聖なる夜のお話・ストーリー・夢中の奇遇11~20
11.白チェス王国Ⅲ
ブラッドソーセージ:ユニコーンの角の粉1スプーンと、人魚の鱗1枚、ガマガエルが月光の下で流した涙と、毒蛇の涙を1粒……
ウイスキー:この世界の材料は奇妙なものですね。
ブラッドソーセージ:赤い月夜の午後、作り出した魔法の薬に最後の一味の材料を入れて……
ウイスキー:本当に効くんですか?
ブラッドソーセージ:試してみて損はないでしょ?ヴィクターさんたら鏡の中にいる時間が長すぎたのかな~?おしゃべりが過ぎますよ。
ウイスキー:申し訳ない。ただ、魔女の呪いにはまだ抵抗できないので。もし君がこの鏡を壊せる糸針を持ってきてくれたら……
ブラッドソーセージ:淑女を怒らせた罰は、自分で味わわないと。騙そうとしてもダメですよ。
ウイスキー:私は陛下にあの邪魔な「夫」を殺せる呪いを持ってきたんですよ。君もそれなりの代価を払うべきでは?
ブラッドソーセージ:糸針なら、赤頭巾先生に任せましたよ。多分もうこちらに向かっているんじゃないかな。でも、最近一匹の野獣が人間王国の王子と一緒に黒魔法を放つ魔法使いを探しているみたい。
ウイスキー:……
ブラッドソーセージ:この世界では、最も有名な詐欺師ですら自分の天敵に敵わないようですね~あぁ、ヴィクターさん、あなたが心配だ。三月お茶会の魔女たちだけでなく、光の陣営の「主役」たちですら、悪者を倒そうとしているみたいだし……チッチッチッ……可哀想に……
ウイスキー:陛下の表情は、とても私の心配をしているようには見えませんけど。
ブラッドソーセージ:あら、気づいちゃった?でも、あなたはそこから出てこれないし、わたしをどうもで~き~な~い~
12.空中楼閣Ⅰ
マッシュポテト:ゴールデンアップルの苗木、七色花の種、魔法の豆の蔓……ふむ……
ミネストローネ:いってぇ……
マッシュポテト:あ!フランケン!あれ……それは……
ミネストローネ:ッ――前に願いが叶う魔法のバラが欲しいって……いってぇ……ハートの王国のやつら、おかしいぜ。白いバラを赤く塗るなんざ!――
マッシュポテト:早く座ってください、手当てをします。
ミネストローネ:大丈夫だ、それにオレの体からは血は流れない。
マッシュポテト:……
ミネストローネ:痛い!染みる!染みる!!!わかったよ、次はもう怪我しねぇ!
マッシュポテト:フン。
カプチーノ:ええい、怪人野郎ー!早くダニエル姫を出しなさい!
ミネストローネ:またか!!!!
マッシュポテト:……ああ、またあの子ですか。ちょっと行ってきます。
ミネストローネ:待て。オレが行く。
ミネストローネ:クソガキィ――!誰が怪人だーー!早く自分の王国に戻れ!!
カプチーノ:イヤだ!!!あなたを倒して姫を助けてみせるんだ!!!
ミネストローネ:フン、姫を助けるどころか、ここにも上がってこれないくせに――!!
カプチーノ:うわぁああぁっ――雨だ!ああああ!どうしたらいいんだ!!!
ミネストローネ:ははははは!クソガキ、そこでずぶ濡れになってろ!!
マッシュポテト:気をつけて、もし落ちたら聖なるローブで身を守ってくださいね――!
ミネストローネ:ちょっと!何をやってんだダニエル!なんで髪の毛を降ろしてるんだ!
マッシュポテト:フランケン、彼はただの子どもです。雨に濡れたら病気になりますよ。ジャック、気をつけるんですよ。
カプチーノ:はい!ありがとうございますダニエル姫!ふふふ、この怪人!見ろ、姫がぼくを助けてくれてる!あっ――!!!
マッシュポテト:あっ!ジャック!フランケン?!!
ミネストローネ:大丈夫だって、あのガキ死なないから。早く家に帰れ! クソガキ――!!!
カプチーノ:イヤだ――――――!!
13.幻の中の真実Ⅱ
トナカイのスピードは異常に速く、そりに乗ったアールグレイは先ほどの混乱を経て疲れた様子で頭を俯かせていた。マドレーヌは彼の前で手をヒラヒラさせる。
マドレーヌ:ハッタ―さん?ハッタ―?……もう、寝てしまったの?
