【白猫】メインストーリー 第14章 Story4
メインストーリー 第14章 Story4
目次
登場人物
story22 思索の始まり
(……ォォォォオオ……)
【――を……】
【物語を――】
【<ゼロ>の海に浮かべよ――】
(……なん……だ……?
この……思念は……?)
【争え。永遠に】
【産め。対立する者を。それらに抗う者を】
【無数の争いを】
【無数の争いを】
【無数の争いの世界を】
【無数の争いの世界で、永遠に続く物語を】
【永遠の物語を紡げ】
【求めに応じるべく】
(思念が……代わる代わる……?)
【永遠に、争いの物語を紡げ】
【もっと激しい争いを】
【もっと力を】
【もっと強く】
【さらに勝つ者を】
【さらに勝つ者を】
【さらに勝つ者を】
【さらに勝つ者を】
(……飢えて……いるのか……?
グァアアアアアア……!
流れ込んでくるっ……!
思念が……我の許容量を……超えるっ……!)
「……貴様は……?」
――理解の形――
――『個』ではない――
「……この場に渦巻く無数の思念を……
理解するため……我が、生み出したビジョンというわけか……」
――そうだ。自我は理解の形を定義する――
――それが限界だ――
「…………」
――これからいくつかの自問自答を行う――
――その後、裁定が下される――
――はじめに条件を告げる。<闇>の消滅もまた、世界の終焉を呼ぶ――
――端が欠ければ、<均衡>は自浄作用を失う。いずれ傾き、転覆するだろう――
――我はそれを是とするか?――
「…………
前提を変更させてもらう。」
――ほう――
「我はここに、自問自答をしに来たのではない。
無数の思念……それに、いま少し触れてみたい。
答えを探すのはそれからにしたい。」
――耐えられぬかもしれんぞ――
「際限のない欲望を一身に受けることになるからか。」
――欲望だけではない。善意もそこにはあろう。だが、同じこと――
――思念は他者へと向けられる際、<期待>に収束する。そして、貴様の解に注目する――
――思念は解の責を、貴様のみに問うぞ――
「そういうものだろう。不服はない。」
――よかろう――
story23 刺激
……おや?また旅人さんかい。珍しいことは続くもんだなあ。
幸せなことではないか。驚きという刺激を失っては、長き生にも意味はない。
たしかにねえ。しかしあんた、その歳で一人旅かい?
誰もが皆、一人旅の途中であろう?
うーん……あんた、何者だい……?圧が……
圧か。隠すのは不得手でな。
だが、対峙する相手が例外なく委縮するというのも、中々愉快なものだぞ。
そりゃ、あんたはそれでいいだろうけど……この町には、何の用だい?
一つ尋ねたい。この町はどれほど古い?
さあ……あんまり知らないね。どこかで誰かが伝え損ねたんじゃないかなあ。
先天的に、戦闘の技術を備えている者が多いようだが?
そうなのかい?まあ、魔物とはある程度戦えてる奴が多いけどね。
でも、他の島を知らないからなあ……どこでもこんなもんじゃないんだね。
遥か古の時代、黒の王国の周辺の島には、様々な戦闘民族がいた。
もしかすると、この島の民はその末裔かもしれんな。
へ~……でも、遥か昔だろ?そんなに続くもんかねえ?
閉ざされた島であれば、血が薄れることも少なかったのかもしれん。
たしかに。でもあんた、なんでそんなことを知ってるんだい?
当時いたからな。
え?
わっ……うわぁああああ!?
慣れんことはするものではないな……
クソも面白くないわ!下等生物との質疑応答など!
だがまあ、最低限の気は済んだ。……さて……
長く楽しむべきか……それとも……?
くくく……!テイスティングくらいしてみてもいいかな……?
story24 祈り
……こんなところか?我ながら、上手にできたな。
たまには食べ残しもよかろう。放っておけば増えるのだけが、玩具の長所だからな。
さて……?……ン?借り物はどこへいった?
……まあそんなことはいいか。
前菜も済んだところで、メインディッシュをたいらげに行かんとなぁ!
ハッハッハッハ――!
町が……
……無に……
…………
…………多くの者が、無へと還ってしまったな……
ああ……祈ろう……
……<再生の巫女>様……
我らに、ご加護を……
いずれ来たる<無>のため……
再びの<有>をお許しください……
story25 『二度目』
だいぶ登ってきたな。
ああ。
不思議な雰囲気の山だ。……どこか、懐かしいような……
懐かしいだと?……変わった男だな。
なんで?
……町人の話では、虚空とつなかっている山だということだったろう?
あ~。まあでも、伝承だろ?ホントかどうかは。全然別のモンがあるのかもよ。
…………
案外、オレの記憶を取り戻す鍵があったりしてな。
……アストラ島、だったか?ここからは遠そうだがな。
ああ、そっちじゃなくて。
スキエンティアに着く前の記憶もないんだ。
……なに?
