【白猫】アイシャ(王冠)・思い出
アイシャ・アージェント CV:井上麻里奈 緋のドレスをまとう謎の女。 安らぎを捨て、至るは論理的帰結。 |
メインストーリー
思い出1
<キングス・クラウン>の戴冠式が終わり、
しばしの時が流れたころ。
新たな力を手に入れたアイシャが、飛行島へとやってきた。
やあみんな、お邪魔するよ。
みなさん、お元気ですか?
アイシャ!それにオスクロル!
きゃりあうーまんだわ!?
またキャトラが、覚えたばかりの言葉を……!
不思議な取り合わせかな?
まあね……!
縁があったのさ。縁は大事にしないとね。
ところで、試練はどうだったの?
なかなか愉快だったよ。
どうだったのオスクロル。
アイシャさん。お話してもよろしいでしょうか?
……話すのか。
どーして目をそらすの。
……まあいい。聞かせてやるとも。
***
「――アイシャさん。お忙しいところ、恐れ入ります。」
「問題が発生したのだろう?だったら、望むところさ。」
「……要件は、お手紙でお伝えをした通りです。」
「精霊の力を宿した王冠が、私を次の所有者に選んだ。そういうことだね。」
「はい……それなんですが。」
「王冠は、力を授けるかわりに、試練を与えるのだろう?」
「はい。私の受けた試練は……とても辛いものでした。」
「聞かせてくれないだろうか。試練の内容について。」
***
冒険家ギルトの仕事で、ある村を訪れたオスクロル……
王冠は、彼女の前に現れる。
王冠はオスクロルに力を与えるというが、オスクロルはその誘いを断る。
だが王冠は、かまうことなくオスクロルに試練を与えた。
「君が拒絶の意志を表したにも関わらず、試練は始まったと――」
「そうなんです……」
王冠はオスクロルの姿を、怪物そのものに変えた。
オスクロルは救いたいと思っていた村人から恐怖され、嫌悪される。
それでも彼女は――救うことを選んだ。
「君はずいぶんと頑固な人のようだ。」
「……そうでしょうか。でも、諦めたくなかったんです。」
「私を選んだのは君か?」
「いえ、違います……選んたのは、この王冠です。」
「なるほどね。どちらにせよ、私に拒否権はなさそうだ。」
「そうなってしまいますね……無責任だと思われるかもしれませんが……がんばってください……!」
オスクロルは、アイシャに王冠を手渡した……
「難問こそ我が望み、試練の克服こそ、我が喜びだよ――
とはいえ……これは久しぶりに骨が折れそうだね……
私が失うのは――おそらく――」
王冠を手にしたアイシャは、その場に倒れ込んだ!
「アイシャさん!?」
「……んー?」
「えっ?」
「……ねえたん、だーれ?」
思い出2
「きゃははー!」
アイシャは、浜辺で遊んでいる……
「……アイシャさんが……」
「あ、カニさんだ……待ってー。」
「……子供に……戻って……!」
「ねえたん。どうしたのー?」
「こんなことになるなんて……」
「ねーねー、いっしょにあそぼー?」
***
「ほしたぬきさんのー。ぬいぐるみー。」
「今日はこちらに泊まりましょう。でも、これからどうしましょう?」
「ねえたん。あのね……あれ、ほしいー。」
「……ジェリービーンズですね。ちょっと待ってください……」
「ありがとー。ねー。ぽいってしてー。」
「えっ?ええと……投げればいいんですか?」
「うん。」
「それじゃあ……えいっ!」
「あむー。」
アイシャは、ジェリービーンズをキャッチした……
「ふふふ……ごきげんですね。」
「むー、むー。」
アイシャは、己の腕をじっと見つめている……
「んー……」
「アイシャ……さん?」
「んん……?」
「アイシャさんが……考えてる……」
「――あたち、あいしゃ。ほしたぬきさんの、ぬいぐるみがすき。
じゃなくて……
えーと、んー……あいしゃは……ええっと……
んー、わかんない……」
「どうしたんですか?もしかしたら、記憶が……」
「だー!」
アイシャは、ぬいぐるみにとびついた!
「……焦ったら駄目ですね……」
***
「お休みなさい。アイシャさん。」
「お休み、ねえたん……」
アイシャは、寝床についた。
「ねえたん、やさしい……ふヘヘ……
明日も……いっぱいあそぼう。」
眠りながら、アイシャは……
「……ちがう。
あたちは……このままじゃ……だめなの……」
安らぎの泥の中を、もがき続ける――
思い出3
「うおー!きのぼりするー!」
「……あ、アイシャさん!危ないですよ!」
「たかーい!」
「アイシャさん!危ないです!」
「むー。」
「そこでじっとしていてください!ただいま、助けにいきますので!」
「えーい!」
アイシャは……木から飛び降りた!?