シュトレン:ハッタ―さんの目、ずっと痛かったみたいです。だから笑顔でいるのは大変だったと思います……
マドレーヌ:おや――全然そうは見えませんわ。
シュトレン:とびっきりの笑顔でなくては淑女に失礼だって。きっと辛かったでしょう。
マドレーヌ:そう……えっと、白雪かしら?彼のこといろいろ知ってるみたいですけど、知り合ってどれぐらい経つのかしら?いつお知り合いになって?
シュトレン:はい!もう長い付き合いです……いつ会ったかは……あれ?えっと、私とハッターさんは……いつ知り合ったんでしょうか……?
マドレーヌ:え、覚えてらっしゃらない?じゃあどうして白雪って呼ばれてるのかしら?あなたの名前、「白雪姫」と一緒じゃない!姉妹なの?
シュトレン:えっと……
マドレーヌ:ああ、ごめんなさいね、こういう情報には本能的に興奮してしまうの。お気になさらないで。
シュトレン:いいえ……ただ……実は……私もよく覚えていないんです……なんだか、大事なことを忘れてしまったような気がしていて……
14.幻の中の真実Ⅲ
馬車は城門に向かって走る。チェス兵はアールグレイの身分を簡単にチェックした後、彼の馬車を町へと迎え入れた。
マドレーヌ:あなたが白チェス王国の伯爵だなんて。貴族なら、なぜずっと三月お茶会にいらっしゃるのかしら?アフタヌーンティーのためではなさそうね?
アールグレイ:虚名に過ぎません。私にとって、魔女さんたちに人気がある方が大事ですから。
マドレーヌ:お世辞はもうよくってよ……あら。あれ、何してるのかしら?
騒々しい人だかりが前方の道を塞いだ。アールグレイは馬車から降りて、手を伸ばして同じく興味を持ったマドレーヌとシュトレンを馬車から下ろした。
目の前のチェス兵は長い鎖に繋がれ、元気がなさそうに頭を俯かせて歩いていた。
アールグレイ:あの、すみません。これは……一体何が……
隣人:あぁ、白チェス王国に来たばかりなんだろう。このチェス兵たちは皇后陛下と姫様を怒らせたから、死刑にされるんだ。
シュトレン:……彼らは何をしたんですか?
隣人:一番前のは、歩く時の足音が煩くて皇后をご立腹させ、後ろのは、姫様のダーツ遊びで矢を避けてしまい姫様のリンゴを落としてしまったんだ……
マドレーヌ:ふふふ、この皇后、私たち魔女より自分勝手じゃなくって……面白いですわ……
シュトレン:……そんな……
マドレーヌ:ん?
シュトレン:……ここは……そんな場所じゃないはずなのに……
マドレーヌ:白雪?白雪!
シュトレン:うっ!ハッタ―さん。
シュトレン:……でも……彼らはこんな……おかしな理由で死ぬべきじゃ……
アールグレイ:では早く、貴方の名前を思い出してください。
15.三月お茶会Ⅰ
七色のバラでできた巨大なアーチの門はバラ園の迷宮の中にあった。左から右へこの門に入ると、紅茶の香りとスイーツの甘さが充満した世界がひろがる。
これは魔女の力が作り出した世界。
お菓子の家の魔女が提供した原材料は、アーティストの魔女の手によって、少しずつ精巧な家具や可愛らしい装飾になっていった。
胡蝶夫人の金色の蝶々は迷宮の周囲に魔法をもたない者が入れない障壁を設置した。青蒼の魔女はこの世界の時間を永遠に日の光が眩しい三月に留めた。
魔女たちの魔力は世界を包みこみ、この世界を守っている。この場所は彼女たちにとって、単なる気まぐれで作り出した作品でしかない。
強大な力を持つ魔女たちは、たまにこの邪魔が入らない世界でお茶会を行う。だんだんと、お茶会も有名になっていった。
この神秘的で人々の憧れであるお茶会は、お茶会を詳しく知らない人々から――
三月お茶会と呼ばれるようになった。
16.三月お茶会Ⅱ
どこかの国の俗語にこうある。綺麗な女が多い場所には必ず素晴らしい演劇が生まれる、と。
この点に関しては、綺麗な魔女たちですら同じだ。
マドレーヌ:ジャジャーン!これ、新しく手に入れたドレスのデザイン、どうかしら?
キルシュトルテ:どれどれ、これはこの前の物と同じじゃないか?
マドレーヌ:ここのリボン、結び方が変わってるでしょう?フローラったら名前通り愚鈍ですわね!
キルシュトルテ:胸が大きいからってぶたれないと思ってるのか、グレーテル!
マドレーヌ:フン、男女!ねえ、そうでしょう姫~
スターゲイジーパイ:グレーテル姉さん、そのドレスとっても素敵!気に入った~わたしにくださりません?