実は記憶喪失、二度目だったのさ。手慣れたもんだよ。ははは。
おい……聞いていいか?もう少し、その話?
だから、記憶がないんだって。
最初の記憶は?
ああ……エクスって奴と会ったとこからがスタートだな。
いつのことだ?
4、5年前ってとこかな?たしか。
…………
もちろん、記憶を取り戻すために色々試みたんだが……全部、無駄に終わったよ。
だから、その前の自分が何者だったかなんて、もう考えないようにしてる。
そういうものか……?
いや、本気で取り組んだんだって。それでも無理だったんだから。
…………
……エクス、というのは?
初めて組んだ冒険家仲間さ。
友か?
シンパシーは感じたけど、な。……ここにいない奴のことをとやかく言うのはフェアじゃない。
ただ……深い奴だったよ。
……その男にそそのかされて、島を出た、というわけか?
いや、自分の意志だ。
と、思うように誘導された?
……ないとは言わない。
(……間違いない……!
道化……!奴だ……!
そのときからすでに、この男に目をつけていたということか……!?
一体どういうことだ……!?奴は、何を知っている……!?)
――!!
ん?
町が――!!
!!
バールか!?
くそっ!空ばかり警戒していたのが仇になったっ……!
今からではっ……
……戻れない。戻るわけにはいかない。余計犠牲が増える。
<空石>を手に入れて、あいつを討つしかない……!
……賢明だ。
どうも!くそっ!
……中立……か……
…………
story26 選択と解答
【世界は、どうなってしまうんだ】
【産め。対立する者を。それらに抗う者を】
【救世主は現れないのかしら】
【て、敵だ!!】
【なんてことじゃ……もう、おしまいじゃ】
【見て!だれかが】
【いっけぇー!やっつけろーっ!】
「…………」
――思念は<期待>する。強大なる<善>と、強大なる<悪>の誕生を――
――それはただ<力>のみではない――
「で、あろうな。」
――我は応えられるのか?――
――我は、<闇>は、何のために在り――
――何を世界に提示する――
「…………
無数の思念は、また無数の試行錯誤だ。そこにはもはや真新しい解などなかろう。」
――その通りだ。だからこそ、問う――
――我は、何をもって、世界の一端を担うのだ――
「………
結論はすでに出ていた。得てして、回ってくるものなのだな。」
――示せ――
「<闇>がもたらすは、永遠の安息だ。
あらゆる存在を、永遠の安息の中に埋める。
――浅い――
「そうか?続きを聞け。
自我とは苦痛の源であり、永久に終焉は来ない。
なんの<虚無>、だか。虚空に身を投じたところで、形なき無数の思念にさらされ、苛まれるのであろうが。」
――ここで『個』を保とうとすればな――
「『個』の放棄が実現した前例など知らぬ。」
――我はな――
「ならば誰が知っていると?」
――……知らぬ――
「そうであろう。突き詰めるところ、そこよ。
恒久の無も結構であろう。ま、変化のない永遠など瞬間と同義だがな。どちらにせよ……
それを経験した者などおらぬ。」
――…………――
「ではとこしえの平和はどうか?……これも、体験した者などおらぬ。なぜならば……
物語は得てして。日常が破られるところから始まるからだ。」
――…………――
「虚無と平穏。そのどちらも、完全なる実感を持ちえた者がおらぬのなら――
――同格であろう?永遠の<闇>も。
結論は単純だ。『一度やってみればよい』
我が導いてくれよう。確信がある。おそらく――
案外悪くないぞ。
一の快楽のため、十の苦痛に耐えることを。まあ、愚かとは呼ばぬよ。選ぶのは自由だ。だが……
<闇>は、快楽と引き換えに、苦痛をも取り去るであろう。
単純な比較であれば、無や平穏より、利点もある。が、決断も一つの苦痛だ。よって、それは我だけが負う。我に『強制された』形を取れ。
我が誘ってやろう。未だ誰も経験したことのない、<安息の闇>の中に。」
――…………――
――……試してみろ――
「……おお……!
……ふ、思わず安堵したわ。甲斐があったぞ。」
――去る前に、賤別がある――
「賤別?」
――全ての<有>は、<零>の内にある――
story27 共感
モタモタするな、ヴァルアス!
フン、誰に言っている。……だが、カイルよ。
なんだ!?
……ずいぶん思い切りよく、町を見捨てたものだな?
……あァ!?
『利』が頭ではわかっても、感情はそう都合良くはいかぬ。
……それが人間だと思っていたが。
…………
たしかに、手遅れだ。被害はなかったことにはならん。<空石>を得て、一刻も早く奴を討つのが最上の選択肢であろう。
大した俯瞰だ。見事ですらある。だが――
――何の迷いもないのか?
