創世日祭典・ストーリー・サブ花火大会
花火大会
5-1忠告
黄山毛峰茶が店の入口に立っていると、そこに見知った姿が目に入った。
重陽糕は目の前に払子が現れて、そこでやっと自分が黄山毛峰茶のやっている占い店の前に来たことに気がつく。
彼女に目には笑顔の黄山毛峰茶とその後ろにはためく旗が見えた。そこには「騙しなし」の文字――すべてが胡散臭い、と重陽糕は眉を顰めた。
黄山毛峰茶「おやおや、重陽糕ではありませんか!本日最初のお客さんですね!いやぁ、おめでとうございます!」
重陽糕「そうだと思ったぞ。」
黄山毛峰茶「コホン!おいしい飯には待つ価値があり、有名になるのに主張はいらない……そんな貧道の当たると大評判の占い!今回は友人のよしみで、特別に無料で占ってあげましょう、如何?」
重陽糕の返事を待たずに、黄山毛峰茶は占いテーブルに重陽糕を案内する。そして三枚のコインをテーブルの上へ投げる。
重陽糕「……これは、どういう意味?」
黄山毛峰茶「友に会え、福出ずべし、向吉。ふむ、吉だな!」
重陽糕「どういうこと?」
黄山毛峰茶「重陽糕、今日から自分を変えるとよい。制限を取り払って行動したら……きっといいことがあるぞ?」
重陽糕「制限を……? それは、吉凶を告げろってこと? 無理だ、わしはもう吉凶は告げないと自分に誓ったからな。」
黄山毛峰茶「まぁ、どうするかは君次第だ。貧道は占いの結果をただ伝えたのみだ。」
重陽糕「素敵な占いをどうもありがとう。そのお礼に、特別にわしは制限を取り払って、お返しをしてあげよう。」
黄山毛峰茶「お返し?」
重陽糕「今日は発する言葉に気を付けると良いぞ?」
黄山毛峰茶「フッ……喋ることは貧道の仕事である。その忠言は聞けぬな。その吉凶、信じぬ、信じぬ!」
5-2レシピ
モクセイケーキは、占い屋の前に備え付けられた椅子に腰掛けて、ひとり本を読んでいる。スイーツ街に行くために、重陽糕と待ち合わせをしていたからだ。
モクセイケーキ「重陽糕、遅いわね、本が読み終わってしまうわ。」
本にはたこ焼きや麻婆豆腐のレシピが載っていて、とても美味しそうだった。そのとき店の前の扉が開き、黄山毛峰茶が出てくる。
黄山毛峰茶「『The Secret of the Lip~ティアラ大陸☆最強☆料理大全~』? ふむ……おぬし、何を作るつもりだ?」
その声に、ビクンと背を伸ばし、モクセイケーキは勢いよく顔をあげる。
モクセイケーキ「あ、貴方には関係ないでしょ!! あっち行ってよ!」
黄山毛峰茶「貧道に好き嫌いはないのでな。何を作ってもらっても美味しくいただくぞ?」
モクセイケーキ「だ、誰が貴方に作ると!? うぬぼれないで! ああ、もう! 重陽糕ったら遅いんだから! 探しに行きましょう……貴方の相手をしているより、よほど建設的ですからね!!」
モクセイケーキは真っ赤な顔をして、早足でその場を去った。黄山毛峰茶は、そんなモクセイケーキに肩を竦めるも、柔らかな笑みを浮かべて店の中へと戻っていった。
5-3思うままに
ミルフィーユ「ん――ここは何だ?」
黄山毛峰茶「やあやあ、お兄さんは随分と度量が大きいようだ! だが、眉根に憂鬱が漂っている。さては、何か悩みでもあるのでは?」
ミルフィーユ「おお! 何故知っている? いや言わなくていい……もしかして、君はさっきの人が言っていた、騙された女の子に追い払われた道士じゃないか?」
黄山毛峰茶「こほんこほん! 天道無常、それは不幸な事故でしょう。なんといっても貧道の占いはいつも当たると大評判! この旗に書かれている通り、『騙しなし』だ!」