マドレーヌ:ダ~メ~で~す~!
スターゲイジーパイ:えーっ――――でも本当に気に入ったのに……
ブラッドソーセージ:ふふ、好きなら奪えばいいと思うよ。
マドレーヌ:皇后陛下、そんな風に教育していたら将来ひどい目にあいますわよ!!絶対です!あ、マッドハッター、マッド公爵、ごきげんよう。
ラムチョップ:……
マドレーヌ:なんで目を合わせた途端行っちゃうのよ!
ラムチョップ:今日は騒がしそうだ。
マドレーヌ:誰が煩いって?!!
アールグレイ:……まぁまぁ、怒ると皺が増えますよ。
ラムチョップ:皺ならとっくに生えまくっているぞ。昨日今日の話じゃない。毎日毎日魔法の薬を三瓶も塗りたくってるじゃないか。
マドレーヌ:皺?!!!誰のことを言っているのかしら!
ラムチョップ:もう数百歳のくせに、王子の前で若作りなど恥ずかしくないのか?
マドレーヌ:あああああ!!!マッドハッター!!!止めないで!!目のものをみせてあげますわ!!
アールグレイ:胡蝶夫人、今日も良いお天気ですね。
フルーツタルト:うむ、共にアフタヌーンティーでも楽しもうか。
17.現実の中の幻Ⅲ
夜中。
悪夢から目が覚めたシャンパンは広いベッドに座り込んだ。シーツには冷や汗のつくった丸い水玉模様ができている。
シャンパン:はぁ……はぁっ……
先ほどの悪夢のせいで彼はすっかり目覚めてしまった。体を起こしてコートを羽織り書斎へと向かう。
額の髪の毛が彼の視線を遮った。デスクに置いてあった誰かさんが残したであろうゴムで髪の毛を括る。
シャンパンのデスクには書類が山積みにされている。神子が来てからというもの、たまに息抜きする時間もできたが、もう過去の自由はなくなった。
頻繁に夢で見る、世界の終わりのような光景が彼の脳裏に刻まれる。壊れたクラウン、敗れた翼、散らかったクリスマスの装飾、そしてマグマの温度で地面に溶け流れた蝋燭……
コンコン――
シャンパン:……こんな遅くに……どうぞ!
フォンダントケーキ:あら、本当にいた。
シャンパン:……
フォンダントケーキ:夜分遅くにどうされたんですか?
シャンパン:そっちこそどうした。
フォンダントケーキ:さっき悪い夢を見たんです、ミルクでも飲んで落ち着こうかと。
シャンパン:悪い夢?
フォンダントケーキ:ええ……世界はまるで地獄絵図でした……炎が充満してて……みんな大変なことになったみたいで、長い間探しても……ずっと探しても……誰も見つからないんです……
シャンパン:……
フォンダントケーキ:夢って全て反対であると言われていますよね?
シャンパン:……あぁ。
フォンダントケーキ:貴方がそう言うんだから、きっと逆ですね。
シャンパン:……
フォンダントケーキ:あれ、どうしたんですか?何か言ってください。
シャンパン:……バカ、俺がいるんだ。そんなこと起きるはずないだろう?考えすぎだ。目の前にいるのは、負けを知らないシャンパン陛下だぞ。
フォンダントケーキ:ちょっと――それ私のミルクです!!
シャンパン:ここは俺の宮殿だ。宮殿にあるミルクも、グラスも、お前が寝ている寝室もベッドも!全て俺のものだ!
フォンダントケーキ:シャンパン――!!逃げないで!待ってください!!!
18.現実の中の幻Ⅳ
創世日
中央法王庁
イースターエッグ:キャンディケイン?キャンディケイン、ご飯の時間ですよ――
イースターエッグは両腕一杯のプレゼントを抱えながらヨロヨロと中央法王庁の廊下を歩いていた。突然、空からヒラヒラと雪の花が降ってきた。その時、彼は花壇の近くで空をぼーっと眺めているキャンディケインを見つけた。
キャンディケイン:あ……雪……
キャンディケイン:……なんでもないです、ただ残念だなと……
イースターエッグ:残念?
キャンディケイン:フィッシュアンドチップスとテキーラ、きっと雪が好きなのに……今年の初雪を……見れないなんて……
イースターエッグ:大丈夫、きっと見てますよ。どんなに遠くても、同じ大陸と、空の下にいるんです。それに、彼らが戻ってきた時、一緒に二回目三回目の雪が見れます。そうしたらみんなと一緒に雪だるまを作れますよ!
キャンディケイン:……うん!みんなと雪合戦もしたいです!あっ、イースターエッグ、手にあるそれはなんですか?