「たいへん!」
オスクロルは、アイシャを受け止めた……
「きゃはははは!」
「もう……あぶないですよ!アイシャさん!」
「あいー……」
「なんだか……私も試練を受けているみたいです……」
「ねえたん!たかいたかーい!」
「はーい、たかーい、たかーい……」
「きゃはははは!」
***
「いたずらっこですね、アイシャさんは……」
「ふヘヘー。」
「昔はこんなに……無邪気なお子さんだったんですね……」
「どうしたの、ねえたん?」
「なんでもありません。……そうだ、絵本を読んでさしあげますね!」
「えほんー!よんでー!」
「少々お待ちください……」
アイシャは、室内を見渡している……
「んー……?」
アイシャは、食卓の上のパンを見つめている……
「ふへへ……」
アイシャはパンを手に取ると、何気なくパンをちぎって二つにした。
「あー……?」
アイシャは、二つになったパンを、じっと、見つめる……
「んん……」
アイシャは、パンをちぎり……パンのかけらを、テーブルに並べていく……
「ありました!絵本です!あれ、アイシャさん……?」
「んー、んー。」
「アイシャさん……何をなさってるんですか……?」
「んん……!」
思い出4
翌日――
森に出かけたアイシャは、たくさんの小石を部屋に持ち帰った……
「アイシャさん、それは……?」
「……んー……」
アイシャは、小石を床に並べ、じっと見つめる……
「……ちがう……」
そして、時折小石を並べ替えて思い悩むことを繰り返している……
「変わった遊びですね……?」
「んん……たりない……」
「小石が足りなくなったんですか?」
「いかなきゃ……」
「……そうだ!アイシャさん、これをどうぞ!」
「これ、なーに?」
「鉛筆と、ノートです!」
床の上には、五つの小石が並んでいる……
「こんな感じに……」
オスクロルは、鉛筆でノートに五つの丸を描いた……
「あー!!」
アイシャは、ノートを食い入るように見つめる……!
「どうぞ、アイシャさん。」
アイシャは鉛筆を受け取ると、猛然とノートに丸を描き始めた。
「これって……」
「ええっと……ええっと……」
いつの聞にか、ノートは丸で埋め尽くされる……
「んー……。」
アイシャは、ノートを見つめ……そして頭を押さえた……
「ねえたん……?」
アイシャは、ノートに五つの丸を描く……
「……丸が、五つありますね?」
「いつつ……」
アイシャは、ノートに三つの丸を描く……
「今度は、三つありますね。」
「みっつ!」
アイシャは、五つの丸と三つの丸を、大きな丸で囲んだ……?
「合わせて八つになりましたね……」
「やっつ……やっつ!」
アイシャは、新しい丸を描き始める……!
「こどもになったくらいで……あたちは、あきらめない……」
「えっ……?」
「あたちは、かんがえるのを、やめたりなんかしない……!」
思い出5
安らぎの泥の中を、もがき続ける――
室内には、一面に数式が書かれた紙が転がっている……
「これは……一体……」
「うう、うう、うううっ……うう……」
アイシャが、猛然と数式を書いている……
「アイシャさんが……もしかして、大人に戻るきっかけをつかんだんじゃ……!」
「んー……」
しかし、アイシャは……突然鉛筆を捨てた。
「どうしたんですか、アイシャさん……」
「わからない……――うう――」
***
アイシャは、海を見つめていた。
寄せて返す波……それを見つめるだけで……
「……んんん……」
アイシャは、何もしない……
「ああ……」
時折……砂浜に……数式らしきものを書くが……
数式は……打ち寄せる波に消されてしまう……
「…………ううっ。」
いつしかアイシャの目は……海に吸い寄せられる。
「……きらきら。」
飛沫が陽光を返し、きらめいた……
「きれい……」
アイシャは、海へと――歩み始める。
「忘れて……た……
もうすぐ、日が暮れる……あと1時問38分で……
そうしたら……今日は……空にお月様が……
この世界は……どれだけ計算しても……足りない……
ずっとこのまま……数を数えよう……
テーブルの上のパンくずを――
森の中にある小石の数を――
砂浜にある砂粒の数を――
でも私は――何のために――?」
思い出6 (友情覚醒)
「……私……は……」
「アイシャさん!」
海に半身を沈めたアイシャを、オスクロルが抱き留めた。
「――お休みの日に、図書館にいきましょう。アイシャさんが好きな本が、沢山ありますよ……
図書館にいったら、二人でお菓子屋さんにいって、ジェリービーンズをいっぱい買いましょう……
だから、もう……!」
「――オスクロル。その先はいわなくていい。」
「……えっ!?」
「知能を失って半月か。ずいぶんとかかったが――証明終了だ。」
「証明……?」
「己が何かという証明だ。目に入るもの全てを計算し、ようやく私は答えを得た。
何のために考えるのか。その疑問にたどり着いた。」
「何のために……ですか……?」
「ただ計算するだけでは、機械と変わらない。
機械から人になるためには、己という存在にたどり着かねばな――
自我さえ確立すれば、あとは簡単だ。認識を再構成し、知能を蘇らせた。
……肉体への影響も消えたか。やれやれ、面倒をかけてくれた。」
「……良かったです……本当に……!」
<アイシャの手に……王冠が納まった……!>
「……ともあれだ。海水浴は終わりにするか。」
***
だいたいそういう顛末だ。
びっくりしたわ。いきなり子供になっちゃうなんて!
滅多にない経験だったとも。不本意ではあるがね。
アイシャは子供になってた時のこと、全然覚えてないの?
幸いに、というべきかね……
ごめんなさい……ご苦労をおかけしました。
とんでもない。苦労をしたのはねえたんの方だろう。
「「「ねえたん!?」」」
……あー……
全く調子の狂う……!
もう一度……いってみていただけますか?
もう二度といわない。
アイシャは、ジェリービーンズの瓶を取り出し――
一粒を宙に放った。
クランベリー味。継承の暗示、ね……
' アイシャ・アージェント'''
その他
KINGS CROWN2