【ウィズダフネ】アダムの性能評価とステ振り・継承優先度【ウィザードリィダフネ】

「もしそんな魔術が本当にあるなら、故郷も緑豊かな土地にできる。今よりみんなの生活が楽になるだろう」

アダムは仲間を募り、千年郷の場所を探した。

数百年をかけて、ようやくその場所を特定した。

千年郷は強力な結界に護られていたため、長く誰にも見つからなかった。

しかし、地図を作り続けたことで踏み込めない領域を暴く事ができた。

アダムと仲間は入念に千年郷の結界の構成を調べ複雑に編まれた封印を紐解き、侵入した。

千年郷は伝説に違わず、アダム達の故郷より高地にありながら、豊かな緑が生い茂っていた。

しかし、動物はどこにもおらず、伝承のような繁栄は見る影もない。

調査を続けるうち、アダムは緑土の中央には立派な石造りの玉座を見つけた。

玉座には王冠を戴いた枯れ木のような人骨が疲れたような姿勢で、座っていた。

「王冠。この遺骨こそが緑土の魔術師、千年卿か」

アダムはその王冠に触れた。その瞬間、膨大な知識が濁流の様にアダムの中に流れ込んで来た。

それは千年卿の知識であり、魔術であり、意思。

記憶の混濁で倒れたアダムが起き上がった時。

アダムはすでにアダムではなくなっていた。

「儂は千年卿。秘術を望んだ者たちよ

儂を蘇らせた褒美に、千年の大地をくれてやろう」

アダムはそう言うと、呆然とする仲間を殺した。

呼応するように、緑は濃くなり、花が咲き乱れた。

動物の生命と引き換えに、緑豊かな土地作る災厄の魔術師。

それが千年卿の正体だと気づいた時には時すでに遅く。

アダムの肉体を奪った千年卿を止められる者はいなかった。

「さあ。報酬だ。遠慮せず受け取るがいい」

千年卿と成り果てたアダムは自らの故郷に帰りアダムに連なる一族を殺戮した。

異変に気が付いた近隣のエルフは、訪れた高地でエルフの死屍累々と、むせ返るような緑の大地を目の当たりにした。

ただ一人、アダムだけがその中で満足気に立っていたが声をかけたエルフを殺し、立ち去った。

アダムは殺戮者として、追われる身となった。

エルフの身でもそうそう手に入れることは叶わない悠久の年月で培われた膨大な知識と強大な魔術。

魔術の才能に溢れるアダムの身体を手に入れた千年卿を止められる者などいなかった。

アダムは追っ手のエルフや行く先々で出会う人々を

全てを土に還し、痩せた土地を緑豊かな大地へと蘇らせ続けた。

エルフが代替わりをするくらいの長い年月が過ぎた頃

烏の囀りも動物の足音もない、深い森の奥で玉座に座った干からびたアダムの遠体が発見された。

しかし、かの者の遺体に誰も触れる事はない。

玉座の側に、『何人たりとも触れる事あたわず』と刻まれた碑が置かれているからだ。

この遺体に触れた者は千年卿に身体を奪われ殺戮者となる。

千年卿は緑の守護神であり、人間に災厄をもたらす。

私は千年卿の意思に逆らいこの地へたどり着き、生命を終える。

しかし罪が消える事はない ──

人々はその土地ごとアダムを封印することを取り決め、アダムの存在の記録と共にこの世から葬りさった。

皮肉なことに、荒れた大地であった王国は千年卿アダムが通った事で緑豊かな大地へと変貌し王国の繁栄へとつながることになったのだった。