イースターエッグ:これは、法王庁近くの住民たちからのプレゼントです!
キャンディケイン:プレゼント?
イースターエッグ:はい!普段の保護と協力への感謝のですって! わざわざ遠いところから来た人たちもいるんですよ!
キャンディケイン:みんなすごいです……わたしなんか……法王庁でみんなの帰りを待ってるだけ……
イースターエッグは突然キャンディケインの頬を両手で包んだ。少女は驚いた、彼の厳しい表情はそうそう見れないものだからだ。
キャンディケイン:うっ?!
イースターエッグ:そんな顔、しないで!
キャンディケイン:……うぅ……でも……
イースターエッグ:ぼくたちはみんなみたいに凄くはないですが、みんながこの家に戻ってくる時、安心できるようにがんばればいいんです。フィッシュアンドチップスたちも言ってましたよね、一番好きなのはキャンディケインの笑顔だって!
キャンディケイン:……うん!
イースターエッグ:だから、泣かないでください。キャンディケインは笑うととびきりかわいいんですから!
キャンディケイン:そ、そう言われると……恥ずかしいです……
イースターエッグ:あ、でも……でも……キャンディケインの笑顔は本当にかわいいです……疲れた時はぼくが相談に乗ります。ずっとここで一緒に、みんなの帰りを待ちましょう……
キャンディケイン:うん!
19.幻の中の真実IIV
シュトレン:ほら!あそこが白チェス王国の王城です!城壁は魔法がかかった蔓に包まれているんです!ああすれば私たちの国は危険に陥る事はありません!
シュトレン:王城のみんなは……良い人たちばかり……
アールグレイ:白雪、そんなに王城のみんなが好きなのに、なぜ王城から離れて森に入ったのですか?
シュトレン:え、えっと……それは……覚えてないんです……でも私、森も好きです。森の動物たち、小鳥さんも白いウサギさんもカッコーさんも毛虫さんも、みんなとても良くしてくれるし。
アールグレイ:……
シュトレン:それに、森の中で自由自在に生きる方が、王冠に縛られた「白雪姫」より、きっともっと幸せですよね?
アールグレイ:……果たしてそうでしょうか……
マドレーヌ:白雪は今のままでいいんじゃないかしら。やりたいことをやって、生きたい人生を生きればいいわ。
アールグレイ:ええ、私の思い込みかもしれませんね……
シュトレン:ん?
アールグレイ:なんでもありません。今の方がもっと楽しいというのなら、そのままでいいと思います。
20.幻の中の真実Ⅴ
ビーフステーキ:確かに!ローストターキーー!!!ここだ!!!
ローストターキー:ん?誰だ?
エッグノッグ:……彼らは貴方のことをハートの国王ではなく、ローストターキーと呼んでいます。
ローストターキー:ということは?
エッグノッグ:仲間かもしれません!
ローストターキーとエッグノッグは声がした方向へと走った。だが二人は透明なシールドに行先を遮られてしまった。ジンジャーブレッドたちは二人の前に駆けつけた。ステーキは焦りすぎてシールドに体当たりしてしまった。
ビーフステーキ:っ――いてて……
ローストターキー:こ、これはどういうことだ!
赤ワイン:物語が結末を終えていないため、物語の背景である場所から離れられないということだ。ジンジャーブレッドのための舞踏会が終わるまで、国境から離れられないことがあっただろう。
エッグノッグ:……その仕草からすると、貴方たちはもう?
ジンジャーブレッド:ええ、赤ワインがあたしたちを目覚めさせてくれたんだ。もう自分たちの物語を終えてるから、自由の身だ。でもみんなの夢を終わらせることはできないから、チビ陛下の力が必要なんだ。
ローストターキー:余になにができる?
ビーフステーキ:あんたは三大魔法王国の国王の一人だから、命令はこの世界に認められるはず。
ローストターキー:でも……本当にそんな簡単にいくのか?
ジンジャーブレッド:チーズから聞いたんだけど、この世界で最も強力な力は願いなんだ。願えば、全ての結末を変えれる。意味はあんまわからないけど、やってみる価値はある。
エッグノッグ:確かにそうかもしれませんが、僕たちは今この土地から離れることすら不可能です。
赤ワイン:安心しろ、もうすぐ来る。
ローストターキー:なにがだ?
ビーフステーキ:白チェス皇后からの舞踏会の招待状だ。白チェス国王には三本の全ての願いを叶えるマッチがあるらしい。
ジンジャーブレッド:そう、もし噂通りなら、慈悲深い白チェス国王なら、あたしたちに協力してくれるかもしれないってわけ。
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