ミルフィーユ「よくわからんが、悪い評判については聞かなかったことにしてやろう。で? 私が何を悩んでるって? 言ってみたまえ。」
黄山毛峰茶は両目を閉じて、片手で指を折って数えて、口を開いた。
黄山毛峰茶「お兄さんは『パステル・デ・ナタのところ以外、うまいデザートがないな?』と思っている。」
ミルフィーユ「ん??? 何で知っている!!! やっぱり偽物じゃなくて本物だったのか!?」
黄山毛峰茶「疑うのなら、もう一回占ってあげましょうか?」
黄山毛峰茶(まぁ先ほどの言葉は、本人が呟いている聞いただけなのだがね)
ミルフィーユ「おお、頼む! 先生、お願いだ。どうしたらいいんだ?」
黄山毛峰茶「……ふむ、迷う時は心に従うべきだ。北へ向かおう。あそこに災いが降りかかるかもしれん。だがだぶん君が間に合って、その災いを解消できるかもしれない。」
ミルフィーユ「北? 私はそこから来たんだぞ? デザート街に戻れってことか?」
黄山毛峰茶「心に従うことだ。行きなさい。行けばわかるからな。」
自信満々に告げた男に、どこか疑惑を抱きつつも、ミルフィーユは半信半疑で引き返した。
5-4解けない運命
ポップコーン「君さ、さっきのフリーフォールで目をつぶってたよね!」
サンドイッチ「つぶってない! 変な言いがかりはつけないでくれ!」
ポップコーン「二回つぶってたぞ!はっきり見たんだからな!」
サンドイッチ「だったら何だよ!?」
ポップコーン「ぼくの価値だ。今度御侍と一緒に映画を見に行くのが僕だぞ!」
サンドイッチ「勝手なこと言うな!御侍さまはおまえなんか相手にしない!」
黄山毛峰茶「こらこら、店の前で喧嘩するんじゃない……!なんの矛盾もない……一卦では解決できないぞ。そうなると二卦だな。」
サンドイッチ「こいつのせいで、忘れるところだった。道士さん、聞きたいことがある。」
ポップコーン「あ、僕もあるぞ。道士さん、こいつのことをほっといて、まず僕のことを占ってくれっ!」
サンドイッチ「お前なぁ……!」
ファイティングポーズをとったふたりに、店の安全を考えて、黄山毛峰茶は払子を振って、二人を止めた。
黄山毛峰茶「よしでは、同時に占ってやろう!占ってほしいことを言うのだ。」
ポップコーン「レストランのスタッフになって、三日間でずっとアルバイトして休めないって夢を見た。」
サンドイッチ「レストランのスタッフになって、三日間でずっとアルバイトして休めないって夢を見た。」
ポップコーン「なんで俺の真似をする!」
サンドイッチ「なんで俺の真似をする!」
黄山毛峰茶は頬杖をついてじっと考え込んだ。ポップコーンとサンドイッチは期待満々に彼を見ている。
黄山毛峰茶「解決策はないな。これは今後も起こるだろう。諦めて受け入れるといい。」
ポップコーン「えっ???やだよ~!!」
5-5果てない道
バター茶は優雅に占いブースに入ってきた。そして、手に握っているマニ車を動かす。それは、とても爽やかな音がした。
黄山毛峰茶「この大師は風格が違うな。ふむ、今日は占いをしに来たのか?」
バター茶「ええ。愚僧は初めてこのお祭りに参加します。そこで、滅多に会えない道士さんの占いを体験しに参りました。」
黄山毛峰茶「そんな、うちはその辺にいる一介の占い師ですよ。」
バター茶「でしたら、愚僧も決して大師などではありません。一人の僧侶にすぎませんよ。」
このやり取りに、たまらず黄山毛峰茶は眉をひそめた。
黄山毛峰茶「えぇと……君は、人を探しているのでは?」
バター茶はその言葉を聞いて、一瞬呆けるも、すぐにうつむいてしまう。彼の目に宿る寂しさに黄山毛峰茶の心が動かされた。
バター茶「よくわかりましたね。その通りです。けれど、全く手がかりがありません。」