――ないわけないだろ!?オレが、何の感情もなく町を見捨てたとでも言うのか!?
…………
おい、ヴァルアス!いくらあんたでも、言っていいことと悪いことがある!
…………
…………
……すまん。失言だった。撤回する。
……ああ。
(怒りは、本物……か……?
だが……何か、ひっかかる……
ふざけた言動の多くで巧妙に隠しているが……
この男の進む道は……そう……たとえるならば……
『筋書き通り』過ぎはしないか……?)
…………
……?どうした?
……あんたと同じことを、オレも思っていた。
!?
と、言ったら?
……カマをかけるのはよせ。
なあ、ヴァルアス。
なんだ?
今ははぐれちまったが……オレには、仲間がいるんだ。
あの、バールってのを倒したら……あんたも一緒に旅をしないか?
!?私は<闇>だぞ!?
気にならねえよ。
…………
こう見えて、オレも、疑問を抱いてる。自分自身に対して、な。
もしよければ、一緒に歩んでくれると助かる。
…………
ヘンな話だが、あんたとやり取りするのは結構小気味イイんだ。どうだい?
……考えてもよい。
お!
が、私は騎士だ。主命には背けぬ。
わかってるさ。<闇の王>からお許しを得られたら、でいいとも。
……ふ……
はははは……――!?
……カイル?どうした?まさか、記憶が戻ろうとしているのか?
――記憶のことじゃない。昔のことじゃない。今現在のことだ。
?
新たな『解』が……提示されようとしている……
どういうことだ?
……よくわからん!だから、わかるように言うぞ!
何者かが、さらなる力を手に入れようとしている!
バールか!?
知らん!だが、この先へ行けばっ……!
……この先には古い神殿がある。
じゃあそこだっ!
(カイル、お前は何を感じ取った……!?
もしや……陛下が……!?)
story28 世界の望み
……結果は見えている世界は、<闇>の消滅を、認めはしない……あなたには、まだ為すべき<役割>があるから……
…………
……それにしても……気に入りませんね。
<無>とは待ち受けるもの……暴力で距離を縮めるのは、私の……主義ではない。
バール……あなたのやり方は、まさしく<我儘>と断じられる所業。
……いい気になるな。
ほ~~~~~~う?
いないところで陰口とは、<再生の巫女>の名が泣くぞ?
肩書きに意味など。それに、わかっていましたし。あなたがそこにいることは。
ほお~?さすがじゃのぉ~?
……あなたは、神経を逆撫ですることばかり……!
儂は嬉しいぞ。貴様が、芯から木偶であったら、なぶってもクソも面白くない。
利口ぶり、冷静ぶる奴ほど、踏みにじり甲斐があるからなぁ!?
バールっ……!!
さて、これから、『力』と『言葉』で貴様を傷つける。
どっちが先がいい?
――<循環>を外れ、<無>へと還りしソウルよ――
――<理>を拒む愚者を断罪せよ――!
ハハハハハハッ!よ~し、ならば語ってくれる!
愚者は貴様よ!賢しらに、理、理とのたまうが!
なぜ気づかん!?貴様こそソレに疎まれていることに!
!?
仮に、全ては、最終的に<無>に帰するさだめだとしても――
――世界は凪を望むまい!
!!
<揺らぎ>なくして何の<均衡>よ。
<我儘>に任せ、波を生み続ける儂と、ただ何もせず、流される貴様。
<世界>がどちらを好むかは、誰の目にも明白であろうが!?
……くっ……!!
……と。まあ、もしも、世界にも個と同じような<自我>があったのならば、という前提ではあるが……
貴様の言っていたことだ。その上で、貴様は矛盾しておる。
――だから醜悪だと言うのだ!
世迷言をっ……!<無>を迎え入れるのに、過程など無意味!
馬鹿が!<有>がなければ<無>も役目を果たさん!
私は認めない!
やれやれ……話にならんな……
だがまあ、よかろう。改心だけが美徳ではない。愚者には愚者の道がある。
――馬鹿のまま死ね!
――虚ろの盾よ!
くぅぅっ……!
迷いは顕著に表れるだろう?
――カァッ!!
あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
ハハハハハッ!どれ、言うぞ?
――トドメだっ!
大丈夫か!?
……うっ……!
また会ったな、バール。
貴様ァ……正気か?
なにがだ。
貴様の乱入を待ち、タイミングを合わせたのは儂だ。なのに……『また会ったな』だと?
恥ずかしくはないのか?
ここで貴様を討てば、喧伝する者もいなくなる。
くくく……!なるほど……!『旅の恥は掻き捨て』か……
ちょっと違うかぁ!?
……こいつが、世界の<我儘>……
悪いな、カイル。旅の仲間には、なれないかもしれん……
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