栄です。」
「貴君が異界からの来訪者か。」
ディートリヒの、どこまでも冷めた視線と――
ルルーシュの、すべてを貫く熱い視線が交錯する。
何かが起きる予感がする――君はそう思った。
story ドルキマスの元帥
――かつて、この大陸には、大小無数の国が存在し、空戦に明け暮れていた。
だが、イグノビリウムが現れたいま、ほとんどの地は制圧され、国と呼べる休裁を保っているものは少ない。
ましてやイグノビリウムに対抗し得る勢力は数えるほどしかない。
ドラゴンの背に乗って、大空を自在に駆ける竜騎兵部隊――ウォラレアル。
太古の時代からこの異界を見守っていた天の使いとその崇拝者による集団――ファーブラ。
十全な兵数と戦艦を傭えたもはや大陸唯一の軍隊――ドルキマス軍。
これら三つの軍団が大陸の各戦線に散り、人類の領域を守っていた。
そして、強大な武力を諦るがゆえに、本来、足並みの揃わぬこれらを統べ、ひとつの生き物の如くあやつる者――
それがドルキマス軍元帥、ディートリヒ・ベルクである。
その男に招じられ、ルルーシュとレベッカ、そして君は、旗艦クランツ・デーゲンヘと乗り込んだ。
ディートリヒは先に艦の奥へと戻り、一行を出迎えたのは、副官のローヴィだった。
「お久しぶり~。」
「アーレント開発官。無断で軍を離れた懲罰は、後でしっかりと受けていただきます。」
「ローヴィちゃんは真面目すぎよ。少しは自分のやりたいようにやらないと。」
「貴官は好き勝手にやりすぎです。」
日知の仲らしいふたりに君が訊いてみると、レベッカはもともとディートリヒの部下だったらしい。
ディートリヒのもとで数々の発明をし、重宝されていたという。
だがイグノビリウム戦役のはじまりの頃、勝手に抜け出し、軍が放棄したあの街に留まり続けていたという。
「だって、近くに遺跡あったし、グラールの研究にちょうどよかったんだもの。」
「軍属が私心で動いていては、軍隊は成り立ちません。ましてや今は危急存亡の秋です。」
「そんなこと言ってもあたしはあたしだしねえ。第一、元帥閣下は怒ってるのかしら?」
「……直属隊への復帰を命じる、とだけ、伺っております。」
「やっぱり閣下は話がわかるわぁ。」
そんなふたりのやりとりを、ルルーシュは黙って観察している。
(軍でありながら、規律を乱す異才を取るか)
その選択は、ルルーシュには近しく感じられる。
彼の配下である黒の騎士団の幾人か――たとえば渉外担当のディートハルト。たとえば技術開発責任者のラクシャータ。
彼らも秩序にはほど違い人物だ。だが、それを補って余りある才がある。ゆえに重用した。
なにより、そのような曲者を御する自信が、覚悟が、ルルーシュにはあった。
(ディートリヒ・ベルク――覚悟をもって劇物を制する者か、それとも身の程を知らぬ愚か者か)
いずれにせよ、ルルーシュの決意に変わりはなかった。
「皆様、こちらへ。元帥閣下がお待ちになっています。」
(この世界を救った軍略家……見極めさせてもらおう)
ルルーシュは薄く微笑んだ。
story
通されたのは、ブリッジだった。
中央の机上には地図が広げられ、周辺には盤上遊戯の道具が、乱雑に置かれている。
その地図の上を、漆黒の手袋に包まれた細く長い指先がなぞり、薄い唇がかすかに動いて「来たか」とつぶやく。
「ご苦労だった、魔法使い。」
カツ、と軍靴が床を打つ、硬く冷たい音が響く。
小さなその音は、しかし聞く者の背に、雷鳴が落ちたような緊張を強いる。
見つめられれば、あらわな左の目が魂の底までも見透かしているように感じられる。
それがドルキマス軍元帥ディートリヒ・ベルクという男だった。
まさか元帥が単艦で来てくれるとは思わなかったよ、と君は言った。
「情報によって打つ手は決まる。戦局を左右する存在が現れたのなら、指揮をとる者が現場を訪れるのは当然だ。」
ディートリヒは君から視線を離し、隣に立つ人物へ向ける。