黄山毛峰茶「それでも君は探し続けるのか?」
バター茶「成り行きに任せようと思っています。もちろん見つかったら良いでですけど、見つからなくてもそれが運命でしょう。」
黄山毛峰茶「それは果てしない道だ。」
バター茶「終わりのある道など、どこにもないですよ。後悔はしませんよ。」
5-6迷子の少女
飾り提灯が風で揺れている。人々の歓声が高まった。祝典のお祭りはこの夏に騒ぎと喜びをもたらした。人並みの中、ライスは踊りのステップを思い出しながら、お祭りの高楼へ歩いている。
甘酒団子「あうう〜!」
ライス「えっ! 泣かないで〜!」
甘酒団子は唇をかんで、鼻をヒクヒクさせる。そしてライスを見て涙を溢れさせる。
甘酒団子「あうう〜!」
ライス「大丈夫! 甘酒団子、泣かないで! わたしが一緒にいるよ!」
甘酒団子「……うん。」
甘酒団子を抱き上げて、ライスは慰めながら、彼女の背中を撫でている。だんだん二人は川沿いに着いた。
紹興酒「どけ! あ……わりぃ! ちょっと通るぞ。」
ライス「わ! ふたりとも焦らず、ゆっくりしていってね!」
甘酒団子「あうう……ご、ごめんなさい――」
紹興酒「いや、無事でよかった……安心したぜ。これでゆっくり花火が見られるな!」
5-7川の幽霊
さんまの塩焼きとすき焼きは花火大会の会場へ向かって、川沿いで散歩をしていた。
ここは人がまばらで、わずかな足音と声しか聞こえない。
この時、妙な笑い声が響いてきた。何事かとすき焼きは首をかしげる。
さんまの塩焼き「いいえ。」
すき焼き「……ここは怪しいな。早く離れた方がいいね。」
さんまの塩焼き「そうだな。」
ふたりは、逃げるように足を速めてその場から去っていった。
それからすぐに、笑い声の主が姿をあらわした。それはふぐの白子だった。
ふぐの白子「ふふ……うふふ……。」
キャビア「白子……この服、そんなにおかしい……?」
ふぐの白子「……うん……すごくおかしい。あはは……! あーもう駄目! ごめんねぇ……!」
キャビア「……そんなにおかしいんだ?」
キャビア「そうか、服の選択を間違ったかな?」
ふぐの白子「いや、おかしいけどさ、よく似合ってるよ。うん、私……かなり好きだ。今回の祭典ではずっとその格好でいてね、ふふふ……!!」
5-8コーヒーと花火
街の喧騒をバックに、チョコレートは祝典でコーヒーが営む店へとやってきた。
流れるようにカウンターに座ったチョコレートに、コーヒーは一瞬驚いた顔をするも、すぐに注文の用意を進めた。
コーヒー「お待たせしました。」
チョコレート「ありがとう。」
コーヒー「そろそろ花火があがる時間だが、こんなところにいていいのか?」
コーヒー「サタンカフェのお茶はいつでも飲めるが、今日あがるような花火はそうそう見れないですよ。」
コーヒー「今日の花火大会はさぞかし素晴らしいでしょうね。」
コーヒー「グルイラオの花火は、少々物足りないですから。」
チョコレート「ああ、俺もそう思うよ。」
チョコレートは一口、コーヒーを飲む。そして、しみじみと溜息をついてコーヒーを見た。
コーヒー「だったら、早く行くといい。今からなら間に合うだろう。君と花火を見たい女性はたくさんいるらろうしね。」
チョコレート「フッ――」
チョコレート「君の言う通り、ここの花火は特別だ。それは間違いない。」
チョコレート「だが、それだけじゃ物足りない。せっかくならもっと贅沢をしたくなった。」
チョコレート「ここでお前の入れたコーヒーをを飲みながらでも花火は見られるだろう?」
チョコレート「それこそ、最高の贅沢だと思ってね。どうかな? 友よ。」
5-9母をたずねて三千里?!
もう少しで花火が始まる。皆、河原のほとりで花火が打ちあがるのを待っていた。
広場を見渡せる貸し切りの個室で、佛跳墻は葉巻の香りを楽しんでいた。
部下「そろそろ時間ですよ、佛跳墻さん。」
佛跳牆「あと五分待て。」
部下「でも、開始時間に遅れてしまいます。この花火大会は、景安商会にとって重要な仕事でしたよね?」
佛跳牆「五分程度遅れたところで、大した問題にはならん。また海神祭りみたいな邪魔が入るのだけは勘弁願いたいからな。」
部下「ハッ! 承知いたしました。」
麻婆豆腐「……佛跳牆! 待たせたわね! とりあえず、広場に怪しい奴はいないみたいよ。」
部屋に入ってきた麻婆豆腐がそう告げたのを聞き、佛跳墻は部下に指示を出すために立ち上がる。そのとき、麻婆豆腐の背後に見知らぬ少女が顔を覗かせているのに気が付いた。
佛跳牆「……ん? 誰だ、その子は。」
佛跳牆に声を掛けられ、少女はパッと表情を華やがせた。
涼蝦(リャン・シャ)「お母さん……っ! ここにいたんだねっ!」
突然の言葉に、佛跳墻は思わず咳込んでしまう――誰が『お母さん』だって?
麻婆豆腐「えっと……彼女は涼蝦(リャン・シャ)っていうの。お母さんを探してて迷子になっちゃったらしくて連れてきたんだけど……。」
そんな説明をしている麻婆豆腐を余所に、部下が勢いよく立ち上がる。佛跳墻が咳込んだのを、花火大会開始の合図と受け取ったようだ。叫びながら外へと飛び出していく。
部下「おーい! 花火の打ち上げを開始するぞー!」
それから数分後、花火が空に打ちあがった。先ほどの咳払いは開始の合図ではなかったが結果オーライである。佛跳墻は溜息をついて、笑いながら花火を見ている麻婆豆腐たちと共に見上げた――
5-10HappyEnding!!
花火大会の隣りにある高楼に、ふたつの影があった。
暴飲王子「うー! 本格的なおでんをごちそうするつもりだったのに! ああ惜しい惜しい! あれは君の故郷の味だったのに!」
蛇君「もう光耀大陸に来たし、味覚の懐かしさにこだわる必要がないよ。こっちのお料理も新鮮だしね。」
暴飲王子「まあ、そう考えても悪くない。っていうかさ、本当に怒っていない? 大好きなお面をなくしたんだよ!」
蛇君「怒って役に立つなら、お面はとっくにみつかってるでしょうね。」
暴飲王子「わっ??? やっぱり怒ってるじゃん!!!」
暴飲王子は悩み悶えて髪をかき乱した。
暴飲王子「くそ、桜の島に帰る前に、絶対それよりいいお面を見つけてあげるからな!」
暴飲王子は胸を叩いて、天に誓った。この時、誰も気づかなかったが一縷の白雲が空から彼の袖に入った。
パカッと音がして、美しいお面がひとつ落ちた。それは光輝いている。
暴飲王子「え??? お面???? これは君が貸してくれたやつだ!」
蛇君「……一日中探してたんだっけ? 実は酔っ払って袖に入れてたの忘れただけでは?」
暴飲王子「まさか! そんなわたしはバカじゃないぞ!」
蛇君「いやいや、どっからどう見ても、君はただのバカだ。」
暴飲王子「ちょっとー!? 知ってるか、蛇君! バカっていうほうがバカなんだぞ! だから蛇君もバカだ! 私とお揃いだな、フン!!」
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