「この辺りに、イグノビリウムと戦っている黒い人型兵器がいるという。――貴君だな?」
「いかにも私だ。」
「なるほど。」
ディートリヒは冷たい瞳のまま、ルルーシュにそう言ったかと思うと――
帽子を手に取り、頭を下げた。
「礼を言う。貴君がいなければ、人民に大きな被害が出ていただろう。」
君は驚いた。出会う人間すべてを、盤上の駒を見るのと同じ視線で見つめる。君の知るディートリヒはそういう男だった。
だが、今のディートリヒは、盤上ではなく、その先――対局者を見るようにルルーシュに相対している。
「改めて挨拶を。私はディートリヒ・ベルク。ドルキマス軍を預かる者だ。貴君は、名をなんと?」
「ゼロだ。」
「ほう……ゼロ。
無……何者でもない、か。あるいは何者でもある、かな。」
「好きに解釈してもらって構わない。名前など記号だ。人の真価は為すことで測られる。そうだろう? ベルク元帥。」
「その通りだ。では、私のこともディートリヒと。」
「承知した。それで、ディートリヒ、私に用件というのは?」
君はますます驚く。ディートリヒにそのような口を利く人間を、見たのも初めてだった。
「少し話を聞きたいだけだ。貴君らはこことは異なる世界より来た。あの人型兵器もだ。そうだな?」
「ああ。そうだ。」
「イグノビリウム内に現われた人型兵器も貴君らの世界のものか?」
「ああ。そうだ。」
「貴君らはイグノビリウムと関係があるのか?」
「いや、関係はない。」
「では……。」
「まるで尋問だな、ディートリヒ。これがドルキマス流の客への対応なのか?」
「これは失礼した。」
ふたりが視線を合わせたまま、しばしの沈黙が落ちる。
「な、なんだか息が詰まるにゃ……。ふたりの間に言いようのない緊張感があるにゃ。」
ディートリヒは手遊びに盤上遊戯の駒をいじっている。ルルーシュがそれに目を止めた。
「盤上遊戯か。六角マス、三角マス、四角マス……ずいぶんと種類を揃えたものだ。」
「無聊を慰める程度のものだ。貴君、腕に覚えがありそうだが?」
「多少は――ほう、その盤、私の世界と同じもののようだ。」
ルルーシュの視線の先には、オーソドックスなチェス盤があった。
「どうかな、ディートリヒ、ひとつ、指してみないかな?
私とあなたは出会ったばかり。まずはゲームで親交を深めれば、お互いの理解も深まるかもしれない。」
その言葉に、ディートリヒはひどくゆっくりとまばたきをした。
「貴君の言い分はもっともだ。親交を深めるとしよう。」
盤を挟んで、ふたりは向かい合う。ディートリヒの口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。
「さあ、それでは始めるとしようか。我らのはじめてのゲームを。」
story 盤上に遊ぶ
戦略は、相手を知ることからはじまる。
(さあ、ディートリヒ・ベルク。お前を見せてみろ)
チェスに誘ったのは、無論ゲームを楽しむためではない。ディートリヒという男を知るためだ。
チェスは戦争を模した高度な盤上遊戯だ。ルルーシュの戦略・戦術眼もまた、チェスによって培われた。
一局指せば、相手の知能は当然のこと、思考の方向性、思想の在り方、そうしたものも読み取ることができる。
「貴君が先手だ。」
促され、ルルーシュは駒を手に取る。まずは中央のホーンを前進させる。
応えるように、ディートリヒも同じ場所のポーンを前進させた。ここまでは定跡の通り。
続く二手目。ルルーシュは迷いなく、彼の常なる手を指した。
――キングの前進。
定跡を無視したー手に、ディートリヒはわずかな声を漏らした。
「ほう。」
これを初めて見た対局者は、おおむね、どちらかの反応を見せる。
無知と捉え、見下した笑みを浮かべるか、侮蔑と捉え、屈辱に顔を歪めるか、だ。
開幕でキングを動かすことは、一手を相手に献上するに等しい。
(さあ、貴様はどちらだ?)
しかし、ディートリヒの反応は、そのどちらでもなかった。
「奇遇というのはあるものだ。」
かすかな笑みを浮かべたまま、駒を動かす。
――キングの前進。
「私も開幕の一手は、これだと決めている。」
その瞬間、ルルーシュは確信した。
(長い勝負になるようだ)
story
ルルーシュの予感通り、ふたりの勝負は長引いた。
ディートリヒは、無謀にも思える攻め方が強く印象に残る指し手だった。
そう印象づけるための意図的な指し方なのだと、ルルーシュにはすぐにわかった。
(この男を支えているのは圧倒的な知識量。おそらく、数え切れぬほど古今のスコアを研究しているな)
だが、それはルルーシュも同じことだ。知識・経験・才能。いずれも劣りはない。
盤上は一進一退を繰り広げながら、わずかにルルーシュの優位に進んでいた。だが、中盤戦に差し掛かった頃――
「我がドルキマス国では、近年、謀反があった。」
ビショップを進めながら、ふいに、ディートリヒが口を開いた。
「ほう。それは穏やかな話ではないな。あなたがその謀反を治めたという話かな?」
「いいや、謀反は鎮圧されず、当時の王、グスタフ・ハイリヒベルクの死を契機に幕を閉じた。」
「ならば、あなたが謀反の首謀者なのだな。あなたのような堅実にして果敢な打ち手が、みすみす謀反を許すわけがない。」
ディートリヒは満足したように目を細めてうなずく。
「なぜ謀反を起こしたか、聞いても?」
「『ドルキマス国に仇なす破落戸を討伐せよ』グスタフ王は私にそう命じた。ゆえに従ったまでのことだ。」
「王が破落戸であった、と。」
「暗愚であった。小国を滅びに向かわせる程度にはな。」
「その判断は難しい。独善である可能性も捨てきれまい。」
「事実です。あの時、閣下がご決断なされなければ、遠からず、我がドルキマスは自滅していたでしょう。」
思わずというように口を挟んだ副官に、ディートリヒは一言だけ告げる。
「ローヴィ。」
「……差し出口を利きました。ご容赦を。」
ローヴィが下がると同時に、ディートリヒはポーンをひとつ前に進め、言葉を続ける。
「貴君の言はもっともだ。しかし、独善ではない。私は善を為したつもりなどないのだからな。」
「では、貴方の謀反はなんだったのか……。」
「知れている。戦うべき敵を示されたので、討ち果たした。すなわち、ただの――
――戦争だ。」
ディートリヒの声には、一切の熱がない。ただの事実を淡々と告げている響きだった。
(はじめはシュナイゼルに似たものを感じたが、違うな。この男の本質は、何だ?)
「だが、貴君の指摘はもっともだ。結果として、私の謀反は悪手となった。――イグノビリウムの出現でな。
グスタフ王は暗愚であった。だが時に、それを上回る愚かある。凡愚だ。」
王位を継いだのはグスタフ王の長子だった。謀反は成し遂げたが、ディートリヒは権力を望まなかったのだ。
新王は治世の才は凡龍だが、己を知り、民を思う気持ちがあり、虚栄心のない人物だった。
「――ゆえに、国を滅ぼす選択をした。」
イグノビリウムが蘇り、各地への侵略がはじまった時、ディートリヒは新王に進言をした。
守るに難い領土を捨て、戦力を集中させる。珍しいことではない。ディートリヒは必要なことを進言したまでだ。
――たとえそれが、国土の三割以上に及んだとしても。
だが新王はその進言を却下した。そして民を守るため、精鋭の第一艦隊を率いて自ら出撃。
忠誠厚いドルキマスの勇将達と共にイグノビリウムの第一波に果敢に立ち向かい――
――なすすべもなく全滅した。
「前王は暗愚であった。ゆえに生きていれば民を捨て、人類の滅亡まで要塞に引きこもっただろう。
だが新王は凡愚であった。ゆえに現実が見えず、理想を抱えて犬死にをした。」
現在、ドルキマスに王はいない。王族の直系血族が誰も残っていないためだ。
イグノビリウムを退けたとしても、待っているのは傍系王族による内紛と、復興した他国からの侵略だろう。
「暗愚でも王が生きていた方が、よほどマシであったろう。悪手というのは、そういうことだ。」
「あなたは後悔しているのかな?不確定要素に乱された、己の手を。」
「後悔?」
ひどく意外なことを言われたように、ディートリヒは眉をひそめた。
「なにを後悔する必要がある。先がわからぬからこそ、戦争は面白い。」
ディートリヒの指が、ルークをつかむ。そして、大きく前へと進める。守る城壁など、いらぬというように。
「チェック。」
story
(おかしな手を打つ)
ルルーシュはわずかな違和感を的確に感じとっていた。
(このチェック、詰みには遥か違い。そして躱せばわずかに俺の有利になる)
致命的なミスではない。だが、確実にルルーシュの勝利は近づく。
(勝ちへの罠か? あるいは……)
いくつか考えを巡らせ、ルルーシュは敢えて誘いに乗った。
それから七手は、順当に推移した。だが八手目――
(またか。またわずかに俺の優位になる手)
尋常の指し手ならば、長期戦ゆえの集中力を欠いたミスだと判断しただろう。
だがルルーシュは盤上だけではなく、チェスを通じて、相手の本質を見ている。
(このような失敗をするタイブではない。間違いなく故意だ。だが狙いはなんだ?俺に勝ちを譲ろうというのか?)
手を止め、盤面を見つめる。
(このまま勝つのはたやすい。だが、最後に確かめるとするか)
わずかな思考の後、ルルーシュの選んだ手は――
キングの前進。
「ほう。」
これにより、ルルーシュの優位は消滅し、盤面にふたたび拮抗した戦場が現出する。
「定められた勝利をいく王の道を拒み、自らの力で敵を屈服させることを選ぶか。」
「あなたは見誤っている。「勝利するという意味」を。」
「貴君に勝ちを献上したわけではない。知ってもらいたかったのだ。我々の現状をな。」
ディートリヒは、チェス盤をトンと軽く叩く。
「盤は狭いが、我々の今の戦場は広い。いささか広すぎるのだ。
いかに的確な指示を出したとしても、時に誤って届くほどには、な。」
イグノビリウムとの戦いは大陸全土に広がっている。だが圧倒的に足りないものがあった。
指揮官。それもひとつの戦場ではなく、大陸全体を見渡せる軍略家。
そんな傑物は、大陸中を探してもディートリヒ・ベルクしかいなかった。――これまでは。
「率直に言おう。私は黒い人型兵器が欲しくてここに来た。
だが今は、ゼロ。なによりも貴君が欲しい。
求めるものはなんだ? 情報か? 補給物資か? 兵隊か? 望むものを私が与えよう。だから……。」
「私に一軍を指揮しろと? たかだかチェスを指しただけの相手に?」
「まさか。そんなわけがあるまい。
預けるのは、全軍の半分だ。」
「か、閣下! このような素性の知れぬ相手に、さすがにそれは……。」
「裏切るとでも思うか? それならそれで結構。この者が相手ならば、楽しめるだろう。
――最高の戦争を。」
世界の命運を慰けた戦いの最中で、次の戦いを語る顔は、冷静そのものだった。
「……ひとつ問う。なぜ、謀反の話を私にした?」
故国への反逆。それはまさにルルーシュが成し遂げようとしていたことだ。
だがこの世界の人間に、それを語ったことはない。ディートリヒが知るはずはないのだ。
「貴君には必要な気がした。それだけだ。」
「……よかろう、ディートリヒ。あなたという人間のー端を理解できた気がする。そもそも我々の目的はイグノビリウム殲滅にある。」
「イ、イグノビリウムの殲滅だと!?」
「ああ。そう言ったんだ。つまり、あなたたちを勝たせてやる。」
「その見返りに、なにを求める?」
「……誠実さだ。
会わせてもらおうか、我々と同じ世界からきた人間に。保護してくれているんだろう?」
「貴君に隠し事は出来ないようだ。では、会っていただくとしよう。」
「盲目の少女にな。」
「なぜ、そんなことまで……。」
「簡単な推測だよ。あなたたちが我々に接触したこと。ディートリヒの話。いくつかの仮定をシミュレートすると推測できる。」
「ナナリー・ランペルージ。彼女は貴君の……。」
「ああ。俺の妹を保護してくれてありがとう、ディートリヒ。」
(ナナリー……お前までこの世界に……だが、無事でよかった)
――と、その時、副官ローヴィの無線機が、けたたましく鳴りだした。
「何事だ。報告せよ。……な、なんだと!?
閣下! 至急、ドルキマス王宮にお戻りを! 敵の大艦隊が向かっているそうです。」
「なに!? そこは……。」
「ナナリー嬢を預かっている場所だ。」
「すぐに案内してもらおうか!」
ルルーシュは艦の外へと駆け出し、ディートリヒも席を立つ。
「キミ、私たちも行くにゃ!」
成り行きを見守っていた君も、魔道艇に乗るために、外へと向かうことにした。
部屋を出る寸前、君は一度振り返り、チェス盤に目を向ける。
盤上にはルルーシュとディートリヒが知と知を争わせて創りあげた横様が広がっている。
なんだか、とても美しい――そう思いながら、君は戦いのために駆け出した。
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